自己分析より「行動分析」
前回の面接や企業選びの話が好評だったため、今回は話しきれなかった自己分析とエントリーシートの続きから始まります。
田中さんは「自己分析」と銘打ってはやらなかったものの、自分の価値観を棚卸しした経験があると振り返ります。それが後から見ると、コーチングの手続きと同じだったと気づいたそうです。
最終的には結局お金が一番稼げて、ちゃんとしたブランドのある会社に入ろうに収まっちゃったんですけど、その時に自分の価値観になるものをいろいろ整理して棚卸はしたんですよね。
どんな時に時間を忘れて熱中したか、何を褒められたか、どんな人を苦手に思うか。そうした問いを自分に投げることで、なりたい自分(Being)が固まり、その手段としてやりたいこと(Doing)が見えてくると話します。
コーチングを受ける人の本じゃなくて、コーチになるための本みたいなのを読む方がいいと思ってて。自分がコーチになったかのように自分自身をコーチして内省させてバーッと吐き出せば、自ずと見つかるじゃんみたいな。
一方でけんすうさんは、リクルート時代の経験から、自己分析の結果ではなく行動そのものを聞くスタイルだったと明かします。
人を喜ばせるのが好きと言うなら、行動に必ず表れているはず。やっていなければ嘘だと判断できる。だから解釈より「実際に何をやったか」を聞くのが最も正しい質問だと語ります。
田中さんは、両者はハイブリッドで良いのではないかと提案します。企業のマインドにまず合わせ、その中から自分の行動のどの側面を切り取って出すかを選ぶという考え方です。
コンビニバイトを「切り取り方」で武器にする
田中さんは、同じコンビニバイトの経験でも、志望業界に応じて切り取る側面を変えられると言います。
たとえばホスピタリティ業を志望するなら、タバコを買いに来る客の銘柄を全員覚えていた話が使えます。当時のタバコには番号がなく、すべて銘柄で覚える必要があったそうです。
ドア入ってきた瞬間にタバコをこの人二箱買うからってレジの横にポイって置いてるんですよ。それでめちゃくちゃ褒められたりして。ついでに缶コーヒー買おうかなみたいなことがあったエピソードも出せるじゃないですか。
雑誌を返品するときの紐の結び方を、返品先のトラック業者にどう思われるかまで考えて工夫した話なら、顧客目線をアピールできます。
けんすうさんは、リクルート時代の同期の例を挙げます。地域イベントとして打ち水を自分で開催し、実際に気温を1度下げたという話です。
プロジェクトを自分で立ち上げた実行の難しさ、正しいことをやる姿勢、そして数字で出た結果。企業が好む要素が揃っていて、当たり前のことをやりきる力が伝わると評価します。
客のタバコ銘柄を全員覚え、来店した瞬間にレジ横へ置いていた
返品する雑誌の紐を、業者がすぐ解けるよう配慮して結んでいた
抽象は流される、超具体は刺さる
けんすうさんとけんすうさん自身の価値観の話を経て、話は「どう話すか」に移ります。
けんすうさんは大勢が動くサービスを作ることや、情報が届いていない人に届けることに興奮するタイプで、それがリクルートと相性が良かったと振り返ります。
田中さんは物事の原理原則を理解したいという価値観から物理学科に進み、それを金融やコンサルへの志望動機につなげたと話します。歴史学でも同じ論理が組めると言います。
この人上手すぎる。就活に向きすぎてる。
ここでけんすうさんが、雑誌の紐の結び方までこだわる話はスッと入ってくると指摘します。そこまで仕事をやっている人は少ないため、話せる材料が一気に増えるのです。
紐は真ん中ではなく角で締めると強く締まる。この話に、けんすうさんも魚屋バイトで発泡スチロールを結ぶとき同じことに気づいたと共感します。
抽象度の高い話はみんな同じになり、「お客さんのことを考えて行動しました」ではピンとこない。場面が浮かぶほど具体的な話こそ刺さると二人は一致します。
けんすうさんは、うまい営業やラジオの話し手が使うズームイン・ズームアウトの話法を紹介します。小さい場所から大きい場所へ、あるいはその逆へ視点を動かすことで、聞き手が想像しやすくなるといいます。
田中さんは、芸人の話し方こそ絵が浮かぶ喋りの手本だと言います。「アフリカの子供たちを救いたい」ではぼんやりするが、近所の公園でうまい棒を100本配って通報された、という話なら想像できるという例を挙げます。
この観点から、切り取る具体例は「いい話」ではなく「想像しやすい場面」を選ぶべきだと整理されます。
AI時代のエントリーシートと市場価値の書き方
話はエントリーシートへ移ります。今はAIを全員が使う前提で書かなければならず、二人の学生時代とは要素が違うと前置きされます。
けんすうさんは、そのまま使うなら裏をかいた方が良いと言います。たとえば得意なこととして「AIを使わずにAIっぽい文章を書けます」と書いて笑いを取る、といった学生ならではの工夫です。
やるならもう徹底的にやる。AIをここまで使いこなしてやってますまでやった方がいいんですけど、聞くにはもっと上の人がいるので、学生でないとできないことをやった方がいい。
田中さんは、聞かれてもいないのに自分の市場価値を計算して書いたことがあると明かします。入社後どんなプロジェクトを担い、会社にどれだけ利益をもたらすかを現在価値に直した計算です。
僕の出した価値が、例えば2億円ぐらいで、10年とか20年働く前提だったら全然安いから雇った方がいいと思うみたいな計算をめちゃくちゃ書いて、それも落ちなかったですけどね。
内容そのものより、投資対リターンを計算できる人材だと伝わったのだろうとけんすうさんは分析します。ただし田中さんは、Link&Motivationのような会社ではマッキンゼー流の書き方は合わないと判断し、同じ出来事を心を動かす系のエピソードに変えたと補足します。
面接は録画し、面接官側を経験する
続いて面接の練習について。けんすうさんは、場数が少ないと話にならないため練習で克服でき、さらに面接官側をやると人の粗が見えて自分を修正できると、両方を勧めます。
田中さんも、初めて部下を持つと自分がしてきたミスの箇所がわかり二度としなくなるのと同じで、面接官をやると「そこはそう言ったら落とす」と気づいて直せると同意します。
今なら録画すべきだと二人は言います。メディアに出ると嫌でも自分の姿を見せられ、良くない点に気づいて直せる。その機会を自分で作るべきだという話です。
友達同士で練習するのがなんだかんだ一番良かったと振り返ります。志望企業がよく聞く質問でやると、なぜその質問をするのかが面接官側から見えてくるといいます。
ケーススタディ系の対策も話題になります。「マンホールの数を計算してください」のような問いでは、数を出すだけでなく、増やすか減らすか、どうしたいかまで語ることで差別化できると田中さんは言います。
ケース面接と「早く受けるほど受かる」理由
ケース面接の具体例として「排気ガスを減らすには」という問いが挙げられます。田中さんは、排ガスを出すものの稼働を減らすか、出さないものの稼働を上げるかの2方向から入ります。
都心部にいる人たちのナンバープレートは課税率が違うから、それをかけていくことで税収も増えるし排ガスも減っていくし。その代わりループの方に補助金でやっていけばネットプラスだけど、排ガスはネットマイナスですみたいな。
けんすうさんは、知っている話に無理やり結びつける手も挙げます。商店街を通行禁止にして歩かせれば売上が上がり、車も減るという例です。正しさより、詳しく語れる強みが生きると言います。
田中さんは、遠くの事例をえいと引っ掛けると聞き手が「お」となると補足します。さらに健康寿命が延びるといった別の便益を足すと120点になるといいます。
採用の裏側についても語られます。外資コンサルや外銀では、他社の内定を取った瞬間に、一度落としたはずの会社から連絡が来ることがあったそうです。就活生同士が誰の内定情報を共有し、それを人事が拾い上げるためです。
一応箔つけるために内定をどっか取っとくっていうのはいいじゃないですか。どんな交渉のカードにも、招致の場合絶対使わないんだけど、梅のカードとか松のカード持っといて、その竹を取りに行く。
学歴フィルターで切られた中にも良い人材はいるが、自社の採用コストでは拾えない。だから他社に内定を出させてから引っ張るのが合理的だと田中さんは分析します。
けんすうさんは、早く受けるほど受かりやすいと繰り返し語ります。採用人数に上限があるため、1人目と200人目では基準がまるで違うからです。
実際にけんすうさんは、リクルートで4月1日スタートの初日に面接を受け、2日目に内定を得たそうです。人事が焦っていて、まだ枠が埋まる見通しの立たない時期を狙ったといいます。
就活生同士は同盟相手、SNSは特定される前提で
就活生同士は敵ではなく、時に同盟を組んだ方がいい相手だと二人は言います。人事は学生に他の学生の評判を聞いており、一度悪く言われるとリスクを避けて落とされることもあるからです。
あの人取ろうかどうか迷ってるけどどう?って学生に聞いたり、人事してますから。あの人ちょっとやめた方がいいっすよね、って一回言われたら多分落とすんですよ。
田中さんは、イケてる友達を作って口を利いてもらう戦略をまさに使ったと明かします。当初は就活村で相手にされなかったものの、選考を進むうちに名が売れ、味方が増えていったそうです。
一方で、SNSは匿名でも特定される前提でいるべきだと強く警告します。田中さんは採用側として、内定先や面接内容を自慢気に書く匿名アカウントが特定され、それだけで落とすこともあったと語ります。
さらに、評判の良し悪しより「恨みを持たれているか」で落とされやすいと指摘します。誰かに強く恨まれている人は地雷である可能性が高いと見られるためです。
だからこそ、就活を始める前に人間関係を整え、SNSをクリーンにするかアカウントを消すくらいの覚悟が必要だと二人は締めくくります。
まとめ
平凡なコンビニバイトも、切り取り方と超具体まで落とし込む語り方次第で刺さるエピソードになります。自己分析より行動、抽象より場面、そして採用の裏側まで見据えた立ち回りが就活の武器になると語られた回でした。
- 自己分析の解釈より、実際にやった行動を切り取る。企業に合わせて側面を選ぶ
- 抽象論は流される。角で締める紐のような超具体と、ズームイン・ズームアウトで絵を浮かばせる
- 面接は録画し面接官側も経験する。現在地を知らずにゴールへは向かえない
- 採用枠には上限がある。早く受けるほど基準が甘く受かりやすい
- 就活生は同盟相手。SNSは匿名でも特定される前提で、就活前に人間関係を整える



