手ぶらで収録に来るすがけんさん、その「地力」とは?
厚利少売ラジオの第38回は、いつもと違う配信アプリで収録されたため、冒頭からすがけんさんのペースが崩れていました。台本が見えないまま自己紹介をしたすがけんさんは、「企業の10倍成長のためのアドバイザー」で合っていたか一瞬わからなくなり、笑ってごまかしたと明かします。
だからあの140キロの球いつも受けてたのに、なんか150ぐらい出てるみたいな。
川原さんは、番組が開催している「厚利少売プロデュースオーディション」を通じてリスナーとの交流が増え、実際にビジネスが厚利少売に変わったという声を多く目にしていると話します。すがけんさんも、役に立っている実感が一番うれしいと応じました。
川原さんがリスナーに知ってほしいこととして挙げたのは、すがけんさんが収録に手ぶらで来るという事実です。事前の情報も相談もないまま、いつもの水準の内容が出てくるといいます。
あの1時間30万円の経営相談も何のアジェンダも言われないんで、もう慣れちゃってるんですよ、そっちに。準備するとちゃんとやんなきゃってなっちゃうから。
川原さんはこれを、その場で考えて構築し、答えまでたどり着く「地力」だと表現しています。
地方からの応募が多かったオーディションが示す危機感
この回のテーマは「田舎だから、業界相場はこうだからは思い込み。環境を理由に値上げできない壁の壊し方」です。きっかけは、オーディションに予想以上に遠方からの応募が多かったことでした。
すがけんさんは、大げさに言えば応募者の大半が地方、さらに大げさに言えば過疎地域だったと振り返ります。川原さんは、そうした人たちこそ厚利少売に取り組まなければ事業を続けられないという危機感を持っているのだろうと受け止めました。
川原さん自身も、人口7000人ほどの島の出身です。目に見える人たちはそれほどお金を持っておらず、少しでも値段を上げればいろいろ言われる。そうした田舎の感覚をリアルに知っているからこそ、「田舎でも厚利少売はできる」という話を、すがけんさんに改めて整理してほしいと投げかけます。
需要と供給、つまずくのは「私問題」?
すがけんさんの答えは、田舎でも厚利少売は当然できるというものです。そのうえで、商売の悩みは需要と供給の2つに分けられると整理しました。
値段を2倍にして、そんなに欲しい人がいるのか
値段を2倍にして、それを提供できる私はやりきれるのか
需要側について、すがけんさんがまず挙げたのはインバウンドです。日本は観光産業になるしかないと考えており、年間5000万人が訪れるパリのように、フランスを手本にして観光客をどう受け止めるかが課題だと話します。京都だけでは受け止めきれないため、リピーターも含めて日本各地に人が来るようになるといいます。
もう1つの需要の道はオンラインです。地方でもふるさと納税 ── 応援したい自治体に寄付をすると、税金の控除が受けられ、返礼品として地域の特産品などを受け取れる制度でうまくいっている人がいて、SNSも無料で使えるため、物をオンラインで売ることはできるとすがけんさんは話します。
ただ、インバウンドなら英語、オンラインならSNS投稿という「言語」が必要になり、結局は供給側の問題に戻ってきます。すがけんさんは、突き詰めると需要は頑張れば作れるもので、本当の壁は「供給できる私になれるか」という私問題だと指摘しました。
値上げの恐怖を消す「シャドーイング」とは
すがけんさんは、私問題への対処として英語学習と同じシャドーイング ── 音声を聞きながら、少し遅れて同じ内容を声に出してまねる語学の練習法。発音やリズムを体に覚えさせる効果があるとされていますを勧めます。番組で2人が話しているような会話を、自分でもまねして口に出してみるという方法です。
普段喋ってることを僕らが喋ってるような会話にシャドーイングで言ってみて、なんかそれを当たり前に喋れる私になってけばいいから。
素振りのようにシャドーイングを続けていくと、気づいたら2倍の値段を口にできていて、口にできているから結果として2倍の値段で仕事ができていた、という状態になるとすがけんさんは話します。
まねる
番組の会話を自分の言葉でシャドーイングする
当たり前になる
高い価格の話を自然に喋れる私になる
言える
気づいたら2倍の価格を口にできている
やれる
言えているから、結果として2倍でやれている
すがけんさんにとって、これは実はそれくらい簡単なことです。それ以上に大げさに考えると大変に感じてしまうので、気にせずやってみたらいい、というのが1つの回答だとしています。
人は環境の生き物、厚利少売が当たり前のコミュニティへ
川原さんは最近、人は環境の生き物だと強く感じているといいます。きっかけは、LINEヤフーの社長を務め、現在はベンチャーキャピタルを運営する小山さんの投稿でした。
小山さんは「20代に戻ったら何をすべきか」という問いに、スタートアップや意識の高い人が集まるコミュニティに身を置くことだと答え、ご自身もITが伸びていた時期にその環境にいたことが人生を変えたと書いていたそうです。川原さんは、厚利少売が当たり前のコミュニティに身を置けば、田舎かどうかに関係なく環境を選べるし、作れると考えました。
すがけんさんも小山さんの話に100%賛成だとし、自身も30代でそうしたコミュニティに移ったおかげで成功したと話します。川原さんも、シリコンバレーに渡ったことで環境を変えたのが大きかったと振り返りました。
すがけんさんは、厚利少売という環境を、薄利多売より成功する確率が高く、しかも成功したときのリターンが大きいものだと説明します。同じように200時間働いても、薄利多売では成功の確率が低く疲れるだけですが、厚利少売で200時間も働いたなら、それはもう大成功だといいます。
「何もない」日本の田舎はマサイ族の村と同じ?
川原さんがこの回で改めて伝えたかったのは、日本の田舎が世界的に見て稀有で恵まれた環境だということです。マレーシアやパリ、オランダを訪れた川原さんは、どこも素晴らしいとしながらも、日本が負けているものは何もないと感じたといいます。
川原さんは、旬の食べ物、景色、そこにいる人や文化といった日本の田舎の特殊性は、ひいき目抜きに一消費者として見ても価値が高いと話します。すがけんさんも、海外から来る人にとって日本の田舎は、日本人がカナダの田舎へスキーに行くようなものだと応じました。
すがけんさんはさらに、日本の田舎を訪れることを、マサイ族に会いに行くことにたとえます。首都に行っても面白くはなく、わざわざマサイ族に会いに行くのは、いまだに続く独特の暮らしを味わうためだという話です。
だから別にそこの首都に行ったって何にも面白くないんだけど、わざわざマサイ族に会いに行くのはそういうもののためだから。
川原さんも、日本人がアフリカのサファリを見に行くのと同じで、現地の人が「マジで何もない」と思っている場所に高い価値があると重ねます。すがけんさんは、何に光を当てるかの問題であり、ないということが、あるということなのだと続けました。
卑下して悲観的だと減点法で私は何にもないってなっちゃうけど、ないってことがあるってことなんだから、そこちゃんと見つけて光当てないとダメだよね。
AZMI瀬戸田が教えてくれた、故郷の島の価値
川原さんはここで、自身の原体験を語ります。川原さんが生まれたのは、広島県尾道市瀬戸田の生口島という人口7000人ほどの島です。育った当時は何もないと感じ、一秒でも早く都会へ出たいと思っていたといいます。
それから20年ほど経ち、アマン ── 世界各地で少人数向けの高級リゾートを展開するホテルブランド。自然や土地の文化を生かした滞在体験で知られていますの創業者エイドリアン・ゼッカさんがこの島を気に入り、旅館ブランド「AZMI」を立ち上げて「Azumi Setoda」を開業しました。
いや、待って待って、俺が嫌で何もないと思って、ある種離れてた場所に世界一の目を持つ人が来たら、ここすごいってなる場所だったんだ。
開業から3〜4年ほどで、生口島には明らかに海外からの訪問者が増え、島の雰囲気が大きく変わったと川原さんは話します。
育った当時の川原さんにとっては、何もなく早く出ていきたい島
世界的なホテル創業者が価値を見出し、海外から人が訪れる島
すがけんさんも実際に瀬戸田を訪れたとき、ノスタルジックな風景に「ええも(いいもの)」と言いながらスマホで撮り続け、なかなか前に進めなかったそうです。住んでいる人にとっては高層ビルもチェーン店もない田舎でも、都会に住む人にとっては「ありがとう田舎」なのだといいます。
都会に寄せるほど価値は消える?
すがけんさんは、お金のある人はすでに都会に住んでいるのだから、田舎はその反対を提供しなければならないと話します。都会に似せれば似せるほど、間違った方向に進んでしまうという指摘です。
そう、マサイ族にさ、バルミューダのトースターあったら終わりよ。
マサイ族の村でバルミューダ ── デザイン性の高い家電で知られる日本のメーカー。スチーム機能でパンを焼き上げるトースターが人気商品になりましたのトースターでパンをふかふかに焼いてもらったら、都会や自宅と同じになってしまいます。焚き火でパンを焦げるまで焼くことこそが、提供すべき体験価値だという話です。
あるってこととないってことが、ないのはゼロじゃなくて、ないってことがあるんですよ。
川原さんは「トンチみたい」と笑いながらも、これこそがこの回で一番伝えたいことだと強調します。サバンナに何もないから太陽が大きく見えるように、瀬戸田には水平線があり、波のない瀬戸内海が落ち着かせてくれ、時間がゆっくり感じられます。
時間という不変なものの速度さえ変えれる場所なんですよ、あそこ(瀬戸田)は。
タイムズスクエアは「田舎者の集まり」、弱みは強みになる
すがけんさんは、初めてニューヨークのタイムズスクエアを訪れたときの体験を語ります。おしゃれな街をイメージしていたすがけんさんが現地の友人に「ここがニューヨークなの?」と聞くと、「ここは田舎者の集まりだよ。泊まるのはダサい」と返されたそうです。
すがけんさんは、せっかく旅行しても観光客だらけの場所では、自分と同じ人が集まる環境を再現しているだけになると話します。ニューヨークならセントラルパークや地元の人が行く場所のように、特殊な場所に行かなければ体験にならないといいます。
地方の場合は「ない」という形でその特殊性が成り立っています。茅葺き屋根を建て替えたい、隙間風がスースーするという住民の悩みも、訪れる人にとっては味わいたいものです。
もう隙間風が最高なんすから。そういうのが味わいたくて行くんで。便利に快適になりたかったら家にいますから。
すがけんさんは、みんなが思っている弱みはきっと強みだとまとめます。住んでいる人にはわからない価値をセンサーを磨いて見つけ、「これはひょっとして価値だったのでは」と棚卸しすることが、田舎であるほど重要なプロセスだと話しました。川原さんも、行きにくいことさえブランドになり、あとは「行くべき理由」さえあればいいと重ねています。
同業者は敵ではない、サンセバスチャンに学ぶチーム戦
すがけんさんが需要と供給の次に挙げたのが、地域ぐるみの「チーム戦」です。同じエリアの人たちは敵ではなく、そのエリアまで人を連れてくるための仲間だといいます。
しかし田舎ほど隣の店を敵だと思い、取り合いになってしまうとすがけんさんは指摘します。そもそも人が来ていないのだから、まずはみんなを味方にして今の10倍の人に来てもらい、遠い場所なら2〜3日楽しめる場所を作る。競争するのはそのあとでいいという考え方です。
すがけんさんが好んで紹介するのが、スペインのサンセバスチャン ── スペイン北部バスク地方の海辺の都市。美食の街として知られ、ピンチョスと呼ばれる小皿料理を出すバルが集まっていますの例です。人口10万人ほどの都市ですが、ミシュランの星が一番多い場所と呼ばれているといいます。
レシピ公開
バルが奪い合うのではなく、みんなにレシピを公開した
切磋琢磨
同じ味にはならず、公開後にそれぞれがより美味しく工夫した
平均点の向上
街全体の料理がめちゃくちゃ美味しくなった
評価の拡大
ミシュランの星がどんどん増えていった
すがけんさんは、隠すのではなく仲間としてみんなで良くしていけば、海外の人や富裕層が来る場所になると話します。「あんなものも提供しなければ」と考えるのではなく、ないなりの良さを作って提供することが大切だといいます。
マサイ族喧嘩しないから。
別にみんなで絶対引っ張り合ってない。もうマサイに来てもらうことが一番重要なんだから。そう、そこで喧嘩してたら来ないもん、みんな。
結局は地域全体の平均点を上げ、快適に過ごせるようにサービスの質を高めて、来るお客さんを増やす戦略が一番だとすがけんさんはまとめました。川原さんは、本来は日本という国として手を取り合うべきときだと話を広げます。
わざわざ来る人に「コスパ」を売ってはいけない理由
すがけんさんは、安いから来てもらうのではなく、高くても満足できる国にしなければ日本は成り立たず、世界の中で貧しい国になってしまうと話します。川原さんも、実際には高いほうから予約が埋まっていくと補足しました。
すがけんさんによれば、日本は極東と呼ばれるほど遠い国で、ニューヨークから14時間、ヨーロッパから20時間かけてわざわざ来る場所です。そうした人たちは安いものを求めておらず、高くても日本に来てよかったと思わせてほしいと考えているといいます。
徒歩5分や車で20分の場所で、安いものを探しているかもしれない
20時間かけて来ているので良いものが欲しく、あと5時間かけて辺鄙な場所にも来てくれる
川原さんは、相手がすでに苦労してくれているから、田舎は価値を感じてもらいやすい状態にあると整理し、「合言葉はわざわざ」だと応じます。
そうじゃなくて、ようこそ来てくれました。せっかくだしいいもの出しますねって言ってあげてください。
すがけんさんは、わざわざ来た人は報われたいのだと話し、300円のうどんはいらないと念を押します。安い抹茶ではなく、いい場所でいい抹茶を飲みたいと思っているのだから、そこに応えることが大切だという話です。
川原さんは、田舎で聴いているリスナーに向けて、この放送を周りの人にもシェアし、みんなで手をつなぐきっかけにしてほしいと呼びかけました。2人とも、自分たちが体感していることだから信じてほしいと話しています。
すがけんさんのClaude×厚利少売ファイルと川原さんのYouTube刷新
お知らせコーナーで、すがけんさんは最近Claude ── アメリカのAnthropic社が開発した対話型AI。文章作成や分析のほか、指示に応じて作業を実行させる使い方もできますの使い方をまとめたnoteを書いたと紹介します。5万円の厚利少売のnoteを発売して3カ月ほどの売上を、同じく5万円のClaudeのnoteがわずか1カ月で抜いたそうです。
すがけんさんはこれを厚利少売を広めるチャンスと捉え、両方を購入した人に、すがけんさんのアドバイスに沿ってClaudeの中で厚利少売を実行できるMDファイルを配布しているといいます。川原さんは、すがけんさんをエージェントとして雇えるような使い方だと表現しました。
聞くたびに普通に聞くと薄利多売の答えしか返ってこないのが、僕みたいな厚利少売のアドバイスで返ってくるんで。
川原さんは、YouTubeチャンネルをよりおしゃれでチルな雰囲気にリブランディングしたと紹介しました。内容は引き続き、ビジネスをよりシンプルに自分らしくするプロデュースの秘訣だといいます。番組では概要欄のフォームでお悩み相談を受け付けているほか、SNSでの感想投稿や「#勝手に厚利少売オーディション」への参加も呼びかけられました。
まとめ
田舎や業界の相場は、厚利少売をあきらめる理由にはならないというのがこの回の結論です。需要はインバウンドやオンラインで作れ、本当の壁は「供給できる私」になれるかどうかで、それはシャドーイングのような練習と環境選びで越えられると語られました。そのうえで、地域にないものを価値として磨き、同業者と手を組んで、わざわざ来る人に良いものを届けることが勧められています。
- 値上げの悩みは需要と供給に分けられ、突き詰めると「供給できる私になれるか」という私問題になる
- 高い価格を口にする練習をシャドーイングのように続けると、自然と2倍の価格でやれるようになる
- 田舎の「何もない」は弱みではなく、都会に似せないことで価値になる
- 同じ地域の同業者は敵ではなく仲間で、サンセバスチャンのように平均点を上げて人を呼ぶ
- わざわざ来る客にコスパを売らず、「せっかくだしいいもの出しますね」と迎える

