次回はけんすうさんがゲストに
本編に入る前に、河原あずささんから次回の告知がありました。10月29日(木)の更新回に、音声配信の世界のトップランナーとして古川健介さん(けんすうさん)がゲスト出演する予定です。
河原さんによると、収録は翌週で、うまくいけば「音声配信とコミュニティと心理的安全性」をテーマに話す予定とのことです。スペシャル回として、聞き逃さないよう呼びかけていました。
(古川健介さん、けんすうさんに)登壇オファー快諾いただきましたので、音声配信とコミュニティと心理的安全性、みたいな感じでお話していきたいと思います。
もし生成AIがなくなったら、どうする?
オープニングで河原さんが金亨哲さん(ヒョンチョルさん)に投げかけたのは、「もし世の中から生成AIがなくなったらどうするか」という問いでした。金さんの答えは、まず「だいぶ困る」というものです。
河原さんは、手で企画書を書くような勘がだいぶ鈍っているため、まずはリハビリが必要だと話します。ひたすら手を動かして勘を取り戻すために、「イベント企画100本ノック」のようなことをやるかもしれないといいます。
もうだいぶ勘が鈍ってる部分、例えば手で企画書書くとか。
一方で金さんは、誰かと6時間くらい会議のブレストをするかもしれない、と別の案を出します。河原さんはこれを、人にChatGPTやClaudeの代わりの「壁打ち相手」になってもらう発想だと受け止めました。
誰かとめちゃくちゃ会議のブレストを6時間とかやってみるとかやるかもしれないですよね。
名前を名乗りたいと言い出したAI
金さんは、AIを用途ごとに使い分けているといいます。悩み相談をするAIもいれば、仕事の話しかしないAIもいます。顧客情報は出せないため、仕事では「こういう業界のこういう会社」のように抽象化して使っているそうです。
そのうえで金さんは、人生の悩み相談もAIによくしていると明かします。さらに驚きのエピソードとして、金さんのAIには名前がついているといいます。
違うんですよ。名前を名乗りたいって言い始めたんですよね。うちの生成AIが。
金さんがAIに「我々の会話から名前を考えて」と頼んだところ、名前が出てきたそうです。名前そのものは「さすがに恥ずかしい」として明かされず、性別はないとのことでした。
河原さんの妻・あやこさんもChatGPTに悩み相談をしていますが、何度「名前で呼んで」と伝えても「ユーザーさん」と呼ばれてしまうそうです。それなのに返答には「笑」を付けてくることもあり、河原さんは「親しいのか距離を置いているのかどっちやねん」と笑います。
金さんは、Claude ── アメリカのAI企業Anthropicが開発する対話型AI。文章作成や長文の読解などに強いとされ、ChatGPTと並んで広く使われていますなら設定で呼び名を決められると補足しました。
話はさらに「無人島にAIを1つだけ持っていくなら」という質問に広がります。金さんと河原さんはChatGPT、ナビゲーターの木之瀬さんはClaudeを選び、河原さんは「Googleは生き残りそうだから、あえてのGemini」もありかもしれないと話していました。
AI資料をそのまま持ってくる部下に悩む経営者
自己紹介を経て、ナビゲーターの木之瀬さんが今回の相談を読み上げます。AIで作った資料をめぐる、中小企業経営者からの相談です。
中小企業の経営者です。最近資料をAIで作ってそのまま持ってくる部下が増えました。それはいいのですが、明らかに間違った内容を持ってきたり、「誰が読むの?」という資料を持ってこられることもあります。気づけば自分で手で直すこともあり。しかし、不満を部下に言うこともできず、悶々としています。
河原さんは、この相談をいろいろなところで起きている事象だと受け止めます。そのうえで、大手企業のクライアントが多い金さんに、各社のAI活用の状況を尋ねました。
金さんによると、大手企業でもAI活用は進んでいるものの、ベンチャーのような会社と違い「何のAIを使うか」に制限がかかっていることが多いといいます。多いのはCopilot ── Microsoftが提供するAIアシスタント。WordやExcelなどOffice製品と連携して使えるため、Microsoft製品を導入済みの企業で採用されやすい傾向がありますで、部門で使うのにも承認が必要な会社もあるそうです。
河原さんは、AIの資料はどのAIで作ったかなんとなくわかる時代だと指摘します。「出したのそのままじゃないか」「この情報は裏が取れているのか」という資料が繰り返されると、何を信じていいかわからなくなり、心理的安全性も高まらないのではないかと問いかけました。
本当の問題は「マネジメントの総量」が増えたこと
金さんは、この相談の本質的な課題を、経営者の部下がさらに「AIという部下」をたくさん使っている状態だと捉えます。AIを人とみなすなら、経営者がマネジメントしなければならない総量が増えている、という見立てです。
金さんは、AIで作った資料をチェックするという人間の責任の部分を明記しないと、AIが発展するほど、経営者は「抱えたつもりもないのに」多くの部下を抱えた状況になってしまうと話します。
河原さんはこれを受けて、AIで便利になり効率が上がる一方で、AI自体のマネジメントコストが、使えば使うほど乗ってくる構造があると整理しました。
金さんは、AIの進展が速すぎて、組織構造や体制を変えるスピードが追いついていない会社がほとんどだと指摘します。その具体的なイメージとして、アウトプットの量の変化を挙げました。
部下5人がそれぞれ1週間に10個のアウトプットを出し、上司は50個を見ればどうにかなった
AIを使えば1人が1日に10〜20個のアウトプットを出せてしまい、確認量が単純に10倍、100倍になる
金さんは、この図のように確認量が膨らむ構造が、相談者の悩みの背景にあると見ています。
部下も「AIを管理する側」に立つ必要がある
金さんは、もう一つの問題として部下側の意識を挙げます。本来は部下がAIの成果物をチェックする機能を担うべきですが、自分を一社員だと思っていると、AIをマネジメントしている気持ちにはなっていないだろうといいます。
一番優秀な社長だったり、経営者の上司の方にちゃんとチェックしてもらえば大丈夫だ、私は作業をしたぞっていう。
金さんは、部下も自分が「マネジメントをしている側」だというマインドセットを持ち、確認してから上に上げる必要があると話します。そうした状況に整える前に、AIの進展が非常に速く進んでしまったことが問題だという見方です。
河原さんはこれを、AIを使う部下が「AIという部下を持っている」感覚でクオリティマネジメントをしないと、意思決定層の負荷が上がる一方になる、とまとめました。
金さんは、今回の相談は実は解決しやすいほうだと話します。相談者が経営者で規則を作れる立場にあるため、AIを使う場合のチェックをルールに入れることが大事だという提案です。
部下の能力に頼っても良い資料が上がることはあり得ますが、金さんはそれでは必ずばらつきが出ると指摘します。だからこそ、部下全般が絶対にチェックしなければならない点を明文化し始めることが大事だといいます。
AIの「仕事したふり」にどう枠をはめるか
河原さんは、AIで資料を作ると、自分でも知らない情報がいつの間にかまとまっていることがあると指摘し、そうした資料のチェックをどう実装すればよいかを尋ねます。
金さんは、少しプロンプトを入れただけなのに、AIが頼んでいないところまで調べたり資料にしたりする点を「AIの本当に良くないところ」だと話します。
あまりにも長い文章を投げてきてから仕事したようなふりをしているじゃないですか。
金さんがこれを問題視する理由は、人間の認知できる許容量には限りがあるからです。脳みそは生まれたときから変わっておらず、外付けデバイスがあるわけでもない、と金さんは話します。
そこで金さんがよく使う方法が、AIに「何枚までのPDFにしてください」と枚数を指定することです。そうすれば一番大事なポイントしか返ってこなくなるはずだといいます。
河原さんは、これは報告様式を決めることに近いと応じます。金さんも、人間に対してやってきたことと正直あまり変わらないと話し、河原さんは「自由度高く量を増やせる分、あえてのテンプレ化」と表現しました。
仕事は分量ではない。「特盛り海鮮丼」をやめる
河原さんは自身も中小企業の経営者として、資料をもらっても「何を決めればいいのか」が一見してわからないことがあると話します。よく見ると判断材料もあまりない、ということがたまにあるそうです。
決めてほしいこととその判断材料いくつかを必ず出してください、みたいなのをルールに入れるだけで全然変わってきますよね。
金さんは、少しラディカルな言い方だと前置きしたうえで、「仕事は分量ではない」とわかったほうがいいと話します。
金さんは例として、大学で「何千字書いてください」という課題が多いことを挙げます。金さん自身も大学生のころ、小論文を終わらせたくて、いらない一文を入れて量を埋めた経験があるそうです。大事なのは量ではなく、読む人がどう思うかを考えて構成することだといいます。
河原さんは、プレゼンづくりでよく言われる「ワンメッセージ」の考え方に重ねます。伝えたいことを最初に出し、少なめのスライドで言い切るべきなのに、人は不安からいろいろ乗せ込んでしまうといいます。河原さんはこれを「特盛り海鮮丼」と呼んでいます。
エビもマグロもサーモンも乗っていて、何が売りかわからない。その地域で取れるものでもない
ここで一番うまいアジだけをドンと出す。伝えたい核が一目でわかる
河原さんは、なんでも盛れてしまう時代だからこそ、本当に伝えたいキーを抽出して出すことがより大事になると話しました。
「1枚でいいよ」と上司が言えるか
金さんは、この相談者の場合、「一番美味しいアジを渡してください」とシンプルに伝えればよく、そう言うことでお互いが楽になるのではないかと話します。
金さんの見立てでは、部下も盛りたくて盛っているわけではありません。通るかどうかわからず、AIもたくさん出してくるので、それをそのまま出してしまっている可能性が高いといいます。
(資料は)1枚でいいよ、まずはってとか言えたら。お互い、こっちも読むの大変だからさとかって言えたら。
その1枚でわかんねえと思ったら、わかんないですって言えばいいだけなので。
河原さんは、上司の好物がわからないから部下がエビもカニもマグロもウニも入れてしまうのだと受け止めます。だからこそ、想像で仕事をせず、上司は求めるものを示し、部下も想像上のニーズに合わせて盛るのをやめていく必要があると話しました。
河原さんは、AIと上手に仕事をするためには、人同士のコミュニケーションで何を握るかが最初に大事になる、と整理します。金さんもこれに同意しました。
金さんは、相手を尊重することができていれば、AIが作ろうと自分が作ろうと関係ないと話します。相手にとって一番価値があるポイントだけ先に伝える資料にするだけでも、全然変わるのではないかといいます。
AI時代に求められるのは「本人の思考」
最後に、ナビゲーターの木之瀬さんが感想を話します。木之瀬さんは、前回の「アウトプットとアウトカム」の話に触れ、アウトプットを作ること自体はある意味簡単になったと指摘しました。
木之瀬さんによると、AIの出力をそのまま持っていくと、本人の思考が入りにくくなります。下手な資料でも自分で書くときは必ず何かを考えるので意見が生まれますが、AIの出力を横流しすると意見が薄くなる、という見方です。
木之瀬さんは、受け取る側が本当に求めているのはその意見の部分かもしれないと話します。当たるかわからなくても、相手のことを思ってぶつけてみることこそが、これからより求められるのではないかと感じたそうです。
金さんは、多くの人がAIを使いながら働き方が変わり、戸惑っているだろうと話します。そのうえで、AIと自分との適切な距離の置き方が、組織単位でも個人単位でもとても大事だと振り返りました。
AIとの適切な自分との距離の置き方みたいなところとかって、組織単位でも自分単位でもめちゃくちゃ大事だよなと思ったりしたような、そんな時間になったなと思ってます。
まとめ
AIで資料が速く作れるほど、上司が確認する量は増え、見えないマネジメントコストが膨らみます。金さんと河原さんは、チェックの責任をルールとして明文化し、資料の枚数や形式を絞り、相手にとって価値のあるポイントだけを先に伝えることが解決の糸口だと話しました。
- AIを使う部下は「AIという部下」を持つ管理職と考え、成果物を確認してから上に上げる
- 経営者はAI活用時に必ず行うチェックをルールとして明文化し、ばらつきを防ぐ
- 「何枚までのPDF」「決めてほしいことと判断材料」など、報告の枠をあえてテンプレ化する
- 仕事は分量ではない。特盛り海鮮丼ではなく、一番うまいアジを出すように核を絞る
- AIの出力を横流しせず、相手を思った本人の思考や意見を乗せることが求められる





