新幹線ギリギリで始まった、川勝さんのディレクター論
番組冒頭の挨拶と、川勝さんの自己紹介から始まります。収録は移動の合間に急遽行われました。
この番組はゲームクリエイティブ01、つまり企画が生まれて形になっていく、この瞬間をディレクターご自身の口で語っていただくポッドキャストです。本日もゲームディレクター研究会の宮田です。
はい、そして塩川です。よろしくお願いします。
本日のゲストは、名古屋を拠点にいろんなゲームの開発だったり、エンターテインメントの開発を行うプチデポット代表、川勝さんです。よろしくお願いします。
名古屋を拠点にして、インディーゲームのチームの代表として今活動してます、川勝です。代表作はグノーシアというゲーム、あとはメゾン・ド・魔王というゲームの2作で今出てます。業界はゲーム業界で10年ぐらい勤めてから独立ということになります。
ってかしこまってやる感じじゃない、今のこの状況。
新幹線の時間がもうギリギリに迫ってるところ、無理やりちょっと捕まえて、ちょっとだけ話を聞かせてくださいっていう。
鶴舞公園の帰りに。
プログラマーから、なぜディレクターになったのか
話は川勝さんのキャリアの原点へ。プログラマーとして業界に入り、なぜディレクターの立場になっていったのかを聞きます。
私が聞いてるのは、どうやって最初にそのディレクターになりましたかっていう、そこが多分一番01の原点かなと思うので、そこをちょっと伺えますかね。
僕が最初業界入った時っていうのが、まずプログラマーで入ったんですね。会社が名古屋の地元の中小企業で、これから色々とゲームを立ち上げるみたいなところがあるので、(できる人が)いないんですよね。
私は少し経験してるということもあったので、若い仲間とか専門学校の仲間を集めたりしてチームビルドをすると。その時にやっぱり年齢がいってることもあったので、リーダーをやらざるを得ないみたいな。
予算がどうとか、スケジュールもやらずにはいられないから、マネージャーってなっちゃうんですよ。それこそ携帯のアプリとかJavaとか、iモードとか、いろんなゲームの移植をとにかくむちゃくちゃ作らされた。
なるほど。じゃあディレクターになりたくてなったっていうよりは、そういう流れの中で結果ディレクターになっていったみたいな。
でもディレクターはやっぱりやってみたくて、そもそもディレクターやりたいから、しょうがなくプロデューサーやってるところはある。お金の管理も全部含めてやらないと、ディレクターの案が通らないんだったら、突っぱるより自分でやるかと。
開発の会社に入ってくると、作るのが好きで、それ以外はやりたくない人が多すぎるんですよ。だからそのクリエイティブ以外のところもやらざるを得なくなって、一番重要度が高いのに一番誰もやりたがらない。逆に言うと、そこをやるということは、特権が捨てられるんですよ。あなたがやりたくないのをやるんだから言うこと聞こうみたいな。
もともとプログラマーってこともあるので、開発のスタッフでプログラマーと話がしやすいっていうこともありましたし、具体的な仕様でこれがいけるものなのかどうなのか、ちゃんと理詰めで仕様レベルで話を落とし込めるかっていう。基本、仕組みで考える。
『メゾン・ド・魔王』は生活の中から生まれた
いよいよ本題の『メゾン・ド・魔王』へ。このタイトルは、メンバーの生活に密着した切実な状況から生まれたと川勝さんは語ります。
01っていう話でいうと、やっぱりメゾン・ド・魔王が独立もされてオリジナルタイトルの01を売り出すってところなのかなと思うんですけど、そこの01になる瞬間はどんな感じだったんですかね。
01のタイミングはもともと生活の中から出てきたアイデアです。うちのプログラマーの仲間がリーマンショックで仕事がもらえなくなって、その時に家賃を回収するバイトをしてて。家賃回収するのに、住人が家賃を踏み倒されるっていう事案が。
僕も何回も相談に乗ってて、お金がもうなくなってきたから生活やばいと。(プログラマーの熱い思いと、家賃を)回収しなきゃいけないっていう違うモチベーションが重なって、そこからスタートですね。
逆に言うと、その01を生み出す時っていうのは、なんらかのストーリーがないとお客さんに響かないと思ってて。好きなものを作るというよりも、なぜこれを作ったのかっていう物語をちゃんと乗っけて伝えた方が入りやすいだろうなっていうのもあった。
むしろこのポッドキャストとしては生々しい話の方が。ある日こんなこと思いついたみたいな綺麗事はいいんですよ。
借金取りの実体験を、どうゲームに落とし込んだか
切実な実体験を、どうやってゲームのシチュエーションに変えていったのか。設定づくりの過程を掘り下げます。
もともと僕も(家賃回収に)一緒に立ち会ったんですよ。プログラマーがバイトやってたので、じゃあ行きますかって一緒に行って。仕事もなくなってきてるから、それをネタとして作るわけですよ。デザイナー一人しかいないし、3Dはできないので、面白くするゲームにそれいるのかみたいなところからスタート。
魔王っていうみんなが好きそうな設定にして。ファンタジーの世界で当たり前だったことが、現実の世界に来た時に、(魔王には)年金はないだろうし、悪いことしてるからみたいな、そういうギャップ。キャッチコピーが「勇者はなんだ、こっちは生活かかってるんだ」っていう、リアルな現実をそのまま入れてみるっていう話なんですよ。
一個一個のゲーム自体の仕組みっていうのは結構ライトにしちゃって、どういうシチュエーションで楽しませるかっていうのが一番大きかった。
なるほど。ゲーム自身のストーリーじゃなくて、自分たち自身のストーリーを含めてってことですね。
そのRTS、タワーディフェンスってことが最初に来たってことは、メカニクスから先に入ったということですか。
それは多分メカニクスで。メンバーがもともとマンションというかアパートだったので、そのまま使うかと。メゾン・ド・魔王っていうのは、実体験を入れるという例があるからやってみようかっていう、そこからですよね。
なんでタワーディフェンスを最初に選択したんですか。
魔王が来た時って勇者もいるじゃないですか。勇者が攻めてくるけど、魔王は年取ってるから追い返せない。追い返せないとしたら、街の住民に代わりに追い返してもらうしかないという形で、変形タワーディフェンスみたいな。タワーディフェンスとは言い切れないかもしれない。
結構ゲームっぽい実体験じゃないじゃないですか。これゲームになんの?っていう実体験。
当時もう(プラットフォームは)Xboxしか出せなかったんですよ。Xbox Live アーケード時代ですよね。そこでの一点突破だから、ユニークさでしかなく、かつまだ日本では普及してなかったんで、それをどうやって広めていくかっていうブランディングを、ゲームのライセンスと相まってやりました。
要素を分解して再編集する、鍛えられた力
なぜ川勝さんは限られたリソースでアイデアを形にできるのか。その背景には、移植の仕事で積んだ経験があると語られます。
メゾン・ド・魔王をやられてた時は、ご自身の中ではどういう状態でした。とりあえずやってみたなのか、長年培ってきたとっておきのメソッドを実行してうまくいったなのか。
とっておきのメソッドは特になくて。僕はゲーム会社に勤めてる時から思ってて、ゼロイチって言っても完全なクリエイティブはゼロってないわけですよ。要するに、要素をどう分解して再編集するかだけになる。ゲームでもよく見たらこれと同じみたいな仕組みがあったりするんですよね。
僕が携帯のゲームの移植をたくさん仕事したのは、それはもう要素分解化するわけですよ。限られた世の中でどう面白くするのか、移植とか仕事が来て作った経験がたくさんあって、その訓練が多分今生かされとる。
足りなかったら人を入れようじゃなくて、足りなかったら工夫してそれ内で何とかしようという、制限によるアイデアの出し方みたいなこと。
例えばグノーシアが一見会話でやってる人狼と言いつつ、内部的にはパラメータで戦ってるみたいな。ヒットポイントの代わりに信頼度っていうのを置き換えて、バトルの内容を会話劇に見せるっていうシチュエーションは、まさに(要素分解する)考え方に近いかなと思いますね。
これはまさにゲーム分析ですよ。我々が研究していく。
ゲーム分析の作る版。昔のゲームはデータがなかったりするわけでしょう。それをよく見て、移植とかリメイク前のやつをどこまで残して残さないか、むちゃくちゃたくさん仕事いただいたんで、すごい鍛えられた。
ディレクターの役割は、意見をまとめて決着をつけること
最後に、複数のメンバーの意見をどうまとめ、ひとつの形にしていくか。ディレクターとしての判断について語られ、対話は締めくくられます。
プログラマーもデザイナーも、みんなで出していかなきゃいけないアイデアがあるわけですよ。筋がいい、筋が悪いっていうのもあるし、究極的に見ると、結局組み込むのがプログラマーなんですよ。
クリエイティブとして面白いって言ったところで、開発の人たちが「いやこれ違うわ」と。どういう話を持ってきながらちゃんと決着をつけるか、多数決ではなく。ここがポイントなんですよね。
もっと言うと、インディーでできるゲームデザインの仕組みがちゃんとできていれば、あとはリソースを増やして、どんどん大きく開発することが可能で、コアのゲームの部分はそんなに変わらないと思うんですよ。そこの発明を核のところからもう一回考えて再構築することで、まだまだ未知の領域があるはずだと。
いやでも、このメゾン・ド・魔王、要はその前の再構築時代、分析時代を活かしてメゾン・ド・魔王が生まれた。ここからいかにオリジナルタイトルのグノーシアになったのかってところ。
川勝さん回。
次回かはわからないけど、ちょっとまたいつか続きは聞きたいです。繋がってるってことだったら、この次も多分繋がってるはずだと思うんで。
新幹線そろそろ出発。やばいですね。今回ありがとうございました。
ありがとうございました。
まとめ
川勝さんのゼロイチは、とっておきのメソッドではなく、生活の中の切実な実体験と、限られたリソースを工夫で乗り越える力から生まれていました。『メゾン・ド・魔王』は、借金取りの実体験を魔王というファンタジー設定に落とし込み、プラットフォームの状況やチームでできることのバランスを取って形になったと語られています。移植の仕事で鍛えた「要素を分解して再編集する力」が、その土台にあると話されました。次回は、そこからグノーシアがどう生まれたのかへ続きます。
- ゼロイチは物語から始まる。なぜ作ったのかというストーリーがあると、お客さんに響きやすい
- 完全なゼロからのクリエイティブはなく、既存の要素を分解して再編集する力が核になる
- 制約は制限ではなく、人を増やさず工夫で乗り越える発想を鍛える
- ディレクターの役割は、多数決ではなく、話し合いで意見に決着をつけること





