人気資格ランキング上位、それでも難しいキャリア形成
この回は、番組101回目のテーマとして、社労士のキャリアについて解説されています。
吉田さんが社労士になったのは、およそ12年ほど前のことだといいます。
現在、社労士は資格予備校TACの人気資格ランキングで1位になっているそうです。TAC ── 資格試験対策の大手予備校。各種資格の講座を提供しており、資格の人気度をランキング形式で公表することがある。
すごいですよね。本当にこう、ありがたいなと思っています。
吉田さんは、社労士が人気の資格になっているのは、先輩や今活躍している社労士のおかげでもあると話します。
一方で、社労士は人気がある反面、キャリア形成が難しい資格でもあると指摘します。
弁護士・会計士と、社労士・税理士でキャリアの入り口が違う
吉田さんは、まず社労士という枠を外して、士業全体のキャリア形成から話を始めます。
ここでは、弁護士・会計士と、それ以外のいわゆる文系難関資格の士業とで、キャリア形成が大きく変わると説明されています。あくまで例外は多くあるという前提です。
弁護士や会計士は、大学在学中や受験専念期間に資格を取り、社会人1年目から弁護士事務所や監査法人に就職するキャリアの人が多い印象だといいます。監査法人 ── 公認会計士が集まり、企業の財務諸表を監査する法人。会計士の主な就職先の一つ。
一方で、社労士や税理士、司法書士、行政書士などは、入り口が違うと吉田さんは話します。
これらの資格は、一度社会人になってから何かのきっかけで人生を考え直し、この道に行きたいと考えて資格を取るケースが多いといいます。
そのため、新卒からずっと社労士をやっている人は、会ったことはあるものの、かなり珍しい形だと吉田さんは述べています。
在学中や受験専念期間に資格を取り、社会人1年目から事務所や監査法人に就職する人が多い
一度社会人になってから、きっかけがあって資格を取り、その後に道を変える人が多い
慶應を退学、就活が怖かった過去からの再起
ここから吉田さんは、自身が社労士になったきっかけを語ります。ストレートな理由は、資格を取って一発逆転したかったからだといいます。
吉田さんの人生は、途中までは順風満帆でした。中高一貫校に通い、慶應義塾大学に現役で合格したところまでは、完璧だったと振り返ります。
しかし、そこから社会に出るのが怖い、働くのが怖いと感じる時期があったといいます。
大学2年、3年になると就職活動が見えてきますが、面接で強みを聞かれるのが怖く、就活したくないと思っていたそうです。
結局就活怖くてできなくて、そのままなんと(慶應義塾大学を)途中で退学してしまうっていう、とんでもない転落人生になってしまうわけですね。
その後、めちゃくちゃな期間を過ごしたのち、20代後半で、何かがないと立て直せないと考えるようになったといいます。
そのとき勉強していた本などから、日本の労働法の考え方が歪んでいると感じ、逆にそこが面白いと思って社労士試験に挑戦したそうです。
2回目の試験で合格し、29歳から吉田さんの社労士としてのキャリアが始まりました。
月給18万・賞与なし、12年前の社労士のリアルな待遇
吉田さんによると、資格を取った後が実は大変だったといいます。まず、実務経験がない状態で雇ってくれる場所があまりなかったそうです。
ここで吉田さんは、これから話すのは12年前の話であり、今は状況が変わっていると繰り返し念を押します。
当時の社労士業界は給料が低く、吉田さんはとある社労士法人から内定をもらったものの、その条件は厳しいものでした。
提示された月給は18万円で、賞与なし、退職金なしという雇用契約書だったといいます。
その内定を父に見せたところ、返ってきたのは待遇を心配する一言でした。
お前この会社大丈夫なのか、賞与も退職金もないぞと言われたんですね。そこでハッとしました。
吉田さんの父は東証一部上場企業に新卒から定年まで勤め、再雇用も同じ会社だったといいます。今、子を持つ父になって、父の言葉は確かにそうだと感じると振り返ります。
その社労士法人は社会保険には加入できましたが、当時は個人事務所も多く、社会保険に入れるだけまだいい、という感覚だったそうです。
吉田さんが今でも覚えているひどい求人として、実務経験を積みたい人に無給で「ボランティアで働かせてあげます」という趣旨の社労士事務所のページを挙げています。
採用ニーズが変わった、今の社労士事務所の状況
吉田さんは、これらが12年前の話であることを重ねて強調したうえで、現在の状況を説明します。
2023年から2024年の今は状況がかなり変わってきていて、特に東京都内は意識の高い会社が多いといいます。
人手不足や人口減少が進む中、労務のニーズに対応できないと採用ができず、残業代未払いのような状態では採用できないと吉田さんは話します。
そのため、社労士事務所に対する労務顧問や手続き代行のニーズが高まっており、未経験でも雇う社労士法人が増えてきていると述べています。
ただし、他の事業会社に比べると待遇はまだまだ低いというのが吉田さんの見方です。
吉田さんは、社労士法人ワンハートの経営理念として、日本一生産性の高い社労士事務所を作りたいと語ります。
せっかく社労士の資格を取ったのに、これしか給料をもらえないという状態を変えていきたいというのを、人生のテーマとしてチャレンジしていきたいと話しています。
社労士取得後の2つのキャリア、事業会社か事務所か
ここから吉田さんは、社労士を取った人がどんなキャリアステップを踏めばいいかを解説します。大きく2つの道があるといいます。
1つは事業会社の人事労務部門を目指す道、もう1つは社労士法人や社労士事務所を直接目指す道です。
企業の中で労務担当として働く。ただし専任の労務担当を置けるのは一定規模以上の会社に限られる
資格を活かして事務所側で働く。求人の絶対数は多くなく、チャンスをつかむ必要がある
吉田さんは、事業会社で労務部門のスタッフとしてやっていくのは結構難しいと指摘します。ある程度大きい会社でないと、専任の労務担当を置けないためです。
すごく小さい会社では、そもそもバックオフィス担当者すらいないことも珍しくないといいます。当然そこに労務部門はありません。
従業員20人から30人ほどの会社になると、経理担当者が労務を兼任しているケースが多いそうです。
さらに事業が拡大して50人、100人になってくると、ようやく労務担当という人を置ける規模になる、というのが吉田さんの肌感覚です。
吉田さんは、労務担当者としての経験がなくても、そうした求人があってやれそうであれば、ぜひチャレンジしてみた方がいいと勧めています。
労務担当の経験がなくても社労士としてやっていけるか
最後に吉田さんは、事業会社での労務担当の経験がなくても社労士としてやっていけるのか、という問いに答えます。
事業会社での労務担当者の経験がなくても、社労士としてやっていけるのか
リスナー・社労士を目指す人 さんからの質問
吉田さんの結論はやっていける、というものです。自分自身がそうだから、というだけでは証拠にならないとしつつ、経験がなくても活躍している社労士がたくさんいることを理由に挙げています。
例として、営業畑しか経験がない人や、吉田さん自身のように事業会社での経験はなく社労士法人での勤務経験しかない人も、社労士として活躍していると話します。
そのため、社労士の資格を取ったら社労士法人に就職するのもいいキャリアステップだと吉田さんは述べています。
ただし、社労士法人の求人は営業職のようにどこでも募集しているわけではないので、チャンスがあったらぜひそのポジションを狙ってキャリアステップを踏んでいってほしいと締めくくっています。
まとめ
社労士は人気資格である一方で、資格取得後のキャリア形成には独自の難しさがあります。吉田さん自身の再起の経験と、12年前と現在の待遇の違いを通して、社労士という道のリアルが語られた回でした。
- 社労士は一度社会人になってから資格を取る人が多く、新卒から続ける人は珍しい
- 12年前は月給18万・賞与退職金なしという待遇もあったが、今は採用ニーズが高まり状況が変わっている
- 社労士取得後は、事業会社の人事労務部門か、社労士法人・事務所を目指す2つの道がある
- 専任の労務担当を置けるのは従業員50〜100人規模以上の会社が多い
- 労務担当の経験がなくても社労士として活躍している人は多く、チャンスがあれば挑戦する価値がある



