ドラクエを「リソース配分ゲーム」として語り出す
番組では、ドラゴンクエストをただのゲームとしてではなく、リソース配分ゲームとして捉える視点から話が始まります。
けんすうさんは、この回の狙いを、ドラクエの遊び方を入り口にして、そこから仕事や日常の話へ広げることだと説明します。
あれ(ドラクエ)リソース配分ゲームだよねっていうところから、なんかどうやってやってたのかみたいな話をして、そこから仕事の話とか日常の話をするという。
田中さんは、自分はゲームと漫画で人格のほぼ全てが形成されたと話し、ドラクエ1を3歳か4歳の頃から触っていたと明かします。
ドラクエは(やってましたね)。しかもですね、多分(ドラクエ)ワンを3歳か4歳ぐらいの頃から触ってたらしいので。
バランス型準備魔と、魔法使い3人特攻型
最初のテーマは、パーティー編成とプレイスタイルの違いです。ここに二人の性格がはっきり出ます。
田中さんは、勇者・戦士・僧侶を軸にしたバランス型の編成を組むタイプです。ボス戦で負けないことを最優先にします。
例えばレベル35ぐらいを推奨だとしたら、42ぐらいまで上げて絶対負けない試合をするタイプ。
武器も、経験値だけでなくお金を貯めて強い武器を買い、効率よくレベルを上げてからボスへ向かうと言います。
一方、けんすうさんは正反対で、最初から目的地に向かって進み続けるスタイルです。死ぬことも前提にしています。
(僕は)最初から目的に向かって進み続けるっていう。
(落ちてるものを優先して進むので)魔法使い3人とかやるタイプですね。
この違いを、田中さんはそのままキャリアの差に重ねます。ミスをせず出世を目指したサラリーマン道と、失敗したら次を始める起業家道の対比です。
さらにアイテムの使い方にも差が出ます。田中さんは温存して最後まで使い切れないタイプ、けんすうさんは全て使い切ってギリギリまで進むタイプです。
バランス編成で推奨レベル以上まで上げ、武器を揃えて絶対に負けない試合をする準備型。アイテムは温存する
目的地に一直線で進み、死んでもやり直す。落ちているものを優先し、アイテムは使い切る特攻型
昔のドラクエが厳しかったから面白かった
けんすうさんは、ドラクエをリソース配分ゲームと呼ぶ理由を、昔の作品ほど制約が厳しかった点に見ています。
アイテムや魔法を使うためのマジックポイントに上限があり、それをどうやりくりして進むかが楽しさの核心だったと振り返ります。
(昔は)ボスの前で回復できるとかもなかったりするので、あれが楽しかったイメージありますね。
田中さんは、HPとMPを体力と精神力に例えます。体力だけで押し切ろうとして失敗し、慌てて魔法を覚えに行くタイプだったと言います。
とにかく体力と攻撃力とがあればなんとかいけると思ってやるんだけど、やっぱダメだな、この(MPで)ちゃんと魔法とか使わなきゃいけないんだなって後で気づいて。
2周目は小さなメダルとレベル99
田中さんは、2周目になると本編とは関係ない要素を遊びに行くと話します。小さなメダル集めやカジノなどのサイドストーリーです。
(2周目は)小さなメダルっていう本編には全く関係ないものを世界中から探しに行って。
最後はパーティーのレベルを全部99まで上げないと終われないタイプだとも言います。ただし、寄り道は本筋を終えてからにするのが特徴です。
田中さんは、この順序が今の人生そのものになっていると気づきます。40歳でサラリーマンをやめたことを、ボスを倒してから世界を冒険する感覚に重ねます。
一応なんかまあボスみたいなの倒したから、ここから先はなんか世界冒険しようみたいな。
武器を先に買うか、防具を先に買うか
お金が限られる中で、武器を先に買うか防具を先に買うかという分岐にも、二人の判断軸が分かれます。
田中さんは武器を優先します。攻撃力で先に倒し、相手に攻撃される前に終わらせる考え方です。防具は強いボス戦でしか要らないと割り切ります。
とにかく攻撃力で先に倒せるやつだけを倒しまくって、相手に攻撃される前に終わりにしちゃう。
けんすうさんは全く逆で、死んだら終わりだから、死なないように防具を揃えると話します。
死んだら終わりだから、死なないように防具を揃える。
さらに毒の沼を渡る場面でも話が及びます。呪文でダメージを防ぐか、突っ切るかという問いです。
この点では二人とも一致します。トラマナは使わず、毒の沼はそのまま突っ切る派でした。MPのほうが貴重だという判断です。
(毒の沼は)行っちゃいますね。まあMPの方が貴重ですしね。
8割準備から3割着手へ
プレイスタイルの話は、仕事での準備の姿勢へと広がります。田中さんは自らを準備マンだと語ります。
ちゃんとやって負けない試合の状態を作ってからやるってすごい性格で。
これに対してけんすうさんは、負けない場所で頑張っても経験値がおいしくないと指摘します。自分のレベルより先に進んだほうが効率がいいという発想です。
進んでる方が自分のレベルに対して経験値が多いじゃないですか。(中略)こっちの方が効率的じゃないですか。
田中さんは、この効率のよさを40歳になるまでわからなかったと振り返ります。けんすうさんが自分よりレベルの高い人にどんどん絡んでいく姿を、当初は理解できなかったと言います。
自分は器ができてから絡むものだと思い込んでいたが、実際になし崩し的に会ってみると意外となんとかなった、というのが田中さんの実感です。
ここで田中さんは、専門外なのに年間200回もAIの講演をする大学教授の例を挙げます。3割わかったらやると決めている人物です。
(教授は)三割ぐらいはわかると、雰囲気で。で、その瞬間に三割できたらもうやるって決めて。
田中さん自身も、それまでは8割できたらやろうという姿勢だったが、3割で動かないとダメだと考えを改めたと話します。
けんすうさんも、無理そうな講演でも受けてしまえばやらざるを得ず、意外とそこそこの水準まで到達すると同意します。積み上げようとするほうがかえって大変だという逆説です。
8割わかってから着手する。器ができるまで格上の人には近づかない
3割わかったら先に引き受ける。締め切りが決まれば1年分の準備が1週間で終わる
復活の呪文と、逃げる8回バグの正体
話題はドラクエの裏技やバグに移ります。田中さんは、ドラクエ2の復活の呪文「ゆうていみやおう」を口にし、二人でユニゾンになる場面もあります。
けんすうさんは、こうしたバグを見つけるのが向いているタイプだと話します。ミスしそうな箇所を予測する感覚が、WEBサービスのバグ発見にもつながっているそうです。
WEBサービスのバグとか発見するのすごい得意なんで。
続いて、逃げるを8回繰り返すと会心の一撃しか出なくなるという有名なバグの仕組みを、けんすうさんが解説します。
けんすうさんによれば、逃げるたびに乱数が動き、その値がパルプンテの結果に使う乱数と共有されていたため、会心の一撃が出るようになったといいます。
(他の乱数を使い回していて)それがちょうどあのパルプンテのところの乱数に変わっちゃうらしいんですよね。
田中さんはこの説明に強く反応し、パルプンテと繋がっていた点に驚きます。
めちゃくちゃ今日一番なんか興奮してます。パルプンテと繋がってだって。
けんすうさんは、これが製作者の工夫があったからこそ起きたバグだと補足します。容量の制約の中で乱数を使い回した結果だという見方です。
容量制約が生んだロトとゲーム音楽
話は、容量の制約こそがクリエイティビティを生んだという方向へ深まります。
けんすうさんは、勇者の称号「ロト」も、使えるカタカナが一部しか登録されていなかったために生まれた名前だと話します。
(ロトは)使えるカタカナ少なかったからそうなったみたいな。
田中さんは、音楽にも同じことが言えると加えます。同時に鳴らせる音の数が決まっていたため、必然的にあの音階になった面があるという指摘です。
けんすうさんは、初代スーパーマリオでも同様の工夫があったと紹介します。地形の絵柄を反転させて使い回すなど、限られた容量で表現していたという話です。
二人は、ゲームの面白さは容量の大小に左右されないという点で一致します。
ゲームの面白さは別に容量によって全く左右されてないんで。
転職システムとリメイク版ドラクエ3
転職システムも、二人にとって示唆に富む仕組みでした。田中さんは、レベルは1に戻るが能力は引き継げる設計をよくできていると評価します。
(転職は)レベルは一に戻っちゃうんだけど、今まで持ってた能力は引き継げるっていう。
話はリメイク版のドラクエ3にも及びます。田中さんは30年前のスーパーファミコン版と記憶が混ざり、最近Switchで出た新しいリメイクとの違いにけんすうさんが気づく場面もあります。
けんすうさんは、最近出たリメイクは一から作り直されていて、ストーリーもシステムも大きく変わっていると勧めます。
(新しいリメイクは)全部違うんですよ。もともとの本当に一から作ってて、ストーリーもなんか全然重厚だし。
さらにけんすうさんは、リメイクではドラクエ3・1・2のつながりが丁寧に描かれていると話します。
たとえば竜王の裏設定です。3で集めるオーブから生まれる存在が、後の竜王につながっているという解釈をけんすうさんが語ります。
(ドラクエ)2の竜王のひ孫はいいやつなんですよ。もともとは別に悪い竜じゃなかったみたいな。
役割分担とダイバーシティの学び
ドラクエから学んだこととして、けんすうさんは役割分担を挙げます。
それぞれに強みがあり、互いを補わないといけないという感覚は、小学生の頃に学ぶこととして重要だったと話します。
田中さんは、パーティーの並び順の話から、HPが高い人を前に置く発想がビジネスやサッカーにも通じると加えます。
けんすうさんは、万能の人はいないという感覚が自分の中に強く根づいていると語り、これをダイバーシティの学びだと表現します。
ドラクエ式暗算が投資会議で効く
もう一つ、田中さんが地味に役立っていると語るのが概算力です。戦闘中に暗算を続ける経験が、ビジネスに効いているといいます。
たとえば全体攻撃を何発耐えられるか、あと何ターンで倒せるかを、確率まで含めて計算し続ける必要があります。
あと何発で倒せるから、もう最後は捨て身でいいから、四人のうち三人死んででも最後の攻撃が届くところまでやるとかいうギリギリマネジメント。
この概算力が、投資の会議で効いてくると田中さんは言います。金融の現場では、まだ誰も数字を持っていない段階で誰かが計算を始めるからです。
売上から利益率、営業利益、マルチプル、時価総額へと即座に概算していく会話に、ついていける人とついていけない人が分かれるといいます。
その概算で話についてった人だけが、もう会議でずっとぐるぐる話しちゃってて。
田中さんは、公文をやっていた人や、日本・中国・インドなど暗算に強い人が、こうした場面で活躍しやすいと観察しています。
売上を概算
要素を掛け合わせ、ざっくりの売上を出す
利益率をかける
利益率から営業利益を見積もる
マルチプルをかける
倍率をかけて時価総額を概算する
議論に参加
この暗算についていける人だけが会話を続けられる
語らない文学性と、村人の話は聞いておく
けんすうさんは、ドラクエの魅力として、多くを語らない点を挙げます。全部を明かさない作りが文学的だと感じています。
(ドラクエは)なんかあんまり明かさない。(中略)文学的ですよね。
ファイナルファンタジーが一本の映画のように展開するのに対し、ドラクエは装備できるキャラクターから設定を推測させる余地があると二人は語ります。
話は『ダイの大冒険』にも及び、けんすうさんは今連載中のアバン先生を主人公にした外伝が非常に面白いと勧めます。
もう『ダイの大冒険』超えるぐらい今面白いかもしれないです。
最後に田中さんは、村人と会話して一次情報を取りに行こう、という格言めいた教訓を置きます。話を聞かずに進んでイベントが発生せず、最初の村からやり直した経験があるそうです。
まとめ
ドラゴンクエストの遊び方には、性格やキャリア観がそのまま表れます。準備を重ねて負けない試合をする田中さんと、目的地へ一直線に進む けんすうさんの対比を通して、リソース配分や着手のタイミングという普遍的なテーマが見えてきた回でした。
- プレイスタイルの違い(準備型と特攻型)は、そのままサラリーマン道と起業家道の違いに重なる
- 8割準備してから動くより、3割わかった時点で引き受けるほうが、結果的に速く成長できる場面がある
- 戦闘中の概算を繰り返した経験が、投資会議での暗算力として役立つことがある
- 容量やカタカナの制約が、ロトの名や独特の音楽といったクリエイティビティを生んだ
- 役割分担や「万能の人はいない」という感覚は、ドラクエのパーティー編成から学べる



