自分そっくりのAIは、声・顔・頭脳で作れるのか?
今回の深掘り回のテーマは「AIかねりんを作る」です。しぶちょーさんは、実在する人の話し方や考え方、声、見た目をAIで再現するヒューマンクローン ── 実在する特定の人の話し方・考え方・声・見た目をAIで再現し、その人のように応答・発信するもの。AIクローン、デジタルツインなどとも呼ばれますについて、ここ数年で一気にサービスが増えていると話します。
しぶちょーさんが用意した原稿は約20万文字。普通の本1冊がおよそ10万文字なので、本2冊分ほどの調べものをかいつまんで話していく形になりました。
これ原稿書いたんだけど、クソ長えんだよな、これね。
日本でのAIクローンの走りとして、しぶちょーさんはAIエンジニアの安野貴博 ── AIエンジニア・起業家。政党「チームみらい」の党首を務めていますさんが2024年に作った分身「AIあんの」を挙げます。AIあんのはYouTubeに寄せられた質問に24時間回答し続け、話題になりました。
同じ2024年の11月には、パナソニックが創業者・松下幸之助を再現するAIを発表しています。しぶちょーさんによれば、声もボイスクローンで再現され、「怖いくらい似ている」と話題になったそうです。今年は小池百合子都知事のアバターも登場しました。
しぶちょーさんは、AIクローンを作るための要素を3つに整理します。1つ目の声は、ElevenLabsなどのボイスクローンでかなり本人に近いものが作れるようになりました。2つ目の顔も、Sora 2 ── OpenAIの動画生成AI。本人の顔を登録して動画に登場させる「カメオ」機能が話題になりましたのカメオのように、動画生成で本人らしい映像が作れます。
3つ目の頭脳について、かねりんさんは「できないよ」と半信半疑です。しぶちょーさんが紹介したのは、スタンフォード大学の研究とされるもので、2時間ほどのインタビューから、本人の意見の約83%を当てられる水準の推論ができるという内容でした。
しぶちょーさんは、83%という数字をかなり高いと見ています。同じインタビューを2週間後に本人にしても、本人自身が同じ答えをするとは限らないからです。
だから多分本人自身も多分そんな当てれないのよ。
俺は多分(同じ質問をされても)70パーぐらい気分で変わるよ。
しぶちょーさんの見立てでは、かねりんさんの頭脳を再現するのに必要な2時間分のインタビューは、これまでの『おちつきAIラジオ』で話した内容で十分に補えます。「お疲れ様でした今まで」と冗談めかすしぶちょーさんに、かねりんさんは「人間の優位性はどこにあんのよ」と返し、この問いが後半のテーマにつながっていきます。
故人と話せるAIは、慰めになるのか?
しぶちょーさんがAIクローンの使い道を尋ねると、かねりんさんは真っ先に「お葬式とか」と答えます。しぶちょーさんは「さすが」と応じ、最もセンシティブな使われ方として、故人を再現するAIを挙げました。故人と話せるサービスは中国で作られ、話題になったそうです。
しぶちょーさんによると、この分野はグリーフテック ── 大切な人を亡くした悲しみ(グリーフ)に、技術で寄り添うとうたうサービスの総称。中心は故人を再現するAIですと呼ばれます。身内を亡くして心を痛めた人を支えるグリーフケアを、テクノロジーで行おうという考え方で、生前のインタビューをもとにAIクローンを作って話させる形が中心です。
ただし、故人のAIクローンには倫理の問題がついて回ります。どこまでを本人の言葉として扱い、何を言わせてよいのかという問題です。かねりんさんは「本当は誰々ちゃんのことが好きだったんだ」と言い出したら困る、と例を出し、しぶちょーさんもそういうことは十分あり得ると応じました。
かねりんさんが「好きなあの子と喋れるほうがいい」と茶化すと、しぶちょーさんは、本人のボイスクローンは本人の許可なく作れないのがルールだと説明します。ただし、技術的には作れてしまうとも付け加えました。
ポッドキャスターは自分の声を売る時代?
かねりんさんは、どうせ自分の声のクローンは勝手に作られているのでは、と冗談を言います。しぶちょーさんが「かねりんボイスは使われてると思う」と返すと、かねりんさんは「使われてるぐらいだったら売ろうかな」と応じました。
話題は、ElevenLabsや日本のCoeFont ── AI音声合成サービス。自分の声をもとに音声を作り、公開・販売できる仕組みがありますで自分の声を売る人がいるのか、という方向へ移ります。かねりんさんが「公認にしたら、あんなことやこんなことで遊ばれちゃう」と渋ると、しぶちょーさんは身もふたもない整理をします。
でも公認にしなくても、無料で弄ばれるか有料で弄ばれるかの違いでしょ。
そこからアイデアが膨らみます。かねりんさんは、しぶちょーさんの声とセットで並べて、リスナーに二次創作をしてもらうのはどうかと提案しました。しぶちょーさんは、テーマを入力すると1分ほどの『おちつきAIラジオ』風の掛け合いが生成される「おちつきAIメーカー」や、番組の検索ツール「おちつきAI RAG」との連携を思いつきます。
声を売る時代ですね。ポッドキャスターは声を売っていきましょう。
かねりんさんは、二次創作されてこそポッドキャスターも一人前だとし、チェキの次は同人だと新しい文化づくりに意欲を見せました。しぶちょーさんも、AIかねりんができればリスナーがいろいろ遊べるはずだと話しています。
一度目のAIかねりんは、なぜユーモアを失った?
かねりんさんが「AIしぶちょーも遊べる」と言うと、しぶちょーさんは、AIしぶちょーはほぼ構築できていると明かします。毎週土曜日に配信している自身のポッドキャストで、話し方も原稿も少しずつ洗練されていて、それを応用すればAIしぶちょーになるそうです。
一方のAIかねりんは、一度失敗しています。しぶちょーさんが学習元に使ったのは、かねりんさんがVoicyで一人で話している音声でした。そこでは「刑事の視点で」と語る強めのかねりんさんが多く、そのまま再現した結果、しぶちょーさんの言うことを全部否定するAIになったといいます。
真面目すぎて、スタンガンで気絶しましょうみたいな話したら、そんなことはしちゃいけないみたいな。
かねりんさんが「AIはユーモアが難しいと言われていたけど」と尋ねると、しぶちょーさんは素材の選び方次第だと考えています。『おちつきAIラジオ』の会話を話者分離 ── 複数人の会話音声から、誰がいつ話したかを分けて書き起こす処理ですし、かねりんさん側の発言だけを学ばせれば、しぶちょーさんとの会話の文脈も残せるという見立てです。番組の音声はおよそ200時間あり、研究の2時間の100倍ほどになります。
有名人や専門家のAIクローンは、何を助言してくれる?
しぶちょーさんは、グリーフテックを飛び道具的な使い方とし、より定番なのは有名人や経営者のクローンだと話します。安野さんの例のように、有名人や専門家と1対1で話しているように回答してくれるアドバイス系のクローンです。
テキストで答えるものも、声で答えるものもあるそうです。コーチングや恋愛相談にも使われ、海外では有名な恋愛トレーナーがAIクローンとしてアドバイスをくれるサービスもあるといいます。
話は一時、AIツールのアンバサダーへ脱線します。しぶちょーさんは、ElevenLabsがアンバサダーを募集していると紹介しつつ、いろいろなツールに応募しても通らないと打ち明けました。理由として本人が挙げたのは、AIの人というイメージがSNS上の発信では伝わっていないことです。
ポッドキャストってそんだけ表に出てないんだよ。聞きに来てくれればわかるけど。
社長に聞けないことは、社長のAIに聞く?
しぶちょーさんは、企業での使い方として、自社の社長や経営者、社員をAIアバターにする例を挙げます。社長に直接聞くのは気が引けても、社長の考えをクローンしたAIになら判断を仰げる、というのが定番の使い方だそうです。
途中でかねりんさんが、しぶちょーさんの著書をAIの声でオーディオブックにできるのでは、と提案します。しぶちょーさんの本は左に文字、右に図という構成のため、読み上げると「図1に書いてある通り」になってしまうとして、あまり乗り気ではありませんでした。
それでもかねりんさんは、しぶちょーさんが薦める本の朗読版があれば、番組のリスナーは聞くはずだと推します。ただし、それがAIのボイスクローンだと少し嫌で、本当に本人が朗読していれば聞きたい、という点で二人の意見は一致しました。
最近ね、あるよ。だから俺のAIのポッドキャストも本人か本人じゃないか、みんなわかんなくなってるよ。
企業の話に戻ると、決算説明会などであえてAIアバターに話させ、自社の技術をパフォーマンスとして見せる使い方もあります。社内の相談役をAIクローンにする例もあるそうです。
裁判で被害者をAIで再現したら、どうなった?
しぶちょーさんが「これ大丈夫なんか?」と感じた使い方は、アメリカの裁判です。殺された人を遺族がAIで再現し、その思いを法廷で語らせたという事例で、賛否が大きく分かれたといいます。
やばいな。心情に訴える。
しぶちょーさんが紹介したのは、運転中のトラブルで撃たれて亡くなったクリス・ペルキーさんの事件です。本人の姿と声を再現したAI映像が、お姉さんが書いた言葉を読み上げました。
しぶちょーさんによると、映像は法廷で使われたものの、あまりに心情に訴えかけることを理由に問題になったそうです。かねりんさんは「効きすぎて公平な裁判じゃなくなったから」と受け止めています。しぶちょーさんは、これを2026年9月の比較的最近の話として紹介しました。
かねりんさんは、日本ではまだAIクローンをあまり見ないと話します。しぶちょーさんも、本人のように話し、入力にその人らしく反応するクローンは、少なくともポッドキャスト界隈にはないと認めました。ひろゆきさんのボイスメーカーのような声の技術は以前からあり、それが少ないデータで誰でも使えるようになってきた、という整理です。
AIクローンの役割は、本人の時間を増やすこと?
しぶちょーさんは、ここまでの事例からAIクローンの役割をまとめます。基本は、本人がいなくても本人らしく答えてくれることで、本人の時間を増やす役割です。
知識伝承について、かねりんさんは博物館や美術館に置けば、本人がその場にいなくても本人が説明してくれる形になる、と想像します。しぶちょーさんも「それ結構ありだと思う」と応じました。
しぶちょーさんが面白いと挙げたのは多言語化です。かねりんさんは、YouTubeの吹き替えでは声が別人になってしまうと指摘し、本人の声のまま『おちつきAIラジオ』の英語版が作れたらいいと期待を寄せました。
もう1つが自己理解です。しぶちょーさんが紹介した別の研究では、本人の回答をもとに60歳になった本人をAIで再現して対話させたところ、将来への不安が下がったという結果があるそうです。かねりんさんが「30年後の自分に家がなかったら絶望する」と心配すると、しぶちょーさんは、30年後の自分がいなかったらホラーだと笑いました。
AIクローンに依存したら、何が起きる?
しぶちょーさんは、AIクローンが人らしく振る舞うからこそケアやファンとの親密さに使える一方で、当然リスクもあると話します。最初のリスクは、本人が絶対に言わないことを言ったり、誇張したりすることです。
2つ目のリスクは依存です。しぶちょーさんは、AIとのやり取りを重ねた末に自殺してしまうケースにも触れ、ヒューマンクローンに限らずセーフガードが必要だと指摘します。18歳未満の利用を控える考え方もあるそうです。
死人に口なしとは言うけど、もう死人に口ありになっちゃうからさ。
かねりんさんは、今のチャットボットでも多くの人が影響を受けているのに、実在の人物の姿で現れたら影響力はとてつもないと話します。AIかねりんと恋愛して勘違いする人が大量に出たら、という冗談から、二人は「実在の人ではやらないほうがいい」という点で一致しました。初音ミクのような架空のキャラクターなら問題が起きにくく、アイドルのAIクローンが少ないのもそのためだろう、というのがしぶちょーさんの見方です。
しぶちょーさんがAIに「AIかねりんを作るときの注意事項」を聞いたところ、元刑事という経歴が特に危ないと返ってきたそうです。元刑事の文脈で、もっともらしい取り調べの話を作ってしまう可能性があるからです。
元刑事なんでねみたいなこと言い出すと、なんか非常に危険だよねみたいな。
フェイクニュースじゃん。
AIかねりんは、どうやって作る?
具体的な作り方として、しぶちょーさんがまず挙げるのは、声づくりにElevenLabsを使うことです。理由は声の質が一番よいからで、日本語も新しくなってかなり良くなったといいます。
以前のElevenLabsには、ボイスクローンならV2のほうがよいのに、V2.5でないと流暢に話さないという悩みがありました。しぶちょーさんによると、その点がかなり解消されたそうです。ボイスクローンの作成には課金が必要で、それが嫌ならGeminiのTTSやIrodori-TTSで、かねりんさんらしい声を作る方法もあります。
頭脳は、番組で話した内容を文字起こしして話者分離し、テキストとして渡します。そこから、かねりんさんの話し方の特徴や判断のロジックを抽出し、Claude Code ── Anthropicが提供するAIコーディングツール。手順や知識を「スキル」としてまとめ、繰り返し使わせることができますなどにスキルとしてまとめさせるのが一番無難だ、というのがしぶちょーさんの案です。
顔は、声に合わせて口だけを動かすリップシンクの技術を使います。番組映像のかねりんさんの画角を10〜20秒ほどに引き伸ばしてループさせ、顔を検出して口だけを動かせば、その場で話しているような動画ができるそうです。ただし、リアルタイムで動かすにはPCのリソースや応答速度が課題になります。
自分の映像で口だけ動かされてるの?キモいね。
AIに学ばせる素材は、多いほどいいのか?
かねりんさんが「素材は多ければ多いほどいいのか」と尋ねると、しぶちょーさんの答えは意外なものでした。抽出する文章が多くなるほど、尖りがなくなって丸くなってしまうそうです。
(抽出する文章の量も)多くなればなるほど、なんか尖りがなくなっていくというか。
しぶちょーさん自身、技術ブログの記事を全部入れたら、平均化されて無難な文章になってしまった経験があります。気に入っている記事を5〜6個だけ選んで学ばせたほうが、よい結果になったといいます。AIかねりんでも、かねりんさんらしさが出ている回をいくつか選ぶのが肝になりそうです。
ただし、刑事の話が多い回を選べば、すぐに刑事の話をし出すおそれもあります。しぶちょーさんは、AIはわかりやすい結果を求めがちだと指摘しました。
その場でElevenLabsに新しいアカウントを登録したかねりんさんに、しぶちょーさんは、3分の音声では物足りず、課金して2時間ほど入れる高品質版がすごいと説明します。完成後に誰がどう課金すれば使えるのかは、しぶちょーさんも把握しきれておらず、かねりんさんが調べることになりました。
しぶちょーさんの最低限の目標は、リアルタイムの対談でなくてもよく、相談を送ると数分後にAIかねりんからメッセージが返ってくる形や、テーマを入れると1分ほどの掛け合いができる「おちつきAIメーカー」です。かねりんさんが「AIでいいやとなるかも」と言うと、しぶちょーさんは「その代わり毎日配信できるよ」と返しました。
AIで済むなら、生身のポッドキャストに価値はある?
かねりんさんは、人が現役の人のコンテンツに触れられること自体が珍しくなっていくのでは、と考えます。そう考えると、ポッドキャストは贅沢なメディアだと二人は話します。
しぶちょーさんは、現役のコンテンツすらAIクローンに置き換えられるなら、現役とは何かという問いが生まれると指摘します。かねりんさんの答えは、人と人の交わりそのものが現役だというものでした。
人と人の交わりが現役だよね。
しぶちょーさんは、アーカイブを残さず、その瞬間を楽しむイベントのほうが価値を持つようになると予想します。かねりんさんは、アーカイブは1本100万円くらいの価値づけになるかもしれないと応じ、話は「証拠を残さない交わり」「仮面パーティー」という怪しい方向へ脱線していきました。
最後にしぶちょーさんは、生身で勝負するからこそ、テクノロジーと戦わなければならないと話をまとめます。かねりんさんはここで、AIがいろいろできるようになるなか、人間ならではの価値はどこにあると思うかを尋ねました。
情報の価値が下がったら、何が残るのか?
しぶちょーさんの答えは、感情の動きです。かねりんさんが「感情あんの?」とからかうと、しぶちょーさんは、困っている人がいたら顔をちぎって渡すアンパンマンのような人間だと言い張り、しばらく掛け合いが続きました。
真面目な話としては、情報そのものの価値は下がっていく、というのがしぶちょーさんの考えです。価値が残るのは、その人の視点と感情の動きだといいます。
しぶちょーさんによると、人には他人の感情が動くのを見るのが楽しいという感覚があるそうです。対話を聞くとほっとし、そこに知らない情報があればコンテンツとして成り立ちます。一方、AI同士の会話の感情の起伏は「感情風の演出」で、趣を感じないといいます。
ただ、二人はすぐに反論にもぶつかります。ドラマの演技も演出ではないか、登場人物が実在しない小説に人が感動するのはなぜか、という問いです。かねりんさんは「人間の作者がいればいいのでは」「バレなければいい」と言い、AIが作ったとわかると途端に価値を感じなくなるのは今だけかもしれない、と付け加えました。
しぶちょーさんは、ものづくりの世界を例に考えます。品質だけなら機械で作った製品のほうがばらつきがなく優れているのに、職人が作ったものには趣があり、それだけでブランドになるという話です。
品質が高く、ばらつきがない
品質では劣っても、人が作ったという趣がブランドになる
しぶちょーさんは、AIが作るコンテンツと「職人ポッドキャスト」も同じ関係になると見ています。人が作ったというラベルは価値であり続けそうだ、という見通しです。
AIに負けたら番組は終わる?
かねりんさんが「機械で作ったものはダメだおじさんになっていくのか」と聞くと、しぶちょーさんは否定します。二人は機械を使いながらも人の価値を追い続け、自分たちで敵を作ってそれを超えていく特殊な立場だという考えです。
自分で自分たちの敵を作って、それを超えていくみたいな。
そこから、AIに負けたら番組を終えるという「最終回の1つのルート」が生まれます。しぶちょーさんの基準では、見分けがつかないだけなら同点です。AIの回のほうが人の心を動かし、行動を変えたという声が多くなったら引退だといいます。
この話の途中で、かねりんさんは、しぶちょーさんの背後にイベントのスタッフ打ち上げで撮ったチェキが飾られていることに気づきます。かねりんさんは、チェキはその場を焼き付けるもので、時間を切り出す感覚が久しぶりだったと話しました。
かねりんさんは、スマホで撮って補正してから印刷できる今風の機種ではなく、あえてその場で焼き付けるタイプを選んだそうです。しぶちょーさんも、スマホの写真は念のため撮るだけで見返さないとして、「この瞬間これしかない」ことはデジタルにない価値だと応じました。
AIとのバトルを番組のテーマにすれば、AIの知識も深まります。しぶちょーさんは、ニュースやツールを紹介するAI系ポッドキャストは多くても、ポッドキャストの価値そのものを問う番組はないと話しました。ChatGPTが登場してから2〜3年でこれだけ変わったため、1年後すら予想できないという点でも二人は一致しています。体を使った表現は2〜3年ではAIにも難しいだろう、という冗談で話は締めくくられました。
AIが量産する文章で、読解力はどうなる?
かねりんさんは、AIは文章ですらまともに書けない、と話題を移します。ブロガーとしてこだわりのあるしぶちょーさんは、最近の技術ブログについて、ChatGPTの回答をそのまま貼ったような量産記事が増えたと嘆きます。内容は正しくても、読ませる面白い文章ではないという評価です。
本当にゴミ増えたなって思うよね。
かねりんさんは逆の未来も示します。文章はAIがAIに読ませるために作るものになり、本も資料もAIが読んで、人は要約だけを見るようになるのではないか、という見方です。人が読んで「つまらない」と感じるのは上位1%くらいの人だけになるかもしれない、とも話しました。
しぶちょーさんは、それはすごく危険な気がすると言います。人は物事を考えるときに必ず言葉で考えるので、知っている言葉の種類や、言葉をどれだけ大事に扱ってきたかで、考えるロジックの深さが変わるからです。
要約だけを読む
AI越しに必要なところだけ読む
言葉を使わない
頭の中で複雑な言葉を扱わなくなる
考える力が弱まる
ロジックの深さや、知識のつながりへの気づきが失われる
しぶちょーさん自身、AIで調べて表面上わかった気になった知識には深さがないと感じています。本を読むと、分野をまたいだ思わぬつながりに気づけるという実感もあるそうです。
かねりんさんは、本の要約サービスflier ── ビジネス書などの要約を読めるサービス。1冊の要点を短時間で把握できますをめぐる、誰かの分析を紹介します。要約を読んでも人は本を買い、読まずに本棚に並べて、人に見せるために使っているという話で、だからこそ本屋と敵対しないのだそうです。かねりんさんは、実際のデータは不明だと断っています。
しぶちょーさんは、なぜ映画を見ないのか?
しぶちょーさんは本は読むものの、映画やドラマはほとんど見ません。話題の『VIVANT』も見ておらず、知っているのはショート動画で流れてきた、砂漠を歩く堺雅人さんの姿くらいだといいます。
見ない理由は時間です。もし見るなら倍速になってしまうし、概要を知れれば十分なので、気になった映画はネタバレありのあらすじを読んで見た気になってしまうそうです。しぶちょーさん本人も、本の要約と同じだと認めています。
読む本もほとんどが実用書で、小説は朝井リョウさんのイン・ザ・メガチャーチや『正欲』、東野圭吾さんの作品などに限られます。朝井リョウさんの作品は、どれもモヤっとして終わるという感想でした。
一方で、ディズニー映画は妻と一緒によく見るそうです。妻は等倍で見るうえ、同じ映画に何度も映画館へ通い、鬼滅の刃の映画は6〜7回見たといいます。
倍速かネタバレで概要をつかみ、同じ映画を自分から2回は見ない
等倍で見て、同じ映画にも何度も映画館へ通う
一回見たストーリーをもう一回見る意味が俺はわかんないの、ずっと。
かねりんさんは、時間の流れが違う夫婦だと面白がります。しぶちょーさんは、お互いにそういうものだと思っていて、うまくいっていると答えました。
右脳を開花させることが、AIとの戦い方?
しぶちょーさんは、クラシックを聴きに行くことはないものの、自分がベースを弾くJ-POPやロックは好きだと話します。そこでかねりんさんが勧めたのが、自身の新番組『おちつきクラシック』でした。クラシックの素人であるかねりんさんが、曲を聴いて感想を話し、カウンセリングのようなやり取りを繰り返していく番組です。
しぶちょーさんは、かねりんさんを追体験するつもりで、ポッドキャストでは珍しく等倍で聴いたそうです。ところが、自分なら何と言うかを考えても、何も出てこなかったといいます。
何も出てこんくてびっくりした。無。
しぶちょーさんが思ったのは、小学校の掃除の時間に流れていた曲だということくらいでした。かねりんさんは、脳の半分くらいが使えていないのでは、と笑います。
しぶちょーさんは、AIとの違いはロジカルな部分ではなく、感覚やフィーリングにあると考えています。かねりんさんは、そこを鍛えなければ、AIが得意な土俵で勝負することになると受けました。
そこを鍛えないと、結局AIの得意な土俵でAIと勝負しなきゃいけなくなるってことだよね。
かねりんさんは、十数話を収録するなかで、ヤナカさんとの話を通じて世界の見え方が変わり始めていると話します。自分の見えていた世界は半分以下だったかもしれない、という実感だそうです。
しぶちょーさんは、等倍で1か月に1本、1人で映画を見ることを自分の課題にします。かねりんさんは、最終回のもう1つのルートは「しぶちょーさんが泣くこと」だとし、そのためにも右脳や感性が必要だと話しました。
おちつきシリーズとサポータークラブはどうなる?
かねりんさんは、AIクローンの話から右脳やクラシックまで飛んだものの、おちつきシリーズをまたいだ番組らしい締まりになったと振り返ります。しぶちょーさんは、概要欄の『おちつきクラシック』を第1話から聴いてほしいと呼びかけました。
『おちつきクラシック』の制作側は、かねりんさんの反応が読めないため、今回で終わるかもしれないと思いながらネタをぶつけているそうです。しぶちょーさんは、原稿を書く側としてその気持ちがわかると話します。かねりんさん抜きで、おちつきシリーズのパーソナリティが「かねりんあるある」を語る企画も話題に上りました。
ただし、かねりんさんは、シリーズの番組同士で合宿したいという声には、まだなれ合う時期ではないと長文で反論したそうです。それぞれの番組が自分の足で立ってからのほうがシナジーがある、という考えで、しぶちょーさんも納得していました。
最後に告知です。現在のコミュニティは閉じ、月額制のサポータークラブ的なものに生まれ変わります。名称は未定で、オフレコトークを毎週メールで届ける予定です。11月上旬にオープンし、その際に改めて告知されます。
まとめ
今回の深掘り回では、AIかねりんを作る構想を入り口に、AIクローンの技術、使い道、リスクが整理されました。声・顔・頭脳はいずれも現在の技術で再現が進んでいます。そのなかで二人は、情報ではなく人の視点や感情の動き、感性にこそ人間の価値が残ると考え、AIを自分たちの「敵」として番組を続けていく姿勢を示しました。
- AIクローンは声・顔・頭脳で構成され、2時間のインタビューで本人の意見の約83%を再現した研究もある
- グリーフテック、経営者のアバター、裁判、多言語化など使い道は広がる一方、依存や「言わないことを言う」リスクがある
- AIかねりんは、ElevenLabsの声と、話者分離した番組の発言をスキル化した頭脳で作る構想で、素材は絞るほど本人らしさが出る
- 情報の価値が下がるなか、人間の価値は視点や感情の動きにあり、AIの回のほうが人を動かしたら番組は引退という覚悟が語られた
- AIに勝つには右脳や感性を鍛えることが必要だとし、『おちつきクラシック』がその手段として紹介された




