1119万人が働く業務委託、経営者に有利なのはどっち?
冒頭で吉田さんは、多くの経営者が誤解している話をしたいと切り出します。
ランサーズの調査によれば、全国で推定1119万人が業務委託契約で働いていると紹介されました。以前に比べてかなり増えてきたといいます。
そのうえで吉田さんは、業務委託と雇用のどちらが経営者にとって有利だと思うかと安田さんに問いかけます。
雇用も業務委託も経験があるという安田さんは、人件費削減の場面でやりやすいのは業務委託ではないかと、少し残酷な話と前置きしつつ答えました。
削減、人件費削減の時にやりやすいのは業務委託なんじゃないかなっていう、すごい残酷な話ですけど、そんなイメージです。
吉田さんはそのイメージは正しいと認めます。業務委託は契約の打ち切りが雇用に比べてしやすいため、経営者はいざという時に機動的に人件費を修正できる業務委託を好むと説明しました。
ただし、必ずしも業務委託契約の方が有利とは言えないと、この回の本題へ話を進めます。
業務委託と雇用を分ける一番のポイント
本題の前に、吉田さんは業務委託と雇用は何が違うのかを整理します。安田さんは「会社に所属しているかどうか」と答えました。
吉田さんによれば、厚生労働省の研究会などが業務委託か雇用かの判断基準を示しており、その中には専属性という要素もあります。一社にしか所属していないと雇用と判定されやすくはなります。
ただし、そこは主たる論点ではないといいます。
一番はですね、会社から細かい指示が出ているかどうか、会社の指揮命令に置かれているかどうかというのが判断のポイントになります。
吉田さんは、時間的な拘束の有無など他にも要件はあるとしつつ、会社が細かく指示を出しているかどうかが最も重要なポイントだと考えていると話しました。
雇用契約はなぜ労働者に有利で経営者に大変なのか
一般論としては、雇用の方が経営者にとって不利、つまり労働者にとって有利だと吉田さんは言います。わかりやすいよう、スタッフ目線でのメリットを挙げていきます。
雇用契約なら労災保険がつくため、仕事中や通勤中の怪我の治療費は国が持ってくれます。さらに雇用保険に入れるため、失業した場合に基本手当を受け取れます。
加えて社会保険にも加入でき、税金面でも確定申告が基本的に不要になるなど手続きが楽になります。
一方でデメリットもあります。社会保険料などが天引きされて手取りが少なくなり、給与は経費として税金計算に含めにくいといった不利な面もあると説明されました。
それでも全体としては雇用契約の方が労働者に有利で、経営者には大変だといいます。
最大の理由は、何かあった時に給料を下げさせてくださいとか、場合によっては退職してくださいっていうのがやりづらいからなんですね。
業務委託の落とし穴、労災が下りずクレームに
基本的に業務委託は経営者に有利ですが、デメリットもあると吉田さんは話を進めます。
たとえば、業務委託の個人事業主が仕事中に怪我をしたとき、「私は労災保険が下りないのか」というクレームになることがあります。
怪我をした場合、労災はどうなるのか?
基本的に個人事業主は自己責任となり、治療費は自分で負担することになります。健康保険証も使えないため、原則すべて自己負担です。
ただし吉田さんは、一定の条件で労災保険に特別加入できる制度もあると補足します。製造業や建設業など危険な業種では、個人事業主でも労災に入っているケースが多いといいます。
保険が効かないことを十分に理解していないと、そこでトラブルになると指摘されました。
契約時に説明しないと後でトラブルになる
安田さんは、これは業務委託を結んだ働く側の理解が不十分な場合があるということかと確認します。吉田さんは、契約時にその部分を説明しておかないと後々トラブルになると応じました。
さらに吉田さんは、理解が足りないのは働く側だけではないと指摘します。経営者側も雇用と業務委託の差がわかっていないことがあるといいます。
この業務委託と雇用の違い何なんですか?って聞いたら、何も変わりませんとかいう経営者の人って結構いるんですよ。
本来は、細かな指示の有無や時間的な拘束の有無を明確に区分し、なぜ雇用なのか、なぜ業務委託なのかを会社の中でコースとして分ける必要があると話します。
労災・雇用保険・社会保険がつき労働者に有利。給与を下げたり辞めてもらうのがやりづらく経営者には大変
契約の打ち切りがしやすく経営者に有利。ただし労災が下りず、指示できる仕事の範囲にも制約がある
専属でない業務委託は「その仕事はやりません」が言える
業務委託は一般に経営者に有利ですが、専属でないケースがあることも落とし穴だと吉田さんは指摘します。
専属でなければ、この仕事はやるがあの仕事はやらないと働き手が言えてしまうといいます。吉田さんは掃除とコピー取りを例に説明しました。
業務委託だったら、じゃあ会社の掃除をお願いします。それはやります。コピー取り。こっちはすいません、ちょっと条件合わないんでやりませんってことは言えちゃうんですね。
取引には力関係があるため必ずそうなるとは限らないものの、いざとなればそう言われる可能性があるので注意した方がよいと話されました。
契約は形式ではなく実体で決まるという最重要ポイント
ここから最も重要な話として、吉田さんは雇用か業務委託かは何で決まるかを問いかけます。安田さんは考えたことがなかったと答えました。
吉田さんによれば、業務委託の契約書を交わしていても、実体として時間的な拘束や細かな指示があれば、労働基準法上の労働者にあたる場合があるといいます。
その状態で長時間働かせていると、裁判所などに持ち込まれた際に、実態は雇用契約だとして時間外手当を受け取る権利があると判断されるリスクがあると説明されました。
だからこそ、実態と形式を合致させた状態で契約することが最大のポイントだと吉田さんは強調します。
安田さんは、業務委託と雇用の違いがわかっていないことは非常に問題があるとまとめます。働き方にどんな違いがあるのかをきちんと理解していないと、こうした例が起きてしまうということだと確認しました。
自身が業務委託で働いていた頃を振り返り、決められた業務のための契約で残業もなかったと話す安田さんに、吉田さんは仕事を出していた側がよい会社だと応じました。
まとめ
業務委託は契約を打ち切りやすく経営者に有利に見えますが、労災が効かないことや仕事を選ばれるリスクがあり、必ずしも有利とは言い切れません。何より、契約は形式ではなく実体で決まる点に注意が必要です。
- 業務委託か雇用かは、会社の細かい指示や指揮命令があるかが最重要の判断ポイント
- 雇用は労災・雇用保険・社会保険がつき労働者に有利で、経営者には人件費調整が難しい
- 業務委託は労災が下りず、専属でなければ特定の仕事を断られる可能性もある
- 契約書が業務委託でも、実態が労働者なら時間外手当を請求されるリスクがある
- 実態と形式を合致させ、経営者も働く側も違いを理解して契約することが大切






