消費者庁に出向した弁護士が語る「特商法」とは
今回のゲストは、弁護士の鈴木和生さんです。企業法務や訴訟を中心に、エンターテインメントや名誉毀損案件、一般民事、刑事事件まで幅広く扱ってきたと自己紹介しています。
鈴木さんは消費者庁に3年ほど出向した経験があり、その際に特商法と景表法を業務で扱ってきたと話しています。今回はその経験をもとに、特商法の基礎を解説します。
消費者庁に出向ってなかなか私の友人ではいないキャリア、すごいなと。
では、そもそも特商法とはどんな法律なのか。鈴木さんは、正式名称と目的から説明を始めます。
特商法というのは、正式には特定商取引に関する法律といいまして、消費者トラブルが生じやすい7つの取引に関するルールなどを定めた消費者保護のための法律ということになっています。
消費者トラブルが起きやすい「7つの取引」
特商法が対象とするのは7つの取引です。鈴木さんは、それぞれの取引がなぜトラブルになりやすいのかも合わせて説明しています。
鈴木さんによると、訪問販売や訪問購入は突然の不意打ち的な勧誘でトラブルが生じやすいといいます。
連鎖販売や業務提供誘引販売は、内職商法のようにビジネスに近い要素を持つため、ビジネスに不慣れな人がトラブルに巻き込まれやすいと説明しています。
通信販売は人と対面せずに取引するため、表示に不備があるとトラブルになりやすいとのことです。
特定継続的役務提供は、エステや学習塾のように継続的にサービスを提供するもので、取引が継続的であるがゆえに代金が高額になりやすく、トラブルになりやすいと話しています。
特定継続的役務提供、初めて聞きました。
取引のパターンが多いため、吉田さんは「知らず知らずに違反していることもありそうだ」と指摘します。鈴木さんもこれを認めています。
なかなか適用される認識がないまま取引をして違反しちゃうっていうこともあり得るんだと思います。
勧誘や表示にかかる具体的な規制
特商法には、消費者を保護するために勧誘方法や表示方法に関する規制があります。鈴木さんは、訪問販売などの勧誘に関する具体的なルールを挙げています。
まず、勧誘を始める前に氏名や会社の名称、勧誘目的、何の商品の勧誘に来たのかを明示する必要があります。これを氏名等明示義務といいます。
- 勧誘を断られた場合に再度勧誘してはならない(再勧誘の禁止)
- 契約を締結したら契約書面を交付する(不交付は書面不交付として違反)
- 商品の内容や効果について嘘を告げると不実告知として違反
通信販売については、消費者が通常知っておきたい情報を表示する表示義務が定められており、人を誤解させるような表示をしてはならないという規制があると鈴木さんは説明します。
吉田さんが「よくある違反」を尋ねると、鈴木さんは訪問販売や電話勧誘販売の場面を挙げました。勧誘だと言うと話を聞いてもらえないため、あえて言わない事業者がいるかもしれない、というケースです。
そういったことはこの特商法では禁止されているので、そういうところは気をつける必要があるのかなというふうに思います。
飲み会だと思ったら勧誘。吉田さん自身の体験
ここで吉田さんが、自身の体験を語ります。飲み会に誘われて行ってみたら、実はネズミ講の会だったというものです。
それはもうまさに典型的な連鎖販売取引に関する違反行為に当たる可能性があるのかなというふうに。
鈴木さんによると、勧誘目的を隠して呼び出して勧誘するケースは、まさに特商法が防ごうとしている消費者トラブルにあたるといいます。
吉田さんは、最初は勧誘されているという認識がまったくなかったと振り返ります。食事に誘われ、パーティーに行き、友達が増えた感覚のうちに、少しずつ話が変わっていったといいます。
最後はなんかこう、商材を買って一緒に売ろうみたいなところで、あ、やべえと思って。僕はそこで逃げたんですけど。
勧誘のスタイルは「この商品を買いませんか」ではなく、「副業を一緒に事業でやろう」という切り口だったと吉田さんは話します。経済的自由を獲得して人生の幅を広げよう、という誘い方に引っかかりそうになったといいます。
鈴木さんは、勧誘されている認識がなかった点こそがポイントだと指摘します。氏名等明示義務は、勧誘を受けているという認識を消費者に持たせるためのルールなのだと説明します。
通販の「無料のはずが自動課金」はどこまでセーフか
続いて、通信販売の表示義務と誤認表示の禁止について。鈴木さんは、通信販売では何をどれだけ買うか、値段や解約条件がどうなっているかが消費者の判断材料になると説明します。
鈴木さんによると、こうした条件を適切に示さずに契約を締結すると、消費者は解約できると思っていたのに、事業者は「細かいけどここに書いてある」と主張する、といったトラブルが起きやすいといいます。
さらに、定期購入ではないかのように誤解させておいて実は定期購入だった、というケースもよくあり、それを防ぐために規制が設けられていると話しています。
吉田さんは、最初は無料で30日後に自動で課金され、解約し忘れてそのまま課金が走るケースについて質問します。
それはなんかちゃんと言ってればそれはありなんですか?
鈴木さんは、当初の広告画面や最終確認画面、申し込み直前の画面で明示的に表示してあれば、解約し忘れた本人に支払い義務が生じる可能性があると答えます。
一方で、自動更新の表示がすごく細かい、小さい、リンクをたくさんたどらないと読めないといったケースは、表示すべき内容を表示していないとして特商法違反になりうると鈴木さんは説明します。
広告画面・最終確認画面・申し込み直前の画面で自動課金を明示している
自動更新の記載が極端に小さい・細かい、リンクを何度もたどらないと読めない
違反したら誰にどんなペナルティがあるのか
規制に違反した場合、誰にどんなペナルティが及ぶのか。吉田さんの質問に、鈴木さんが整理します。
鈴木さんによると、まず違反して締結された契約が取り消されるリスクがあります。さらに、違反を根拠に事業者が行政処分を受ける可能性もあると説明します。
特商法では業務停止命令などの行政処分があり、たとえば通信販売で違反すれば、通信販売に関する業務を一定期間停止するよう命じられることがあります。これは通信販売事業者にとって影響の大きい処分だといいます。
また、違反の内容によっては刑事罰が科される可能性もあり、各規制への違反は大きな影響を持つと鈴木さんは話しています。
契約の取消
違反して締結された契約が取り消されるリスク
行政処分
業務停止命令など。通信販売なら業務停止も
刑事罰
違反の内容によっては科される可能性
吉田さんが有名な違反例を尋ねると、鈴木さんは行政処分が公表されている前提で、大手電力会社の訪問販売で勧誘方法に特商法違反があり、業務停止の行政処分を受けたケースなどを挙げました。
そういう大手でもここに実は違反していて、そういうペナルティが出るっていうことがあるんですね。
中小企業がまず確認すべきこと、相談先はどこか
日本は中小企業が多いことを踏まえ、吉田さんは中小企業が気をつけるべきパターンを尋ねます。鈴木さんは、まず自社の取引が特商法の範囲に入るかどうかを確認することが大事だと答えます。
自分がやってる取引っていうのが特商法の範囲に入るのかどうかっていうところはちゃんと確認していただいた方がいいのかな。
鈴木さんによると、そうしないと思わぬところで特商法違反になりかねないため、まず範囲に入るかを確認するのがよいといいます。
入りそうだと分かった場合の相談先について、鈴木さんは消費者庁に聞くのも一つの手であり、弁護士などの専門家に相談して違反しないための方法を聞くのもありうると話します。
吉田さんは、ホームページによくある「特定商取引法に基づく表記」について、会社の実態に合わせてプロに作ってもらうのが普通なのかと質問します。
鈴木さんは、特商法の規定や消費者庁のウェブサイトを見ながら作っているところが多く、必要に応じて弁護士に問題がないか確認したり修正してもらったりするところが多いのではないかと答えています。
まとめと、労務との接点。次回は景表法
番組の締めくくりとして、鈴木さんは話し足りない点を問われ、時間の都合で凝縮して話したことに触れつつ、労務ラジオならではの視点を示します。
場合によっては例えば就業規則とかにその特商法とかもちゃんと遵守していくとかっていう話を規定していくっていうのも、まあ一つ方法としてあるのかなと。
吉田さんも、ビジネスモデルによっては就業規則の服務規律や懲戒の項目に特商法を踏まえた内容を書く必要があるとし、弁護士や社労士に相談しながら進めてほしいとまとめています。
なお、来週もゲスト回で、鈴木さんが景表法について解説する予定だと案内されています。吉田さんは、景表法はなんとなくしか分かっていないので一から教えてほしいと話しています。
まとめ
消費者庁への出向経験を持つ弁護士の鈴木和生さんが、特商法の基礎を解説したゲスト回でした。7つの取引と、勧誘・表示に関する規制、そして違反時のペナルティまでを整理し、事業者がまず何を確認すべきかが示されました。
- 特商法は消費者トラブルが起きやすい7つの取引を対象にした消費者保護の法律
- 7つには訪問販売・通信販売・連鎖販売取引・特定継続的役務提供などが含まれる
- 勧誘前の氏名等明示義務や再勧誘の禁止、通信販売の表示義務などの規制がある
- 違反すると契約取消・業務停止命令などの行政処分・刑事罰の可能性がある
- 中小企業はまず自社の取引が特商法の範囲に入るかを確認し、必要なら専門家に相談する





