そもそも育児時短就業給付金とは何か
今回のテーマは、2025年4月から始まる育児時短就業給付金です。吉田さんは、最近はAIの話が続いていたため、たまには社会保険労務士らしく実務の話をしたいと切り出しています。
この給付金を一言でいうと、時短勤務をする人のための給付金です。育児休業から復帰したり育児のために時短勤務を始めたりすると、多くの会社では公平性の観点から給料が下がります。
例えば1日の所定労働時間が8時間の人が6時間になると、単純計算で給料は8分の6になります。その下がった部分を補填しましょう、という趣旨の給付金です。
これは一言でいうと、時短勤務をする人のための給付金です。
では誰と比べて「かわいそう」なのか。吉田さんは、完全に休んでいる育児休業中の人との比較だと説明します。
これまで育児休業給付金育児休業給付金 ── 育児休業中に雇用保険から支給される給付金。休業前の賃金に対して一定割合が支払われる。は、会社での勤務がゼロに近い完全休業の人が受け取れました。一方で、復帰して時短勤務をしている人には国からのサポートがありませんでした。
この不公平感を解消するためにできたのが、育児時短就業給付金です。時短勤務中に減った給料を国が補填するという点が制度の核になります。
給付金を受け取れる人の条件
ここからは、誰が対象になるのかという条件の説明に移ります。まず前提となるのが、対象者に関する条件です。
1つ目の条件は期間で、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている雇用保険の被保険者であることです。子どもが3歳になっていると対象外で、1歳など2歳未満であれば対象になります。
2つ目の条件は、育児休業給付金の対象となる育児休業から連続して時短勤務を始めたか、時短勤務開始前の2年間に12か月以上雇用保険に加入して働いた期間があるか、そのいずれかを満たすことです。
吉田さんは、実際には育児休業給付金をもらっていた人が、そのまま時短勤務の状態で復帰し、育児時短就業給付金を受け取るケースが多いと話しています。
そして最も重要な前提として、この給付金は2025年4月から始まるという点があります。収録は2025年3月で、放送を聞くころにはすでに始まっているか、開始直前の状態だと注意を促しています。
月ごとに判定される4つの支給要件
対象者の条件に加えて、育児時短就業給付金は月ごとに支給されるかどうかを判定します。吉田さんは細かい要件として4つを挙げています。
1つ目は、初日から末日まで雇用保険の被保険者である月であること。例えば4月なら、4月1日から4月30日まで被保険者でなければならず、途中で入った人や抜けた人はその月は対象外です。
2つ目は、1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月であること。時短の給付金なので、時短している事実が必要になります。時短勤務は数年続くことが多いため、途中で該当が変わることは少ないとしています。
3つ目は、初日から末日まで育児休業給付金や介護休業給付金を受けていない月であること。育児休業給付金をもらっているとその月は対象外です。
4つ目は、高年齢雇用継続給付高年齢雇用継続給付 ── 60歳から65歳までの人が、定年後の再雇用などで賃金が下がった場合に補填を受けられる雇用保険の給付。の受給対象となっていない月であること。両方を同時に受け取ることはできないというルールです。
もっとも吉田さんは、子育て世帯は20代から40代が中心で、60歳以降が対象の高年齢雇用継続給付との併給は実際にはほとんどないだろうと補足しています。
いくらもらえる?給付金額の計算のしかた
続いて、いくらもらえるのかというお金の話です。まず大前提として、給料が下がっていないと給付金はもらえません。
会社によっては、時短や子育てを応援するために給料を変えないところもあります。優秀な人が昇給し、時短で8分の6になっているはずの給料でも総支給額はむしろ上がる、というケースもありえます。
時短勤務の前後を比較して給料が下がっていない人は、この給付金の対象になりません。給料が下がっていないなら支援しなくてよい、というのが国の考え方だと吉田さんは説明します。
金額は、時短勤務中に支払われた賃金の10パーセント相当額が支給されます。ここで吉田さんが強調するのが、10パーセントの計算の元は「時短前の給料」ではなく「時短中の給料」だという点です。
例えば時短前が30万円、時短中が20万円だとすると、20万円に10パーセントをかけた2万円が支給されます。感覚的には30万円の10パーセントで3万円と思いがちだが、そうではないと注意を促しています。
これね、よくある考え方が、時短勤務前の10パーセントじゃないんですよ。
吉田さん自身も、以前に似たルールの給付金を勉強したとき、元の給料が基準ではないことを意外に感じたと振り返っています。
さらに計算式は複雑で、時短中の給料に10パーセントを上乗せした額が時短前の給料を超えないよう調整する仕組みが入っています。上乗せ後の額が前の給料を超える場合は、支給率や支給金額が調整されます。
労務担当者・社労士が備えるべき実務対応
ここからは、労務担当者や社労士が何をすべきかという実務の話に移ります。ポイントは、この給付金の申請漏れがないようにすることです。
吉田さんは、まずバッドシナリオを示します。給付金の存在を知らないまま半年ほど経ち、2025年の秋ごろになってしまうケースです。
そのとき、子育て中の従業員から「私はこの給付金に該当していたのではないか」と問い合わせが来ると、会社や社労士への不信感につながると指摘します。
なんだ、こんな給付金に該当してるんだったら教えてくださいよっていうのが、(会社や社労士への)不信感につながるんで、これをしっかり案内していくっていうのが重要です。
だからこそ、こうした給付金が始まることを会社の人も社労士も理解しておく必要があります。制度はかなり分かりやすく説明したつもりでも、複雑と言えば複雑だと吉田さんは話しています。
自社の従業員や顧問先の従業員が育児時短就業給付金にどこまで該当するのかを、顧問先と協力しながら調べ、申請漏れがないようにしていくことが重要だとまとめています。
さらに吉田さんは、2025年3月時点でいろいろ調べているものの、まだあまり情報が出てきていないと感じているそうです。
これは吉田さん自身の予想として、今後は役所からQ&Aや支給基準、イレギュラーなケースを解説した書類などが出るかもしれないとし、そうしたものが出たらしっかり読み込んでおくとよいと話しています。
ここでおしまいというよりは、これから始まる給付金なんで、今いろんなケースを学んでいって、給付金の支給漏れがないようにしていきましょう。
まとめ
育児時短就業給付金は、2025年4月から始まる、時短勤務で給料が下がった人を国が補填する制度です。対象条件や月ごとの判定、金額の計算式にはいくつかの注意点があり、労務担当者や社労士は申請漏れを防ぐ備えが求められます。
- 育児時短就業給付金は2025年4月開始で、2歳未満の子を養育するための時短勤務が対象
- 育児休業給付金からの連続、または開始前2年間に12か月以上の雇用保険加入が条件になる
- 支給額は「時短前」ではなく「時短中」の賃金の10パーセント相当額で、前の給料を超えないよう調整される
- 給料が下がっていない人は対象外で、育児休業給付金などとの併給もできない
- 申請漏れは会社や社労士への不信感につながるため、今後出る役所の解説なども踏まえて備えることが重要






