ベンチプレス85キロと、Xで起きた「知らない景色」
メタ仕事論の冒頭は、聞き手の岡島さんの筋トレ報告から始まります。岡島さんはベンチプレスで85キロを上げられるようになったそうです。
岡島さんの記録が伸びたきっかけは、筋トレに詳しい友人にフォームを見てもらったことでした。我流のフォームを直したら、重量が一気に上がったといいます。
うまい友達にフォームを見てもらったんですよ。「めちゃくちゃな上げ方してるね」って言われて。直したら結構ギュッと上がって。
玉置さんは「何事もやっぱフォーム大事ですね」と応じます。岡島さんも、がむしゃらにやる時期を経てから技術のある人に見てもらったのがよかった、と振り返っています。
そこから話題は、テストステロン ── 筋トレの効用を説く著書やSNS発信で知られる人物。ビジネスや人生論にも筋トレを結びつける発信で、多くのフォロワーを持っていますさんが玉置さんを取材して書いた有料noteの記事へ移ります。この記事が大きな反響を呼び、番組にも新しいリスナーが増えているようです。
(テストステロンさんが)書いてくださった記事が、有料noteなんですけど、すごく大盛況でびっくりしました。
Xのフォロワーさんがほぼ倍増していて。もうなんか、知らない景色を見ていますね、今。
玉置さんは、筋トレ好きの人たちは行動的なので、番組の告知も活発に拡散してくれていると笑います。
飲み会の誤返信をした新人は、評価を下げたのか?
この回のテーマは「評価されそうで評価されないこと、評価されなそうで評価されること」です。玉置さんは、会社員の評価は数字の実績以外の部分で、上司の見方と本人の想像がずれていることが多いと話します。
玉置さんがきっかけとして紹介したのは、Xで見かけた投稿です。ある新人が、飲み会の出欠確認メールに「行きます」と全員宛てで返信してしまいました。宛先には役員や社長も入っていました。
投稿した上司は、偉い人に失礼なことをしたと青ざめ、お詫びのメールを書こうとしていました。ところが当の新人は平然としていて、むしろ社長から「私も行きます」という返事が来た、という内容だったそうです。
経営者の立場、私とかからすると、こう前向きな行動する空気を出してくれる人っていうのはすごくありがたいんですよね。
玉置さんの考えでは、全員が「誰か行くのかな」と様子をうかがっているより、「私行きます」と手を挙げる人が突破口を開くほうが、職場全体の空気が前向きになります。
玉置さんは、会社ごとに社風や規模、業種による違いはあるとしたうえで、仕事を前に進めるかどうかという軸は、どの企業でも本来同じはずだと続けます。
たとえば長時間働く人ほど評価される職場があったとしても、卓越した成果を出す人を評価しないことはないはずだ、と玉置さんは言います。もし成果を出しても評価されないなら、転職を考えたほうがいい、という立場です。
「完璧に仕上げてから見せる」が逆効果になるわけ
玉置さんが最初に挙げた「評価されそうで評価されない行動」は、与えられた仕事を完璧に仕上げてから上司に見せることです。漫画に出てくるような「すごいな君は、完璧じゃないか」と褒められる場面を、多くの人が思い描いているといいます。
岡島さんも、そうした場面は仕事の原始的なイメージとして、いつの間にか根付いているかもしれないと応じます。
でもね、実際は3割とか着手ぐらいの時点で見せてくれた方がありがたいんですよ。
玉置さんがそう考える理由は、仕事の依頼にはどちらが悪いわけでもない認識のずれがつきものだからです。上司は時間がなかったり、相手がわかっているだろうと思ったりして、文脈を省いて依頼することがあります。受け手側も、前回と同じだろうと思い込むことがあります。
思い込みとかもありますし、前回こうだったから今回もこうだろうとか、やっぱり「だろう」なんですよ。お互い「だろう」対「だろう」で、仕事を依頼してるケースって結構多いんですよね。
だからこそ、下絵や草案の段階で「こんな感じでいいですか」と認識を合わせてから完成に進むほうが、完成度は上がり、手戻りも減ります。結果として、途中で見せる人のほうが「仕事ができる」につながるというのが玉置さんの見立てです。
認識のずれが最後まで残り、ずれていた場合は大きな手戻りになる
草案の段階で「だろう」同士のずれを解消でき、完成度が上がり手戻りも減る
失敗を挽回してから報告するのは、なぜ危ういのか
完成度の低いものを見せたくない気持ちの裏には、それを自分の実力だと思われたくないという不安があります。玉置さんは、失敗をネガティブな報告として上司に伝えるのを避けたくなる気持ちも同じだと話します。
玉置さんによると、失敗を自分で挽回してから何事もなかったように報告したい、あるいは「リカバリーしました」と報告したい、と考える人は少なくありません。
(挽回してから報告するほうが)リスク高いんですよ。
だって挽回できなかったら大事になってるんですもん。
岡島さんは、ミスの段階で上に報告すれば、上司を巻き込めるので本人にとってもダメージコントロールになると補足します。玉置さんも、失敗を早めに報告できる人のほうをよほど評価すると応じています。
玉置さんはこの違いを、番組でたびたび話している「矢印がどちらを向いているか」で説明します。完璧に見せたい、失敗を隠したいという人は、矢印が「自分がどう思われるか」に向いています。
ちゃんと外に向いてる人っていうのは、仕事としてチームとしてですよね。自分一人でやってる仕事じゃないじゃないですか。
矢印が外に向いている人は、上司も同僚も含めた会社というチームで仕事を進めていることを理解し、どう成果を出すかを考えています。玉置さんは、そういう人を「伸びる人」と評価するといいます。
へぼいアウトプットや、ミスする奴だと思われたくない。結果、任せづらい人になる
チームとしてどう成果を出すかを考える。途中経過や失敗も共有でき、任せたくなる人になる
岡島さんは、本人はいい仕事をしようと頑張っているのに、その頑張りが「任せづらい」という評価につながってしまう点を確認しています。玉置さんは、自分が上司の立場ならどちらに任せやすいかを考えてほしいと話します。
上司の指示どおりに動いたのに、はしごを外されたら?
次に玉置さんが取り上げたのは、言われたことをきちんとやったのに方針が変わって無駄になった、評価もされなかった、という職場でよく聞く不満です。
期待通りに振る舞うことっていうのって、当たり前っていうふうに評価されちゃうんですよね。言われたことをちゃんとやるっていうのって当たり前なんですよね。
玉置さんは、変化の激しい環境では1か月後に正反対の方針になることもあると話します。朝令暮改 ── 朝に出した命令を夕方には改めること。方針がころころ変わる様子を指す言葉ですは起きるものだという前提に立つほうが、精神衛生上いいという考えです。
ただし玉置さんは、方針転換で仕事が無駄になる事態を避ける方法もあると続け、2つ目の「上司が青ざめた話」を紹介します。
その話では、役員から部長、新人まで並ぶ場で指示を受けた新人が「これは何のためにやるんですか?」と聞いたそうです。部長は「役員がやれと言っているのだから黙ってやれ」と思い、慌ててフォローしようとしました。
ところが役員にとって、新人の質問はいい質問でした。役員が目的を説明すると、新人は「であれば、こっちの方がいいんじゃないですか」と代案まで出し、結果的にそれがよかったといいます。
指示を受ける
役員もいる場で「これをやってください」と任される
目的を聞く
新人が「これは何のためにやるんですか?」と質問する
説明を受ける
役員が「このためにやる」と目的を説明する
代案を出す
新人が目的に照らして「こっちの方がいいのでは」と提案し、それが良い結果につながる
朝令暮改をしたい上司っていないんですよ、したくてやってる人は。
玉置さんによると、上の立場の人は現場が方針転換を嫌がることもわかっていますが、現場の細かい仕事までは見えていないことがあります。だから現場が目的を理解し、すぐダメになるから別の方法がいいと言ってくれるのは、とてもありがたいことだといいます。
玉置さんは、この新人の行動を自分の仕事にオーナーシップ ── 任された仕事を「自分ごと」として捉え、主体的に責任を持って進める姿勢のことがある証拠と見ています。言い方次第では職場で注意されることもあるとしつつ、意図や目的を理解しようとする姿勢は評価されるべきだと話しています。
「断る」ほうが評価される場面とは
玉置さんは、何でも「はい、わかりました」と引き受けるのが評価される姿勢だと思っている人が多いと指摘します。そのうえで、きちんと断るのであれば、断るほうが評価されることもあるといいます。
玉置さんの理由は、チームの仕事は適切なタイミングで適切な人がやることで回るからです。無理に引き受けて結局できなかった場合、全体が止まったり支障をきたしたりします。
もちろん「嫌です」「えー」といった言い方では評価されません。玉置さんは、引き受けると別の仕事が止まって全体のマイナスになると説明する、優先順位をつけ直す、条件を交渉する、といった伝え方を挙げます。
(断り方を提案や交渉にした)こちらの方が、よっぽど仕事を任せられるんですよね。
玉置さんは、コンプライアンス ── 法令や社会的な規範を守ること。近年は長時間労働や健康管理も、企業が守るべき範囲として重視されていますを重視する会社が増えた今、笑顔で引き受けて心身を壊すほど働くことは、会社にとっても望ましくないと強調しています。
長時間労働の職場で見られている「働いてる感」
長時間働くことを美徳とする会社もありますが、玉置さんは正反対の考えで、効率を上げて働く時間を適正にしたうえで成果を出す人のほうがありがたいと話します。
一方で玉置さんは、長時間労働が評価される職場でも、実際にタイムカードを見て評価しているところは案外少ないと指摘します。
働いてる感の方が印象なんですよ、大体。
岡島さんも、月の総労働時間より、上の人がいる時間に夜パソコンに向かっている姿を何回見せたかで決まっている気がすると応じます。毎日定時に「お疲れ様です」と帰る姿だけを印象づけると、「いつも定時で帰る人」になってしまうわけです。
玉置さんは、日本の職場には「俺もしんどいんだからお前もしんどい思いをしろ」という足の引っ張り合いもあると言います。
ほんと嫌なんですよね、僕それ。
玉置さんの答えは、その職場にいたいならうまく振る舞うしかない、というものです。たとえばみんなが嫌がる仕事を引き受ける、いざという時は最後まで残って「帰っていいよ」と言う、といった振る舞いがあれば、「いつも早く帰る人」とは見られにくくなります。
ただし本質的には、コンプライアンスを守りたい会社にとって、短時間で効率よく成果を出す人のほうがよほどありがたいはずだ、と玉置さんは念を押しています。
謙遜は美徳か、それとも損か
日本の職場では「私なんかまだまだ」「私だけじゃなくてみんなのおかげ」と、自分の成果を控えめに語る文化があります。玉置さんは、自分の成果はうまく表現したほうがいいとはっきり言います。
(社長が)「何々さんが頑張ってくれたんですよ」って時に、「いやいや、そんなことないんですよ、私なんか」って言ってると、「あ、頑張ってないんだ」しかないんですよ。
玉置さんによれば、何百人もの社員を抱える社長は細かく見ていないことが多く、忘れることもあります。縁の下の力持ちとして働いていても、悪気なく気づかれないまま評価されないことがあるのです。
岡島さんは、前職で初めて会社員になったときの体験を話します。最初の評価面談で自己評価を「B、あまり頑張れませんでした」と答えたところ、社長から「損するから、もっとアピールしたほうがいい」と言われたそうです。
もうそれ以上知りようないですからね、情報として。
岡島さんはその後、頑張ったことを書き出して「すごく頑張ったんですよ」と伝えられるようになったといいます。玉置さんは、自慢と思うと抵抗があるので、自慢ではなく事実を伝えると考えればいいと助言します。
「私なんか全然」「皆さんに助けていただいて」と謙遜し、何をしたのか伝わらない
「これに注力して、このような結果を出した」「この役割を果たした」と事実で語り、仲間の貢献も事実で伝える
玉置さんは、手柄の横取りは論外だとしたうえで、チームの仲間の工夫も「デリバリーは何々さんがこう工夫してくれた」と事実で伝えてあげればいい、と話しています。
自分の責任範囲だけ完璧なのに、なぜ評価されない?
玉置さんが次に挙げたのは、責任感が強く「私の仕事はここまで。この範囲では完璧にやります」と自分の責任範囲を絶対に出ない人です。この行動も、評価されそうでされないといいます。
玉置さんの説明では、ある人の担当範囲だけが完璧でも、他がすべてダメならチームの成果は出ません。自分のところが70点になっても、残り30点を他の部分のサポートに回して結果を出すほうが成果につながります。
たまにいるんですよ。「私は私の仕事を全うしたのに、どうして評価されないんですか?」っていう人。
玉置さんの例えでは、チームで売上目標を追っているときに「完璧な商品を作ったのに」と言っても、売上が達成されていなければ評価のしようがありません。減点はされないものの、プラスに評価するのは難しい、という整理です。
岡島さんは、他人の責任範囲に勝手に踏み込むと、かえって和を乱すのではないかと質問します。
遅延してるなとかうまくいってないなっていう時って、何か自分の方でできることはないかなって考えることはできると思うんですよ。
玉置さんの答えは、勝手に入るのではなく「困っているならこれをやろうか」と提案し、相手がお願いしますと言えば手伝う、というコミュニケーションの問題だということです。
逆に、遅れていると知りながら全く関わらない場合、「何が悪いんですか」と聞かれれば何も悪くはありません。ただ、今後仕事を任せたり取り立てたりするときには「違うな」となりやすい、と玉置さんは話します。
会議で必ず発言する人は、本当に積極的なのか
玉置さんは、冒頭の飲み会の新人の話に戻り、経営者の仕事は組織をマネジメントすることだと話します。
組織をいかに生産的な行動に向けさせるかなんですよね。
そのため、ランチのたびに会社の悪口を広める人より、「私やります」と手を挙げる人や「みんなでやろうよ」と周りを動かす人のほうが、経営者にとってはありがたい存在です。
一方で、評価されたくて「会議のたびに必ず発言する」「必ず質問する」と決めている人もいます。玉置さんは、その行動が組織を前に進めているかが問題だと言います。
岡島さんは、これを先ほどの矢印の話だと整理します。場が前に進むかではなく、自分が発言して目立つことに矢印が向いている、ということです。
だからその(目立つための発言は)積極的じゃないんですよ。
玉置さんが評価するのは、みんなが質問しづらい空気の中で「初歩的な質問なんですけれども」と本気で手を挙げる人です。そうすると、他の人も「このレベルの質問をしていいんだ」と続けやすくなります。
岡島さんは、上司が意味ありげに頷いているのに実はわかっていない状態は、さらに上の上司からすると怖いと応じます。玉置さんは、こうした人は自分の担当より一段高い視座で働いていることが伝わり、プロジェクトリーダーの候補に名前が挙がるようになると話します。
少人数のチームで仕事を任せる立場にもある岡島さんは、目的を質問してくれる人や、引き受けられないと伝えてくれる人にこそ任せたい、と実感を込めています。
ミスゼロより、組織を前に進める経験を
玉置さんは、評価を意識すると多くの人が学校の点数と同じように「とにかくミスをゼロにする」ことを思い浮かべ、自分に矢印を向けたまま得点を取ろうとすると指摘します。どちらも実は評価されないので、やめたほうがいいという結論です。
岡島さんは、絶対にミスできない仕事もあるとしたうえで、ミスを込みで最終的にうまくいかせるのが仕事だと受け止めます。玉置さんも、ケアレスミスとは別に、新しい挑戦には失敗がつきものだと話します。
玉置さんによれば、失敗したときにすぐ報告し、上司と相談しながらリカバリーする態度は信頼につながります。失敗から学んで成長できるので、ミスを恐れて閉じて働く人より成長も早く、組織にとってもプラスです。
そのうえで玉置さんは、事業に貢献する動きを誠実にしているのに評価されないのであれば、他の会社ならもっと評価される可能性もある、と付け加えます。
岡島さんは、媚びが通用する組織がこの先も続くなら役に立つこともあるかもしれない、と笑いながら応じます。玉置さんは、本人が気に入っているならそれでいいとしつつ、頑張っているのに評価されず悶々とするなら考え直そう、と話を締めくくります。
番組の最後には、玉置さんが運営するキャリア逆転塾ヒトハタの相談会の案内がLINEで先行して届くこと、玉置さんにメディアや書籍の依頼が多方面から来ていることが紹介されています。
まとめ
この回で玉置さんが繰り返し示したのは、評価は「自分がどう見られるか」ではなく「仕事やチームを前に進めているか」で決まる、という視点です。完璧主義や謙遜、言われたとおりにこなす真面目さは、評価する側から見ると任せづらさにつながることがあります。
- 完成させてから見せるより、3割の段階で見せて認識のずれを早めに解消するほうが評価される
- 失敗は挽回してからではなく、すぐ報告して上司を巻き込むほうが信頼につながる
- 指示の目的を聞く、代案を添えて断る、優先順位や条件を交渉する行動は、任せたくなる人の特徴になる
- 謙遜せず、自分と仲間の成果を事実として伝えることが大切
- 自分の担当範囲だけでなくチームの成果に目を向け、組織を前に進める行動が評価と成長につながる





