トップ自らプレゼンする姿が印象的だった
岩田さんといえば、僕にとってはやっぱり『任天堂ダイレクト』の印象が強いんです。
会社のトップが自ら新作ゲームの情報をプレゼンする。当時はそんなイメージがほとんどありませんでした。
せいぜい『Apple』の新製品発表でスティーブ・ジョブズがプレゼンする時ぐらいしか、僕には浮かばなかったんです。
だからこそ、岩田さん自身が新作ゲームの話をする姿がすごく印象的でした。
当時はまだXが『Twitter』という名前で、岩田さんがそれを流暢に発音していたのも、なぜか今でも覚えています。
岩田さんは1959年に北海道で生まれ、2015年に他界されました。56歳という、あまりに早い旅立ちでした。当時、かなり驚いた記憶があります。
半年に一回、社員全員と面談していた話
この本で僕が印象的だったのが、ゲームのクリエイティブとは少し毛色の違う話でした。
岩田さんは『HAL研究所』の社長だった時、半年に一回、社員全員と面談をしていたそうです。多い時には80人から90人ぐらい。
時間は短い人で20分ぐらい、長い人で3時間ぐらい。それを6年か7年ぐらい続けていたと書かれていました。
自分の話をボスが聞いてくれる。しかも安心して話せる場がある。これって、ありがたいことですよね。
そういう関係すら希薄になると、組織にいるのに孤独感が強くなってしまう気がするんです。
本の中でこう引用されていました。「私は自分がどんな会社で働き、働きたいかというと、ボスがちゃんと自分のことをわかってくれる会社や、ボスが自分の幸せをちゃんと考えてくれる会社であってほしいと思ったんですね」。
「あなたは今ハッピーですか?」という最初の質問
面談で話すテーマは全員違うのに、唯一決まっていることがあったそうです。
それが、最初に必ず「あなたは今ハッピーですか?」と聞くこと。この言葉が、僕の中でずっと引っかかっているんです。
というのも、自分の人生を振り返ると、思い当たる出来事があるからです。
僕は『ニュージーランド』に1年滞在していたことがあります。もともとメンタルが落ちやすい性格で、環境を変えれば少しは違う感覚になれるかな、と淡い期待を持って行きました。
でも人間、そう簡単には変われないんですよね。やっぱり気分が落ち込む時がありました。
そうやって鬱々としていた時、当時通っていた語学学校にいたインド系の女性に、普通に「Are you happy?」と言われたんです。それが結構、衝撃でした。
日本だと「あなたは幸せですか?」なんて聞く人、いないよなと思っていたので。
「ハッピーですか?」と聞かれてすぐにイエスと言えない時点で、それはもうノーなんじゃないかと思うんです。
すぐに答えられないなら、その人には幸せを感じられない要因があるはずです。そこに向き合おうとするところが、岩田さんの人柄を表しているように感じました。
覚悟の言葉と、「ゼルダらしさ」の話
もう一つ有名なのが、『MOTHER2』を立て直した時のエピソードです。
制作が難航して破綻しかけていた時に岩田さんが加わり、糸井重里さんにこう言ったそうです。
「今あるものを生かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。一から作り直していいのであれば半年でやります」。
結果的には一から作り直す方が選ばれたわけですが、本人はどちらの選択肢でもやるつもりだったと書かれています。
できるかどうかわからない、ではなく、どちらだとしてもやり切る。岩田さんの覚悟を感じる言葉でした。
もう一つ、個人的に響いたのが「ゼルダらしさ」についての言葉です。去年『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』で遊んだので、今この作品への関心が高いんです。
本にはこう書かれていました。「ゼルダというのは一人の頭の中から全てが生み出されるようなものではなく、いろんな人が悩みながらアイデアを出し合って、それぞれのゼルダらしさをクリアしたものが、また新たな刺激となってアイデアを生んでいく」。
僕は『小島秀夫』監督が好きで、突き抜けた一人のクリエイターが作るゲーム性ってあると思っていました。
でもゼルダは、大勢の人が「ゼルダっぽさ」を認識しながら関わって作られている。一人からは生まれえない壮大さが、全世界で親しまれている所以なのかなと感じました。
「ハッピーを増やそうとした」という生き方
糸井重里さんが語る岩田さんのところに、「ハッピーを増やそうとした」という言葉がありました。
これを読んで、自分のことと重なったんです。
僕がやっているこのゲーム系のポッドキャストは、ゲームしあわせ紀行、通称ゲー旅という名前をつけています。
直接「幸せ」と言うと少し照れくさいので、日々のゲーム体験から楽しみを見つけ出していくことを大切にしたい、そう思って立ち上げた番組なんです。
でも岩田さんの言葉を借りれば、それはまさにハッピーを増やそうとすることなのかもしれません。
この本を読んだのは2、3年前に一度あったんですが、改めて読むと、今また感じるところが多々ありました。
「岩田さん」というタイトルそのものが、どれだけの人に親しまれていたかを物語っている気がします。ぜひ皆さんも手に取って読まれてみてください。
まとめ
岩田さんの本から、「あなたは今ハッピーですか?」という問いと、「ハッピーを増やそうとした」という生き方を受け取りました。それが今のゲー旅にもつながっています。
- 岩田さんは半年に一回、社員全員と面談し、最初に必ず「あなたは今ハッピーですか?」と聞いていた
- 『MOTHER2』の立て直しでは、どちらの方法でもやり切るという覚悟の言葉が印象的だった
- 「ゼルダらしさ」は一人ではなく、大勢が共有しながら作り上げていくという話が響いた
- 日々のゲーム体験から楽しみを見つける、というゲー旅の姿勢は岩田さんの生き方と重なる





