なぜボドゲ回でセルフブランディングを語るのか
この回は、ボードゲームの制作論や考察からは少し離れた、ビジネス寄りの内容として進みます。テーマは「AI時代のブランディング」です。
Manaさんがこのテーマを選んだ背景には、ボードゲーム作家の働き方があります。ボードゲーム作りを専業でやっている人はそこまで多くなく、多くは別の仕事で生活しながら、その傍らで制作していると話しています。
皆さん日中は何かしら、生活をするための生業といったお仕事をされていて、その傍らボードゲームを作っている、そういった人たちが多いんじゃないのかなと思っています。
そのうえで、ボードゲーム作りのために発信してきた考察が、普段の日常の仕事にも重要な気づきになるポイントが多いと感じたのが、今回の出発点だと説明しています。
ブランディングというと企業のものと思われがちですが、この回で扱うのはセルフブランディング、つまり個人自身のブランディングです。それが今後とても必要になると話しています。
AIが変えた「情報の民主化」と「スキルの汎用化」
なぜ今セルフブランディングが必要なのか。その理由としてManaさんが挙げるのが、AIの進化による時代の変化です。
AIの登場で仕事を失うのではないかと考える職種の人もいれば、実際に会社でAIが使われるようになってきた人もいます。とくにパソコンを使うホワイトカラーの仕事で、AIによる代替が語られていると整理しています。
さらにAIは、チャットで相談に答えるだけの存在から、ファイル操作などの実作業までこなす段階へ進んでいると話します。相談役から秘書のような役割に近づいているという見立てです。
Manaさんは、AIで変わったことを大きく2つに整理します。1つが「情報の民主化」、もう1つが「スキルの汎用化」です。
これまで物知りや詳しい人が重宝されたが、AIに聞けば何でもわかるため、知っていること自体の価値が薄れる
エクセルや資料作りなどの技能も、AIに読み込ませれば誰でも高精度なものを作れるようになる
情報の民主化について、Manaさんはこう説明します。以前は経験や知識の蓄積が多い人がその地位を保てていました。しかし今は状況が変わったと話します。
ちょっと前であればググればわかるといったレベルから、ググらずとも聞けばすぐわかるっていうような状態になっています。
この変化は、世の中一般の情報にとどまりません。社内のプロジェクト事例や「何がどこにあるか」といった、経験年数の長い人に集約されがちな情報も対象になると指摘します。
社内で使うクローズなAIにナレッジを読み込ませれば、新入社員でもその情報を引き出せるようになります。「そんなことも知らないのかよ」と言われる世界がなくなっていくという見立てです。
スキルについても同じことが起きると話します。エクセル職人や資料作りが得意といった技能も、AIにスキルとして読み込ませれば、すぐに精度の高いものが作れてしまうためです。
これまで個人が経験で培った独自のノウハウも、会社の意向でAIに読み込ませていくと、それがフォーマットとして汎用化されていきます。新人でもAIに頼めば、先人のアウトプットに近いものをすぐ作れるようになると説明しています。
AIに使われないための「目利き力」
情報もスキルも民主化・汎用化されると、「その人じゃなきゃいけない」というアイデンティティが薄まっていきます。そこで重要になるのがセルフブランディングだとManaさんは話します。
巷のセルフブランディングは、自分の強みを明確にしようとか、どれだけギブできるか、先生の立場になれるかで語られがちです。しかしManaさんは、それさえもこれからは危ういと考えています。
代わりにManaさんが重要だとするのが「目利き力」です。情報もスキルも民主化・汎用化されると、いつでも引き出せる選択肢が無限大に広がるためだと説明します。
これまで人間は、自分の経験の中から限られた数の選択肢を導き出し、その中で実行してきました。AIの登場で、これまで経験したことのなかったものまで選択肢に入ってくるようになったと話します。
セレクトショップと商社に学ぶ「選ぶ価値」
目利き力のイメージとして、Manaさんはセレクトショップを例に挙げます。街中の小さなおしゃれな店舗で、その店でしか買えないわけではない商品を扱う業態です。
買おうと思ったら別のお店でも買えるものを、特定のテーマだったり、店長さんの目利き、趣味趣向といったもので集めているわけです。
だからその店に行けば、店長やバイヤーのセンスで選ばれた、自分の好みに合うものに出会えます。商品そのものの価値というより、どうセグメントし、どうテーマ性をつけて選ぶかに価値があるという見方です。
これは「誰から買うのか」が重要という考え方にも近いとManaさんは言います。民主化された情報をどう読み解くか、どのスキルを採用するかといった目利きは、AIにはできない人間の領域だと話します。
AIは最適解や無限の選択肢を出すのが得意です。しかし、それをぶち抜いて「自分だったらこうだ」と選ぶ力は人間のものだと整理します。
それができないんだったら、もうAIに使われているだけだと思いますね。
Manaさんは、AIを優秀な部下に例えます。優秀な部下がたくさんいても、その言いなりで仕事が進むのではなく、どれを採用しコントロールするかが問われるという考え方です。
同じ構図として商社も挙げます。海外から輸入したり独占権を得たりしつつ、結局は世の中にある商品やサービスを選んで扱えるようにする仕事だという説明です。情報やスキルの商社として自分がどうやっていくかが、他の人との違いになると話します。
AIに置き換えられる中間層の危うさ
目利きやコントロールができないと、企業の中でも生き残るのは難しいとManaさんは指摘します。言われたことや作業をするだけなら、AIで十分だからです。
これまで部下から質問を受けていた人も、質問されなくなっていくと話します。AIに聞けばわかり、好きな時にサクッとできて便利だからです。
その結果、知識や経験に頼ってきた中間層や少し上の層は、AIの登場で職を失う可能性があると見ています。
中間層は新人よりも人件費が高いため、AIに置き換えられるなら新人だけで回すほうが安く効率的だという理屈です。「今更AIってなんなの」と言っている人は危ういと話しています。
選ぶ目を磨き、伝えてフォローする
AIネイティブな世代にとって、価値はAIに作業をさせること自体ではなく、AIを使ってその中で何をチョイスするかという目や感覚を磨くところにあるとManaさんは言います。
いいものを見抜く目を養うには、いろんないいものを実際に見ていく必要があります。何がいいか悪いかがわからないと、チョイスもカテゴライズもできないためです。
自分が正しいと思えるものは何かを見つめ直して選び、それを言語化できたら、それがセルフブランディングになっていくと整理します。
さらにManaさんは、AIを使った後にどうするかも重要だと話します。セレクトショップや商社と同じく、どこかで手に入るものを扱うだけでは仕事にならないからです。付加価値として、次の要素を挙げています。
- 無数の選択肢から選ぶ、商品や情報の目利き
- なぜそれを選び、どこが素晴らしいのかを解説し伝える力
- 使った後のアフターフォローやサポート
伝える力について、AIが「これは素晴らしい」と言うだけでは、人ごとに最適な伝え方はまだ難しいと話します。だからこそ、自分がなぜこれを選び、どこが素晴らしいのかを解説できる力が重要だという考えです。
アフターフォローについては、AIの作業は細切れな情報や作業の連なりで、アウトプットまで行くと一旦途切れてしまうと指摘します。その後までフォローできるかどうかが差別化になると話しています。
兼業で頑張る人へ、不安の中で考えること
今回はボードゲーム制作から離れた内容でしたが、Manaさんは兼業でボードゲームを作る人に向けたメッセージだと位置づけています。制作の資金は日常の仕事から捻出することがほとんどで、生活が守られないと制作活動も難しいからです。
Manaさん自身も、まだAIをうまく使いこなせていない部分があり、この先どうなるかという不安も抱えていると率直に話します。
その中でどう生き残っていこうかな、自分なら何ができるんだろうっていうところをしっかり考えていくと、それがブランディングにつながっていく気がする。
自分なら何ができるかを考えることが、「私じゃなきゃダメ」という市場的な価値につながっていく。それがこの回のメッセージです。
最後にManaさんは、今後もビジネス的な視点の回をちょいちょい入れていきたいと話します。ボードゲームの話だけ聞きたい人のために、冒頭で「今日はビジネスの話が多め」と伝えるようにするとも添えています。
まとめ
AIによって情報は民主化され、スキルは汎用化されていきます。知っていることや作業ができること自体の価値が薄れる中で、Manaさんは、無数の選択肢から自分の感性で選ぶ「目利き力」と、それを言語化するセルフブランディングが、兼業作家を含む個人の生き残りに必要だと語りました。
- AIで情報の民主化とスキルの汎用化が進み、「知っている」「作業ができる」だけでは価値が薄れていく
- 無数の選択肢から自分の感性で選ぶ「目利き力」は、最適解を出すAIにはできない人間の領域
- セレクトショップや商社のように、選ぶ・伝える・フォローするという付加価値が差別化になる
- 知識や経験に頼ってきた中間層は、人件費の面からもAIに置き換えられる危うさがある
- 「自分なら何ができるか」を考えて言語化することが、セルフブランディングと市場価値につながる






