そもそもヘッドハンティングとは何か
吉田さんはまず、ヘッドハンティングという言葉の意味から説明しています。在職中の人に対して、ヘッドハンターと呼ばれる人が声をかけ、転職を誘う職業紹介の一種だと整理しています。
いわば「一本釣り」で、今の会社で働いている人に外から声がかかる形だといいます。今回の回では、吉田さん自身が勤務社労士時代にそのヘッドハンティングを受けた体験が語られます。
CEO級と一般人で違う、2つのヘッドハンティング
吉田さんによると、ヘッドハンティングにはタイプが2つあり、声をかけられる相手によってヘッドハンターの種類も変わるはずだといいます。
1つはCEOや執行役員クラスといった、いわゆる「超偉い人」が対象になるケースです。もう1つは、吉田さん自身のような一般の人が対象になるケースです。
CEOクラスの場合は、素行調査などを十分にした上で、どれくらい仕事ができるかを調べてから声がかかるはずだと吉田さんは説明しています。突然メールや連絡が来て「他の会社に転職しませんか」と誘われる形です。
一方で、吉田さんが受けたのは、そうした大層なものではなく、一般人がよく当たるタイプのヘッドハンティングだったといいます。
私が受けたのは、まあもちろんそんな大層なヘッドハンティングではなくてですね、一般人がよく当たるヘッドハンティングだったんです。
会社のメールに届いた1通と、喜んで喫茶店へ向かった話
吉田さんは社労士歴12年ほどで、その前に勤務社労士として7年半から8年ほど活動していました。ヘッドハンティングのメールが来たのは、勤務社労士になって5年ほど経った頃だといいます。
ある日、会社のメールアドレスに突然ヘッドハンティングのメールが届きました。文面は「とある人から吉田さんの活躍を聞いて連絡しました」「あなたを求めている会社があるので一度お話を聞きませんか」といった内容だったと振り返っています。
当時の吉田さんは無知で、素直に喜んでしまったと語ります。担当している顧問先の顧客がヘッドハンターに情報提供してくれたのかもしれない、と考えたそうです。
もしかして自分が担当している顧問先のお客さんがヘッドハンターに情報提供でもしてくれたのかな、とか思ったんです。
嬉しかった吉田さんは「一度ヘッドハンティングされに行っちゃおうかな」という気持ちで、話を聞きに行くことにしました。ヘッドハンターと連絡を取り、仕事終わりに近くの喫茶店で会ったといいます。
情報源を明かさないヘッドハンターと、断った理由
喫茶店で吉田さんが一番聞きたかったのは、誰が自分のことをヘッドハンターに伝えたのかという点でした。自分を褒めちぎってくれた人がいるに違いないと思っていたからです。
しかし、ヘッドハンターは情報源を何も明かしませんでした。「とある人から聞いただけです」としか言わなかったといいます。吉田さんは今振り返ると、相手が薄ら笑いしていた気がすると語ります。
(誰から聞いたのか)いろいろ聞いたんですけど、やっぱりヘッドハンターは何も明かさなかったです。「とある人から聞いただけです」とまでしか言わなかったです。
結局、吉田さんはこのヘッドハンティングを断りました。どこの会社が探しているのかも開示されず、その時は転職意欲もなかったためです。
その後、吉田さんはヘッドハンティングについて調べ、一般人が受けるヘッドハンティングはテレアポのようなもので、大した意味はないという結論にたどり着きました。
メールアドレスは推測できる、テレアポ型の仕組み
吉田さんは、なぜ会社のメールアドレスにいきなり連絡が来たのか、その仕組みを説明しています。実は意外と簡単な方法で推測できるといいます。
会社のメールアドレスは、たいていホームページのドメインと同じです。例えばABC株式会社であれば、ホームページのURLは「abc.co.jp」のような形になります。
中小零細企業では特に、ウェブページのドメインとスタッフに配るメールアドレスのドメインを同じにしていることが多いといいます。
そのため、ABC株式会社に吉田という人がいるとわかれば、「yoshida@abc.co.jp」などで送れば届く可能性があります。「yuichi.yoshida@」のような形でも簡単に特定できるといいます。
こうしてメールアドレスのリストを作り、テレアポ営業のように片っ端から送っているのだと吉田さんは説明します。
名前の拾い方にもコツがあるといいます。士業事務所であればホームページに代表挨拶やスタッフ紹介が載っており、横書きなら左上から順に、優秀な人ほど先に掲載されている傾向があるためです。
そこで上から早い順番の人の名前を調べ、それがたまたま吉田であれば、先ほどのようにドメインと組み合わせて送っているのだといいます。吉田さんは、機械的に送られているだけなのに、当時は舞い上がってしまったと反省を口にしています。
ただ機械的に送ってるだけなのに、僕はヘッドハンティングされた時はものすごい舞い上がった。そんな反省です。
ヘッドハンティングの話は「いい話」とは限らない
吉田さんは、この体験から伝えられることとして、ヘッドハンティングの話が来たからといって、必ずしもいい話とは限らないと注意を促しています。
人手不足の会社がヘッドハンターに依頼し、単純な労働力を求めているだけのケースもあるといいます。番組のリスナーには開業している人も勤務で活躍している人もいるため、注意してほしいと呼びかけています。
会社を守る側の対策、ドメインを分けるという発想
ここから吉田さんは、ヘッドハンティングを受ける側ではなく、会社としてどう対策するかに話を移します。
1つ目の対策は、ホームページのドメインと、名刺やスタッフに配るメールアドレスのドメインを別々にすることです。そうするとメールアドレスを推測されにくくなり、連絡もされにくくなるといいます。
この対策は、ヘッドハンティングに限らず、スパムメールや営業メールも来にくくなるはずだと吉田さんは説明しています。
自社は「ヘッドハンティングされやすい会社」か
もう1つの視点として、吉田さんは、自社がヘッドハンティングされやすい会社かどうかを考えるべきだと述べています。
ヘッドハンティングされやすいのは、人がいれば売り上げが立つような職種だといいます。吉田さんは、社労士を含む士業もそうした職種にあたると説明しています。
士業では、税理士事務所に客のふりをして電話をかけ、ヘッドハンティングするといった話も聞くそうです。IT系のプログラマーも、転職すれば案件を受注できるという理由で狙われやすいといいます。
医師も例に挙げられています。医師が1人いれば、保険診療は単価が決まっているため売り上げが確定し、病院が高確率で儲けられるからです。こうした職種は狙われやすいので注意が必要だと吉田さんは話しています。
受電代行と、結局は「いい会社になるしかない」という結論
吉田さんは細かい対策として、受電代行を使う方法も挙げています。ワンクッション挟むことで、ヘッドハンティングの電話がかかりにくくなるといいます。
最後の対策について、吉田さんは「しょうもない話」と前置きしつつ、本質的な結論を語ります。ビジネス経験を積めば転職の誘いはあるもので、士業なら顧問先から「うちの会社に来ませんか」と言われることもよくある話だといいます。
では会社の人材が流出しないようにするにはどうすればいいのか。吉田さんの答えは、結局のところ自社がいい会社になるしかないというものです。
生産性を高め、労働条件を高めていい会社を作っていく。スタッフが引き続きここで働きたいと思える会社を作っていくことが重要だと締めくくっています。
まとめ
勤務社労士時代のヘッドハンティング体験から、一般人向けの誘いはテレアポに近い仕組みであること、そして会社側は推測されにくいドメイン設計や、最終的には「いい会社を作る」ことで人材流出に備えるべきだという話でした。
- ヘッドハンティングにはCEO級と一般人向けの2タイプがあり、後者はテレアポに近い
- 会社のメールアドレスはホームページのドメインから推測されやすい
- ヘッドハンティングの誘いが必ずしもいい話とは限らず、単純な労働力目的の場合もある
- ドメインを分ける、受電代行を使うといった推測・接触を減らす対策がある
- 士業やIT、医師など「人がいれば売り上げが立つ」職種は狙われやすい


