Manusは「中国の最新LLM」なのか?
今回のテーマは、AIエージェントサービス「Manus」です。Manusは最近Metaに買収されたことで話題になっていますが、しぶちょーさんはSNSを見ていて、詳細を知らない人が多い印象を持ったといいます。
しぶちょーさんが気になったのは、久しぶりに見かけた「驚き屋」の投稿でした。OpenAI、Gemini、Claude、DeepSeek、Manusを同じ並びに置き、これが最新の中国AIだと紹介する人がいたそうです。
その並びでManasを捉えて、なんか、これが今の最新のAIですみたいなことをそこ言ってる人がいたのね。
(Manusは)LLMじゃないでしょ。
なんか便利ツールだよね。
かねりんさんが言うように、ManusはLLM ── 大規模言語モデル。大量の文章データで学習し、文章の生成や質問への回答を行うAIモデルで、ChatGPTやGeminiの中核にあたりますそのものではありません。しぶちょーさんは「ManusもChatGPTと一緒でしょ」と思っている人に向けて、この回で整理しようと考えたと話しています。
しぶちょーさんは誤って年額課金してしまい、1年間Manusを使い続けることになった立場でもあります。一方、かねりんさんはこれまで無料で貯まったクレジットで音声の文字起こしをやりくりし、収録時点では7日間の体験版を月額で試していました。
いや、これはもう1年使い続けていいなって思ったよ。
調べ直した結果、しぶちょーさんはManusをコンセプトの良いツールだと評価しています。冗談まじりに「Manus公式から案件をもらおう」と言いつつ、本題へ入っていきます。
チャットAIとの決定的な違いは「タスク実行」
Manusはよく「中国発の自律型AIエージェントサービス」と紹介されます。しぶちょーさんによれば、この説明の肝はAIエージェント ── ユーザーの目的を受け取り、必要な手順を自ら設計し、ツールを使って実行するAIの仕組み。単なる質問応答ではなくタスクの完遂を主眼に置きますという部分です。
AIエージェントとは、ユーザーから指示や目的を受け取ると、自分で「これをやろう、このツールを使おう」と行動を決めて最終的なゴールまでたどり着くAIのことです。かねりんさんは「人間はゴールだけ設定し、道筋はAIが考える」と理解しています。
ただ、ChatGPTやGeminiにもエージェントモードがあり、データ分析なども頼めるため、違いがわかりにくいのも事実です。しぶちょーさんは、ChatGPTやGeminiはあくまで「壁打ち」の道具だと位置づけます。
MANASはもうタスクの実行、AIエージェントを含めてだけど、もうとにかく頼まれたことを実行するんだっていうところ。
なんか打ち返してくるっていうよりは、成果物を出すっていうところに特化してる。
壁打ちが中心。頼まれたものを打ち返す対話型
タスクの実行に振り切り、成果物を出すことに特化
両者にはグラデーションがあるものの、Manusは明確にタスク側に振っている点が違いだとしぶちょーさんは説明します。使い勝手自体は、ChatGPTやGeminiと同じようなチャットUIに頼むだけです。
かねりんさんは文字起こしを頼んだとき、Manusがコマンドプロンプトを開いたり音声ファイルをエンコードしたりする様子を見ています。裏で「今何をやっているか」を表示しながら、何十分も動き続けるのがManusの特徴です。
エージェントモードとの違いを聞かれたしぶちょーさんは、できるタスクの種類が明らかに多いと答えています。
15分でアプリが完成?Manusのアウトプット能力
Manusでできることの代表例として、しぶちょーさんはWebアプリ開発を挙げます。「こんなアプリが欲しい」と伝えるだけで、フロントエンドとバックエンドを実装し、ツールを作り上げてくれるそうです。
たとえば進捗管理ツールを頼むと、15分ほどでデータベースやユーザー認証の機能まで備えたアプリができたといいます。最近はApp Storeに申請できるレベルのスマホアプリも、プロンプトから作れるようになりました。
もっとも一発で完成するわけではなく、エラーが出るたびに「直して」と頼みながらバイブコーディング ── コードを自分で細かく書かず、AIに自然言語で指示を出しながら対話的にソフトウェアを作っていく開発スタイルを進めていくのが実際の使い方だと話されています。
お財布は火の車?シビアなクレジット消費
アプリ開発の話の途中で、かねりんさんが体験版のクレジットが尽きたことに気づきます。しぶちょーさんも、月8000クレジットのプランを使っているのに、1月頭の時点で残りは100クレジットほどでした。
あのもう、日銭で暮らしていくしかない。
しぶちょーさんによると、Manusの料金プランはプロプランだけで、その中で月に受け取るクレジット量を選ぶ仕組みです。しぶちょーさんが選んでいる8000が最小で、12000や50000などもあります。
画面を確認したかねりんさんによれば、最上位は月4000ドルで120万クレジットほど。2人とも驚いていました。
クレジットが切れると使えなくなる仕組みなので、勝手に請求が膨らむ心配は少ないとしぶちょーさんは話します。追加購入は割高で、月額で付与されるほうが安い設計です。余ったクレジットは翌月に持ち越せます。
Manus 1.6からは、MAX、通常、Liteのモードを選べるようになりました。Liteは性能が落ちる代わりにクレジット消費が2分の1になるため、簡単なタスクに向いているかもしれません。
かねりんさんは、2時間ほどの音声の文字起こしで500〜1000クレジット弱を使っているといいます。しぶちょーさんは、ツールを作りながら修正を繰り返し、1回動くと20分ほど作業が続く流れを重ねた結果、完成までに9000クレジットほどを使いました。
DeepではなくWide。並列調査「Wide Research」の凄み
しぶちょーさんが最も特徴的だと挙げるのが、リサーチ機能「Wide Research」です。Manusは画像生成、動画、プレゼン、音声コンテンツも作れますが、リサーチには他のAIにない強みがあるといいます。
ChatGPTのディープリサーチでは、AIが1人で頑張って深く調べます。一方のWide Researchでは、小さなエージェントたちが横方向に並び、1人1個ずつ同時に調べていきます。
1つのAIが頑張って深く調べる。ChatGPTでは100冊規模の調査は難しい
小さなエージェントが並列に1人1個ずつ調べ、結果を統合してまとめる
しぶちょーさんはポッドキャストのネタを調べる際、ChatGPT、Gemini、Claude、Manusの4つを同じテーマで並行して走らせることがあります。比べると、Manusは読みやすく、欲しいところまで取りに行ってくれると評価しています。
ChatGPTのディープリサーチとかだと100冊とかいけないのよ、全然。
実際にAI関連の選書を頼んだところ、出版されている本を一気に調べてくれたそうです。数百件規模の調査もでき、数がもともと多いタスクに向いています。
その分クレジットは多く使います。しぶちょーさんは「エージェントは秘書だと思えばいい」と話し、外注していると考えれば安いという見方を示しました。
ほかにもManusにはコネクターがあり、Notionへの書き込みやSlackへの投稿などの自動化ができます。しぶちょーさんはAI関連ニュース5個と製造業系ニュース5個を毎日Notionに書き込むタスクを組み、1回300クレジットほどかかったといいます。毎日300クレジットほど付与されるため、ほぼ繰り返し回せる計算だそうです。
調査結果、画像、音声、動画、アプリと、あらゆるものを成果物として出すのがManusの特徴です。作ったWebアプリはManus上でデプロイでき、Manusのアカウントを持つ人なら誰でも使えるため、PoC ── Proof of Conceptの略で概念実証のこと。本格開発の前に、アイデアが実際に機能するかを小さく試して確かめる取り組みですがすぐにできる点も良いところだとしぶちょーさんは話しています。
中国発からシンガポールへ。Meta買収の裏側
Manusの歴史について、かねりんさんは「2年前くらいに出た」と思っていました。実際のリリースは2025年3月で、収録時点ではまだ1年も経っていません。
しぶちょーさんによると、経営者は1992年生まれのシャオホン氏です。リリース当時、中国では大きな反響があり、招待コードがネット上で数十万で取引され、登録待ちリストは何十万件にもなったといいます。
直前の月にDeepSeekショックがあったこともあり、Manusは「第二のDeepSeek現象」と騒がれました。この印象から、DeepSeekと並ぶ中国AIの二大巨頭というイメージを持つ人がいるそうです。
だけどもはやManasって中国企業ですらないのよ。
しぶちょーさんの説明では、中国でAI企業を営むと、世界に売り込むときに安全保障上の制約を受けます。監視を懸念して中国製AIを避ける人は多く、DeepSeekはその最たる例だといいます。
そのためManusは、その制約を嫌ってシンガポールへ移ったのではないかと言われています。さらに、中国企業のままではMetaによる買収はほぼ不可能なため、買収を見据えた準備だったのではという憶測の記事も出ています。しぶちょーさんは、真相はわからないと断っています。
Meta傘下で「安心」は本当か?
かねりんさんは、Metaに買収されたこと自体の意味にまだ落ち着いていないと言います。日本では詐欺広告を放置する会社というイメージがあるのでは、と問いかけ、しぶちょーさんも「邪悪」と応じます。
しぶちょーさんは、日本が広告の抜け穴を調べるテストに使われていたという話が最近出ていることにも触れ、真偽はわからないとしています。
中国企業だっていうよりは使いやすいと思う。
FacebookやInstagramの会社で、アメリカの企業になると言われれば、詳しくない人は安心しやすいというのがしぶちょーさんの見方です。独立性は保つとされ、Manusを作るButterfly Effect社の経営者はMetaの副社長になったはずだといいます。
かねりんさんは「副社長は100人くらいいるのでは」と疑いの目を向けます。しぶちょーさんも、Metaのサービスに変に統合されてほしくはないと話しています。
MetaのAIに良い印象がないというかねりんさんに対し、しぶちょーさんはLlama ── Metaが開発・公開している大規模言語モデルのシリーズ。モデルの重みが公開されており、研究や独自開発に広く使われていますを挙げ、公開モデルで研究分野に大きく貢献していると説明します。ChatGPTやGeminiの戦線に上がれていない中で、その打ち手としてManusを買ったのかもしれないとしています。
「ただのラッパー」ではない3層エージェント
Manusのミッションは、あらゆる人にプログラミング能力を提供し、人の可能性を拡張することだとしぶちょーさんは紹介します。象徴的なのが次の言葉です。
一方で、Manusは「ただのラッパー」と言われることもあります。しぶちょーさんが音楽のラッパーのボケを挟みつつ説明したところでは、ラッパーはサランラップのラップと同じ「包み込む」の意味です。
自社で基盤モデル ── 大量のデータで事前学習され、さまざまな用途に転用できる大規模AIモデル。多くのAIサービスはこうした外部モデルを組み合わせて作られていますを作らず、他社のAIをAPIで使い、UIやUXだけを作ったサービスを揶揄する言い方です。Manusも中ではClaudeなど他社のモデルが動いています。
しかししぶちょーさんは、公開されている論文をもとに、それは違うと説明します。Manusは頭脳を作らない代わりに、エージェントがどうタスクをこなすかというアーキテクチャ ── システムの全体構造や処理の設計のこと。ここでは、複数のエージェントの役割分担と処理の流れを指しますを作り込んでいます。
プランナー
依頼内容を受け、必要なタスクに分解する戦略家
実行エージェント
分解されたタスクを受け取り、ツールを使って実際に作業する
検証エージェント
アウトプットが依頼に合っているか確認し、誤りがあれば差し戻す
この3つの役割のエージェントがぐるぐる回りながらタスクを進めます。それぞれが役割を保てるよう、RLHF ── 人間のフィードバックによる強化学習。AIの出力の良し悪しを人が評価し、その評価をもとにモデルを調整する手法ですなどでチューニングされているといいます。
エージェントの頭脳には、しぶちょーさんの説明ではQwenやClaudeなどが入っています。そこへ「あなたはプランナーです」というチューニングやプロンプトを施し、サブエージェントが使うツールキットも用意しているのが技術の根幹です。かねりんさんは、以前しぶちょーさんが作った大喜利AIのようなものだと理解していました。
デスループに認証の壁。エージェントの技術課題
エージェントをまともに動かすには、この作り込みが欠かせないとしぶちょーさんは言います。代表的な課題の1つが死のループ ── AIエージェントが同じ失敗や無意味な行動を繰り返し、タスクが完了しなくなる状態。自律性の高いシステム特有の課題ですです。
怖いわ。で、どんどんクレジットだけがなくなっていく。
しぶちょーさんは、こうした課題がある中でManusはかなりうまくやっていると評価します。詳しい論文は概要欄に載せているとし、ラッパーという評価は当たらないとまとめました。
かねりんさんのクレジットはこの時点でゼロになり、タスクは途中で止まっていました。友達を紹介すると1人につき500クレジットもらえるため、2人は概要欄の招待リンクからの登録を呼びかけています。
AIエージェントに生活の余白を奪われる?
本題を終えたしぶちょーさんは、最近の悩みをかねりんさんに打ち明けます。AIエージェントが生活の余白を奪っていく、というものです。
俺が何かタスクをやってる時に、その裏でエージェント動いてないともったいないなって気持ちになるようになってきてさ。
しぶちょーさんは、スマホゲームで体力をマックスのまま放置するのがもったいない感覚に似ていると話します。5分空けばエージェントに指示を出し、20分後に完了を確認する。複数のツールを並行して回すうちに、ひどく忙しなくなったといいます。
最近はReplitなど他のバイブコーディングツールも試しており、1つのタスクに20〜30分かかります。こちらに指示を出している間にあちらのタスクが終わる、という状態です。
それさ、なんかさ、寄生虫が宿主探すみたいな感じになってんじゃん。人間結局宿主だよ。
かねりんさんは、指示を出すエージェントがほしいと提案します。AIブラウザに任せれば、人間は天皇陛下のように「お気持ち」を述べるだけでいいのでは、という冗談も飛び出しました。
しぶちょーさんは、AIエージェントは秘書のように裏で動いてくれる人として使うべきものだと話しつつ、AIブラウザが自動で追加課金してしまう危険も口にしています。
機械設計時代の外注管理に戻っていた
しぶちょーさんがこの状況で思い出すのは、機械設計の仕事をしていた頃です。大手メーカーの設計者は自分で設計するより、外注設計者に仕事を振り、戻ってきたアウトプットに修正指示を出すのが仕事でした。
機械設計時代、3人ほどの外注設計者に同時に指示を出して仕事を回していた
AIエージェント時代、複数のエージェントに同時に指示を出して回している
当時のしぶちょーさんは、専門性が身につかず、効率よく仕事を出す能力しか育たないことが嫌だったといいます。今のAIエージェントとの付き合い方は、その頃に戻っているように感じるそうです。
人間らしい時間とか、なんか人間にしかできない時間をAIが作り出しますって言ってるのにさ、めっちゃその時間をAIに奪われてると思って。
めっちゃ本末転倒だね。
かねりんさんも、あるAIの答えを別のAIに聞いてクロスチェックする橋渡しだけで時間が無限に溶けると共感します。しぶちょーさんは、エージェントに指示を出すツールを作ろうとし始めたら終わりだと話しました。
2人は、外注や人への依頼をAIが代わっていると考えれば安いものの、Manusの料金のハードルは高いという点でも一致しています。身銭を切ってAIの情報発信をしている現状を嘆く場面もありました。
案件のはずが課金され続けたAIサブスク
話は変わり、しぶちょーさんは最近「騙された」経験を語ります。中国系のゲーム作成AIの宣伝案件を受け、SNSで発信して報酬をもらったあとのことです。
案件のために登録した情報で、案件を受けた月から毎月40ドルほど課金され続けていました。年末にサブスクを洗い出したときに初めて気づき、結果的に案件の報酬より多く支払っていたといいます。
自分でね、課金は、俺は課金するつもりなかったのに、案件という体で課金登録されてたっていう。
しぶちょーさんはChatGPTで英訳した文面で返金を求めましたが、返事はないそうです。サービス名は明かさず、AI系の発信者に注意を呼びかけました。
「足るを知る」でAIと付き合う
最後にしぶちょーさんは、AIエージェント時代だからこそ人間のあり方を考える必要があると話します。行き着いた言葉が「足るを知る」でした。
作りたいものがはっきりあるなら回せばいいものの、時間が空いたからもう1個やろうというのはよくない、というのがしぶちょーさんの考えです。余白を大事にしないといけないと話しています。
かねりんさんは逆に、中途半端だから後悔するので、フル課金して突き抜ける手もあると提案します。しぶちょーさんも、できないことができるようになるのは良いかもしれないと受け止めつつ、やはり足るを知るのが大事だと締めました。
Manusで言えば8000クレジットのプランで、月に1本自分用のツールを作るくらいなら足りるとしぶちょーさんは言います。エージェント系はManus一択かと聞かれ、他のツールも試している前提で、使いやすさと汎用性で今はManus一強だろうと答えています。
まとめ
Manusは基盤モデルそのものではなく、プランナー・実行・検証の3層エージェントでタスクを完遂することに特化したサービスです。Wide Researchやアプリ開発など強力な一方でクレジット消費は重く、使う側には「足るを知る」姿勢が求められると2人は語っています。
- ManusはLLMではなく、成果物を出すことに特化した自律型AIエージェント
- Wide Researchは小さなエージェントが並列に調べるため、大規模な調査に強い
- クレジット消費は大きく、最小の8000クレジットプランでも使い方次第ですぐ尽きる
- 中国からシンガポールへ移転し、Metaに買収された。ラッパー批判に対しては3層構造の作り込みがある
- エージェントを回し続けて余白を失わないよう、「これで十分」と線を引くことが大切





