なぜ「面接官視点」で採用を語るのか
吉田さんは独立後、事業を拡大する中で自社の求人に多くの応募を受け、採用面接官や書類選考に数多く携わる機会を得たと話します。
今回のエピソードは、その経験の中で感じたことを応募者に共有し、社労士法人への転職や自分の行きたい会社への転職を考えている人にヒントを提供したい、という意図で収録されています。
何度か募集と採用を繰り返し、多くの応募者の中から何名かと現在一緒に働いているという実体験が、この回の内容の土台になっています。
労働条件を確認せずに応募する人が意外と多い
吉田さんがまず挙げたのは、労働条件や求人内容を確認せずに応募する人が意外と多いという点です。
例えば正社員の求人を出しているのに、パートとして週2勤務を希望する内容の履歴書で応募してくる人も珍しくないといいます。
さらにシンプルなケースとして、当社は社会保険労務士法人であるにもかかわらず、名前の似た社会福祉法人 ── 介護や福祉を主な事業とする法人。社会保険労務士法人とは名称が似ているが、事業内容はまったく異なる。と混同したような応募もあったと話します。
介護系の職種の人が応募してきたり、履歴書の志望動機から「適当に送っている応募先の一つにうちが入っている」と読み取れるものもあったといいます。
だからこそ、まずは労働条件をきちんと確認した上で応募するほうがよい、というのが吉田さんの結論です。
「御社の正社員」とは何かを面接で確認する
一方で、求人票だけでは確認できない部分もあると吉田さんは指摘します。正社員の定義は会社ごとに違うためです。
教科書的な正社員は、会社の基幹的・中心的な業務を担い、全国転勤や配置転換、残業命令、休日出勤命令にも従う存在とされます。ただ、それは会社ごとに実態が異なると話します。
転勤がない会社もあれば、残業をあまり想定していない会社もあり、休日出勤の有無や頻度も全然違うといいます。
正社員求人に応募した際には、その御社の正社員ってどういうことなんですかっていうのは面接で聞いた方がいいと思います。
吉田さんは、ある有名な労働法の本にあった記述として、日本的雇用慣行 ── 日本企業で広く見られてきた、長期雇用を前提に配置転換や転勤、残業を受け入れる働き方の慣行を指す。の中の正社員像を紹介します。
その本では、基幹的な業務に従事し、全国転勤あり、配置転換あり、月間の残業時間は2時間から一定時間ほどに応じられ、時には休日出勤もするのが正社員だと書かれていたといいます。
ただし、これも人によって認識が違うため、自分が考える正社員と応募先の正社員の違いを、可能なら面接で確認したほうがよいとまとめています。
履歴書の写真にはお金をかけたほうがいい
3つ目の基本として、吉田さんは履歴書の写真にはお金をかけたほうがいいと話します。写真だけで書類選考の通過が大きく変わると、選考する側として強く感じたそうです。
避けたほうがいいのは、明らかにスマホのカメラで手を伸ばして自撮りしたものや、私服で撮ったものだといいます。
履歴書を見ると男性はスーツが多い一方、女性は私服やカジュアルな格好が多いと吉田さんは観察しています。
吉田さんは、男性はスーツを着て当然とされる一方、女性はオフィスカジュアルでよいとされる社会的な慣行について、男女差別的であまりよくないと個人的な考えを述べています。
そうした中で、女性でもスーツをきちんと着て、写真館などで履歴書用の写真を撮った人は、それだけでかなり好印象だといいます。
履歴書の写真はすごく印象に残るので、お金をかけた方がいいです。手間暇かけてしっかりとした写真撮ってください。
面接で緊張するのはむしろ好印象
いざ面接となると人間は緊張するものですが、吉田さんはそれをむしろ気にしなくていいと話します。緊張しているほうが、面接する側としては印象がよいというのです。
その理由として、自社の社労士法人ワンハートはまだスタートアップ企業で従業員も少なく、トヨタや任天堂のような採用ブランド力があるわけではない、という前提を挙げます。
そうした会社の面接にわざわざ応募し、来てくれた人がすごく緊張しているとわかれば、それだけ本気だと受け取れると吉田さんは話します。
スタートアップの面接では服装を研究する
ただし社風によっては硬すぎるとかえって採用されないこともあるかもしれない、と吉田さんは補足します。
例えば東京の渋谷にオフィスを構えるスタートアップ企業の面接では、スーツよりカジュアルなファッションのほうがいい場合もあるといいます。
その場合はスーツにネクタイではなくジャケットで行くなど、応募先の社風を事前に研究した上で判断したほうが、採用される確率が高くなるかもしれないと話しています。
面接で最も大事なのは「言葉のキャッチボール」
前編の最後のテーマとして、吉田さんは面接での受け答えについて語ります。面接前はあれを話そう、これを話そうと考えがちですが、それ以上に質問に的確に答えるほうがはるかに好印象だといいます。
逆に「この人は無理だな」と感じる面接のパターンとして、吉田さんは言葉のキャッチボールができないタイプを挙げます。これは自分だけでなく、ほかの採用面接を担当する人事も同じことを言うそうです。
具体例として、ひたすら自分語りをしてしまう人がいると指摘します。経歴や志望理由を延々と話し続け、面接官が話す隙がないような状態です。
話すよりも聞く、質問に的確に答えるっていうことを心がけた方がいいと思います。
喋る量のイメージとしては、応募者と面接官で半々ぐらいがよいと吉田さんは話します。
的確にキャッチボールができる人は、面接官が一緒に仕事をするイメージを持ちやすいといいます。受け答えがよかったから営業部門に配属する、といった判断も社内で説明しやすくなるためです。
聞き返しとリモート面接のカメラ位置
最後に吉田さんは、面接で使えるプチテクニックを2つ紹介します。1つ目は、質問の意味がわからないときの対応です。
面接官の質問の内容が複雑でよくわからないときは、正直に聞き返したほうがよいといいます。「これってこういう意味ですか」と確認する形です。
面接を設計する側にも意図はあるものの、それが全員に理解されるとは限らないため、わからないときは素直に聞くほうがよいと吉田さんは話します。
2つ目は、コロナ明け特有の注意点として挙げられたリモート面接のカメラの向きです。
リモート面接の時に、カメラの向きはすごく注意した方がいいと思います。
メインとサブのディスプレイがある環境で、サブ側のカメラから映ってしまうと、ずっと斜めを向いた状態で面接することになり、それだけで印象が悪いといいます。
カメラが正面にあり、自分が真ん中に映るような形で進めるとよい、というのが吉田さんのアドバイスです。前編はここまでで、後編に続くとされています。
まとめ
この回は、採用面接官としての経験をもとに、応募者が書類選考から面接までで押さえておきたいポイントを、労働条件の確認から受け答えまで具体的に整理した前編です。
- 正社員の求人にパート希望で応募するなど、労働条件を確認しないままの応募が意外と多い
- 正社員の定義は会社ごとに違うため、「御社の正社員とは何か」を面接で確認するとよい
- 履歴書の写真は書類選考の通過を大きく左右するため、写真館などでしっかり撮る
- 中小・スタートアップの面接では、緊張が少し出るくらいがむしろ好印象になりうる
- 面接では自分語りより、質問に的確に答える「言葉のキャッチボール」が重視される






