17兆円で「IPの棚」ごと持ち主が変わった
『パラマウント』による『ワーナー・ブラザース・ディスカバリー』の買収が完了しました。総額は1100億ドル、日本円で約17兆円規模です。
10月6日にすべての規制の承認が下りてクロージングし、新会社が発足しました。この金額には、正直「すごい」としか言えません。
ゲーム業界とどう関係するかというと、ワーナー・ブラザースは『ホグワーツ・レガシー』のハリー・ポッター、『バットマン:アーカム』シリーズ、『モータルコンバット』といったIPの棚を持っていたんです。
その領域が、今年の6月にできたパラマウント側のゲームスタジオと統合される形になります。世界的に見てもすごく大きいIPなので、持ち主が変わったことで何か変わるかもしれないな、と思っています。
少し前には、サウジの政府系ファンドが『EA』を550億ドル、約8兆円で買ったという話もありました。こちらは、社債を持つ投資家たちが額面の101%での返済を求めていて、EA側は拒否している、というやりとりが出ているようです。
このサイズだと、決まる前にすべてを洗い出すのは無理だと思うんですよね。まだどうなるかわからないので、引き続きウォッチしていきたいです。
先週、ゲームは年2%くらいで成熟しながら成長していく産業だ、という予測の話をしました。それなら、IPをゼロから当てるより、実績のあるIPの出口を探すほうが合理的です。
ただ、ひとつのIPだけを買うのは難しい。だから最終形として、IPを生み出している棚ごと持ち主を変えてしまう動きが、ゲームの近い市場でも急に増えてきたなと感じています。
ゲームは、買う価値のある棚として、かなり大きな評価を受ける時代になった。それがこのニュースへの僕の所感です。
エースコンバットの国内6.3万本と世界100万本
エースコンバットの最新作の数字も出てきました。『ファミ通』の週販では、国内初動6万3000本で1位です。
6万本は売れたなと思う一方で、前作『エースコンバット7』のPS4版は初週20万本でした。パッケージだけ見ると、シリーズが失速しているように見えるかもしれません。
でも実は、発売から1週間で全世界100万本を売っていて、これはシリーズ史上最速なんです。『Steam』の同時接続も5万人を超えています。
僕がいま見られているのはファミ通のパッケージの数字くらいなのですが、日本のSteamや海外のデジタルでの売れ方が、スピード感のあるものになってきたんじゃないかと思います。
国内の初動が前作の3分の1、4分の1くらいだったことを、日本の売り上げが落ちていると見るか、パッケージの売れ方が変わったと見るか。僕は後者かなと思っています。
みんなデジタルでの購入に移行してきているので、初動が悪かったねと思う必要はないんじゃないか、という評価です。
この流れは、日本のIPにとってチャンスにもなっています。『日本ファルコム』は今期2度目の上方修正で、営業利益28億円、前期比2倍くらいになっています。
主な理由は、9月に世界同時発売した空の軌跡 ザ・セカンドが好評で、世界累計1000万本を突破したことだそうです。
昔は、パッケージをどうやってその国に運ぶか、流通のルートや棚をどう取るかがめちゃくちゃ大変で、海外で売るのは難しかったんです。
デジタルで世界中に売れるようになったいま、ファンのいる自社IPをグローバルに展開することは、日本のゲーム会社の勝ち筋として、まだまだやれそうな部分があるのかなと思いました。
AIキャラクターの値崩れと、ディズニーの一手
AIのキャラクターと会話できるサービス『Character.AI』が、破産申請をしました。
2023年には評価額10億ドルと言われたユニコーン企業で、翌年にはGoogleとの契約で20億ドルから25億ドルくらいの評価があると言われていた会社です。
要因は複合的ですが、ChatGPTのような汎用AIでもキャラ的な会話ができるようになって、専業サービスの優位が解けたこと。それから、無料ユーザーが多いほどサーバー代で赤字が膨らむ構造もあります。
もうひとつがIPの権利問題です。IPホルダーからすると、著作権侵害のリスクの塊のように見えるカテゴリなんですよね。
そこに手を挙げたのが、まさかの『ディズニー』でした。提示額は2000万ドル、ざっくり30億円くらいで、これはアプリ本体ではなくIPライセンスへの提示額です。
覚えていたのですが、ディズニーは1年くらい前に、Character.AIに著作権侵害の警告書を送っているんです。その相手のライセンスを買おうとしているわけで、この1年でディズニー自身のAIへの向き合い方にも、たぶんアップデートがあったんだろうと思います。
うまくハマるかも、ディールとして成立するかもわかりません。ただ、技術が共通化してくると、価値は結局IPに戻る。IPを持つ会社が新しい技術の会社を取りにいく動きは、結構おもろいなと思いました。
僕自身もAIでキャラやインフルエンサーを試しに作っているのですが、キャラは無限に量産できる一方で、愛着や可愛らしさをどう生み出すかは難しいと感じています。この後どう動くか、見ていきたいです。
なぜ毎週ニュースをまとめているのか
業界のニュースを横断的に知るのは、意外と難しいんです。キュレーションされたり、自分の好みのものしか出てこなかったりして、僕自身も知識の網羅性を担保しにくいと感じています。
だから自分でまとめて、話しながら意見を言う。日本でeスポーツで上場した会社の代表として、配信やマーケティング、コミュニティの仕事を実業で持っている僕の感想が、何かの気づきになればいいなと思って続けています。
気づけば3ヶ月くらい連続でやれていて、やらないと気持ち悪くなってきました。ちょっと筋トレっぽいですね。
まだ決まったフォーマットがあるほど成熟したものではないので、いろいろ実験しながらやっていきます。面白いなと思ったら、友達に教えたり、YouTubeのチャンネル登録をしたりしてもらえるとありがたいです。まずは登録者2000人を目指しています。
じゃあまた来週お会いしましょう。それでは。
まとめ
大型買収、デジタルでの売れ方の変化、AIキャラの値崩れを見ていると、僕にはどれも「IPの価値」が中心にあるように見えました。
- ワーナー・ブラザース・ディスカバリー買収は、ハリー・ポッターやバットマンなどのIPの棚ごと持ち主が変わる出来事
- エースコンバット最新作は国内初動6万3000本でも世界では100万本と最速で、購入がデジタルへ移っていると見ています
- デジタル流通で、日本ファルコムのように自社IPを世界に届ける勝ち筋が広がっています
- Character.AIの破産とディズニーの提示から、技術が共通化すると価値はIPに戻ると感じました


