なぜ車内でタイトルコール?授賞式へ向かう2人の緊張
厚利少売ラジオのこの回は、第6回JAPAN PODCAST AWARDSの贈賞式に向かう車の中から始まります。いつものタイトルコールも車内で行われ、川原さんは「恥ずかしい」と照れながら、移動しながらの初めての収録であることを伝えます。
普段と音の入り方だったり、声の感じも違うと思うんですけども、ぜひ臨場感を一緒にね、味わってもらえたらと思って今回(収録)しております。
すがけんさんは、授賞式の当日に合わせてニューヨークから帰国したばかりでした。帰国便を何日か早めて押さえ、授賞式の案内が届く前から、この日をカレンダーに入れていたといいます。
取れるかどうかわかんないけれども、呼ばれるかどうかもわかんなかったけれども、もうこの応募した時点では取る気でね、ちゃんとカレンダーに入れてましたね。
すがけんさんはこの行動を、番組で何度も話してきた未来の予定を自ら作るという考え方そのものだと振り返ります。ただ川原さんは、いざ当日になると、取れるかわからないまま向かうのはやはりソワソワすると話しています。
話題は川原さんの授賞式経験にも及びます。川原さんはプロデューサーとしてエミー賞の授賞式に出たことがありますが、それはあくまで妻である近藤麻理恵さんが主役の場でした。
プロデューサーとしては取ってますけど。なので実は人生初と言ってもいい。
すがけんさんも、YouTubeに出ることはあっても、番組の「演者」として評価される立場はほとんど経験がないといいます。2人は厚利少売ラジオを「ダブル主演」と呼び、慣れない立場にふわふわした気分を隠しません。
2人がZoomで話すようになってから、およそ5年がたちます。その雑談を「収録したほうがいいんじゃない?」と形にしたのが厚利少売ラジオでした。
すがけんさんは、番組を始めてまだ半年なのに1年の賞を決める場に呼ばれたことを冗談にします。「1年も経ってないのに、もらえると思って応募すんなと怒られるかもしれない」と話し、川原さんも「職員室と一緒なの?」と乗って、車内は笑いに包まれます。
今回だけ15分で終わったりして。みんな察するわけですよ。
普段は45分ほど話す番組が短く終わったら、受賞しなかったと察してほしい、という前振りも入ります。2人は会場や式の後でも収録を続け、その日の熱量をVLOG形式で届けると予告しました。
評価される側を避けてきた2人が、なぜ応募したのか
車内の雑談の途中で、すがけんさんは「正直に言うと避けてきたところもない?」と切り出します。演者になった瞬間に評価される側に回ることが、2人にとってはかなり怖いことだったといいます。
でもそれって僕らの特徴じゃない?なんか評価されたくないというか、同じラインに並びたくなくて。
川原さんは、2人とも「ずらしずらしして生きてきた」のに、今回は列のど真ん中に並んでいると笑います。それでも今回は応募してみたいと思えたことを、2人は不思議がります。
すがけんさんが挙げた理由は、リスナーの温かさでした。欠かさず配信を続け、多くの人に聴いてもらえている番組が、たくさんのポッドキャストの中でどう見えるのかに興味があったといいます。
演者というより企画としてどうなんだろうね、これは。で、応募しちゃいましたよね。
川原さんも、厚利少売というテーマやコンセプトを世の中に投げたらどう受け止められるのか、という純粋な疑問が大きかったと応じます。
2人は授賞式を「M-1みたい」と例えつつ、違いにも気づきます。漫才師は本番の一発勝負で披露しますが、ポッドキャストはすでに提出を終えていて、当日は出すものが何もありません。
一発勝負のあそこでやる漫才師は皆さんやっぱすごいね。吐くね。
話は、講演会やイベントとポッドキャストの違いにも広がります。2人の整理では、イベントは目の届く範囲の場ですが、ポッドキャストは自分がコントロールできない場所へ記録として出ていくものです。
演者のつもりではなく、喋る役割として出る。目の届く範囲で完結する
コントロールできない場所に記録として出る。一方で、知ってくれている人に狭く深く届く
すがけんさんは、一生懸命にはやるが無責任にやっている、という塩梅だからこそ続けられると話します。川原さんも「公共の」と言い始めたら震えてしまうと同意します。
まるで知らない人のお便りとか来ないじゃないですか。やっぱり知ってくれてるからね。
ラジオのように、たまたまチャンネルを合わせて聴く人とは違う。すがけんさんは、知ってくれている人に届くことをポッドキャストの良さだと話しました。そうするうちに、車は会場の有楽町マリオンに到着します。
「厚利少売ラジオです」。受賞の瞬間に語られた言葉
贈賞式では、プレゼンターの伊藤あささんが企画賞最優秀賞の受賞作を発表します。呼ばれたのは厚利少売ラジオでした。
やったー。
壇上のコメントでは、番組の成り立ちが語られました。もともとは書籍『厚利少売』のプロモーションとして、著者とプロデューサーで始めた番組だったといいます。
やってみると面白すぎて、なんか本が売れるとかあんまり関係なく、結局週に2回とか週に1回とかずっと繰り返しながら、ずっと続けてこれたのがとても嬉しいなと思います。
視聴者さんといっぱい関係をね、作れたのがいいなと思って、ポッドキャスト最高だなと思いました。
続くコメントでは、番組そのものを楽しくすることに加えて、厚利少売という考え方を多くの人に知ってもらいたいという思いが語られます。ビジネスがより良くなり、稼げる企業や人が増えてほしいという願いを込めて、受賞を機にさらに多くの人に聴いてほしいと結ばれました。
マーケティングの話なのに面白い。審査員の言葉は何を評価したのか
式を終えた2人は、受賞の位置づけを確かめ合います。すがけんさんによれば、全体の大賞のほかに企画賞とパーソナリティ賞にそれぞれ最優秀賞と優秀賞があるため、企画賞最優秀賞は「2番目か3番目」にあたります。
確かに。だから表彰台です、僕ら。
受賞の感想は、2人とも素直な「嬉しい」でした。川原さんは斜に構えられないほど喜び、写真には両手を上げた姿が残っています。
してやったりという、狙ってやりました顔でやんなきゃいけないのに、ほんといいの?イエーイ。
2人が特に嬉しかったのは、審査員のコメントです。すがけんさんの説明では、審査員はノミネートされた20の番組をすべて聴いており、「マーケティングやビジネスの話はちょっと」という先入観で聴き始めたのに、とても好きになったと話してくれたといいます。
すがけんさんは、この評価こそ番組が狙ってきたことだと受け止めます。マーケティングやお金の話なのにわかりやすく、面白い。嫌な感じじゃなく伝えたいという思いが、企画として評価されたと感じたそうです。
いかに本を分かりやすく書くかから始まり、いかにポッドキャストを身近に分かりやすく、嫌な感じじゃなく伝えたいっていう思いそのものがちゃんと評価されたなっていう喜び。
川原さんはこの評価に、これまでの取り組みが報われた気持ちと、こうしたリスナーをもっと増やせる可能性の両方を感じたと話します。
ニッポン放送のプロデューサーからは、アメリカのポッドキャストと比べても「やり方が完璧」で、冒頭が短くすぐ本題に入ると褒められたといいます。2人は「編集でバッサリいかれてるのでは」と照れつつ、ありがたさを口にしました。
リスナーの方への変化量にめちゃくちゃフォーカスして作ってるのはそうだから、そういう意味でそこが届いてるの嬉しいですね。
会場に並んだ20組の番組の熱量にも、2人は刺激を受けます。アンガールズの田中さんの話に笑いながらも、すがけんさんは、ふざけている人は1人もおらず、真剣な人たちの中で評価してもらえたことが嬉しかったと語ります。
川原さんは、受賞の嬉しさの大きさから、自分たちがこの番組にどれだけ思い入れを持って真剣に取り組んでいたかに逆に気づいたといいます。
すがけんさんは、厚利少売ラジオを「視聴者参加型番組」だと表現します。審査員が評価した点は、リスナーからの質問に答え、わかりやすく話そうとしてきたことの積み上げだったという見方です。
リスナーが質問を送る
本気の相談や質問が番組に届く
2人がわかりやすく答える
リスナーの役に立つことを考えて話す
番組が面白くなる
質問への回答の積み上げが番組の形になる
企画として評価される
わかりやすさと面白さが審査員に届く
式の後には、ノミネートされた他の番組の出演者からも「聴いています」と声をかけられたそうです。川原さんは、プロも聴いていると知って「襟を正そう」と思った一方で、楽しんでもらえていると直接聞けた嬉しさも語りました。
「パパかっこいい」。子どもたちの動画が届けた別次元の喜び
川原さんにとって今回の受賞は、個人的にも特別な意味を持っていました。エミー賞の授賞式では妻が主役で、川原さん自身はプロデューサー、サポーターという立場でした。
受賞いただいたので、実は僕の人生にとっては初出役として認めてもらったので。なんかね、喜びもやっぱちょっと違う喜びでした。
さらに川原さんを揺さぶったのは、授賞式の後に届いた妻からのLINEでした。そこには、配信で発表を見ていた子どもたちの様子を撮った動画が添えられていました。
企画賞最優秀賞、厚利少売ラジオってなった時に、子供たちがやったー!って。えーすごい!パパかっこいい!って言ってる動画を撮って送ってきてくれてて。
川原さんによると、子どもたちは普段、収録中の父親を「ずっと笑っているだけで、仕事ではなく楽しんでいる」と見ていて、文句を言うこともあったそうです。今回、世の中から評価される様子を見せられたことで、子どもたちの受け止め方が変わりました。
ずっと笑っているだけで、遊んでいるように見える
世の中に評価されているのを見て、「パパかっこいい」と喜ぶ
皆さんのおかげで取らせてもらって、かっこいいパパって言ってもらえたっていうのは、なんかもう一生の思いですね。
すがけんさんはこの出来事を「勲章だね」と表現します。川原さん自身も、想定していなかった角度から喜びが入ってきたと振り返っています。
受賞の先に何をする?特別版の書籍とコラボへの意欲
リスナーへの感謝を込めた受賞記念企画として、書籍『厚利少売』に特別音源を付けた自社販売が告知されました。販売は匠舎房で行われます。
付けられる音源は、10月10日前後に行われた出版記念イベントの模様です。すがけんさんが照れくさそうに登場し、途中で「まさかのあの人」も登場したイベントだといいます。
2人はこの収録の時点で、受賞を受けた取材の待機中でもありました。すがけんさんは、厚利少売ラジオの配信は週1回なので、リアルタイムの情報はXやInstagramで2人をフォローしてほしいと呼びかけます。
すがけんさんは、受賞によって聴き手が広がる実感も嬉しかったと話します。厚利少売ラジオのリスナーが他の19組の良い番組を知り、逆に他の番組のリスナーが厚利少売ラジオを知るきっかけにもなります。
また本をね、読んで、ラジオを聴いて実践をする。で、まあ豊かになっていくというか、豊かになっていく人たちが増えるのがなんかすごく嬉しいなと思いました。
川原さんは、他の番組の話を聞いて、まだまだできることがあると感じたといいます。すがけんさんも、「生まれ変わらないと無理」と思うほどおしゃれな番組もあったと笑います。
当日は、ノミネートされた20組に加え、Amazon Music、Spotify、ニッポン放送などとも話す機会があったそうです。すがけんさんは「コラボしましょう」と多くの人と話したことを明かし、今後のコラボ企画を楽しみにしてほしいと伝えました。
最後に川原さんは、より一層パワーアップした厚利少売ラジオを届けていきたいと締めくくり、収録の終わり際には「ああ、嬉しい」と漏らしています。
まとめ
厚利少売ラジオの2人は、演者として評価される立場を避けてきた自分たちが、あえて企画として番組を世に問い、企画賞最優秀賞を受けました。審査員の言葉、会場の声、子どもたちの動画を通して、リスナーと共に作ってきた番組の意味を確かめた1日だったといえそうです。
- すがけんさんは授賞式の日を応募時点でカレンダーに入れており、「未来の予定を自ら作る」を実践していた
- 2人は演者として評価されることを避けてきたが、厚利少売というコンセプトが世の中でどう受け止められるかに興味があって応募した
- 「ビジネスやマーケティングの話なのにわかりやすく面白い」という評価は、2人が狙ってきたことそのものだった
- 番組はリスナーの質問に答える積み上げででき、2人は「みんなと共に紡ぎ合ってきたもの」と受け止めている
- 川原さんにとっては初めて出演者として認められた受賞で、子どもたちの「パパかっこいい」が特別な喜びになった






