温泉トークから始まる「ぬるま湯」の話
番組冒頭は、河原さんが金さんに「温泉好きですか?」と尋ねるところから始まります。
金さんが挙げたのは、埼玉の羽生にあるビジネスホテルのルートインでした。
結構僕、一人で作業合宿みたいなするの結構好きなんですけど。二、三日休みがあったら二泊三日とかで行く感じがよくあるんですけど。
そのルートインにはスーパー銭湯が直結していて、しかも温泉だといいます。
何がいいって、羽生まで行くと本当にあんまり人いないんですよね。結構ガラガラで。作業ずっと進んでっていう。
河原さんは、風呂好きのビジネスホテルとしてドーミーインの名前を挙げ、金さんも出張で最初に調べるのはドーミーインだと応じます。
ナビゲーターの木下さんは、静岡県東伊豆町の海沿いの温泉が推しだと話します。波の音が激しく、それが癒しになるといいます。
ひとしきり温泉談義が続いたあと、河原さんが本題へと切り替えます。今回のテーマは、組織の「ぬるま湯」についての相談です。
仲は良いのに議論が生まれない「ぬるま湯の安全性」
木下さんが読み上げた相談は、チームの雰囲気は悪くなく、メンバー同士の仲も良いというものでした。
ただし、成果に向けた厳しい議論や、仕事の進め方への踏み込んだフィードバックがなかなかできていないといいます。
こちらからお願いしたことはやってくれるのですが、自分から考えて提案したり、先回りして動いたりするスタッフが少なく、言われたことしかできないように見えてしまいます。
一方で、強く言い過ぎると空気が悪くなりそうで、どこまで踏み込んでいいのか迷っている、という悩みでした。相談者はこれを「ぬるま湯の安全性」と表現しています。
金さんは、これはよくある相談だと受け止めます。
「心理的安全性」っていうと、まず一言目で「安全性」って言葉が入っているので、ぬるま湯を作るんじゃないかみたいなことをよく言われたりするんですけれども。
言葉のまま「とにかく優しくすればいい」と受け取り、優しくしすぎてしまう職場はよくあると話されています。
成果は「共通言語」になっているか
金さんが最初に挙げたのは、成果がチームの中で共通言語化しているか、という点でした。
何をもって成果とするのか、そしてそれがチームの成果であると同時に、個人にとっても成果として語れる状態になっているかが大事だといいます。
河原さんは、多くの組織にはミッションや数値目標があると指摘します。ただ、それだけでは足りないのか、と問いかけます。
金さんは、額面上に置かれた言葉と、自分の言葉として語れる状態には、ギャップがあると答えます。
ミッションの字面通りじゃなくてもいいので、それに近しい言葉で「自分はこういうことを達成できれば、このチームの成果になると思います」ってことが、メンバー全員が言えてる状態なのか。
たとえば営業部門では、数字だけが成果として掲げられがちです。しかし数字だけを見ていても、自分の行動とどう結びつけるかがわからないと話されています。
イチローが打率をKPIにしなかった理由
自分の行動と目標を結びつける例として、金さんはイチロー選手のエピソードを挙げます。
イチロー選手は、自分のKPIに打率を置いたことがなく、KPIは安打数だったといいます。
打率をKPIにしてしまうと、四割を超えている時にフォアボールを選ぼうとしてしまう自分が出ちゃうと思ったらしいんですよ。
一方、安打数をKPIにしていれば、積極的にバットを振らない限り安打にはなりません。だからこそ、自分の行動が変わるような目標になっていたわけです。
金さんは、自分の行動が変化し得るような目標値として、チームの目標と自分の目標を紐付けられているかが、成果に向けた議論の前提になると話されています。
好成績のとき、記録を守るためにフォアボールを選びがちになる
積極的にバットを振らないと数字が伸びないため、行動が能動的になる
「自分で気づかせる」ための橋渡し
金さんは、この相談者を素敵だと評価します。望ましい行動がすでに明確に言語化されているからです。
「自分から考えて提案してほしい」「先回りして動いてほしい」という願いが出ているので、そうした行動が増えるにはどんな目標があればよいかを、一緒に考えてあげることが大事だといいます。
さらに金さんは、テクニックとして「本人に言わせる」ことの重要性を挙げます。
一緒に考える場を持ちながら、最後は自分が気づいていることを、できる限りメンバーに言わせるみたいなことがすごい大事だと思っていて。
人は自分が思いついたことや、自分が考えたと思えることには、強いコミットメントを発揮するからです。
答えを教え込む「ティーチング」になると、どうしても強く言いすぎる方向に傾きます。だからこそ、チーム全体のコミュニケーションの前に、まず一人ひとりの目標設定を手伝うことを勧めています。
議論のルールを決める「Disagree and commit」
金さんが次に挙げたのは、チームの中での共通のルールを明確にすることでした。
例として、Amazonのジェフ・ベゾスが語った「Disagree and commit」という言葉を紹介します。
反論を言い合うこと自体はすごく大事なんですけど、物事が決まった後には、自分に反論が正直あっても、その物事が決まったことにちゃんとコミットしなさい、っていうような文化らしいんですよね。
こうしたルールがあると、「今は言い合える時間だ」「今はちゃんと固めに行く時間だ」という共通認識がチーム内で取れてくると話されています。
河原さんは、何をやったら褒められ成果として認められるのかという定義に加えて、意見を受け止められる「場の設計」も重要だと受け止めます。
「チームのコンセプト」を言語化する
金さんが最近提唱しているのが、チーム自体のコンセプトをきちんと言語化することです。
たとえばスポーツを見ていると、「このチームはこういうことをやるチームだ」とわかる瞬間があります。
イチロー選手がいた頃のWBCなら、フォアボールでも一塁を狙うスモールベースボール。優勝したサッカーのスペイン代表なら、パスをつなぐスタイルといった具合です。
わかりやすく「こういう行動をとると褒められる、こういう行動はダメだ」と示されることが、チームのコンセプトとして大事だといいます。
推奨される行動をとった上で成果が出なくても、「ナイストライ」として扱う。逆にコンセプトと違う行動には、ギャップフィードバックをすべきだと話されています。
河原さんは、プロセスを見ることの大切さに触れ、金さんも同意します。トライを重ねれば、いずれ成果も出るはずだからです。
体育会系ではない、成果への向き合い方
河原さんは、金さんの話が意外だったと振り返ります。
成果を求める組織というと、「気合だ」「成果を上げろ」と体育会系的にビシッと迫るイメージがあったからです。実際のアプローチは、もっとマイルドで淡々としたものでした。
金さんは、これは業種にもよると補足します。個人の売上の総和がチームの成果になり、個人へのインセンティブが強く働く組織なら、基本的に個人戦になっていくといいます。
一方この相談者の場合は、メンバー同士が自分から考えて提案する状態を望んでいるため、チーム全体で成果を作る場所だろうと見立てます。
競技が全然違うんだったら、その競技のルールに合わせて、こういうチームが理想なんじゃないかっていうコンセプトを作るべきなんじゃないか。
河原さんは、コンセプトに合うかどうかでプロスポーツ選手の評価も変わると応じます。コンセプトを理解し、自分のできる行動に落とし込むことが、個人が成果にコミットする上で大事だとまとめました。
決めたことを「一貫して守る」難しさ
木下さんは、チームの共通言語やコンセプトをみんなで認識する大切さに加えて、それを一貫して言動一致させることの難しさを感じたと話します。
「自分から考えて提案してほしい」って仮にみんなで合意したとしても、待ちきれずに行っちゃうとか。「あと三時間待てば言ってくれたかもしれないけど」とか、その按配が難しかったりする。
河原さんが、この運用や維持の部分で何を意識すべきかを尋ねます。
金さんが挙げたのは、「なぜ」を一緒に伝えることでした。
「今はあなたの意見を待てないので、こちらの方でこういうふうに思ったので、これでいかがでしょうか」みたいに、ちゃんとその「なぜ」っていう部分の理由を一緒に伝える。
理由を伝え合えれば、お互いの理解につながり、チーム運営の中でギャップが徐々に解消していくと話されています。
ぬるま湯にしないための「愛ある厳しさ」
最後に金さんは、この相談内容を、心理的安全性を広めるなかで中間管理職がいつも悩むところだと振り返ります。
「心理的安全性は厳しくしちゃいけないんでしょ?」と受け取る人は少なくありません。しかし、あくまで成果のための組織づくりだといいます。
パワハラは絶対にダメだとしつつ、相手に対して愛がある厳しさはちゃんと持たなければならないと話されています。
ぬるま湯を作りたくてやってるわけじゃないんだよ、みたいなところに対しての共通理解を、チームにも持ってもらう。
河原さんは「ぬるま湯は組織じゃなくて、ルートインで満喫するのが一番かもしれない」と、冒頭の温泉トークに掛けて締めくくりました。
まとめ
ぬるま湯組織を成果に向き合えるチームへ変える鍵は、厳しく叱ることではなく、成果を行動へ翻訳し、チームで共通言語にすることだと話されました。目標・評価される行動・議論のルールを言語化すれば、心理的安全性を保ちながら自走するチームに近づけます。
- 成果はチーム全員が自分の言葉で語れる共通言語にする
- イチローの安打数のように、自分の行動が変わる目標にKPIを結びつける
- 答えを教え込むのではなく、本人に気づかせて言わせることでコミットメントが生まれる
- 「Disagree and commit」のように、議論する時間と決定に従う時間のルールを共有する
- 推奨行動をとれば「ナイストライ」と認め、パワハラではない愛ある厳しさを持つ




