タクシードライバーは実際いくら稼げるのか
今回のテーマは「タクシードライバーの年収」です。よどさんが特に気になるというお金の話を、現役ドライバーのたかさんに聞いていきます。
まずは「実際どれくらい稼げているのか」という素朴な問いから。たかさんの答えは、一言ではまとめきれないものでした。
これ、でもぶっちゃけすごい人によるんですよ。完全に歩合制なので。
タクシーの給料は歩合制で、個人の力量や、休憩を削ってどこまで働くかによって変わってきます。ただし、たかさんには一つ確信があるようです。
多分皆さんがイメージしてるよりかは稼げているっていうのが現状じゃないかなって思いますね。
歩合制の仕組みと「歩率」の大手・中小の違い
歩合制について、もう少し具体的に踏み込みます。何が歩合の対象になるのでしょうか。
たかさんの会社では、お客さんを乗せて得たタクシー運賃のうち、何パーセントかが運転手の給料になります。この割合が給料の大元です。
ただし対象になるのは、消費税を抜いた分です。1000円の料金なら100円は消費税で、会社のものでも運転手のものでもありません。
例えば1000円の料金だったとすると、100円が消費税として、国に納めるものになるんですね。
残った900円のうち、半分以上、50パーセント以上が運転手に入るのがほとんどだといいます。この割合を「歩率」と呼びます。
この歩率には、大手と中小で明確な傾向があります。大手ほど歩率が低く、中小ほど高いという設定です。
じゃあ中小の方が働いた分儲かるってこと?
そうです。売り上げに対してたくさんもらえるのは中小のタクシー会社です。
迎車料金や予約料金といった別途料金も、たかさんの会社では運賃と同じ扱いです。消費税を抜いた分に歩率をかけ、残りが会社の利益や固定費になります。
歩率は低め。新型車両の定期的な入れ替えなど固定費が高く、その分は会社の働きやすさに回される。法人契約やタクシーチケットが太い
歩率は高め。売上に対して運転手の取り分が大きく、個人の技量で稼ぎやすい
大手ほど歩率が低い理由は、新型車両を定期的に入れ替えるなど固定費が大きいためだとたかさんは見ています。歩率を抑え、会社の働きやすさに回すという考え方です。
もう一つの理由が、大手ほど法人契約が太いことです。大手でしか使えない後払い式のタクシーチケットなどがあり、残業や接待の送りで利用されます。
そのため、自分のスキルがなくても稼ぎやすいのが大手、完全に個人の技量で稼ぐのが中小という違いがあるとたかさんは整理します。
1回の乗務で19〜20時間? タクシーの働き方
続いて勤務時間の話です。歩合制で人によって差が出るなか、そもそも1日どれくらい働いているのでしょうか。
タクシーにも国が定める労働時間の基準があり、働き方は大まかに3つに分かれます。朝から夕方までの日勤、夜から明け方までの夜勤、そして夕方から翌朝までの隔日勤務です。
たかさんが働くのは3つ目のシフトで、勤務時間は1回あたり19時間から20時間ほどになります。
めっちゃ長ない? それ。
そう、めっちゃ長いんですよ。「20時間も働くんですか?」ってよくお客さんにも聞かれるんですけども。
この働き方では、朝まで働いたらその日は帰宅し、次の勤務は翌日の夕方からになります。1回が長い分、出勤回数は一般的な人より減る仕組みです。
朝まで働いたら、もうその日は家に帰って、仕事は何もないっていう感じです。
あまさんは、拘束が長すぎるのではと確認します。一般的な会社は1日8時間労働に休憩1時間で拘束9時間が基本です。
だとしても長くない?
だとしても長いですよ。でも休憩時間がありまして、一応法律上は2時間取んなきゃいけないっていうルールになってるんですね。
1回は長いものの出勤回数が減るため、そこまで苦ではないとたかさんは話します。同じ時間に働くことで、生活リズムが崩れにくいのも本人にとっては利点のようです。
そもそも「足切り」とは何か
この回でよどさんが特に知りたかったのが「足切り」という言葉です。読み方すら分からなかったといいます。
正直、俺も何なのか全く意味が分かってなくて。「足切り」って読むの? これ。
たかさんの認識では、足切りとは会社の赤字と黒字のボーダーラインです。売上があまりに低いと会社が経営できなくなる、その最低限のラインを指します。
注意したいのは、これがノルマとは違う点です。国の決まりで、会社は「売上いくらまで帰るな」といったノルマを定めてはいけないことになっています。
「今日はお前は売上何万円やるまで帰ってくんな」とかっていうのは、一応定めちゃいけないんですけども。
そのため会社は、目標値という形で各ドライバーに自主的に目標を持たせて働かせます。足切りはあくまで、経営が赤字か黒字かの最低ラインという位置づけです。
足切りは個人単位ではなく会社単位で、毎年10月ごろの最低賃金の改定に合わせて金額も変わります。たかさんの場合、1回の乗務でおよそ4万円だといいます。
足切りに満たない人は、どんな働き方をしているのか
1乗務4万円という足切りラインは高いのか安いのか。たかさんの感覚では、安い部類に入ります。
安いと思いますよ。足切りに落ちたことって自分はないので。よっぽどサボらなければ超えるような金額なんですよ。
とはいえ、実際に足切りを切ってしまう人もいます。その違いは働き方に表れるとたかさんは説明します。
たとえば同じ駅でずっと客待ちをし、1時間に1回自分の番が来て、そのたびに800円や900円の短距離客しか乗せられない場合です。
夕方から朝までの仕事をしたとして、単純計算で900円掛ける15で、もう全然2万もいかなくなっちゃうんですよ。
こうした働き方だと足切りに満たず、会社から「もう少し売上を上げよう」と促されることになります。ただし、そういう人は全体では多くないそうです。
会社としても、足切りに満たない人への教育はあまりやりたくない作業です。会社によっては、足切りを超えると歩率が上がる仕組みでやる気を引き出すところもあるといいます。
「雨の日は稼げるでしょ」に、内心は苦笑い
お客さんが乗る乗らないは運転手にはコントロールできません。それでも稼げる日とそうでない日には違いがあります。
たかさんの夕方から翌朝までの勤務では、金曜日の夜が一番売上が上がるといいます。人がたくさん乗る時間帯を多くカバーする働き方が稼ぎやすいからです。
では雨の日はどうか。よどさんが素人目に「上がるのでは」と尋ねると、答えはイエスでした。ただし、たかさん個人はあまり好きではないといいます。
雨の日って、短い距離を移動するお客さんが多くって、疲れちゃうんですよね。
濡れたガラスで視界が悪く、夜は対向車のライトが濡れた路面に反射してギラギラする。目も疲れるため、たかさんにとって雨は歓迎しづらい天候です。
売上が上がる仕組みは、空車と実車の比率にあります。お客さんを乗せていない状態が空車、乗せている状態が実車です。
雨の日は空車の比率が下がり、タクシーが遊んでいる時間が減ります。そのため売上は上がる、という仕組みです。
ただしたかさんの願望は別にあります。晴れた日に、4000円や5000円くらいの中距離客をコンスタントに乗せられるほうが、理想的だといいます。
個人的には雨が好きじゃないっていう結論です。
だからこそ、雨の日に「めちゃくちゃ稼げるでしょ」と話しかけられると、内心では苦笑いしているのが本音のようです。
「雨だとさ、もうめちゃくちゃ稼げるでしょ?」とかって言われたら、「いやー、あんまりそこまで稼げないんだよな」って内心苦笑いしてます。
タクシー運転手の年収は平均より上か下か
話は年収そのものへ移ります。あまさんは全国の年代別平均を提示しました。20代がおよそ350万、30代が410万、40代が450万ほどという数字です。
この平均に対して、タクシー運転手の業種はどのあたりに位置するのか。たかさんの答えは明快でした。
タクシー運転手の業種でいうと、割と全業種の中では上の方、平均を上回ってる方でして。
背景には、20代の若者がタクシー会社に流入する人数が増えているという状況があります。ブルーカラーの職種としては、その流入が上位に入るというネットニュースも紹介されました。
もう一つの要因が運賃改定です。運賃の引き上げ分がしっかり給料に反映され、歩率が上がるなどしているといいます。
昔ながらのタクシー運転手は暇そうにしていて、駅で待ってる間スポーツ新聞を読んでて、客が来たら乗せてみたいな働き方は結構減ってきてるので。
なお、この「平均より上」は東京の水準の話です。たかさん自身も30代で、会社の平均より上ではあるものの、決してトップではないと話しています。
会社でいちばん稼ぐ人は何が違うのか
では、たかさんの会社でトップを走る人はどんな働き方をしているのでしょうか。
トップの人は、法律で決まった働ける時間を最大限使い、休憩もお客さんがいない閑散時間を狙って取ります。寝ずに働き、客を降ろしたら数分以内に次を乗せる。実車の時間が圧倒的に長いのが特徴です。
その差は乗車回数に表れます。たかさんの19〜20時間の勤務での平均が20回台なのに対し、トッププレイヤーは50回以上を乗せるといいます。
それは稼いでるっていうか、それは当然だわ。
この知り合いの年収は、なんと8桁を超えているそうです。
そんな知り合いは年収がですね、8桁を超えてます。
自分のペースで乗せたい派。1乗務の乗車回数は20回台。ガツガツ働くより自分のリズムを優先する
働ける時間を最大限活用。閑散時間に休憩を取り、寝ずに働き、降ろしたら数分以内に次を乗せる。乗車回数は50回以上
ただしたかさんは、そこを目指したいとは思っていません。もう少し自分のペースで乗せたいという考えが、トップを目指さない理由だといいます。
一方で、頑張った分がきちんと報われる仕組みでもあります。頑張り次第では8桁も夢ではなく、実際にそういう人がいるという事実は、これから目指す人にとって希望になりそうです。
未経験・ペーパードライバーでも稼げるのか
最後に、ペーパードライバー同然のよどさんのような未経験者が入った場合、どれくらい稼げるのかを聞きます。
たかさんによれば、ペーパードライバーやバス出身などの経歴は関係なく、年収1000万を超えるまで化ける人もいれば、平均に収まる人もいます。分かれ目はどこにあるのでしょうか。
運転手がコントロールできないのはお客さんの行き先です。だからこそ、目的地に着いた後にいかに早く次の客を乗せられるかが、収入を上げる大事なキーになります。
目的地に着いた後にいかに次のお客さんを早く乗せられるかっていうのが、収入が上がるとても大事なキーなんですね。
そのノウハウは未経験だと最初はありません。降ろしてから数分以内に次を乗せる、といった目標を立てて仕事に馴染んでいけば、少しずつそこに近づけるといいます。
ここでたかさんは、もう一つの側面に触れます。タクシーには運転が荒い人が多く、稼ぐことと運転の質の関係にモヤモヤがあるようです。
次の繁華街へ向かおうと考えるうちに、直前にウィンカーを出して急に割り込む。そうした「荒い運転」で年収が高くなることに、たかさんは解せない部分があると話します。
そういった運転をしながら年収が高くなるっていうのは、どうもちょっと解せない部分があるんですよ。
たかさん自身は、ウィンカーを出す前にミラーを確認し、巻き込みを確認してから車線変更や右左折をするスタイルです。当たり前のことができて、やっと売上を上げられると考えています。
ただ、その丁寧な運転はものすごく神経を使うため、トッププレイヤーほど集中力が持たないのが実情だといいます。
あまさんは、たかさんの挙げた確認は教習所で習う運転の基礎であり、事故をしない一番の秘訣だと受け止めます。それを忘れて自分流で運転してしまう人が多い、というのがたかさんの実感です。
一概に「じゃあぜひトッププレイヤーになってください」とは僕はちょっと言えないのがリアルな実論になります。
まとめ
タクシーの給料は歩合制で、消費税を抜いた運賃の半分以上が運転手に入るのが基本です。歩率は大手ほど低く中小ほど高く、足切りは会社の最低売上ラインを指します。頑張り次第で年収8桁も可能な一方、たかさんは安全運転を前提に自分のペースで働く姿勢を大切にしていました。
- 給料は歩合制で、消費税を抜いた運賃の50パーセント以上が運転手の取り分になるのが一般的
- 歩率は大手ほど低く中小ほど高い。大手は固定費や法人契約、中小は個人の技量で稼ぎやすい
- 足切りは個人ノルマではなく、会社が赤字にならない最低売上ライン。たかさんの場合1乗務で約4万円
- 雨の日は空車が減って売上は上がるが、短距離客が多く疲れるため本人はあまり好きではない
- 乗せていない空車の時間を減らし、実車を増やせる人ほど稼ぐ。頑張れば年収8桁も実在する







