立ち見の古民家レストランで何が始まった?
はたらくビ学ラジオは、良い働き方や美意識のある働き方を語る番組です。この回は京都・東山のレストラン「ヒトヒ」で、立ち見が出るほどの観客を前に公開収録されました。
冒頭の進行を任された木原考晃さんは、当日は食べに来て横で見ているだけでいいと言われていたのに、いきなりマイクを渡されたと明かします。小笠原さんは、この日の顔ぶれについて、働き過ぎている人たちなので働き方の話はいらないのではないかと冗談を飛ばしました。
今日の人たちは働き過ぎてるんで、あんま働き方いらないんじゃない。
寺田航平さんは、ヒトヒについて、築100年以上の古民家を改修して昨年オープンし、小笠原さんが社長を務める薪料理中心のレストランだと紹介しています。
2万3000人の組織からAIソロプレナーへ、自己都合の揺り戻し
この日の亀山さんは、別番組の収録を何本も重ねた後でした。川邊さんも亀山さんの番組に出演し、誰からもサイドイベントに誘われないまま亀山さんの車でここまで流れてきたと語ります。
川邊さんは、何の話をするかすらわかっていない展開をIVS ── 日本のスタートアップ・投資家が集まる大型カンファレンス。京都で開かれ、期間中は多くのサイドイベントが催されますらしいと笑い、AIの話でなくてかまわないと応じました。
最近気になっていることを聞かれた寺田さんは、AIづくめの時代への揺り戻しを挙げます。若い人にスマホをいじるのをやめてほしいほどで、本物の美しさや本物から受ける感情が大切だと最近強く感じているそうです。
小笠原さんは、それをインターネットで儲けてきた人たちが言い出していると突っ込みます。川邊さんが会長時代に率いた部下は約2万3000人で、その人がいまは1人で働くAIソロプレナーを名乗っているからです。
そうですよ。もうやってますから、もう2週間ぐらい。
寺田さんも川邊さんも、この転換を自ら「自己都合」と認め、会場の笑いを誘いました。
ローマ市民は奴隷に仕事を任せて何をしていた?
亀山さんは最近、別のポッドキャストで「また哲学」と語っていました。AIで稼ぎながらも、そもそもこれでいいのかと時々問い直す必要がある、というのが亀山さんの考えです。
ここで川邊さんは、孫正義さんが3年ほど前にソフトバンクの経営幹部合宿で披露した話を紹介します。AIは古代ローマの奴隷のような存在で、日常業務を奴隷に任せたローマ市民が何をしていたかを孫さん自身が調べたという話です。
孫さんによれば、ローマ市民は恋や不倫、格闘技の観戦に興じ、最もよくしていたのが政治や哲学の議論でした。だから哲学はいい、という話に落ち着いたといいます。
小笠原さんは、リベラルアーツ ── 古代ギリシャ・ローマで自由人が身につけるべきとされた教養。現代では幅広い基礎教養を指す言葉として使われますとは自由人として議論するために必要な知識のことだったと補足しました。
亀山さんは、縄文時代のように労働時間が少なかった時代ほど文化が育ったとし、AIで仕事が減ればアートや哲学が栄えるのが歴史だと語ります。そのうえで「哲学とアートと不倫だよ」とまとめ、会場をわかせました。
人間の脳って消費電力低い代わりに遅い。で、いわゆるGPUとかプロセッサーっていうのは消費電力高いけど早い。
小笠原さんは、人間に残る仕事は「ゆっくり深く考える」ことで、それが哲学として体系化されているのではないかと話します。
では亀山さんはなぜ哲学に戻ってきたのか。亀山さんは20代のころ、世界を一人旅しながら哲学に打ち込んでいたと明かしました。
哲学何かって言ったら、結局は自分と向き合う話になるんで、旅でずっとね、世界中行きながら自分と会話するっていうのが基本哲学みたいなイメージがあるんだけどね。
座禅も組んだものの、組めば組むほど雑念だらけになったといいます。亀山さんは、雑音が気にならなくなる状態が無に近いのかもしれないと語っています。
なんでその辺で進化止まってたんだよ、実を言うと。つまり内面的ものでいうと、もう30代と今は大して変わんない。
30歳からはひたすら金儲けをしてきた亀山さんは、時間ができたいま、もう一度内面の旅に出ようとしているわけです。
忙しい経営者が「心の価値」を語る理由
小笠原さんは、仕事を任せ始めた亀山さんや退任した川邊さんと違い、いまも忙しい寺田さんがなぜ心の話をするのかと問いかけます。寺田さんは、忙しいかどうかと、自分に向き合う時間がないかどうかは別だと答えました。
寺田さんは、世の中全体でお金の価値より心の価値が相対的に上回りつつあると感じているといいます。アートの仕事で行った実験の例も挙げました。
フェルメールの本物の絵画、3Dプリンターで精巧に作った複製、ポスターを同じ額に入れて約1000人に見せたところ、本物を見た人のアルファ波が他より100倍ほど多く出たという結果だったそうです。
寺田さんはさらに、幸せの3大ホルモンを説明しました。心と体の健康を司るセロトニン ── 脳内で働く神経伝達物質の一つ。気分の安定や睡眠などに関わり、「幸せホルモン」と呼ばれることがあります、人付き合いで得られるオキシトシン、目標達成で得られるドーパミンです。
寺田さんは、経営者としての成功と人間としての成功は別の軸だと話します。両方を合わせていくことが幸せな人生につながり、そのための時間は忙しくても作れるというのが寺田さんの主張です。
「ドバガキ」とドーパミンに加担した経営者たち
話題は、ドーパミンばかり出ている子どもを指す「ドバガキ」という言葉に移ります。大人の側も、ショート動画やXをつい見てしまう「ドバドバじじい」になっていると笑いが起きました。
寺田さんは、幸せのホルモンには大事な順番があると話します。心と体が健康でなければ、目標を達成しても人に恵まれても幸せを感じられないため、まずセロトニン、次にオキシトシン、最後にドーパミンだという考えです。
ドーパミンばかり求める人は一人の世界に閉じこもり、不幸せ度が増しているのではないか、と寺田さんは指摘します。
ドーパミンに加担してきた側として、川邊さんはソフトバンクグループを振り返ります。孫さんは脳内物質の話が大好きで、社員大会で語ったこともあったそうです。
その前半の分泌物、オキシトシンとかセロトニンとかを俺たちは出すような、そういうプロダクトを出していこうぜみたいな感じで、一応まとまったんですね。
ただし、ユーザーに提供するものとは別に、作る側の自分たちは「ドーパミンしかない」と川邊さんは笑います。一方で川邊さん自身は、遊びの延長で仕事をしてきたため、3つをバランスよく出してきた例外的な存在だと語りました。
小笠原さんは、さくらインターネットを最初の3年で一度辞め、上場後に出戻った経緯から、自分で大きく跳ねた経験がなく、ドーパミンドリブンになる必要がなかったと話します。それでも求め続ける人について問われると、こう返しました。
いますけど、かっこ悪くないですか。
小笠原さんは、余裕がありそうな人同士のほうがいいと続けます。亀山さんは30歳ごろからドーパミンは減り、マイペースでやってきたと語り、小笠原さんはその無理をしない姿勢がクーポン事業からの素早い撤退にも表れていたと振り返りました。
行動と思考、柄にないこと、サードプレイス
これからどう生きたいかを聞かれた亀山さんは、昔は行動が世界を変えると考え、動くのが先だったと話します。最近は、やれることは大体やってきたため、思考を増やそうとしているそうです。
ただ闇雲にやるだけじゃね、浅くなっちゃうし、考えすぎても体が動かないからね。
川邊さんは、会長時代の約3年間、寺田さんと鋭く対立しながらライドシェアの規制緩和に取り組み、政治に近づくこともしたと振り返ります。
一言で言うと柄にもないことをやってたなっていう感じなんですよね。
インターネット産業の30年をまとめた著書『7つの激変』書名を書く中で、川邊さんは自分が楽しかった理由を「テクノロジードリブンだったから」と総括しました。昨年10月ごろ、AnthropicのClaude Codeの性能向上を見て、柄にないことをやめて「柄なこと」に戻ろうと決めたといいます。
本業を持つ寺田さんは、仕事にも家庭にも義務感があり、どれも心が解放される場にはならないと話します。だからこそ、限られた時間でサードプレイスを作ることが大事だと考えています。
寺田さんにとってのそれは、マネーフォワードの辻庸介さんたちと毎週するテニスです。いずれ仕事のパフォーマンスも体も衰えていく中で、内観しながら知らなかった自分に気づく旅が、これから哲学的に必要になるだろうと語りました。
あと100年生きるなら、どう死ぬかを考える
小笠原さんは、京都芸術大学に受験に来る高校生によくする話を紹介します。2000年以降に生まれた子どもは健康寿命が120歳ぐらいまで延びるともいわれるため、卒業後あと100年働くことになる、という話です。
みんな大学卒業してあと100年働くけど大丈夫?
登壇者の年齢は寺田さん56歳、亀山さん65歳、川邊さん51歳、小笠原さん55歳。今までと同じだけの時間をもう一度生きるとしたらどう使うかと問われ、亀山さんは即答しました。
亀山さんは20代、生と死やどう生きるかばかりを考えていました。それが土台にあると、その後は楽だったといいます。
明日死ぬとなったらどうしますか?っていうのをずっと問い詰めるのが、多分20代ずっとやってたんだよね。
亀山さんは、武士が常に短刀を持ち、明日死んでもいいかを問い続けたことにも触れます。20代のころは長く生きることが恐怖で、本気で30歳までに終わろうと思った時期もあったそうです。
しかし生き残ってみると、意外と楽しめていると亀山さんは話します。どう生きるか、どう死ぬかに向き合っておけば、未来への不安はあまり感じなくなるというのが亀山さんの実感です。
AIで中間が消えたら、幸せの割合は変わるのか?
小笠原さんは、ここで答えのない問いを投げかけます。エージェント型のAIが一般化すれば、流通や広告のような「中間」の仕事がなくなり、価値を作る人と消費する人だけが残るかもしれません。
そのとき、何かを作り出せる1〜2割の人以外は、長くなる人生をどう生きるのか。しかも生きていく糧を持っている側と、これから得なければならない側では感覚がまったく違う、という問題提起です。
亀山さんの答えは、いつの時代も幸せな人の割合は大して変わらない、というものでした。江戸時代に仮に3〜4割の人が幸せだったとすれば、今も100年後もそのくらいだろうと話します。
小笠原さんも浮き沈みの激しい人生で、しんどい時も笑っていたと応じます。亀山さんは、一度沈んでから持ち直す繰り返しのほうが幸せを感じやすく、仕事がなかろうと貧乏だろうと幸せ度はそれほど変わらないと続けました。
「持っている人が好きなことを言っている」と思われそうだと笑いつつ、亀山さんは、持っていなくても言える自信があるので、金持ちの暴言とは思わずに耳を傾けてほしいと話しています。
20代の亀山さんは戦場近くまでバックパックで行き、戦場で死にたいとさえ思っていました。その後、自分の好奇心を満たすだけでなく家族と生きる道を見いだし、思った以上に未来は良かったと振り返ります。
スマホで逃げず、沈黙と孤独に向き合う
亀山さんは、多くの人が自分と向き合うことを避けていると指摘します。沈黙の中にいるのが怖いので、少しでも暇になるとショート動画やSNSに手が伸びてしまうというのです。
スマホしばらく置いて山1日こもってでもいいからさ、ずっとさ、何もないところで空だけ見て自分と会話してるとさ、逃げるよがないんだよね。
雑念を消すのではなく、気にならなくなるまで考え続けることで、沈黙や孤独への耐性がつく、と亀山さんは語ります。ただし深く入りすぎると、なぜ人を殺してはいけないのかといったそもそも論で危うい方向に行くこともあるため、時々人に会って自分の考えを聞いてもらうことが大事だといいます。
スマホを置く
沈黙の中で浮かぶ不安から逃げない
考え続ける
雑念が気にならなくなるまで問い続ける
疑い尽くす
信じてきたものも自分の醜さも認める
人に会う
考えがおかしくないか聞いてもらう
戻ってくる
それでも生きる、戦争はダメだと自分で言える
亀山さんは、みんなが言うから、先生が言ったからではなく、自分の信じていたものも自分自身も疑い、過去のずるさや罪悪感とも向き合うべきだと話します。そうすることで、自分を許せるようになるというのです。
これを聞いた小笠原さんは、15年前のIVSで人前で話せず、自分たちの後ろに隠れて「あの人誰?」と聞いていた亀山さんを思い出したと驚きます。当時の亀山さんは、自分の考えは人に話すものではないと思っていたそうです。
亀山さんは51歳で社会に「デビュー」した遅咲きだと笑い、50代からのほうが楽しめていると話しました。小笠原さんは「老後って捨てたもんじゃない」と応じています。
何のために生まれてきたのか、真善美を自分で言えるか
川邊さんは、死生観と並んで哲学でよく語られるのが愛だと話題を振りますが、まずは亀山さんの話を聞いて反省したと語ります。自分のポッドキャストでは、ここまで深い話を引き出せなかっただろうというのです。
そのうえで川邊さんが会場に投げかけたのは、何のために生まれてきたのかという問いです。人間は考える葦である ── 17世紀フランスの思想家パスカルの言葉。人間は自然の中では弱いが、考えることに尊厳があるという意味で知られていますという言葉も引きました。
ただ、SNSの時代には、これが真善美だと言ってもすぐに「それ違うでしょ」と指摘が来ます。多様性や相対化が重んじられる中で、真善美を決めるのはとても難しいと川邊さんは話します。
川邊さんの結論は、ツッコミが来ても、意志を持って「俺はこれが真善美だと思っている」と言える何かを持てるかどうか、というものでした。小笠原さんは、自分の美意識だけで語れない不自由さから自由になるために学ぶのが、まさに哲学だと応じます。
大丈夫、自分はやれるっていう、そういう自信、たったそれだけの自信を得るのに30年かけてやってきたなっていう感じが今してるんですけど。
PayPayの上場のような具体的な成果ではなく、自信こそがビジネスで得られたものだった、と川邊さんは振り返りました。
寺田さんは、人の性格の骨子は15歳ぐらいまでに作られると話します。自身は生まれつきのアザでいじめられた経験から、100万人の賞賛よりも2〜3万人に悪く言われることのほうが苦しいと明かしました。
だからこそ寺田さんは、1000人の濃い人に認められる生き方を選び、起業家のメンタリングに力を入れているといいます。過去の克服や背負ってきたものの解放を一人ひとりが考えることが、何のために生きるかにつながるというのが寺田さんの考えです。
戦場の近くの農家で、亀山さんは何を見たのか
話は愛に戻ります。亀山さんは、20代の哲学の旅は愛ではなく、自分を高めたいという欲望だったと振り返ります。ニューヨークのハーレムやブロンクス、インドの貧民街を巡り、最後は旧ユーゴスラビアの戦場を目指しました。
当時の亀山さんは、もうすぐ死ぬのだから恋はしても「愛してる」とは言えないと、付き合う相手に話していたそうです。
旅の途中で捕まり、銃を突きつけられる目にも遭った亀山さんは、結局釈放されました。最もショックだったのは、そのとき何の恐怖も感じなかったことだったといいます。
俺はもうこの先何を探して生きていけばいいの?みたいな。つまり何か見つかると思ったのに、何も見つからないみたいな話になって。
帰り道、自転車がパンクした亀山さんは、ある農家の世話になります。父親がパンクを直し、母親がお茶を出し、子どもたちと遊んで待つ時間を過ごしました。
山の向こうから大砲の音が聞こえる中に、普通の家庭の営みがあったことに、亀山さんは深く感動したといいます。
亀山さんは、5年ほど一緒にいてくれた彼女に初めて「愛してる」と言い、結婚しました。今後この人にしか言わないと決めたそうです。
亀山さんは、好奇心さえも欲望の一つで、オキシトシンのようなものは誰かを守ろうと思えることでしか感じられないと話します。31歳ごろ、家族を守って資本主義の中で生きると決め、そこからは「退屈な幸せ」を感じてきたと語りました。
恋は冷め、愛と友情は時間で育つ
亀山さんは、結婚のきっかけは恋でいいと話します。ただ恋は時間とともに劣化していくのに対し、愛は育てられるものだといいます。
愛っていうのは結構愛情みたいなもんだから育てようがあるんだよね。だからやっぱりそれ時間と共に育っていくから、やっぱり歴史がいるんだよね。
今日会った人より10年付き合った人のほうに情がわくように、愛情も友情も根気強く育てるしかないと亀山さんは続けます。10年生きてきたのだから、もう10年頑張るかという気持ちで積み上げた関係には価値がある、というのです。
結婚のきっかけとしてはよいが、時間とともに劣化し冷めていく
愛情や友情のように時間をかけて育ち、積み上げた歴史が価値になる
川邊さんは、時間がかかるという話を聞いて、最初の『キン肉マン』の最終巻に「友情は育つのが遅いもの」と書いてあったことを思い出したと明かします。
自分を愛するようにあなたの隣人を愛せよっていうのがキリストのある種の根本思想で、自己愛を他者への愛に持っていけたら世界は平和じゃんみたいな。
キリスト教の家庭で育った川邊さんは、真善美がわかっても平和が実現するとは限らないが、愛は平和を実現する点で「実用的」だと語りました。
観客の問い「お金持ちって幸せですか?」
最後に観客から、お金持ちは幸せなのか、そうでないなら何が幸せになり得るのかという質問が出ました。最初に答えたのは川邊さんです。
何が幸せかの答えは、僕なりに理解してる答えはバランスですね。
川邊さんは、経済面に加えて、健康、周りや家族との関係、仕事の充実感といった4〜5つの要素のバランスこそが幸せだと答えました。
(お金が)ない時のきつさは知ってるので、あれば幸せになれるかもぐらいに思ってます。
借金を抱えた経験もある小笠原さんは、お金を持って不幸になった人も見てきたとし、持っているかより使い方の問題だと話します。お金は価値と交換するためのアイテムにすぎないという考えです。
寺田さんは、10年ほど前に仕事、家族、財産、社会貢献、趣味など7つほどの項目で「死ぬときどうありたいか」を書き出し、2年ごとに見返しているといいます。生活に必要なお金まではドーパミン全開で稼ぎ、それ以上は生き方、つまり死に金か生き金かの問題だと話しました。
寺田さんは、完全に無償の愛は1〜3歳の子どもが親に向けるものくらいだと述べ、自分のためと他者のためを両立できる使い方ができれば幸せだと結論づけています。
1000万円までは幸せ、その先は中庸にある
締めを任された亀山さんは、わかりやすく言えば、年1000万円稼ぐくらいまでは幸せだと答えます。いい席に座れる、子どもを塾に行かせられるといった選択の自由をお金で買えるからです。
しかし100億、1000億となると、大抵はお金に振り回されると亀山さんは話します。お金を使うほど金目当ての人が寄ってきて、愛が見えなくなるというのです。
いい人も悪い人も自分には優しいので見分けがつかない、と亀山さんは続けます。飲み屋で自分に優しい人が店員に厳しく当たるのを見ると、自分がお金を失えばこの人も態度を変えるだろうとわかるそうです。
亀山さんは起業家に向けて、上場して金持ちになる前に相手を見つけ、上場後も大事にするよう勧めます。結婚前に財産の扱いを決める婚前契約 ── 結婚前に、離婚時の財産分与などを夫婦間で取り決めておく契約。海外では一般的で、日本でも経営者などの間で関心が高まっていますが広がっていることにも触れ、それこそ財産がいかに邪魔になるかの表れだと話しました。
財産が愛を見えなくするし、財産が兄弟喧嘩をさせるとかね。
亀山さんの結論は、上位や下位の数パーセントではなく、月並みな大衆の経済状況が一番幸せだというものです。1000円のランチを一緒に食べられる友達が一番多い、というたとえで説明しました。
小笠原さんは、これが孔子の中庸 ── 孔子の思想などで説かれる、偏りや過不足のない調和のとれたあり方を重んじる考え方と同じ結論だと応じます。高いバッグより皿洗いのほうが妻に喜ばれるという亀山さんの例えのとおり、幸せはささやかなものの中にあるというのが、この日の到達点でした。
小笠原さんは、全体を通してバランスや中庸を重んじる東洋的な感覚が見えたと振り返り、「東洋哲学をもう少しやりましょう」と収録を締めくくりました。
まとめ
AIで人の仕事が減る時代を前に、経営者たちは哲学を「自分と向き合うこと」として語りました。ドーパミンに偏らない心身の健康、どう死ぬかから考える生き方、時間をかけて育てる愛、そして振り回されない程度のお金という視点から、幸福は特別なものより、ありふれた日々の中にあるという結論が浮かび上がります。
- AIで空く時間を、ローマ市民のように議論や哲学に使う人が増えるという見立てが語られた
- 寺田さんは、幸せのホルモンはセロトニン、オキシトシン、ドーパミンの順に大事だと説いた
- 亀山さんは、どう死ぬかを考え、沈黙や孤独から逃げずに自分と向き合うことを勧めた
- 川邊さんは、自分なりの真善美を意志を持って言えることに生まれてきた意味があると語った
- お金持ちは幸せかという問いには、バランス、使い方、そして月並みな中庸という答えが返った





