本と番組で、周りの反応はどう変わった?
この回から、二人の番組は長尺で、より雑談らしい形での配信に切り替わりました。前回は書籍『厚利少売』の出版イベントの公開収録を届けており、番組はスタートから3ヶ月を迎えています。
川原さんはまず、すがけんさんに「厚利少売 ── 利益を厚く取り、少数の顧客に高い価値を売るという考え方。薄利多売の反対の発想で、すがけんさんの著書のタイトルにもなっています」というコンセプトを言語化したことで何が変わったかを尋ねます。
すがけんさんによると、普段のアドバイスは施策ごとに断片的に伝えることが多かったものの、本を出してからは土台となる思想から伝える機会が増えたといいます。相手が本を読んだうえで相談に来るため、話が楽になったとも話しています。
もちろんね、それ(本)を読んだからってできないっていう方も多いんですけど。とはいえ、知ってはくれていて、それをベースに僕にアドバイスを求めたり、相談をすることが増えてきたような気がしますね。
川原さんも、声をかけられるときの言葉が変わったと感じています。以前は「Xを見ています」「インスタをフォローしています」だったのが、最近は「ポッドキャストを聴いています」と言われるようになったそうです。
ポッドキャストを聞いてくれてるって、より近い距離に感じるのはありますね。
すがけんさんも、ポッドキャストを聴いていると言われると「そこまで聞いてくれているのか」と感じるといいます。XやInstagramに比べればまだマイナーな番組を初期から聴いてくれている人の存在は、二人にとって特別なものだと話されています。
XやInstagramとPodcastは何が違うのか
すがけんさんは、ポッドキャストでなければ厚利少売は伝わらないのではないかと考えています。Xは140文字を数十秒で読み、Instagramのストーリーは数秒で流れてしまう一方で、ポッドキャストは10分、20分、人によっては1時間を毎日聴いてくれるからです。
すがけんさんは、自分の仕事をマッサージにたとえて説明します。腰が痛いと言われても、実は肩やふくらはぎをほぐさないと治らないことがあるように、痛い部分と治す部分は違うことが多いというのです。
誰かの話を聞きながら、その人がどこで詰まってて、もしくはどんな考え違いをしてるかみたいなのも含めて知ることで、何とお伝えすればそれがほぐれるかななんですよね。
すがけんさんによると、この姿勢は上場企業の社長が相手でも個人が相手でも変わりません。そのうえで、XとInstagramは「こちらからの発信」にとどまり、ポッドキャストは個別にはほぐせない代わりに全身をほぐせる長さがあると整理しています。
こちらからの発信で、数十秒から数秒で流れる。断片的にしか伝えられず、影響が相手次第になる
個別の悩みは聞けないが、10分〜1時間と長く聴かれる。全身マッサージのように全体をほぐせる
川原さんは、忙しく単価の高い二人が週に1回、90分を使って知恵を詰め込み続けている場所だとして、この番組の付加価値の高さを語ります。すがけんさんは、3ヶ月を機に長尺など新しい形も試し、リスナーの反応を見たいと話しました。
好かれるより、僕は別に直したいんで。
VIPディナーで起きた「事件」とは
すがけんさんの「好かれるより直したい」という言葉を受けて、川原さんは出版イベント後のVIPディナーで見た光景を「事件」と呼んで振り返ります。VIPチケットの購入者8人を含む10人が同席し、一人ひとりがすがけんさんと壁打ちをする場でした。
川原さんが普段開くVIPディナーは、川原さんと楽しく過ごすことを目的に来る人が多く、求められる変化量が違うといいます。一方でこの日の参加者は、すがけんさんと具体的な変化を作って帰ることを目的にしていました。
一人が15分の時間内で自分がクリアにしたい質問をし、スガケンさんがそれに真剣に向き合うっていうのを、残りの7人が見守るみたいな。リアルドキュメンタリーを見ながら飯食うっていうすごい場だったんですよ。
真剣な人同士のぶつかり合いで、涙を流す参加者もいたそうです。川原さんは、その時のすがけんさんは「大体嫌な感じ」で、自分がどう見られるかを完全に置いていると表現しました。
僕の感覚としては、多分僕があの場で一番真剣だった可能性もあります。
すがけんさんは、参加者はアドバイザーにはならなくても、お金をもらって価値を返すという点では自分と同じことを顧客にしていると話します。だからこそ、どれくらい本気で向き合うかを見せることに意味があると考えています。
個別具体のアドバイスなんていうのは、そのうち役に立たなくなるし、場合によっては間違っちゃってることもあるだろうけど、そこの真剣さみたいなのは後でも思い返せるだろうし。
相談者が圧に負けて「わかりました」と引こうとしても、すがけんさんは「まだだ」と食い下がったといいます。川原さんはその様子を、首根っこをもう一度つかみ直すようだったと語りました。
だってもったいないじゃん。20何万円も払ってんのにさ。
すがけんさんが相手を絶対に信じる理由
川原さんは、すがけんさんと話していて特徴的だと感じる点として、相手をリスペクトし、賢い人だと信じていることを挙げます。すがけんさんはこれを聞いて「つらい」と反応し、その理由を語り始めました。
僕はやっぱ諦めたくないんですよね。別にその人がバカだからできないとかって死んでも思いたくない。
すがけんさんは、地方にいる人だから、女性だから、若いからといった、その人がこれまで思われてきたであろう決めつけを一切したくないといいます。そのぶん厳しく見えるのかもしれない、とも話しています。
川原さんは、相手を信じる姿勢は、すがけんさん自身が自分に対して思い続けてきたことの裏返しではないかと指摘しました。すがけんさんは、若い頃から「できないだろう」と言われたり思われたりするのが悔しくてしょうがなかったと振り返ります。
少なくてもお金を払ってここに来てくれたり、仕事としてやってくれたりする人じゃないですか。やっぱ信じなかったらバカにするようなことになっちゃうんで。
川原さんとすがけんさん、向き合い方はどう違う?
すがけんさんの話を聞きながら、川原さんは自分はそこまで思っていないと気づいたといいます。川原さんの根底には「なるようになる」という感覚があり、流れが来れば人は勝手に良くなり、来ていないときに力んでもあまり変わらないと考えてきました。
すがけんさんもその考えはその通りだとしたうえで、バックグラウンドが違うのでどちらも正解であり、自分はそうなってしまうだけだと話します。川原さんは、近くで過ごすうちにすがけんさんの生き方が羨ましくなってきたと明かしました。
しんどいですよ。(周りから)人もいなくなりますし。
川原さんが具体例として挙げたのが、イベントの責任者を務めたKさんです。川原さんは2年弱一緒に仕事をしてきましたが、原宿のカフェですがけんさんと話した10分間が、Kさんの今後の人生を確実に変えたと感じたといいます。
俺、2年間この人にちゃんと向き合えてなかったんだなって自己評価したわけ。
すがけんさんによると、イベントは当初オンライン参加がほとんど集まっていませんでしたが、その10分のあとから大きく変わっていったそうです。川原さんはこの出来事をきっかけに、自分の関わり方を変え始めました。
待っていればいつかたどり着くと、ただ見ている時間が多かった
中途半端な議論になりそうなら刺して、本来行くべきところに質問を投げる。相手のゆとりの部分を減らす
すがけんさんは違いの背景として、川原さんはプロジェクトの主体者であり、自分はプロジェクトがうまくいかないときに頼まれる側だと指摘します。そもそも変化させることが主な仕事なので、コミットしているものが違うというのです。
僕はやっぱ、とてもじゃないけど、僕と会うからお金を払ってくれるって思う人が一人もいるとは思ってないから。
すがけんさんは、自分を嫌いになってもいいから、仕事を嫌いにならないでほしい、人生を諦めないでほしいという思いが根底にあると語ります。変わった人の総和が自分の起こした変化量であり、それが自分の価値だと考えています。
変化量の「質」と「距離感」で見ると
川原さんは、話を聞きながら「変化量の質」と「距離感」という2軸の図を思い浮かべたといいます。すがけんさんは講演などで多くの人に知られる距離感がありながら、起こす変化としては、最も変わりたい人に深くコミットするタイプだという整理です。
すがけんさんが20代マーケピザ ── すがけんさんが主催する、20代のマーケターがピザを囲みながら悩みを相談する集まり。参加者は600人にのぼりますを始めたのも、同じ考えからでした。何百人の前で話してもテーマがドンピシャな人は数人しかいないため、3時間かけて10人全員が変わるやり方のほうがコスパがいいと考えたそうです。
というか、変えれない。それ以外で変える方法を知らない。
川原さんはここで、近藤麻理恵さんをすがけんさんと真逆の例として挙げます。麻理恵さんは世界規模で影響を与えられる一方、本人が家に行って直接変えることはなく、メソッドを通じて各地で人生を変える人が生まれる「発散的な変化」だといいます。川原さんは自分をその中間に置き、両者をつなぐプロデューサー的な立ち位置だと話しました。
| 人物 | 変化の作り方 | 特徴 |
|---|---|---|
| すがけん | 目の前の人に直接深く関わる | 超パーソナルトレーナー、名医のよう |
| 川原卓巳 | 両方の中間でつなぐ | プロデューサー的 |
| 近藤麻理恵 | メソッドを通じて世界に広げる | 発散的、本人発の直接の関与は少ない |
すがけんさん自身も、マーケティングや経営では全体に影響を及ぼす仕事をしています。ただ、企業に具体的にインストールしたり個人を支援したりする場面では、「これを読めばできる」という方法がないため、超パーソナルトレーナーのように関わるといいます。
さらにすがけんさんは、ボランティアで教えた相手に、覚えたら他の人に教えてほしいと伝えているそうです。うまくいった人を数珠つなぎに増やしていくことが理想だと話しています。
なぜ「稼ぐ」に主軸を置かないのか
川原さんは以前から疑問だったこととして、能力のあるすがけんさんがなぜ稼ぐことだけにシフトせず、労働を一定に抑え、残りの時間をおいしいものやボランティアに回すバランスにたどり着いたのかを尋ねました。
いや、もうお金いらなくないですか?
すがけんさんには、そもそもお金持ちになりたい願望があまりなく、困らないくらい稼げていればいいと考えています。足るを知るような感覚がベースにあるのだろうと話しています。
その感覚がはっきりしたのは35歳の頃でした。会社を売却して何億円かが入ったとき、65歳まで働くとして割ってみると、年収1000万円が横ばいで続くのと同じだとわかり、すがけんさんはそのお金を全部使ってしまったといいます。
その後、すがけんさんは買収してよかったと思ってもらうために事業を作り、3年で240億円ほどのビジネスに育てました。自分に入るお金ではなくても「できた」という実感で満たされ、困ったらまたやればいいと思えるようになったそうです。
すがけんさんが美学として挙げたのが、井上陽水 ── 日本のシンガーソングライター。1970年代から数多くのヒット曲を持ち、独特の存在感で知られますさんのエピソードです。ヒットを連発し、あまり働かなくなった後に新曲を出してテレビに出た際、「そろそろお金がなくなったんで、また書きました」と話していたといいます。
何百億稼いでヘリに乗って登場する人よりも、僕は(そっちが)好きに見えちゃったから。
すがけんさんは、困ってもいないのにお金ばかり稼いで一番大事な時間を捨てるのはもったいないと話しています。
昔の自分たちに届けたい「ビジネス旅行」
川原さんは、二人をあえて雑に括ると、地方出身で裕福だったわけでもなく、学歴やキャリアでも勝ち組ではなかったと話します。すがけんさんは1社目にコネで入り、最終の社長面接では緊張して一言も発せずに受かったというエピソードを明かしました。
当時は二人とも成功したいと思っていましたが、ある程度うまくいった今、目指す人生はお金のような測れる指標では必ずしもなかったと川原さんは振り返ります。すがけんさんも、井上陽水さんのエピソードを見たのは当時のことで、その頃から根っこにあったのではないかと話しました。
すがけんさんは、自分たちの世代の当たり前は上昇志向だったが、今働き始めた人の当たり前は必ずしもそうではないと指摘します。厚利少売の本を書くために調べる中で、日本は世界から見てまだ安い国だとわかり、「本当にこれでいいの?」とも感じたそうです。
このラジオが昔の僕らみたいな人に届いて、あ、そういう世界線とか、そういう見え方する場所があるんだっていうのを届けられたらいいなと思ってるんですよね。
すがけんさんはこれを「越境の良さ」と表現し、YouTubeの旅行番組のように聴いてもらってもいいと話しました。「スペインってこうなんだ」と知るように、「厚利少売ってこうなんだ」と伝わることがヒントになればいいという考えです。
あの緊張感を、一生味わわない人もいる?
VIPディナーの話に戻り、川原さんは、すがけんさんを遠くから見ている人に一度は至近距離で見てほしいと語ります。トップでやっている人の熱量を知れば変わると考えているからです。
人によっては、あのレベルの緊張感を死ぬまでに一度も味わわない可能性があるってこと?
川原さんが「もちろんです」と答えると、すがけんさんは驚き、悪いことをしたかもしれないと口にしました。川原さんは、あの場面は人生の走馬灯に出てくるほどの感情の場面かもしれないと話しています。
すがけんさんにとってあの緊張感は毎日のことで、川原さんは「スガケンさんの当たり前は相当世の中の当たり前とずれている」と伝えました。参加者は終わった後も満足しており、グループチャットでも交流が続いているそうです。
あんなに自分に真剣に向き合ってくれて、自分の至らなさから1ミリも目を背けられない15分間。最高。
すがけんさんが「60分あったら」と言うと、川原さんは「30分でも無理」と返します。コーナーに座り込んだボクサーに「まだ立てるだろ」と言っているようなものだったというたとえで、それだけやれば人の心のスイッチは入るという証明でもあったと話しました。
3ヶ月で印象に残ったコンテンツは?
台本が目の前にあったにもかかわらず、二人はここでようやく3ヶ月の振り返りに触れます。すがけんさんが印象に残っているのは、リスナーからのお悩みに答える回全般でした。
僕、役に立ってないと思うと、途端にちょっと自分が嫌になっちゃうっていうか、苦しくなっちゃうタイプなんで。
一方で、まだやっていない歴史や企業の解説のような「プチ役に立つ」コンテンツについて、すがけんさんはあまり好きではないと率直に話します。ただ、リスナーが好むなら声を上げてほしいとし、川原さんも厚利少売の概念に触れる人を最大化するためなら聞きたいものをやると応じました。
川原さんが好きだったのは、マーケティングという言葉についての回です。すがけんさんは、誤解の多い言葉で、聞く側と話す側で定義が違うことがあるため、使わなければ済むのに使って混乱しているのは変な話だと振り返ります。二人とも、横文字を多用していた時期があったと笑い合いました。
今後やりたいこと、リスナーに求める声
川原さんは、聴いてくれる人の声が届くことが何より嬉しいと話し、すがけんさんはもっとインタラクティブにやりたいと応じます。そこから話は、振り返りではなく企画会議のような流れになっていきました。
二人の口から出たアイデアは、生電話でリスナーとつなぐこと、Zoomを回しながらチャット欄で人がいる感を出すこと、出張Xスペースで収録すること、YouTubeライブでコメントを見ながら話すことなどです。Xスペースは音質に課題があるとしつつ、どちらも試してみようという話になりました。
市場に対して、顧客に対して、僕らは素直なので、求められる形にいかようにでも変わっていきます。
最後に川原さんは、JAPAN PODCAST AWARDS ── 「今、絶対に聴くべきポッドキャスト」を選ぶアワード。一次選考はリスナーによる一般投票で決まりますへの投票を呼びかけました。締め切りは2025年1月10日までで、大賞を狙っていると話しています。
エンディングで二人は「全然振り返らなかった」と笑い合いました。すがけんさんは、台本よりも話したいことを話すのがいいと締めくくり、役に立ったかどうかはリスナーが決めることなので感想がほしいと呼びかけています。
まとめ
3ヶ月の振り返り回のはずが、すがけんさんの「相手を絶対に信じて、本気で変える」姿勢と、川原さんとの向き合い方の違いが浮かび上がる回になりました。お金より美学を選ぶ生き方や、昔の自分たちのような人に新しい景色を届けたいという番組への思いも語られています。
- ポッドキャストは長く聴かれる分、SNSより深く伝わり、リスナーとの距離も近く感じられる
- すがけんさんは好かれることより相手を変えることを選び、相手は必ずできるという前提で向き合う
- 川原さんはすがけんさんの関わり方に刺激を受け、待つだけの姿勢から踏み込む姿勢へ変え始めた
- すがけんさんは足るを知る感覚を持ち、井上陽水さんのような生き方を手本にしている
- 今後はライブ配信などリスナー参加型の形も試す予定で、二人は感想や要望の声を求めている

