友達価格はなぜ生まれるのか
ボードゲーム作りを始めたばかりのころは、自分一人で全部を作れないことがあります。特にデザインやイラストは、外部への発注が必要になる場面が多いとManaさんは話します。
ただ、最初はコストを抑えたい、いきなり外注するのが怖いという人も多いといいます。そこで、仲の良い友達に安く頼んだり、タダでお願いしたりする「友達価格」が生まれると説明されています。
Manaさんはこの友達価格をあまりお勧めしていません。自分でも過去にやったことがあるものの、経験則としてうまくいかないことが多かったと振り返ります。
なかなかこれ直接友達には言えないようなことではあるんですけども、経験則的にはうまくいかないっていうような時も多かったなというふうに考えております。
頼まれた友達の側から見た違和感
Manaさんはまず、頼まれる友達の立場を考えます。人生をかけて努力して得たスキルを、友達だからと安く頼まれるのは、あまりいい気がしないだろうという指摘です。
デザインなどは、本来その人が正当な対価を得て商売の糧としているスキルです。それを安い価格でお願いすると弊害が出やすく、下手したら人間関係もちょっと壊れかねないとManaさんは話します。
つまり友達価格は、相手のスキルを軽んじる失礼な行為になりかねない、という見方です。
発注する側も強く言えなくなる
問題は頼まれる側だけではありません。発注する側にも良くないことが起こると、Manaさんは自身の経験から語ります。その一つが「強く言えない」ことです。
ちゃんと金銭が発生する仕事であれば、気に食わない点や直してほしい点をしっかり伝えられます。Manaさんも普段発注しているデザイナーには、遠慮なく意見を言うようにしていると話します。
私も普段デザインを発注している方にもうちょっとこうしてくださいとか、しっかりと意見は言うようにはしております。
ところが相手が友人になると、遠慮してしまい、こだわりきれなくなります。作品にこだわりたいならビシバシ言えばいいのですが、それを言われた友達がどう思うかという問題が残ります。
仕事なら言われて当然のことも、友達価格では「安くやってあげてるのに」という気持ちが少なからず生まれると、Manaさんは見ています。
安く言ってんのにしつこいなだとか、渡したもので満足しろよだとか、そういったものって腹積もりとしてもたれてしまうんじゃないのかなっていうところもあったりします。
結果として、言う側は遠慮して言いにくくなり、言えば言ったで価格に見合っていないと思われる。この板挟みでいざこざが生まれ、せっかくの友達関係で連絡も取りにくくなる、という声もあるといいます。
納期がグダグダになりやすい
友達価格のもう一つの弊害として、Manaさんは納期の問題を挙げます。安く、あるいはタダで頼むと、依頼の仕方自体が「空いてる時に対応してくれればいいよ」という形になりがちです。
そうなると、最初に話が盛り上がったときは進んでも、その後すぐ止まります。みんな忙しいので、無理に時間を作ってまで進めるところにはなかなかいかない、とManaさんは指摘します。
ちゃんとした金銭が発生する仕事なら納期はマストですが、安価や無償だと、当然ながら他の仕事が優先されます。だから納期がグダグダになりやすいのです。
そして進捗を催促したくなっても、まっとうにお金を支払えていない関係だと、それも言いにくく、言えばまたこじれる。ここでも同じ構図が繰り返されると話されています。
無償で始めた作品が1年半止まった話
Manaさんは、逆に友達側から声をかけられたケースも紹介します。デザイナーの友達が、コンテストに応募して実績を作りたいと考えていたという話です。
ボードゲームはイラストやデザインだけでなく、プロダクトデザインとして使い勝手や形状など多くの要素を扱えます。プロダクトデザイン ── 製品そのものの形状・素材・使い勝手までを設計するデザイン領域。パッケージや操作性など、見た目だけでなく使う体験全体を対象にする。それを一つのトータルプロデュースとして手がけ、コンテストの実績にしたいという提案でした。
Manaさんとしても、デザインのコンテストで賞が取れればゲーム自体の牽引力も上がるため、良い話だと考えます。無償でもいいという申し出で、急いでもいなかったため、自由に好きに進めていいと任せました。
じゃあこれでもうあんまりうるさいこと言わないから、ほんと自由に好きにやっていいからデザインをしていってねっていうようなお話をしましたと。
ところが、最初はロゴができるなど活発だったものの、友達が普段の仕事やプライベートのデザイン業務で忙しくなっていきます。連絡が途絶え、少し進んではまた止まるを繰り返しました。
その結果、このゲームは1年半ほど発売できずにいると、Manaさんは打ち明けます。テストプレイも終え、もう出せる状態のゲームが止まってしまっているのです。
そんなのを繰り返していて、もう一年半ぐらい、もう発売できずにいるっていうような作品があったりします。
その後、そろそろ出したいので、忙しいならこちらで巻き取ると持ちかけたところ、友達は時間を作るからやりたいと答えました。歓迎して再びお願いしたものの、そこからさらに半年ほど経ってしまったといいます。
仲良しこよしではいい作品はできない
Manaさんは、この停滞の原因を、友達同士でお互いに甘えてしまっている点にあると分析します。そして、作品作りは仲良しこよしだといいものはできないとも語ります。
どちらかが主導を握ることや、本気で向き合ってビシバシ高め合えるパートナー関係が必要だといいます。同じ目線に立てていないまま、人間関係があるだけで進めると、なあなあになってしまうのです。
だからこそManaさんは、そういう話があったとき、本当に巻き込んでいいのかを見極めるべきだと話します。時期感も含めて、真摯に同じ目線で向き合えているかを確認したうえで頼むかどうかを考えるべきだ、という提案です。
お金を払えば自由に作ってもらえるとは限らない
Manaさんは、そこにまっとうな金銭が発生すると話はまた別だと補足します。今回はコンテスト向けでお互いウィンウィンという形だったため始まった経緯があります。
もしこちらがお金を払うとなると、当然こちらの意向を反映してほしくなります。すると、デザイナーの世界観を強く打ち出すコンテスト向けの作品は、かえって作りにくくなってしまうというジレンマがあります。
本来は、その人の作品が好きで自由に作ってもらい、なおかつちゃんとした報酬も払うのが理想です。ただ、まだそこまでの余裕がないとManaさんは正直に話しています。
友達だからこそ高い価格で発注したい
Manaさんの結論は、友達に発注すること自体が悪いわけではない、というものです。問題なのは、安売りを強要したり、友達という関係性を利用して安くやらせたりすることだと整理します。
理想は、友達だからこそ通常より高い価格で発注することだとManaさんは語ります。ボードゲームで利益が出るようになったら、そうした人たちにも発注したいという考えです。
一方で今はまだ余裕がないため、市場価格で普段付き合いのあるデザイナーに発注を続けているといいます。ビジネスライクでも、阿吽の呼吸で妥協点を探りつつ最大限のものを作れているそうです。
つまり、良い作品作りは友達だからできる、できないという話ではないというのがManaさんの実感です。まっとうに発注している相手ともそれができているからこそ、今はそのスタイルを取っているのです。
友達価格という言葉自体が良くない
Manaさんがこの回を話したきっかけは、海外の投稿でした。デザイナーがいないから友達に頼む、あるいは友達だからタダでいいでしょと言われたらどうするか、という話題を見かけたといいます。
そこからManaさんは、そもそも「友達価格」という言葉自体が良くないのかもしれないと考えます。友達だろうがなんだろうが、その人が持つスキルには正当に対価を払うべきだ、という立場です。
もし友達とがっつり組むなら、同じ視座で同じ目標を掲げられる関係の人と組むのがいいといいます。発注前に「そのくらいの勢いでやるよ、それでもいい?」と合意を取ることが重要だと話されています。
そのうえで、スケジュール感、最低限のクオリティ、どちらの言葉がどれだけ力を持つのかを、プロジェクト開始前にすり合わせておくべきだとManaさんは締めくくります。
まとめ
Manaさんは自身の失敗談を交えながら、友達価格が発注する側・される側の双方にひずみを生むと語りました。友達に頼むこと自体を否定するのではなく、正当な対価と事前のすり合わせこそが良い作品作りにつながるという内容でした。
- 友達価格は相手のスキルを軽んじやすく、人間関係を壊しかねない
- 発注側は遠慮して強く言えず、こだわりきれなくなる
- 安価や無償だと他の仕事が優先され、納期がグダグダになりやすい
- 無償で始めたゲームが1年半以上発売できずにいる実例がある
- 友達だからこそ正当に、できれば高い価格で発注し、事前に合意を取るのが理想







