番組に初めて届いたお便りの中身は?
この回は、鼠さんと蛇さんが本編の収録後に話す雑談回です。冒頭で、番組のGoogleフォームに初めてリスナーからのお便りが届いていたことが紹介されます。
鼠さんによると、フォームを作ったのは5月の終わりか6月頭ごろで、そこから2か月ほど放置していたそうです。今回も来ていないだろうと思って開いたら届いていた、という流れでした。
差出人は、番組で「アゴラーネーム」と名付けた欄に「ぬいぐるみ」と書いた方です。性別欄の選択肢には「ヤマアラシ」があり、この方はそれを選んでいました。
いつも楽しく聞かせてもらっています。Discordサーバー宣伝回でお便り募集されてたので送ってみようと思い立って送らせていただきました。いつも作業の合間や寝る前に聞いては作業そっちのけでこっちに夢中になったり、眠気がどっか行って夜更かししちゃったりしています(笑)。お二人は大学も専門も学んできたことも違うと思うのですが、どうやって知り合って、こんな風にラジオを始めるくらい仲良くなったんですか?お二人は来世があるとしたらどんな人生が理想ですか?
お便りの性別欄について、蛇さんは選択肢を冗談まじりに説明しています。
性別は男性、女性、それから高等遊民、ホムンクルス、ヤマアラシとあります。あと無回答でもね、大丈夫ですから。
高校の演劇部から、なぜラジオを始める仲に?
お便りの1つ目の質問、二人の出会いについて、鼠さんは「実は高校が同じ」と明かします。二人は演劇部の先輩後輩で、鼠さんが1学年下でした。
ただし鼠さんは1年ほどで演劇部を辞めたため、部活の時期にはほとんど接点がなかったといいます。仲が深まったのはその後で、一緒に帰ったり、お互いに小説を書いたり、好きな文学の話をしたりするようになりました。
大学1、2年のころは、蛇さんが脚本、鼠さんがゲームのシナリオを書くなど、お互い創作で忙しく、連絡が途絶えた時期もあったそうです。「何か面白いことをしましょう」と言い合いながら何もしないまま時間が経ち、最後は鼠さんが「ラジオやろうよ」と持ちかけました。
鼠さんは、リアルの友人に二人の関係を聞かれたときの答えを、この場で過激な比喩を使って披露します。そのうえで、腹を割って話してからのほうが仲良くなれる、と真面目に付け加えました。
二人の共通点として挙がったのは、本物の読書好きであること、ADHD傾向があること、そして話すのが得意なことです。蛇さんは、話せてしまうことの弊害も口にします。
(喋れちゃうから)その、なんか実際以上に賢く見られちゃったりとか。
でもさ、自分の実力以上にこうなんか賢く見られちゃうって、なんか結構辛いな。
鼠さんは東大の大学院で西洋哲学を学び、ラテン語も読んでいたといいます。肩書が重く、先生に聞くような気持ちで質問されがちだと話しますが、本人いわく、中身は「督促状が家に届くくらいの貧乏」です。
督促状が呪術廻戦の「獄門疆」に見える?
鼠さんの家に届いた社会保険料の督促状を見た蛇さんは、それを「獄門疆 ── 漫画『呪術廻戦』に登場する封印の道具。表面に多数の目が並ぶ立方体として描かれ、作中で五条悟を封じ込めます」と呼びます。蛇さんは、あんなものを初めて見たといいます。
蛇さんは、五条悟が、高校時代の友人である夏油傑の姿をした敵に獄門疆で封印されかける場面を説明します。偽物だと見抜かれた敵が「キッショ、なんでわかるんだよ」と返すくだりを、鼠さんは督促状を開けた自分に重ねました。
僕、あの支払いがせかまれるんですけど、僕払ってますから。支払うことを俺の魂が否定してんだよ。
鼠さんによると、督促状をもらうのは今年の春先に続いて2回目です。督促状には色違いなど様々なバリエーションがあり、受け取った人の不安を利用して強制的に開封させる「遊び心があふれる封筒」なのではないか、と鼠さんは分析します。
蛇さんの説明では、封筒の裏はくすんだ水色で、18個の目が描かれていました。そのうち2つが赤と紫、残りは青です。鼠さんは、封を閉じる部分の十字の線が夏油の頭の縫い目にしか見えないと言い、蛇さんも「狙ってんじゃないの?」と同意しました。
鼠さんは「文化的なだけの極貧生活」を送っていると自嘲しますが、蛇さんは住む部屋も電気もあり、AIにも課金していると突っ込みます。
AIで作る家庭教師のオリジナル教材とは?
蛇さんにAIへの課金を指摘された鼠さんは、ClaudeのProを年間契約していると説明します。金額は3万円ほどで、「しといてよかった」と振り返りました。
鼠さんは小遣い稼ぎとして、行きつけのバーのマスターの息子さんの家庭教師をしています。英語を鼠さん、数学を蛇さんが担当しています。
教材づくりでは、生徒の苦手なところや単元を伝えるとAIが教材らしきものを作り、それを鼠さんが手作業で直して渡します。生徒が「お金持ちになりたい」と話していることから、経済新聞の記事を中学英語に訳した教材も作ったそうです。
しかもやっぱ受け付けいいんですよ、好きなことだから。
蛇さんは、教育の現場には時間をかければもっと良いものが作れると考えている人が多く、その作業の一部をAIに任せられる点に意義を見ています。
話はその後、行政への支払いが現金でなければならない不便さへ移ります。鼠さんは普段PayPayでお金をやり取りしており、現金化のタイミングが合わないと大変だとこぼしました。PayPayの案件を取りたいという冗談も飛び出します。
寺山修司の言葉は何がすごいのか?
鼠さんは最近、寺山修司 ── 歌人・劇作家。短歌から出発し、映画やアングラ演劇、エッセイなど多分野で活躍した表現者ですにハマっているといいます。きっかけは、寺山修司を好きだった父の影響で、『書を捨てよ町へ出よう』を初めて読んだことでした。
鼠さんは、寺山修司が短歌から出発した人で、「言葉の錬金術師」という二つ名を持つことに触れます。アングラ演劇の沼にも浸かりそうだと話しました。蛇さんは、寺山作品のユーモアが好きだといいます。
鼠さんが最近読んで良かった本として挙げたのは、詩集『ひとりぼっちのあなたに』です。中でも、太陽に近づこうとして蝋の翼が溶け、海に落ちたイカロスを題材にした詩が特に好きだといいます。
イカロスは飛んだが僕は飛べなかった。飛ぶことはただの冒険だが、飛ぶことを思うことは思想なのだと僕は自分に言い聞かせて、せめてもの心の慰めとすることにした。
この一節を受けて、蛇さんは寺山作品には空への憧れから来る浮遊感があると語ります。例に挙げたのは、ラジオドラマ『中村一郎』です。
蛇さんがうろ覚えながら紹介した筋では、中村一郎がビルの屋上から飛び降りようとして、そのまま空を歩いてしまいます。「人が空に浮いてるぞ」と騒ぎになり、一躍スターになるという話で、蛇さんはこれがとても好きだといいます。
鼠さんは、旅のエッセイに並ぶ「書物」の言い換えにも驚いています。「重さ100グラムの愚者の船」「押し花の犯罪」「声を出さない雄弁機械」「瞑想の紙製飛行機」などで、言い換えだけでこれほど出てくることに感嘆していました。
作家が自作を朗読すると何が変わる?
鼠さんが「声を出さない雄弁機械」という言い換えに感心したことから、蛇さんは日本文学研究者のロバート キャンベル ── アメリカ出身の日本文学研究者。テレビやラジオでも日本文学の魅力を発信していますさんの話を紹介します。キャンベルさんはラジオか何かで、あらゆる文学は「ボイス」を持っていると語っていたそうです。
その作家特有の声がテキストの中にあるので、作家自身が朗読するのは特別なことだ、という考え方です。蛇さんは、自作の小説を朗読してきた経験から、これに強く共感したといいます。
それ(自作の朗読)はなんか、あの自分で朗読することによって、自分の作品のボイスを規定してしまうからなんだよね。
蛇さんによれば、作家以外の人が読めば「○○さんが読んでいる」と受け取られます。一方、作家本人が読むと、それが作品の声として言葉を覆ってしまうといいます。
鼠さんも、気に入った小説や詩を声に出した瞬間、読まずに置いていたテキストとの間にギャップが生まれる感覚があると応じます。二人は、谷川俊太郎さんが自作の詩を読むとやはり特別だ、という点でも一致しました。
鼠さんはさらに、寺山修司が他の詩人の詩を引用する点も魅力だと話します。例に挙げたのは「墓場は一番安上がりの下宿屋だ」という詩で、墓は確かに一番安上がりの宿だと笑いました。
子どもの質問は、比例で読み解けるのか?
寺山修司の後、二人は読書の重なりと違いを確かめます。重なるのは太宰治、サリンジャー、村上春樹、芥川龍之介などです。一方で鼠さんはSFが好きで、『プロジェクト・ヘイル・メアリー』や『高い城の男』を蛇さんに勧めました。
話は子どもへの説明に移ります。学童と家庭教師の先生をしている鼠さんは、小学2年生の男の子に「重いものをゆっくり投げるのと、軽いものを速く投げるのと、どっちのエネルギーが強いか」と聞かれたといいます。
鼠さんは計算して見せ、高校でニュートンの話として出てくると伝えました。男の子が目を輝かせて聞いていたことに、鼠さんは才能を感じたといいます。子どもたちの世界を解き放つ手助けをしたい、とも話しています。
理科や数学を教える蛇さんは、その科目を好きになってほしいと語ります。さきほどの問いについては、重さを半分にして速さを倍にすると、運動エネルギーは速度の2乗に比例するため軽いほうが大きくなる、と解説しました。
蛇さんがよく話すのは、世界には1乗、2乗、3乗、逆数、逆2乗に比例するものがあり、それが世界のスケールを規定しているという見方です。例として挙げたのが、哺乳類の大腿骨でした。
荷重
大腿骨にかかる重さは、体のスケールの3乗に比例する
強度
骨の強さは、おおむね2乗に比例する
ずれ
体が大きいほど、強さに対して荷重が増えてしまう
結果
大きい哺乳類ほど大腿骨を太くする必要がある
鼠さんは、足の太さからゾウの体の表面積を求める公式をWikipediaで読んだと話します。表面積がわかれば薬の投与量が決まり、動物園のゾウの生存率が大きく上がったという内容です。蛇さんは、縦と横の比から大きさを逆算できる例は自然界にたくさんあると応じました。
ヤードポンド法への怒りから「次元」の話へ
比の話から、鼠さんはヤードポンド法への不満をぶつけます。アメリカに5年ほどいたパートナーはインチやヤードに慣れていますが、鼠さんには「100エーカー」と言われても見当がつかず、スケールがばらばらなのが理解できないといいます。
蛇さんはここで、単位と次元は区別すべきだと話します。本質は単位ではなく次元にあるという指摘です。
どちらも長さで次元が同じなので、イコールで結べる
長さと重さで次元が違うので、同じ小人の値でも結べない
蛇さんは、イコールで結べる世界が次元の同じ世界だと説明します。そのため、単位そのものは物理法則には関わりません。F=maは単位に依存せずに成り立つ、という話に、鼠さんは「脳のシナプスが刺激される」と大喜びしました。
二人が来世で送りたい人生とは?
最後に、お便りの2つ目の質問「来世があるとしたらどんな人生が理想か」に答えます。蛇さんは、割と静かな生活がいいとしつつ、女性に生まれてみたいとも話します。
女性に生まれ変わりたいっていうと、「女性の苦労を知らない」って言われちゃうんですよ。
でもだからこそ、ちょっと女性に生まれてみたいかもしれない。
鼠さんは性別にはこだわらず、運動ができる人間に生まれたいといいます。生まれつき発達性協調運動障害 ── 体の協調した動きが年齢に比べて極端に苦手な発達障害の一つ。転びやすい、球技が苦手などの形で現れますがあり、平均台を渡れず、子どもの頃は転んであざだらけだったそうです。
こんなに楽しそうにドッジボールやるんだったらいいな。
鼠さんは、学童で子どもたちが校庭や体育館で遊ぶ姿を見るたびに、それが自分の得られなかった青春のページだと感じるといいます。もう一つの願いは、お金に困らない人生です。
蛇さんは、お嬢様に生まれたいと話します。鼠さんは、もし女性に生まれるなら、仕事もスポーツもバリバリこなすかっこいいキャリアウーマンがいいといいます。好きなタイプが頼りがいのあるかっこいい女性だということも明かしました。
これに乗った蛇さんは、キャリアウーマンになって仕事ができない部下を叱責してみたいと言い出し、鼠さんは「ひどすぎる」と大笑いしました。
| 話者 | 一番の願い | ほかの希望 |
|---|---|---|
| 蛇さん | 女性に生まれて、その大変さも味わってみたい | 静かな生活、お嬢様、できない部下を叱責する上司 |
| 鼠さん | 運動ができる人間に生まれたい | お金に困らない人生、かっこいいキャリアウーマン |
言い間違いで「仕事ができる部下を叱責する」と言った蛇さんに、鼠さんは「ただのSじゃん」と突っ込みます。そのうえで、二人は意外と方向性が似ていると締めくくりました。
家庭教師の受付とLeanの勉強会、案件募集も
締めくくりに鼠さんは、初めてのお便りへの感謝を改めて伝えます。番組を聞いて二人に教わってみたい中高生がいれば、オンラインで家庭教師を受けると告知しました。料金などは番組の公式メールで受け付けるそうです。
仕事の依頼も募集しており、鼠さんはPayPayやSurfsharkの名前を挙げます。甘いもの好きの蛇さんがお菓子の案件を希望し、ASMRを提案して鼠さんに即座に却下される一幕もありました。
蛇さんは、自身のDiscordサーバー「自由研究ラボ」で、数学の証明を支援するプログラミング言語Lean ── 数学の定理の証明をコンピュータで記述し、正しさを機械的に検証できる言語・証明支援系ですの勉強会が始まったことを紹介しました。鼠さんも、小説を投げ合うなどの文化的な交流もあると呼びかけています。
まとめ
初めてのお便りに答える形で、二人の高校時代からの関係、獄門疆に見える督促状、寺山修司の言葉、比例と次元の物理、そして来世の理想まで、文系と理系の二人らしく話題が自由に広がった回でした。
- 二人は高校の演劇部で出会い、文学と創作を通じて仲を深め、鼠さんの提案でラジオを始めた
- 鼠さんの家に届いた督促状は、目が並ぶ封筒が呪術廻戦の獄門疆に見えると二人で盛り上がった
- 寺山修司のイカロスの詩や、作家が自作を朗読すると作品の「ボイス」が決まってしまう話が語られた
- 体のスケールと比例の関係や、物理法則の本質は単位ではなく次元にあるという見方が紹介された
- 来世の理想として、蛇さんは女性やお嬢様、鼠さんは運動ができる人生やかっこいい女性を挙げた




