若者の3割超が「結婚するつもりはない」という調査
今回のエピソードは、前回の独立支援型採用の話の続きから始まります。飲食店の担い手が減っていくのではという流れを受けて、土田さんが収録前に1本のニュース記事を持ち込みました。
その記事は、結婚に対する価値観の変化を伝えるものでした。土田さんは、8月末に公表された大規模調査の数字を紹介します。
8月末に(こども)家庭庁が公表した大規模調査で、15歳から39歳の未婚者のなんと35.1%が結婚するつもりはないと。
土田さんは、この数字を「もっと柔らかい感じで、そもそもする気がない」という層が3割を超えていることに驚いたと話します。
結婚しない理由も具体的です。40%が安定した結婚生活を送れるほどの収入がないこと、34.4%が自由な時間や趣味の時間が減ることを挙げていました。
これを見て、あ、そうなんだと。そういう価値観なんだなっていうふうにはちょっと思ってしまって。
八木さんの率直な感想も、土田さんと同じでした。今の世代の価値観を前提に、いろいろなことを組み立て直さないと難しい、と感じたといいます。
「結婚したいけどできない」と「そもそもしたくない」は違う
土田さんは、この調査の数字だけでは読み取りきれない部分があるとも話します。結婚したいけどできない人と、そもそも結婚したいと思わない人は、やはり違うのではないかというのです。
結婚したいけどできないっていう人と、そもそも結婚したいと思わない人ってやっぱ違うんだろうなっていう気はするんですね。
結婚したいけどできない人が、破れかぶれになって「する気がない」と答えている可能性もあり、今回の調査だけでは何とも言えない、と土田さんは慎重に付け加えます。
八木さんが注目したのは、自由な時間や趣味の時間が減ることを理由に挙げる人が34%ほどいる点でした。土田さんも、時間に対する価値観そのものが変わってきているのだろうと応じます。
自由な時間が減るのは、本当に悪いことか
八木さんは、自由な時間が減ることについて、それ自体は決して悪いことではないと考えていると話します。時間には限りがあるからこそ、その使い方を考える楽しさがある、という見方です。
限られた時間の中で、インプットの時間をどう捻出するか。妻や子供たちにどれだけ時間を割けるか。持っているリソースをどう分配するかを考えること自体に、面白さがあるといいます。
仮に全部(自由時間を)与えられても困ると思うんですよね。
もう暇ってなりますけど。
八木さんは、制約があるからこそできる経験もあると続けます。子供がいなければ連れて行かない場所、結婚する前だからこそ相手に喜んでほしくて調べたお店。制約が行動の幅を広げている、という実感です。
八木さんは、この価値観を仕事に置き換えて考えてみたと話します。今の世代からは、自分の守備範囲の中だけで仕事をしていきたいという感じを受けるというのです。
仕事には「セルフブラック」も必要という考え方
八木さんは、仕事にはある種の負荷が必要だと考えています。ホワイトすぎる環境ではなく、ある程度自分に負荷をかけて限界を突破していかないと、成長は超えられないという見方です。
仕事ってある種ちょっとセルフブラックも必要じゃないですか。
八木さんはこの感覚を、ドラゴンボールに例えます。死にかけることで戦闘能力が上がっていくように、負荷をかけることで力がついていく、というイメージです。
すべてをセーフティーゾーンにしてしまうのは違うのではないか、と八木さんは話します。ただし、その価値観すらも今は違うと言われればそうかもしれない、とも付け加えます。
「任せてくれる上司」と「丸投げする上司」は表裏一体
八木さんは、以前土田さんと話した「最高の上司と最低の上司」の話を持ち出します。最高の上司には「頼りがいがある」「任せてくれる」というワードが並び、最低の上司には「責任を押し付けられる」「丸投げされる」というワードが並びます。
ここで八木さんが指摘するのは、「任せてくれる」と「丸投げ」は、実は表裏一体だということです。
この任せてくれると丸投げが何が違うかっていう。もう表裏一体なんですよ。
八木さんによれば、両者の違いは、人がその会社や上司をどう思うかだけの話だといいます。同じ行為でも、受け取る側の見方次第で、良い上司にも悪い上司にもなるという指摘です。
結婚も仕事も、ちゃんと伝えないと悪いイメージだけが残る
八木さんがここで言いたかったのは、結婚も仕事も、その良さをちゃんと伝えないといけないということでした。
結婚にはいい面も悪い面もあるけれど、自分はそれがいいと思っている、と伝える。そうすれば、価値観が近い人の中に「結婚もいいな」と思う人が一定数出てくるのではないか、という考えです。
一方で、解像度の荒い情報だけを並べたらどうなるか。結婚で価値観がずれた、といったマイナス面ばかりを聞かされれば、誰もいいイメージを持てない、と八木さんは話します。
本当にそれおっしゃる通りやと思いますね。
「したくない理由」のほうが具体的というギャップ
ただし土田さんは、ここに難しさがあるとも指摘します。結婚して得られるもの、した方がいい理由は、具体的に言いづらいというのです。
結婚して得られるものとか、その良さっていうのは、でも具体的に言いづらくないですか。
結婚の良さは「幸せだよ」「子供がいるからやりがいがある」といった抽象的な言葉になりがちです。一方で、したくない理由のほうは収入や時間など、より具体的に並べられます。八木さんも、そのギャップはあると同意します。
土田さんは、極論すれば結婚しなくても生きていける、と話します。老後の問題は置いておくとして、する理由を見つけられないのではないか、というのです。
モチベーションが高くなくても生きていける時代
土田さんは、この話を仕事に振り返します。今は、仕事に高いモチベーションを持たなくても生きていける時代なのではないか、という見立てです。
その根拠として、土田さんは最低賃金の上昇を挙げます。すでに1000円を超えており、数年後には1500円に届く可能性もあると話します。
土田さんは具体的に計算してみせます。時給1000円で1日8時間、月に実働20日ほど働けば、税金を置いておくとしても16万円ほどの収入になる、という試算です。
借金もなくて、家賃もそこそこのとこであれば生きてけるな。
つまり、仕事をしなければならない明確な理由が持ちにくく、しなくてもやっていけるという理由付けのほうが大きく感じる人が多いのではないか、と土田さんは話します。
そして土田さんは、結婚観と仕事観がどこかで通じていると整理します。八木さんも、なんとなく似ている気がすると応じました。
仕事も結婚も、人生を豊かにするもの
八木さんは、もし自分が「結婚や仕事の良さは何か」と聞かれたら、抽象的だが「仕事も結婚も、自分の人生を豊かにするもの」だと答えると話します。
では人生を豊かにするとはどういうことか。八木さんは、その軸が自分の中にあることだと説明します。
たとえば、貯金をたくさん持っていても幸せを感じられない人と、お金はそこそこでもとても幸せだと感じている人がいたとき、自分を幸せだと言える人には勝てない、という考え方です。
その価値観をどう高めていくかといえば、日々生きていくこと自体が学びだと八木さんは話します。ここで八木さんは2つの言葉を引きます。
1つは、松下幸之助 ── パナソニック(旧・松下電器)の創業者。数多くの経営哲学を残し、「経営の神様」と呼ばれる実業家ですさんの「会社は道場、修行の場」という格言です。
もう1つは、講演で知られる斎藤一人 ── 事業家・著述家として知られる人物。この番組では、結婚も修行だという趣旨の発言をした例として紹介されていますさんが語る「結婚自体も修行なんだよ」という言葉でした。八木さんは、やはりそういうものなのかもしれない、と話します。
価値観が違うからで終わらせない
土田さんは、若い世代の価値観の変化は現実の問題だと受け止めています。自分たちからすると「おいおい」と思うところもあるけれど、その価値観とうまく付き合っていかないといけない、という姿勢です。
八木さんも、価値観が違うからで話を終わらせてはいけない、と応じます。それでは乱暴になってしまう、というのです。
だからこそ、その価値観を前提に、採用も、入ってからの育成も、どう組み立てていくかがとても大事になる、と八木さんは話します。人の心の部分を扱う以上、機械のようにはいかず、大変だという点で2人の見方は一致します。
八木さんは、自分としてはむしろ入社してからのほうが大変だと考えていると話します。多くの会社が入り口ばかりに力を入れているが、本当に大事なのはその後ではないか、という問題意識です。
みんな入り口ばっかり一生懸命やってるけど、やっぱ大事なのはその後じゃないですか。
八木さんは、この「入ってからの部分」を次回さらに深掘りしたいと話し、今回はここで区切られました。
まとめ
結婚も仕事も「しなくても生きていける時代」の価値観を出発点に、それを否定せず前提として受け止め、採用と育成をどう組み立てるかを考える回でした。良さを具体的に伝えることの難しさと大切さが、2人の共通認識として浮かび上がります。
- 15〜39歳の未婚者の35.1%が「結婚するつもりはない」という調査が、話の出発点になった
- 結婚しない理由は収入(40%)や自由時間の減少(34.4%)など具体的で、逆に「する良さ」は抽象的になりやすい
- 八木さんは、自由時間が減ること自体は悪くなく、制約があるからこそ得られる経験があると考える
- 「任せてくれる」と「丸投げ」は表裏一体で、結婚も仕事も良さをちゃんと伝えないと悪いイメージだけが残る
- 価値観が違うで終わらせず、それを前提に採用と入社後の育成をどう組み立てるかが鍵になる




