褒められて「ニヤちょる」になる話から始まった導入
番組は、心理的安全性を専門にする金亨哲さんと、EQを専門にする河原あずささんが、チーム作りの悩みに答える相談所という形式で進みます。
冒頭、河原さんは金さんに「最近人に褒められたことはありますか」と尋ねます。金さんが挙げたのは、紹介の場での出来事でした。
お客さんになるかもしれない相手を紹介してもらう打ち合わせの最中に、間に入った人が金さんのことを褒めてくれたそうです。金さんはそれを素直に喜びつつ、少し照れも見せます。
「彼のこういうところはとてもすごい能力だと思ってて」みたいな話を、間に入っていただいた方から言ってもらったような、そんな感じです。
まずは一旦「いえいえ」ってなりますね。
河原さんは、金さんが照れて顔に出る様子を「ニヤちょる」と表現し、掛け合いが盛り上がります。金さんによれば、名前に「ちょる」をつけて状態を言い表す人は他にもいるそうです。
河原さんは、こうしていじれる関係になったこと自体が、打ち解けてきた証拠ではないかと問いかけます。金さんも、そうやっていじってくれる人とは関係性が良好だと感じていると話します。この「反応があること=関係性の土台」という視点は、この回の相談にもつながっていきます。
チャットで「ごめんなさい」が多い職場、という相談
今回の相談は、地方の100人ほどの不動産会社に勤める管理職からのものです。
チーム内で褒め合う文化を作るのが難しいです。グループチャットでいいねボタンを押してくれればいいのに、ごめんなさいのボタンを押す人が多いです。もっと前向きな職場にする方法はありますか。
河原さんは、この「ごめんなさい」を、頭を抱えるような絵文字だとイメージし、LINEなどでもよく見ると振り返ります。
河原さんは、「ごめんなさい」が押されがちな場面を具体的に想像します。たとえば「これ抜けていたからやっておきました」というやり取りに対し、「ごめんなさい、やっちゃった」と反応するような状況です。
相談者は、そこは「お互い様だし、やってくれてありがとうでいい」と感じているのだろう、と河原さんは読み取ります。「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」を素直に言える関係性をどう作るか、が相談の核心です。
反応があるのは、むしろ関係性がある証拠
金さんはまず、褒める側だけでなく受け取る側も恥ずかしさを感じやすい、と指摘します。冒頭の自身の照れも、その一例です。
金さんは、いいねがつきやすいチャットには特徴があると話します。その人の感情が乗っていたり、何が嬉しいのかが伝わったりする投稿です。
誰々さんがこんなことやってて活躍してたんですみたいな話とかだったりとか。そういうのはやっぱこう、いいねとか、まあ感謝とかみたいなのがつきやすい気はしたりするので。
そのうえで金さんは、そもそも「ごめんなさい」であってもリアクションはされている点に注目します。必ずしも悪い状態ではない、という捉え方です。
河原さんも、心理的安全性が最も低いのはノーリアクションの状態だと応じます。何らかの表明があること自体、関係性がある程度できている証拠だと二人は確認します。
褒めるは全員の前で、叱るは早く一対一で
河原さんは、金さんが代表を務めるZENTechで、人を褒めたり承認したりする時に気をつけていることを尋ねます。
金さんが原則にしているのは、褒める時はできる限りみんなの前で、ネガティブなフィードバックはできるだけ早く一対一で伝える、というものです。
できる限り褒める時は、あのみんなの前で。で、えーと、ネガティブなフィードバック、まあ叱るも含めてですけど、は、できるだけ早く一対一でっていう。
金さんによれば、素敵な行動はみんなが知っていた方がよく、ネガティブな話をみんなの前でやると公開処分のようになってしまうからです。
河原さんは、この原則を守ると、表に出るコミュニケーションが自然とポジティブなものになり、周囲ももっと前向きに接しようという気持ちになりやすい、と受け止めます。
できる限りみんなの前で伝える。良い行動はみんなが知っていた方がよいから
できるだけ早く一対一で伝える。全員の前だと公開処分のようになってしまうから
「最初に押す人」を決めると、いいねは伸びる
金さんは、リアクションが少ない時の工夫として、誰かが何か書いたらまず一旦スタンプを押す、というグランドルールを挙げます。
河原さんも、コミュニティ作りの支援でよく受ける相談として、社内でSlackやTeamsを使ってオンラインコミュニティを立ち上げても、投稿も反応も起きない、という悩みを紹介します。
いきなりそれ(自走するコミュニティ)作るの難しいっすよ。
河原さんが伝えているのは、まず事務局が投稿を見たらすぐにハートやいいねを押し、反応する文化そのものを作ることです。半分サクラでもいいから土台を作る、という考え方です。
投稿してもリアクションがなければ人は投稿をやめてしまい、反応の数が溜まらなければ他の人も乗っかろうと思わない。だからこそ最初の土台づくりが要になる、と河原さんは説明します。
金さんは、これを「行列ができているラーメン屋はうまいと思う」文化の話だと言い換えます。チャットの中では反応するのが当たり前、という状態まで持っていく発想です。
さらに金さんは、チャットの仕様上、最初についたスタンプが一番数が伸びやすい点に注目します。仲のいい人に早めにいいねを押してもらえば、いいねがつく文化に近づいていく、という見立てです。
見た方はできるだけ早くいいねしよう。
河原さんは、これをナッジ理論とも結びつけます。人は行動しやすい方に動くので、そうなるよう状況をデザインすれば自然とそちらに向かう、という話です。
画面から見てからいいねが多い文化なんだなっていう風になると、褒め合えてる文化に見えてくると思うんですよね。
「共感」「グランサンクス」会社らしいスタンプを作る
河原さんは、自社のSlackで実践している工夫を思い出します。Slackではスタンプを作れるため、自社で扱う検査の因子から「共感」というスタンプを作ったところ、みんながそれを使うようになったそうです。
金さんの会社でも、独自スタンプを多用しているといいます。「ありがとう」の最上級である「グランサンクス」や「神」「ワッショイ」など、会社ならではのスタンプがあると紹介します。
さらに金さんの会社には、トラブルが起きても一旦「それはちょうどよかった」と言う文化があり、それを表す「それちょ」というスタンプまであるそうです。
トラブルが起きても一旦こう、「それはちょうどよかった」みたいなことを言うような文化になってるんですけど。
何か起きたらまず全員で「それはちょうどよかった」と前向きに捉え直し、トラブルとの距離を取ってから対応を考える。研修でプロジェクターが消えたような時にも、講師が壇上で使う言葉だといいます。
河原さんは、これを発する言葉で自動的にリフレーミングを行う仕組みだと受け止めます。ちょっとした言葉がけの工夫で、ネガティブな出来事も前向きに受け取れる、という発見です。
反応したくなる投稿を、意図的に挟む
金さんは、SNS、特にFacebookを眺めていると、どんな投稿にいいねが集まりやすいかを、投稿する側も自然と学んでいくと話します。
そこから金さんは、相談者ができることとして、グループチャットの中でいいねが多かった投稿はどれかを見返してみる、という方法を提案します。
河原さんも、気づきのある投稿や、共感せざるを得ない書き方の投稿など、反応したくなる投稿があると応じます。
金さんは具体例として、「転職しました」のような転機の報告はいいねが増えやすいと挙げます。河原さんも、新人の自己紹介投稿はみんなが大体押す、と続けます。
新人の自己紹介投稿とかね、まず大体押しますよね、みんなね。
頑張ってほしいって気持ちも込めて押しますよね、あれは。
河原さんは、こうした反応したくなる投稿を間に挟むことで、見る側にいいね癖がつくのではないかと考えます。褒め合う文化は結局のところ習慣だ、という捉え方です。
金さんは、この視点をコミュニティマネージャーの視点だと評しつつ、褒め合う文化はこの管理職一人で作ろうとしなくてもいい、と付け加えます。
河原さんも、みんなで考えること、そして前向きに物事を捉える行動様式から入ることの合わせ技で、前向きな職場づくりははかどると締めくくります。
「ありがとう」の先にある、褒め合う文化
ナビゲーターのきのせさんは、チャットは顔が見えないのに文化ができていくのが不思議だと振り返ります。いいねがつくスピードや、いいねかごめんなさいかでも、人は何かを感じ取っています。
一方で、それを逆手に取れば、仕組みでなんとかできる部分もある、ときのせさんは受け止めます。相談者の職場の「ごめんなさい」も、「ありがとう」の意味で使われているのかもしれない、という見方も示します。
きのせさんは、まずルールを決めるところから始めることを提案します。褒め合うのはハードルが高いけれど、ありがとうの先に褒め合うっていうのはあるかもしれない、という順序の整理です。
謝るよりありがとうが自然と溢れる仕掛けを作ることで、その先の褒め合う文化も見えてくるのではないか、ときのせさんはまとめます。
まとめ
チャットで「ごめんなさい」が多い職場でも、反応がある時点で関係性の土台はできています。最初に押す人・反応したくなる投稿・会社らしいスタンプといった仕組みで、小さな「ありがとう」を習慣にすることが、褒め合う文化への近道です。
- 反応があること自体が関係性の証拠で、最も心理的安全性が低いのはノーリアクションの状態
- 褒めるはみんなの前で、ネガティブなフィードバックは早く一対一で、が伝え方の原則
- 最初についたスタンプは伸びやすいので、まず押す人を決めて反応する文化を土台から作る
- 「共感」「グランサンクス」「それちょ」など、会社らしいスタンプが前向きな空気を後押しする
- 褒め合う文化は管理職一人で作るものではなく、ありがとうを習慣にした先に育っていく


