昼から酩酊と高熱明け、最悪コンディションの収録
この回は、二人のコンディションが揃って悪い状態で始まりました。田中さんは夜の会食が増えすぎたことに耐えられなくなり、会食を昼に変えてもらう試みをしていると話します。
その代わり相手さえよければ昼から酒も飲むというルールにしたところ、収録直前まで夜のように飲んできてしまったそうです。
酩酊イチ。
一方のけんすうさんも、前日まで38度ほどの熱があり、薬でなんとか抑えている状態でした。田中さんが「状態が悪すぎる」と評するギリギリの二人で収録が始まります。
ビックリマンAIグッズメーカーと、収集ブームの原点
話題のきっかけは、けんすうさんの会社アルがロッテと組んで作った「ビックリマンAIグッズメーカー」というサービスです。
自分の顔写真を入れると、ビックリマン風の世界観に入り込んだ名刺やグッズを作れるというもの。けんすうさんは子供の頃ビックリマンを集めまくっていたので、まさか仕事になるとは思っていなかったと振り返ります。
田中さんは、ビックリマンをコレクションブームの先駆けだと位置づけます。それ以前のキン肉マンの消しゴム「キンケシ」などにも触れつつ、世界的なムーブメントであり社会問題にもなった最初の存在だと語りました。
僕の記憶だと、やっぱあれが一番収集っていうのにハマったきっかけなんですけど。
ウエハースを拾って食べていた側と、収集癖の始まり
ビックリマンで社会問題になったのは、大人や中高生がシール目当てに買い占め、中身のウエハースを大量に捨てたことでした。
田中さんは、そのウエハースが好きすぎて、子供の頃はゴミ箱から拾って食べていた側だったと明かします。強い収集癖はビックリマンには向かなかった一方で、別のものに発揮されていきました。
その代表がフリーペーパー「R25」です。田中さんは全巻を持っていて、駅の始発時間に合わせて取りに行っていたと話します。
R25を集めてるってことをいろんな人たちに周知してたので、友達が「R25最新刊ゲットしたよ」って連絡してくれる、そういうマフィアネットワークみたいなのを構築してました。
それでも手に入らない号は、当時まだメルカリがなかったので、ヤフオクでフリーペーパーをわざわざ落札して集めていたそうです。無料で配られていたものに、あえて手間とお金をかける姿勢が印象的です。
けんすうさんも、好きになった芸能人が載った雑誌のバックナンバーを買いまくって切り抜いていたと共感します。お金を出せばすぐ手に入るものには欲が出ない、という感覚を二人は共有していました。
レコード5000円分を換金してでも欲しいテープ
田中さんが手元に持ってきたのは、いにしえの道具であるカセットテープでした。好きだったDJが月1本ずつ出していたミックステープです。
その月の新譜だけでつなぎ合わせるという制約の中で作られ、年末には総集編も出ていました。10年ほど続いたため100本以上あり、田中さんはそれをコンプリートしたと言います。
欠番や人気で手に入らないものは、ツテをたどったりヤフオクで集めたりしました。さらにこのDJはレコード屋限定のノベルティミックスも作っていたそうです。
そのノベルティは、一定額以上買い物した人にしか渡されません。田中さんはテープ欲しさに、いらないレコードを5000円分買ってノベルティを手に入れ、そのレコードを隣の中古店で換金していました。
三千円ぐらいでしか売れないんですけど、正味二千円だからいいやみたいな、このテープをゲットするまでとか、そういうことはやってました。
Spotifyで無限に聴ける時代だからこそ、ここでしか手に入らない、毎月出るという限定性にこそ価値を感じる。けんすうさんもその「クエスト感」に共感しました。
ネットの情報は意外と消える、という収集の価値
話はデータの収集へ移ります。田中さんは、ネットにしかない動画やネット民が作ったFLASH動画をリスト化し、いつでもアクセスできる状態にしておくのが嬉しいと語ります。見るわけではなく、集めた時点で満足するそうです。
けんすうさんは、ネットの情報はリアルよりも消えやすく、自分が保存しておかないと誰も覚えていない状態になりやすいと指摘します。
その例として挙げたのが『教科書には載らないインターネットの歴史』という本です。90年代から2004年ごろまでのネットの歴史が細かく書かれており、けんすうさん自身のサービスも開設日つきで載っていました。
僕もそれ自分では思い出せなかったけど載ってたりして。ああいう情報が今どんどんネットからは消えてるので、すごい貴重だなと思ってて。
象徴的なのが、昔のYahoo!トップページのスクショすら意外と残っていないという話です。自分がやっていたサービスでも、リニューアルのたびにスクショを撮っていないため、昔のデザインがわからなくなることは珍しくないと言います。
揃った瞬間より、欠番を埋める過程が楽しい
けんすうさんは、性質診断のストレングスファインダーで2番目に「収集」が入るほど、収集にときめきを感じると話します。集めてどうするわけでもないのに、揃っているのが好きなのだと言います。
田中さんは、揃っている状態だけでなく、見つからないものを意地でも探し出すプロセスにこそ魅力があると付け加えます。ここで二人の核心が見えてきます。
その象徴が、お金で全部揃うという状態への冷めた感覚です。「2万9000円で全コンプリート」と言われても、いつでも手に入ると思うとピンとこないと二人は語ります。
DJkomoriフルコンプリートセットとかで、たまに一年に一回ぐらいメルカリで五十万とか百万とか出てるんですよ。買っちゃったらもう何にも楽しくないじゃないですか。一個ずつこの欠番を埋めていくことがロマンなんで。
けんすうさんは、世界に36本しかない時計を3〜4年かけて追い続けた話を紹介します。時計メディアの人が「こういうのがあります」とツイートした瞬間に連絡し、あるブランドの社長が手放すものを手に入れたそうです。
一方で、ガチャを大量に引かせて利益を上げるタイプの収集には、二人ともときめかないと言います。推しを分散させてみんなで買い、当たらなければ交換すれば等しく揃う、という合理的な買い方も「そうじゃないんだよな」と感じるそうです。
欠番を1つずつ埋める過程がある。数が少なすぎて何年も追い求める必要がある
お金を出せばすぐ全部揃う。ガチャや交換で効率的にコンプできてしまう
N=1でいいから教えてくれ、AIにない情報の価値
現在も集めているものとして、けんすうさんは紙で印刷するメルマガ『自大通信』を挙げます。ベンチャーキャピタルのアンリの方が発行していたもので、ネットにはない良質なテキストが、本屋でも手に入らない形で届くと言います。
田中さんは、投資家界隈にも似たものがあると応じます。有名なヘッジファンドのマネージャーが、限られた人だけに紙のレターを郵送し、横に流すなという約束のもとで配っているそうです。
さらに田中さんが挙げたのが、24時間走るランナーが毎月紙で発行するニュースレターです。距離ではなく時間で競うレースで、日本でも上位に入る人が、体調や眠さをどうマネジメントするかを人体実験として書いてくれると言います。
けんすうさんは、24時間走で眠さが問題になること自体を知らなかったと驚きます。眠さのマネジメントは、ネットにもなく、AIに聞いてもわからない情報だからこそ集めたくなる、と二人は一致しました。
受け手も「そんなのお前のN=1だよね」とか文句なんか誰もないんですよ。情報がないから。N=1でいいから教えてくれっていう。
AIはバイアスや偏りがあると腹が立つ。けれど限界突破しているものについては、むしろN=1こそが大事で、それでいいから教えてほしい、というのが二人の結論でした。
一方でけんすうさんは、ハマりそうだからあえて見ないようにしているものとして、ローマ時代の金貨などのアンティークコインを挙げます。奥が深すぎて全容がわからず、どこまで行くのか怖いのだと言います。
ワインも、飲んだらなくなるが飲まないと意味がない、特別な時に開けようと思っても一生来ない、という難しさがあると二人は笑います。それでも、ビックリマンシールぐらいがやっぱり一番楽しかったという記憶に落ち着いていきます。
キラ名刺はランダム、推し活名刺という新しい需要
最後に、ビックリマンAIグッズメーカーの仕組みが詳しく語られます。AIで顔写真をビックリマン風に変え、公式キャラの隣に自分がいるデザインを作り、名刺やアクリルキーホルダーにできるものです。
もともとビックリマン風の名刺を勝手に作っている人がいたことがヒントで、それを公式化すればインパクトが出る、という提案から生まれました。名刺交換で人の名刺には興味を持ちにくい中、この名刺はシールホルダーに入り、集めたくなる点が特徴です。
この名刺には、収集のときめきを守る仕掛けも入っています。30人に1人の割合で、ホログラム加工のキラキラ名刺が30枚追加で届くというランダム要素です。
お金出して買えるとやっぱりちょっとワクワク感減るっていうのがあり、これあえてちょっとランダムにしてますね。
需要として面白いのが、推し活の場面です。会社の名刺は持っていけないが、個人名刺を作るのも抵抗がある。そんな人にちょうどよい選択肢として、地方の中小企業の社長や推し活層に売れているそうです。
名刺を作る
AIで顔写真をビックリマン風にし、公式キャラの隣に自分を配置する
渡す・話題になる
名刺交換で「ビックリマンですね」と会話が生まれる
集めたくなる
シールホルダーに入り、30人に1人のキラ名刺もあって収集欲が刺激される
名刺という形式のため経費にできるメリットもあり、買いやすさにつながっていると紹介されました。販売サイトは概要欄に貼られています。
まとめ
ビックリマンの収集癖から始まった雑談は、「お金で買えるものにはときめかず、欠番を埋める過程やN=1の情報にこそ価値を感じる」という共通の感覚へと着地しました。AI時代だからこそ、そこにしかない情報や体験が輝いて見えるという回でした。
- 収集の快感は「揃った状態」より「欠番を埋める過程」にあり、お金で全部揃うとときめかない
- 「探している」と周囲に知らせると、向こうから情報が来る仕組みが作れる
- ネットの情報は意外と消えるため、保存しておく価値がある
- 24時間走の眠さ対策のように、AIにもネットにもないN=1情報こそ集めたくなる
- ビックリマンAI名刺は、キラ名刺のランダム性で収集のワクワク感を守っている





