骨折続きの1年から浮かんだ「鹿の角って骨?」
9月になると、藤原さんは去年の骨折を思い出すそうです。そこから話は思わぬ方向へ広がっていきます。
9月になるとね、僕思い出すことがありまして。去年、左腕骨折してたなって思ってるんですよ。
折ってましたね。
はい、ちょうどぽっきりね。8月31日に折れて、9月中はずっとこのぶっといギプスを左腕にしてたんですけど、カッチカッチのやつね。
その骨折がほぼ完治したのが今年の1月末か2月くらいやったんですけど。で、その直後の3月前半に、また転倒して。
ですよね。
今度は鎖骨を骨折したっていうね。で、それの通院がやっと終わるんですよ。
え、まだ完治してなかったんですか。
いやだから9月に骨折したのも1月、2月まで行ってたし、3月に骨折したのも9月まで行ってるっていうんで、やっぱ半年くらいかかってるんですよ。
正直私一回も骨折したことなくて、それに比べたら年間2回骨折するってすごい。
なかなかの頻度でしょ。
そうやって骨についてこの1年間、骨折してる期間が長かったんで、思い返してた時にふと頭に浮かんだんですよ。奈良の鹿の角。
なんでやねん。
いや、あれ何?あれ骨?みたいな。角とか言ってるけど、あれ骨みたいやなみたいな。
あ、確かにね。鹿の角ってほんまにガラス細工みたいな。
あれなんなんやろうけど、1年に一回あいつら生え変わるよなとか。ということで、鹿の角について調べてきたことを今日は発表するという回をさせていただきたいなと思います。
まあ確かに私も40年奈良県民ですけど、鹿の角について考えたことはなかったですね。斬新ですよ。
結論、鹿の角は骨だった
藤原さんは今日の結論を先に切り出します。角とは言うけれど、あれは実は骨なのだそうです。
で、今日はね、結論からいきたいと思うんですけども。皆さん、鹿の角って角とか言うてますけど、あれ実は骨だったんです。
えー、そうなんですね。
さっきも言ったように、(鹿の角は)あれ丸ごと生え変わるんですよ。骨のくせに。おかしいでしょ。
僕が半年かかってちょっとポキって折れた骨をちまちま治してる間に、奈良の鹿たちは驚異的なスピードであの巨大な角という骨を再生してるんですよ。
1年間でここまで持っていくわけですよ。
あいつらやばすぎるぞと。奈良の鹿やばすぎる。まあ鹿全体ですけどね。
で、あとちょうど秋に鹿の角切りというね、奈良の秋の風物詩がございますんで、その前に絶対知っておきたい鹿の角の超絶メカニズムを勉強していきましょう、という回でございます。
いきましょう。今回自己紹介してないですけど大丈夫ですか?
ほんまや。あまりにも鹿の角について喋りたすぎて名前を言うのを忘れて終わりました。
改めまして、奈良新聞社ウェブ制作部の藤原です。
企画部の中祖、改めカルシウム系のサポートをさせていただきます中祖です。よろしくお願いします。
牛・サイ・鹿、角の正体はどう違う?
まず藤原さんは、牛やサイの角と鹿の角の違いをクイズ形式で紹介します。
まずね、いきなりクイズ行こうかなと思うんですけど、牛の角は、じゃああれは骨でしょうか?イエスかノーでお答えください。
いや、でも骨なんちゃいますの?角でしょ。
ブブー。一応ね、牛の角は角質らしいんですよ。
爪とか皮膚とか髪の毛とか、人間で言うたらそういうものを作るケラチンが硬化したものが角質ですね。厳密には牛もちっちゃい骨の角があるんですよ。
骨芯と呼ばれてるんですけども、その上を角質が覆っていると。それが牛の角でございます。
いや、サイはね、あれはなんか毛みたいな固まったっていうのは知ってたんですけど。
あれも角質の塊なんですよ。で、サイの場合は骨芯がないです。
角はじゃあ骨じゃないんですね、牛は。
牛はね、はい。まぁ取っちゃうと、その骨芯は再生しません、牛の場合。
そういう再生しない、生え変わらない骨を持つ動物は、牛、羊、山羊、バッファロー、バイソン、インパラ、ガゼルなどでございます。
え、でもガゼルとインパラって鹿系ですよね。近いですよね。
うん。バイソンとかバッファローは牛系やけどね。インパラとか言うたらなんか鹿系な気しますね。あんまり突っ込まないでください。
いやでもそうなると、あの鹿ってめっちゃくちゃ特殊なんですかね。
他にもトナカイとかヘラジカとかがそれ系らしいですけど。生え変わる系のやつらなんですけど。
で、鹿の角はあれは骨です。純粋な骨です。
袋角から立派な角へ、鹿の角ができるまで
鹿の角は成長期には皮膚に覆われていて、柔らかいそうです。中祖さんの小学生時代の思い出とも重なります。
ただ成長期はこう、袋角と呼ばれる皮膚で覆われてます。なんかこう、先っぽが丸っこいやつね。毛が生えてるやつ。
これね、今思い出したんですけど、これ自稿なんで許してください。小学校の時に広島に修学旅行だったんですよ。宮島にもいるでしょ、鹿が。
ちっちゃい可愛らしい鹿がついてきたんですよ。チャンスやと思って角触りましたけど、柔らかかったんですよ。
それは袋角ですね。袋角は柔らかいです。中を血液がぐるぐる巡っており、硬い骨の角があの中で絶賛作られているという。
初めは軟骨のような状態から、徐々に硬い骨があの中で作られてるんですよ、日々というね。
サイクル的にいうと、春くらいから生えて夏場にかけて完成していくんで、春とか初夏に奈良来て鹿見たらみんな袋角やと思います。
成長した大人になった鹿も、生え変わり時期は柔らかいとこから始まっていくってことですね。
そうです、そうです。
子供やからあの丸い角なんか、大人になるにつれあの立派な角になっていく。
時期的には大人の鹿もあの柔らかい状態があるっていうことですね。
で、その角も先ほどから申し上げてますが、毎年一回完全に落角します。落ちる角と書いて落角して生え変わると。
ね、これも不思議ですよね。
人間もね、修復能力ありますけど、それこそ僕の骨もくっつくわけなんですけど、あんだけの角の再生。
まあどう考えても30、40センチはありますもんね。それを1年で。
生成しよるんですよ。生成AIもびっくりみたいな。あれだけのハイスピードで再生できるのは地球上の哺乳類で鹿の角だけらしいですよ。
なんかあいつらやばい奴らやったんですよ。実は。
鹿から見たら「おっそ、よっわ」?
角を1年で再生する鹿から見れば、半年かけて骨をくっつける人間はどう映るのか、という掛け合いになります。
そういう言い方したら、なんか怖く見なってくるじゃないですか。
いやいや、すごい人たち、人じゃないか、動物たちやったんですよ。
ってことはあれですよ、藤原さんの骨を折って、あいつ半年もかかってやっとくっつくんかいって思われてるかもしれない。
思われてますよ。人間なんてそう思われてますよ。
よっわと。
おっそみたいな。
めちゃくちゃ怖いですね。
(一同笑)
鹿の角の生え変わりのサイクル、毎年春の3月から4月頃になるとポロッと落ちますと。
で、初夏にかけて表面が柔らかい革である袋角に包まれた新しい角が生えてくると。中で血管から栄養をもらって角が生成されていきます。
これが一日に数ミリから1、2センチ近く伸びることもあるようですね。
やっぱりさっきも言ってたように、30、40センチぐらいあるから、そら半年で5ミリぐらいは伸びないとならないですもんね、あの長さに。
すごいですよね。人間の髪の毛よりもはるかに成長。
あんな硬いもんをそのスピードで作るんですよ。これ知った時はびっくりしましたよね。
夏の終わりから秋、8月とか9月頃に角の成長が止まって、表面の革がボロボロ剥がれて、その白い骨の角がこんにちはするような流れですね。
陶器みたいなやつになってくるわけですね。
秋の奈良公園でよく見られる風景として、樹木にすり付けてその皮を剥がすんで、木に擦りつけた跡がついてるみたいなのが残ってたりするんです。
秋の風物詩・鹿の角切りの4つのポイント
むき出しになった角は危ないため、鹿の角切りが行われます。ここから角切りの由来や、切っても痛くない理由が語られます。
むき出しになった角は危ないっつうことで。9月以降は繁殖期になって、雄鹿も気性が荒くなってまいるということで、昔の人が傷つけられたということがあって、鹿の角切りが始まったらしいんですけど。
まあそれはそうですよね。鋭いですよね。
まあそんなに、こっちから手出さない限りは基本おとなしいんでね。
昔サドさんとかが鹿に噛まれたことあるとか言ってましたけど、多分いらんことしはったんちゃうかなと。
いうても野生なんでね。
鹿せんべいを持ったまま歩くと、もうそれはターゲットにされる。頭には可愛らしいけども野生やと、あくまでもちょっと温かく見守っていただけたらなと。
ちなみに例年10月に行われている鹿の角切り、今年は11月7日と11月8日の土日に行われるということが、奈良市観光協会のサイトに載ってましたね。
でもこれはあくまでショーですよね、この日はね。だから選ばれし数十頭が、皆さんの前でショーとしてお披露目されると。
あの会場で全部の鹿が切られてんのかって言ったら、その2日ではとてもとても無理ですと。
だからその前後で、愛護会の方たちが見つけ次第切っていってるっていう、除角作業を行っているということですよね。
藤原さんはここで、鹿の角切りのポイントを4つに整理します。江戸時代から続く伝統行事なのだそうです。
鹿の角切りのポイントをちょっと4つ挙げたいと思います。これ江戸時代から約350年にわたって続いている伝統行事なんですよね。
意外と、すいません、私は短いな、もう神事みたいなことやったんかなと思いましたね。
よく考えたらそれは神様運んできたもの、角切らないですよね。まあこれは文明が発達してきて、江戸時代なんかですと観光客も増えてきて、危ないってなったんですね。
2つ目、あれ痛そうに見えるじゃないですか。鹿の角切るとき。
実はその鹿の角っていうのは、爪切りと同じような、骨に血管も神経も通ってないんで、あれ切っても痛くないらしいです。
はあはあ。それはそうですよね。落角するぐらいですから。
3つ目のポイント。角切り師たちの命がけの技をもう鹿の角切りで堪能してくださいということなんですけど。
角切り師って言いましたけど、ちゃんとした名前がありまして、勢子って言います。勢いっていう漢字に子供の子って書いて勢子です。
なんかあれですよね、狩猟とかで追い込む人たちも勢子って言いますよね。
この勢子は鹿の愛護会の職員さんをはじめ、訓練を受けた保存会の有志や地元の有志の方で構成されているらしいですね。素人がいきなりできないという。危なすぎるという。
奈良奉行が始めた350年の神事
藤原さんは、鹿の角切りが江戸時代に始まった具体的な由来を紹介します。神の使いである鹿と町民をどう両立させたのか、という話です。
これね、1672年、寛文12年、4代将軍家綱の時代から始まったと言われてますね。この奈良の町民たちが怪我をさせられたりしてたらしいですね。
その町民を鹿の角から守るために、奈良奉行の溝口信勝さんっていう方が指示して始まったと言われております。
やっぱり神様の使いなんで、うかつに追い払ったり鹿を傷つけても大変な時代やったと思うんですよ。でも一方的にやられるっていうのが危ないと。
だから町民は鹿に手出せないけど、鹿はやってくると。それやったらやられっぱなしやからっていうので、もしかしたら(角を切らせてくれと言うたのかも)。
角切らせてや言うて。
まあでもちゃんと切った角はちゃんと春日大社に、一応神事なんですね。
神事なんでございます。春日大社に鹿島神宮から建御雷命が白い鹿に乗ってやってきたというのが768年、春日大社が創設された伝説なんで。
そこからだから900年くらいは鹿の角切りってやってなかったんですね。
そら畏れ多くてできないでしょ、そんなこと。神様の使いを。それこそ本当にもののけ姫みたいに呪いもらうかもしれない。
もののけ姫って鹿の角切り出てくるの?
いや、出てこないですけど、シシ神様やっつけてえらいことなったじゃないですか。神殺しですからね、あの話。
エルデンリングやん。
最近やっとね、DLCも含め、やっと全部クリア、ラスボスまで倒しましてね。大変やった。いっぱい死んだ。
鹿の角切りの時に鹿がブギャーって取り押さえられてなってるんですけど、あれは取り押さえられてるからなってるんです。角を切ること自体は痛くないらしい。
痛みで暴れてるんじゃなくて。
そうそう。まあそれはパニクりますよ。急に人に囲まれてね。
切った角のゆくえと、注目される再生能力
最後に、切られた角がどうなるのか、そして角の再生能力が現代の研究でどう注目されているのかが語られます。
最後にね、切った後の角のどうなるのかみたいな話をさせていただきたいなと。まず神前への奉納、春日大社さんへ供えられます。
ただ、1600頭くらい鹿がいて、それどうなるかって言ったら、奈良の伝統工芸、鹿角細工に利用されたりしております。加工してアクセサリーとかキーホルダーとか置物などになって、お土産の品になるということですね。
鹿角細工はノコギリやヤスリで加工して磨き上げて作るらしいですね。江戸時代の中期から始まったとされております。
いや、これちょっと工芸品で一儲けしようぜと。
なんか作れるんちゃうって、器用な方がね。こんだけ硬かったらなんかできるんちゃうってなったんちゃいます?
何がすごいかっていうと、やっぱその再生能力がすごいということで。なんであんなにハイスピードで骨が自己修復するのかというメカニズムは、再生医療、骨粗しょう症の治療とか、臓器の再生でも世界中の研究者から注目されていると。
そりゃ注目しますよね。
鹿の角に含まれる成分を研究して、人間の骨折の治療に役立てたりできるんじゃないかみたいなことを研究されてるチームがね、実際にいるそうです。
中祖さんが四月の落角から角切りまでのサイクルを確認すると、山から下りてきた鹿の角が落ちている可能性も出てきます。
でもちょっと整理しておきたいんですけど、4月ぐらいに落角するんでしたっけ。で、そっから半年かかって9月ぐらいには立派な角になるんですよね。で、切られる。
はい。10月、11月に切られる。
落角はだから切られた状態の根元から。
根元からポロッといくんじゃないですか?そのちょっと残ってる部分が。
てことはそんなん落ちてるかもしれない。たまに立派なやつ落ちてるんでしょ。
はい。ちょうど落角する頃に山から下りてきて、そういうことかもしれないですね。
もしかしたら「なんやこれ」って蹴ってたやつがもしかしたら(角かもしれない)。
頭にこの間までついてたやつやみたいなこともあるかもしれないですね。
最後に藤原さんは、奈良公園で拾った角の扱いについて注意を添えます。
最後に一つ注意点なんですけど、奈良公園でね、拾った角、これ勝手に持ち帰ると違法ということになっております。
天然記念物なんで、文化財保護法違反ということになるんで、見つけてもそっとしておいてくださいということでございます。
あ、で、実は奈良の鹿の角ね、奈良の鹿愛護会のホームページで販売してます。30センチまでのやつやったら1800円。意外と安いですよね。
これぐらいも、あの落ちてるものは拾わないように。欲しかったら買ってください。
まとめ
今回は、藤原さんの骨折の思い出から始まり、鹿の角のミステリーに迫りました。牛やサイの角は角質ですが、鹿の角は純粋な骨で、しかも毎年落角して数か月で立派な角へと再生します。そのハイスピードな再生能力は再生医療などでも注目されているそうです。鹿の角切りは江戸時代から続く神事であり、その背景には神の使いである鹿と町民を両立させようとした奈良奉行の工夫がありました。
- 鹿の角は牛やサイと違い、角質ではなく純粋な骨で、毎年落角して生え変わる
- 春から夏にかけて袋角の中で骨が作られ、数か月で30〜40センチの角に再生する
- 角には血管も神経も通っていないため、角切りをしても鹿は痛くない
- 鹿の角切りは江戸時代に奈良奉行が町民を守るために始めた、約350年続く神事
- 奈良公園で拾った角の持ち帰りは文化財保護法違反。欲しい場合は愛護会で購入できる





