そもそも休職制度とは何か、なぜ必要なのか
休職制度とは何かについて、吉田さんは難しく言えば解雇を猶予する制度 ── 病気などで働けなくなった従業員をすぐ解雇せず、一定期間休ませて復職の機会を与える制度。労働契約が履行できない状態でも、猶予期間を設けることで雇用を維持する。だと説明しています。
シンプルに言えば、会社が認めた公式のお休み制度のようなもので、主に病気を理由に、3ヶ月や半年といった期間休んでもらう制度だとされています。
なぜこの制度があるのかを理解するために、吉田さんは休職制度がない会社を例に説明します。労働契約とは、会社が給料を払い、労働者はその前提で働くという契約です。
そのため、どちらか一方が履行されなければ契約は解消できます。病気でやむを得ず働けなくなった場合、契約が履行できていないため、本来は解雇になってしまいます。
なので、休職制度がない会社だとどうなるかっていうと、じゃあ(従業員に)あなた働けないんですね。じゃあ解雇になります。それだけでおしまいなんです。
病気で即解雇はなぜ会社にも損なのか
働けないから即解雇という対応は、従業員がかわいそうであるだけでなく、会社側にもマイナスがあると吉田さんは指摘します。
まず、それを見た他の従業員が「病気になったらすぐ辞めさせられる会社なんだ」と受け止め、良い印象を持たないはずだという点です。
さらに経営的な視点として、教育や研修、実務を通じて蓄積してきた投資が、病気ですぐ退職となるとすべてリセットされてしまう問題があります。その人に蓄積してきた投資が全部リセットされるのは、会社にとっても損害だと語られています。
だからこそ、病気が治りそうなら一定期間待って復職を目指すのが良い会社の考え方であり、使えないなら切り捨てるという発想は良くないと吉田さんは話しています。
なお余談として、休職には病気休職のほかに、たとえば国会議員になった場合の公職休職など、さまざまな種類があると触れられています。ただしスタートアップや小さな会社なら、病気休職くらいでいいのではないかというのが吉田さんの個人的な考えです。
休職の入り口でやりがちなミスとは
休職制度で最初に注意すべきは手続きだと吉田さんは言います。スタッフが病気で休みがちになったとき、風邪のように1〜2日で治るものと、ちゃんと休まないと治らない病気は分けて考える必要があります。
後者の典型例としてメンタル不調やうつ病が挙げられています。こうした場合はしっかり休んでもらい、休職期間中に治れば復職、治らなければ休職期間満了で退職となります。
ここで重要なのが、就業規則に定めた休職の要件、つまり休職に入る条件です。吉田さんは、やりがちなミスとして就業規則の要件を守らないケースを挙げています。
たとえば「1ヶ月間欠勤してから休職に入る」と定めているのに、有給休暇を1ヶ月消化した状態で休職に入り、そのまま休職期間満了で退職させてしまうケースです。
この場合、辞めたくなかったスタッフから見れば入り口の手続きがおかしいため、満了で辞めさせられるのは不当だとトラブルになります。就業規則に定めた通りに休職に入ることが、会社を守るうえでも本人の権利を守るうえでも重要だとされています。
休職辞令で書面に残すべきこと
休職に入る際は、一般的に休職辞令という書面を出し、どんな休職制度でどう進むのかを説明します。休職期間中は無給であること、今回の休職理由などを記載します。
さらに、休職期間中の社会保険料や住民税をどう精算するか、休職者にどう連絡するかも決めておくと良いとされています。連絡方法まで書面化するケースは多くないものの、実務上は決めておいた方が良いと吉田さんは話します。
連絡方法を決めるのは、休職者が休めるようにするためです。いろいろな人からバンバン連絡が来ると休めないため、会社側の連絡担当者を決め、休職者もどこに連絡が来るか把握できるようにします。
そうじゃないと、特にメンタル不調の時は、連絡が来るっていうこと自体がストレスになっちゃって、なかなか治らないからなんですね。
一方で骨折などの場合は、連絡経路をそれほど気にしなくてもよいとも補足されています。病状に応じて、連絡の仕方を考えて決めておくことが勧められています。
休職辞令では、後で「聞いていない」と言われないよう、休職期間満了になれば退職になることも伝えておくべきだとされています。本人の心の準備のためにも必要だという考えです。
あわせて復職の手順も簡単に案内し、最終的には診断書で復職可という判断がないと復職できないことも、休職辞令か休職面談の時に伝えた方が良いとされています。休職辞令の作り方は顧問の社会保険労務士に相談すると良いと案内されています。
復職で会社とスタッフの見解が食い違うとき
実務で揉めるポイントとして、休職期間満了が近づいたときの復職判断が挙げられています。本人は復職したいのに、会社や第三者から見ると復職できる状態ではない、というケースです。
こうした見解の相違が起きたとき、まず気にしなければならないのは主治医が何と言っているかだと吉田さんは述べます。
ただし注意点として、復職させるかどうかを決めるのは主治医ではなく会社だと強調されています。会社は主治医の意見を踏まえて判断します。
とはいえ会社が何でも自由に決められるわけではありません。医師の意見をもとに決めるため、医師が復職可としているのに復職させない、あるいはその逆も、いずれもリスクがあるとされています。
医師が復職可って書いてるのに会社が復職させないとかっていうのはかなりリスクがありますし、その逆も当然リスクがあります。
意見が対立したときの対処法
意見が対立し、どう対処してよいかわからなくなったときの方法として、吉田さんはいくつか挙げています。まず、会社に産業医がいる場合は産業医の意見を聞くことです。
産業医の見解を踏まえて、会社として復職させるかどうかを決めていきます。もう一つは、主治医の意見に納得がいかない場合の対応です。
その場合は、本人の許可を得たうえで主治医と話したり、書面で照会したりして、主治医の真意を確認します。
主治医が復職可と書いても、実際の業務内容を知らないケースがあると吉田さんは指摘します。通常の業務なら復職可でも、業務によっては話が変わるためです。
例えば通常の業務だったら復職可だけれども、トラック運転手だったらできないよねなんてケースあると思います。
たとえば日中に寝てしまう状態の場合、事務職ならギリギリ復職できるかもしれないが、運転業務では致命的で、絶対に復職させられません。こうした前提条件を知らないまま復職可と書かれることもあります。
そのため、休職している人の業務内容が主治医に正しく伝わっているかを確認した方が良いとされています。業務内容を書面にして「それでも復職可か」と確認すると、主治医の意見が変わることも珍しくないと語られています。
主治医や産業医の意見を踏まえて適切に対処することが、会社と本人の双方を守るうえで重要だとまとめられています。
最後に、前回の傷病手当金との関連として、最後の退職日に出社してしまうと傷病手当金がもらえなくなる点にも触れられています。これも休職実務では難しいポイントで、詳細は前回の放送で解説されているとのことです。
まとめ
休職は解雇を猶予し、病気の従業員に復職の機会を与える制度です。入り口では就業規則の要件を守り、休職辞令で条件を書面化すること、そして復職判断では主治医や産業医の意見を踏まえつつ最終的に会社が決めることが、会社と本人の双方を守るポイントだと解説されました。
- 休職制度は解雇を猶予する制度であり、病気の従業員に復職の機会を与えるためのもの
- 就業規則に定めた休職の要件どおりに入らないと、満了退職の際にトラブルになりやすい
- 休職辞令で無給・理由・連絡方法・満了時の退職・復職手順などを書面で示しておく
- 復職の可否は主治医ではなく会社が決めるが、医師の意見に反する判断はリスクが高い
- 主治医に業務内容を正しく伝えると復職可の判断が変わることもあり、産業医の活用も有効



