新作情報の解禁タイミングが二極化している
今回のテーマは、新しいボードゲームを発売するときに、その情報をいつ解禁・告知・発表するのかという問題です。
Manaさんは、このやり方が二極化していると指摘します。ひとつは発売ギリギリまで「カミングスーン」で期待を煽り、直前にドンと情報を出すスタイルです。
もうひとつは、序盤から情報を小出しにして発売まで気持ちを高めていく、プロセスエコノミー ── 完成した商品だけでなく、それを作る過程そのものを見せて価値やファンを生み出す考え方。制作の途中経過が発売への期待や応援につながります的なやり方です。
Manaさん自身は、早め早めに出していったほうがいいという立場を、この配信で繰り返し伝えてきたといいます。ただ実際にはギリギリに出すところもあり、その違いは何なのかを掘り下げていきます。
発売直前まで期待を煽り、直前にまとめて情報を出す
序盤から情報を出し、発売まで少しずつ気持ちを高めていく
テレビとYouTubeで変わった「結論をいつ出すか」
ここでManaさんは、話を一度テレビ番組に飛ばします。テレビと、今のYouTubeやブログといったメディアでは、状況が変わっているというのです。
その違いは、結論から話すのか、最後まで結論を引っ張るのか、という点にあります。昔のテレビは、大物ゲストが出るときにその名前さえ隠し、前半で期待を煽っていました。
なぜそうするかというと、期待を引っ張ってできる限り長く見てもらうのがテレビの目的だからです。テレビは番組開始から見る人だけでなく、たまたまつけてそこから見る人も多いメディアです。
番組終了まで引っ張ることで、CMも見てもらえる。この力が大きく働いていたとManaさんは説明します。
この手法が通用したのは、テレビが一度つけたらぼーっとつけっぱなしにされるメディアだからです。いちいちチャンネルを変えないユーザーが多いので、本題を後回しにして引き延ばしたほうがしっかり見てもらえました。
一方で今の時代は、YouTubeでも「つまらない」「この先に何があるかわからない」「自分に必要かわからない」と感じると、すぐ別のところに行ってしまうとManaさんは言います。テレビに比べて離脱が早いのです。
これはYouTubeショートに限らず、ブログも同じです。冒頭に結論が書いていなければ、ダラダラ読み進めてはもらえません。
だからこそ今は、結論や答え、見た人・読んだ人が何を得られるのかを冒頭で語らないと、その先を見てもらえないという状況になっています。
結論やゲストを最後まで引っ張り、期待を煽って長く見てもらう
結論を冒頭に出さないと、離脱が早くその先を見てもらえない
ゲストの名前は集客のために先に出す時代
先ほどのテレビのゲストの例に戻ると、昔は誰なんだろうと予想させながら引っ張るのが効いていました。ですが今は逆だとManaさんは言います。
今は「誰々さんが登場」ということを、タイトルや冒頭で伝えておかないと、その先を見てもらえません。
大物ゲストであるなら、そのゲストの名前を集客に貢献させ、利用しないともったいない。それが今の時代背景だとManaさんは話します。
娘との会話で見えた、ネタバレ世代の楽しみ方
この話をしようと思ったきっかけは、Manaさんが娘さんと話していたことでした。ボードゲームではなく、アニメの見方をめぐる会話です。
最近のショート動画やYouTubeは、ネタバレがすごい、とManaさんは感じています。原作を読んでいる身からすると、ピークのハイライトがショートでポンと出たり、まだ見ていない先の展開がネタバレされたりして、Manaさん個人はそれがとても嫌だといいます。
ところが娘さんは、そういうネタバレを結構見るのだそうです。
あるとき娘さんが、このアニメを一から見たいと言い、一緒にアマゾンプライムで一話から見ることになりました。Manaさんは初めて見るので先の展開を知らずドキドキしながら見ますが、娘さんは先の話をすでに知っています。
そんなネタバレばっか見ちゃって、それ何が楽しいの?もったいないじゃん、絶対(自分は)見たくないんだけど。
そう問いかけると、面白いことがわかってきました。娘さんは理路整然と説明したわけではありませんが、話す中でいくつか見えてきたことがあります。
ひとつは、そもそも一話からアニメを見ようと思うかどうかは、ショート動画や先々のハイライトで興味を持たないと始まらない、という点です。
今はアマゾンプライムなどで大量の作品がいつでも見られます。なんとなく流行っているからではなく、これが気になる、これが見たいというところから見始めるのだといいます。
そのきっかけは作品の概要ではなく、ショート動画などでたまたま流れてきたものです。面白そうだと思って調べ、やっぱり面白いとなってから、初めから見てみようという流れになるそうです。
では、クライマックスを知っているならもう見なくていいのでは、という話にもなりました。しかし娘さんの答えは違いました。
要所要所のクライマックスやポイントを知っているからこそ、一話からちゃんと見て、そこにどう至るのかを知りたくて見る、というのです。結論を先に知り、なぜその結論に至ったのかという過程を後から追う見方です。
アニメには伏線もあります。一話から見ていくと、どうしてそのシーンに至ったのかが一つずつ埋まっていく。パズルのピースが埋まっていって、最終的に自分が面白いと思ったところにどう行き着くのかを楽しむのだといいます。
ショートで出会う
たまたま流れてきたハイライトで興味を持つ
調べて確かめる
面白そうだと思って調べ、面白いと納得する
一話から見る
結論を知ったうえで、そこに至る過程を追う
ピースが埋まる
伏線が一つずつはまり、面白い結末への道のりを楽しむ
古い手法と、大企業がギリギリに出す理由
Manaさんは、これを聞いて今どきだと感じたといいます。テレビをがっつり見ていた世代は「次が気になる」で見続けますが、今の世代は結論に至る過程を、見たいタイミングで見るのだそうです。
インターネットネイティブ、ショート動画やYouTubeをがっつり見ている世代からすると、まず結論やいいところを知らないと興味も出ず、調べようとも思わない。そこに至る経緯を楽しむやり方が、今の時代に合っているとManaさんは考えます。
この感覚は、この先もっと激化していくとManaさんは見ています。だから自分の感覚もアップデートしないといけない、と話します。
その観点で言うと、発売日ギリギリまで引っ張ってドーンと出すのは、はっきり言って今どきの手法ではないとManaさんは指摘します。
そのやり方にメリットは正直ないとも言います。製造予測や販売予測は事前に立てておいたほうが固いビジネスになるのに、新作をほぼ出来上がってからドンと出すのは、毎回博打をやっているような状態だからです。
では、なぜ大企業はそうするのか。Manaさんは、その商品に社運がかかっているような勝負だからだと考えます。
ビジネスの世界はパクリパクられの状態です。新作情報を先に出すと真似されてしまうリスクがあるため、本当はもっと早くやりたくてもできない。しょうがないからギリギリにお祭りのように発表しているのではないか、というのがManaさんの見立てです。
そこまでいけば差別化もしやすく、他の追従を許さない先行者優位性 ── 他社より先に市場に出ることで得られる有利さ。ブランド認知やシェアを先に押さえ、後発が追いつきにくくなる効果を指しますを取れるので、大企業のビジネスとしては有利に働くのだろうとManaさんは話します。
インディーズが大企業の真似をする必要はない
大企業ならその事情はわかる、とManaさんは言います。ですが、小さな企業や個人の活動では話が変わります。
小さな企業や個人がそこまでセンシティブに真似対策を考えても、得られるリターンはそう大きくありません。むしろ早めから出すという時代に合ったやり方をしないことの損失のほうが大きい、とManaさんは考えます。
小さな企業や個人は、販促のやり方を何かに参考にします。世の中の大企業がギリギリに出すスタイルを取っているので、基本的にはそれを真似しているのだろうとManaさんは推測します。
ただそれは、理由があってそうしているというより、なんとなく真似して、真似されたくないなと少し考えている程度ではないか、と言います。
だからボードゲーム作家、特にインディーズが、規模も大きくないのに大企業のやり方を真似るのは意味がないのではないか、とManaさんは疑問を投げかけます。個人ならフットワーク軽くいろいろできるのに、しがらみの下でのやり方をわざわざ真似する必要はないという考えです。
結論から伝える強みを、宣伝でも活かす
Manaさんは、商売の宣伝を人とのコミュニケーションになぞらえます。ビジネスの現場では、上司への報告も「結論から話せ」「メリットは何だ」をまず伝えてから詳細を語るのが基本中の基本です。
人とのコミュニケーションでは、それが一番効率的で合理的です。それなのにエンドユーザー向けのマーケティングでそうなっていないのは、しょうがないからそうせざるを得ない事情にみんな引っ張られているからではないか、とManaさんは見ます。
だからしがらみの少ないインディーズであれば、こういうものを作ろうと思う、あるいは制作過程を見せるといった形で、作っているものを先に見せて戦っていくしかない、というのがManaさんの主張です。
それができるのがインディーズの強みでもあります。しかもそれは、その時々、その人、そのタイミングにしか出せないコンテンツで、最終的に発売される商品につながっていきます。
インディーズの活動は、先々に出しながらやっていくプロセスエコノミーのほうが、結果的にいい方向になるのではないか、とManaさんは話します。大手になるとまた別だとも付け加えます。
社運のかかった勝負で、模倣リスクを避けるためやむを得ずギリギリに出す
しがらみが少ない強みを活かし、制作過程を先に見せて戦える
マス広告が効かなくなる時代の販促
自分のステージに合った、今できる強みを最大限使ってプロモーションしていくことが、今後重要になるとManaさんはまとめます。娘さんがすでにそういう状態なので、この傾向はどんどん進むと見ています。
特に、マスコミ広告のように全体へ一気に告知する手法は、大手でも通用しなくなってきているといいます。
代わりに、SNS上で細かくコミュニティを作ってそこで宣伝したり、ファンを構築したり、ユーザー参加型のコンテンツや商品開発をしたりする企業が増えています。大企業もそのほうがいいと気づいてはいる、とManaさんは指摘します。
ただ大企業には理由があってできない。だからこの先、古い体質・体制・やり方が通用しなくなれば、世の中は一気にそちらへ変わっていくとManaさんは予測します。
それを先んじてできる強みは今しかない。だから最大限に活かして早め早めに発表していくのがいいのではないか、というのが今回の結論です。
マス広告で全体に一気に告知し、発売直前に情報を出す
SNSでコミュニティやファンを作り、制作過程を早めから見せる
まとめ
新作情報をいつ出すかは、テレビ時代の「引っ張って煽る」手法から、結論を先に出して過程を楽しんでもらう時代へと変わりつつあります。大企業がギリギリに出すのは模倣リスクを避けるための事情であり、しがらみの少ないインディーズは、その真似をするより早め早めに制作過程を見せて戦うほうがいい、というのがManaさんの主張です。
- 新作情報の解禁は、ギリギリ型と早出し・小出し型に二極化している
- ネットの時代は結論を先に出さないと離脱され、その先を見てもらえない
- 大企業がギリギリに出すのは模倣を避けるためのやむを得ない選択という見立て
- インディーズはしがらみが少なく、制作過程を先に見せる強みを活かせる
- マス広告が効かなくなる中、早め早めの発表を先んじてできる今が強み




