労災保険に「入らない」という選択肢はない
今回のテーマは、労災保険に入らないとどうなるのか、という点です。会社が事業を始めて労働者を雇うと、必ず労災保険に入る義務が生じると吉田さんは説明します。
ここで吉田さんが最初に強調するのは、労災保険に加入するかしないかを会社が選べるわけではないという点です。
労災保険に加入するかしないかっていう選択肢、選択権っていうのはないんですね、会社に。必ず入ると。
さらに法律上は、加入手続きがあってもなくても、自動的に加入したことになる仕組みだと吉田さんは補足します。
では、労災保険に入っていない状態とは何を指すのか。それは、労働基準監督署への届け出が漏れている状態だと吉田さんは説明します。
何もない業種でも事故は起こりうる
届け出が漏れたまま会社を運営していくと、どういうリスクがあるのか。吉田さんはまず、何事もなければそのまま進んでしまう点を挙げます。
一方で、危険な業種では労災事故が頻繁に起こりうると吉田さんは指摘します。建設や製造では、毎月のように事故が起きてもおかしくないといいます。
では安全な業種なら大丈夫かというと、そうでもないと吉田さんは続けます。都内でホワイトカラーとして働く人でも、事故と無縁ではありません。
営業の方がお客さん先に行く時に事故を起こしてしまった。これもまた労災事故なんで、重大災害になる可能性あるんです。
つまり、業種の危険度にかかわらず、どの会社にも労災事故のリスクはある、という前提が示されています。
未加入のまま事故が起きたときに会社が負う金額
大きな事故が起こった場合、会社にはどのようなペナルティがかかるのか。ここが吉田さんが最大のリスクと呼ぶ部分です。
労災事故が起きると、国が治療費などを給付します。しかし届け出を怠っていた場合、その費用が会社に請求される可能性があると吉田さんは説明します。
請求される割合は、未加入が故意か過失かで変わってきます。
保険料逃れとみなされる場合、国が給付した費用の全額が会社に請求される可能性がある
わざととは言えない場合でも、給付費用の40%が国から会社に請求される可能性がある
吉田さんは、労災保険の給付が多種多様である点にも注意を促します。軽いけがだけでなく、障害が残ったケースや死亡したケースにも給付が及びます。
そういう時の給付って、場合によっては千万単位とか、そういう金額になるんです。
その金額を会社が負担することになれば、場合によっては会社が倒産してしまうこともあると吉田さんは話します。
一番守られているのは零細企業の社長
吉田さんは、労災保険を労働者を守るための保険と説明したうえで、もう一つの見方を提示します。
実は一番守られているのは零細企業の社長だ、というのが吉田さんの主張です。
重大事故で1000万、2000万といった負担が発生しても、労災保険に入っていれば国から補填されます。すべてが免責されるわけではないものの、事業を続けられる可能性は大きく上がると吉田さんは話します。
とにかく国から補填されるので、事業の継続、例えば倒産とか廃業とか、そういったことは回避できる可能性がグッと上がると思いますね。
費用以外にもある未加入のデメリット
ここから吉田さんは、費用以外の未加入デメリットを深掘りしていきます。1つ目は前述の費用負担の話です。
2つ目は取引への影響です。業種によっては、労災保険に入っているかを取引先に確認されることがあると吉田さんは説明します。
例えば建設業の場合だと、労災保険に入ってない会社とは取引できませんとか、そういうことになるんですね。
3つ目は評判の悪化です。労災保険に入っていない、届け出をしていないという事実がネットやSNSで拡散されると、会社の信用力が一気に落ちると吉田さんは指摘します。
4つ目は手続き上の理由で、労災保険に入っていないと雇用保険にも入れないという点です。
これは、労災保険の手続きの写しをハローワークに提出して雇用保険に加入する仕組みのためだと吉田さんは説明します。労災保険の届け出がないと、手続き上、雇用保険にも進めません。
雇用保険に入れないと、退職したスタッフが退職後に失業保険を受け取れず、そこで揉める可能性もあると吉田さんは話します。
不安があれば専門家に相談を
吉田さんは、ここまでの未加入デメリットを4つに整理してまとめます。
そのうえで吉田さんは、労働者を雇う際に重要なのは労使間の信用関係だと述べます。労災保険に入っていない会社は世の中でごく少数派で、異常な状態だといいます。
労災保険は業種で登録するなど手続きが複雑で、届け出自体が間違っているケースもあると吉田さんは指摘します。
不安がある場合は、一度社会保険労務士に相談し、適切な労務環境を作ってほしいと吉田さんは締めくくります。
まとめ
労災保険は会社が加入を選べるものではなく、届け出が漏れているだけで大きなリスクを抱えることになります。吉田さんは、費用・取引・評判・雇用保険という4つのデメリットを挙げ、未加入は零細企業の社長自身を危険にさらすと説明しました。
- 労災保険は加入・非加入を会社が選べず、法律上は自動的に加入する構成になっている
- 未加入で事故が起きると、故意の場合は給付費用の全額、過失の場合でも40%が会社に請求される可能性がある
- 死亡事故など重大災害では給付が1000万単位になり、負担しきれず倒産につながる恐れがある
- 未加入は取引の停止、SNSでの評判悪化、雇用保険に入れないといったデメリットも招く
- 届け出の内容に不安があれば、社会保険労務士など専門家への相談が推奨される






