面白いボードゲームは、宣伝なしでも売れるのか?
今回Manaさんが取り上げたテーマは、ボードゲームの「商品力」と「プロモーション力」です。商品力はボードゲームの面白さ、プロモーション力は商品を売るための宣伝力を指します。
Manaさんによれば、両方がそろわないとボードゲームが売れにくいのは当然です。それでも、極端に考えたときに「どちらが大切なのか」という議論はよく起こると話します。
なんか商品がいいだけで売れると思うなよみたいな話もあれば、本当もうプロモーション力、宣伝力が今は重要だよねっていうものであったりだとか、結構いろんなものが議論に起こるのかなと思っております。
そこでManaさんは、面白いボードゲームは宣伝なしで売れるのか、逆に面白くないボードゲームでも宣伝次第で売れるのか、という2つの問いから考えを進めます。
面白いボードゲームについて、Manaさんはまず口コミの力を挙げます。本当に面白ければ、遊んだ人が自発的に広めてくれるので、作者が宣伝しなくても自然に広がっていくのが理想だといいます。
ただし、Manaさんは口コミにも出発点が必要だと指摘します。最初に「面白い」と思ってくれる1人を見つけるところには、ある程度のプロモーションが必要だという考えです。
一人が起点で口コミが広がっていくのと、100人が起点で口コミが広がっていくの、全然スピード感と広がり、全然違うんですね。
このため、どれほど面白いボードゲームでも、プロモーションがなければそれなりにしか売れないだろう、というのがManaさんの見立てです。
宣伝を極めれば、どんな商品でも売れる?
反対に、プロモーションを極めればどんな商品でも売れるのか。この問いに対して、Manaさんは「正直売れるとは思います」と答えます。マーケターがその分野を本格的に研究しているからです。
いわゆる面白いかどうかっていうよりも、面白そうって思わせるのかどうかっていったところ、そこが肝になります。
一方でManaさんは、面白くない商品を宣伝で売り続けるのはとても労力がかかると話します。買った人が面白くないと感じる繰り返しになるので、口コミは広がらず、広がるとしても悪い評判になるからです。
商品だけを極めても、スタートの人数が少なければ口コミはそこまで広がらない。宣伝だけを極めても、売れ続けるには宣伝し続けるしかない。Manaさんはこの両極端を、それぞれ限界のある姿として描きます。
口コミは期待できるが、起点となる人数が少ないと広がりが遅い
売ることはできるが、悪い口コミしか生まれず自転車操業になる
面白さは何で測るのか
Manaさんは、そもそも両極端で語ること自体がナンセンスだと続けます。鍵になるのは、うまくいったかどうかをどう測るのかという点です。
Manaさんによると、面白さは定性的 ── 数字ではなく性質や質で捉えるものを指す言葉。反対に、数や量で表せるものは「定量的」と呼ばれますなものです。面白さは人によって違い、同じ人でもどれくらい面白いかを正確には測れません。
さらにボードゲームの面白さは、一緒に遊ぶ人とのコミュニケーションや場の空気感、同卓する人との相性にも左右されます。Manaさんは、一概に測れないものだと強調します。
では、測れない面白さは誰が判断するのか。世の中の大半の人が面白いと言うかどうかは一つの基準ですが、Manaさんはゲームジャンルによって事情が違うと指摘します。
プレイヤー人口の少ないニッチなジャンルは、数で比べると人口の多いジャンルに必ず負けます。それでも、そのゲームが面白くないわけではない、というのがManaさんの考えです。
世の中の評価といったものもあるのかもしれないですけれども、一番重要視するべきはやっぱり作者自身だと思うんですね。
Manaさんは、作者自身が面白いと思えるかという自信の度合いこそが商品力だと考えています。本当に面白ければ、同じ感性の人に刺さって口コミで広がっていくはずだと話します。
数字で測れる宣伝力と、比べられない2つの軸
ボードゲームの面白さとは対照的に、Manaさんはプロモーション力を「何個売れたか」で測れるものだと説明します。100個、1000個、1万個という定量的な結果で評価できるということです。
さらにManaさんは、販売数を見ながら宣伝の仕方を改善していけることも、プロモーションの特徴として挙げます。作者自身の感覚ではなく、実際どうだったかという結果論で測れる世界です。
マーケターとかプロモーションをやってるような人っていったものは、この数字をKPI、いわゆる目標値として定めて、そこに切磋琢磨するんですね。
Manaさんによれば、マーケターにとっては扱う商品が何であってもよく、数字を達成すれば成功です。そのため、数字を追うのか、作者のこだわりである面白さを追うのかは、そもそも向きが違います。
| 項目 | 商品力 | プロモーション力 |
|---|---|---|
| 指すもの | ボードゲームの面白さ | 商品を売るための宣伝力 |
| 性質 | 定性的 | 定量的 |
| 測り方 | 作者自身の自信の度合い | 何個売れたか |
| 主に追う人 | 作者・クリエイター | マーケター・プロモーター |
Manaさんは、定量的なものは定量的なものと、定性的なものは定性的なものとしか比べられないと話します。どちらが大切かは、そもそも比較する対象ではないというのがこの回の中心にある考えです。
「100個売れた」は多いのか少ないのか?
Manaさんは、定性と定量は常にセットで考えるべきだと話し、それはボドゲビジネスでもボドゲビジネス以外でも同じだと付け加えます。例として挙げたのが「100個売れた」という数字です。
例えば100個売れました。これは多いのか少ないのか。これって測れないと思うんですね。
Manaさんによると、数字は何かと比較して初めて多い少ないを語れます。自分の感覚で判断すれば、100個を多いと感じる人も少ないと感じる人もいて、それは主観、つまり定性的な判断になります。
ボードゲームの面白さも同じです。面白さ同士なら議論はできますが、1万個売れたから面白いとはいえません。Manaさんは、比較のポイントは違うものの、常にセットで考える必要があると整理します。
ボードゲーム作家が優先すべきなのは面白さ
では、定性と定量のどちらが重要なのか。Manaさんは、マーケターにとっては何個売るかが商品よりも最重要だと認めたうえで、立場によって答えが変わると話します。
番組を聴いているのはボードゲーム作家、つまり作る側のクリエイターが多いはずだとManaさんは考えています。その立場なら、何個売るかより、どれだけ面白い自信作を作れるかのほうが重要だといいます。
自分が面白くないなって思って作ったものがたくさん売れたとしても、誰が嬉しいのかっていう話なんですよ。
Manaさんは、自信のない作品が1万個、10万個、100万個と売れても、作者は嬉しくないと話します。買った人も楽しめないので、詐欺に近い「買ってもらって終了」の形になってしまうからです。
(面白くないものが)どれだけ売れたとしても、ほんと世界が良くなるとは思えないんですね。
プロモーションに注力する人がいることを、Manaさんは否定しません。ただ、それだけになってしまうと作者としては微妙だと考えています。
ニーズから作るのは順序が逆?商業とインディーズの違い
Manaさんは、世の中で受けそうなものや流行、刺さる言い回しを起点にしてボードゲームを考えるのは「ちょっと順序逆なんじゃないか」と話します。ただし、企業活動になるとまた別かもしれないとも添えています。
商業デザイナーの場合は、テーマや方向性が決まった状態からゲームを作ることがあります。Manaさんはこれを別のケースとして扱い、クライアントの条件の中でいかに面白いものを作るかに取り組んでいると捉えています。
クリエイターとしては、その渡された予算、渡された範囲、渡された条件の中で、いかに面白いものを作るのかっていったものは、仕事として捉えるとめちゃめちゃ重要です。
一方のインディーズでは、条件がすべて作者次第です。Manaさんは、納期も予算も自由で、ビジネス的な制約がないからこそ、クオリティにいくらでもこだわれると話します。
テーマや予算、条件が決まっていて、その制約の中で面白さを追求する
納期も予算も自由で、いかに面白いものを表現できるかの勝負になる
作るフェーズと売るフェーズはなぜ分けるべきか
Manaさんの結論は、商品作りとプロモーションをフェーズで分けることです。クリエイターとしてまず面白さを追求し、出来上がった作品をどう広めるかはその後に考えます。
チームなら役割分担が明確な場合もありますが、多くのボードゲーム作家は個人で動いています。Manaさんは、個人が両方を同時にやったり、売れる数を基準に作るものを考えたりすると、制作が崩壊しやすいと指摘します。
Manaさんは、売るフェーズでは作家としての自分を忘れたほうがいいと話します。こだわりが残っていると、宣伝文句に対して余計な抵抗が生まれるからです。
あの宣伝文句とかもなんか「ね、ちょっとそれは違うんじゃないか」とかいろいろ出てくるわけなんですよ。「そうは言いたくないな」だとか。
そこはもうスパッと頭を切り替えて、こっからはプロモーターの私だ、マーケターの私だ、きっちりそれを分けるべきだと思います。
Manaさんの考えでは、プロモーションと商品開発は、それぞれ担うべき人も目指す方向も違います。だからこそ、フェーズを分けて互いに干渉しないことが重要だといいます。
切り替えができると何が変わるのか
1人で活動していると、作る考え方と売る考え方が行ったり来たりしやすい、とManaさんは話します。そのため、意識的に切り替えることを勧めています。
Manaさんによると、この切り替えが身につくと、チームメンバーが増えたときに役割分担しやすくなります。商業的な依頼を受けたときも、制約の中で面白いゲームを作る頭にすぐ切り替えられるといいます。
「どちらが大切か」の議論を、Manaさんは不毛だと話します。ただ、「両方だよ」「人それぞれだよ」で終わらせるのは発展性もなく面白くないので、今回は役割とフェーズという角度から語ったと締めくくります。
作り終えてから見えてくる「尖らせすぎ」の後悔
Manaさん自身も、ボードゲームを作るときは面白さのことばかり考えているといいます。その結果、売る段階になってから振り返ることもあるそうです。
「よし出来上がった、売ろう」ってなったら、「なんでこんな尖らせたんだよ」とか、「表現しにくいな」とか。
それでもManaさんは、作ることと売ることを同時にやるのではなく、分けて考える方法を続けています。どちらも中途半端になっている人は、少し意識するだけで目線が広がるのではないか、と呼びかけて配信を終えました。
まとめ
ボードゲームの面白さは定性的で、宣伝力は販売数で測れる定量的なものです。Manaさんは両者を比べる議論を不毛だとし、作家はまず自信を持てる面白い作品を作り、そのあと頭を切り替えて売ることに集中すべきだと話しました。
- 面白いだけでは口コミの起点が足りず、宣伝だけでは悪い口コミで自転車操業になる
- 面白さは作者自身の自信で測り、宣伝力は何個売れたかで測る
- 定性と定量はそもそも比較できないが、常にセットで考える必要がある
- 作家はまず面白さを追求し、売る段階ではプロモーターとして割り切る
- 作るフェーズと売るフェーズを分けると、チーム作業や商業案件にも対応しやすくなる



