「社長が現場に入る会社は伸びない」は本当か
「社長が現場に入る会社は伸びない」という話、よく聞きますよね。経営者は経営者の仕事に徹するべきだ、というものです。
実際どうなのか、僕なりに考えてみました。
確かに、社長が「俺がやった方が早いから」と言って、いつまでも現場で手を動かしていたら、会社の成長は社長個人の稼働時間に制限されてしまうのかなと思います。
社長1人が1日に使える時間には、限りがあるわけです。
事業を大きくしたければ、仕事を人に任せて、誰がやっても一定の成果が出る仕組みを作らなきゃいけない。ここまでは、その通りだと思うんです。
現場を離れた社長が、マーケットの感覚を失うとき
ただ、これは「現場に入るか、入らないか」の二者択一の話ではなくて、もう少しグラデーションがある話なのかなとも思っています。
というのも最近、社長が現場から離れて仕組み化を進めることで順調に成長していた会社が、苦戦している場面を目にすることが増えたんです。
もちろん、原因は会社によって異なると思います。
そのうちの1つとして考えられるのが、意思決定をする社長が長く現場から離れたことで、マーケットの感覚が鈍ってしまった、という問題です。
マーケットは変化し続けます。昨日まで有効だった仕組みや打ち手が、今日も有効だとは限らない。
現場で何が起きているのか。お客さんが何に喜んで、何に飽き始めているのか。何にお金を払って、何にお金を払わなくなったのか。
その変化を肌で感じないまま、過去のデータと成功体験をもとに意思決定を続けてしまうと、仕組みは精密になっているのに、マーケットとのずれは大きくなっていく。そんなことが起きている可能性が、ありそうだなと思うんです。
社長の思いつきが、意外とヒットする理由
一方で、いろいろな会社をさらに見ていくと、もう1つ面白い景色が見えてきます。
現場に入っている社長が、その場の思いつきで始めた変なノリが、意外とお客さんに受けている。最近、この現象をよく見かけるんです。
社長が現場の思いつきで「あれやろう、これやろう」と言い出す。現場には現場の段取りも、予算も、予定もあります。
スタッフからすると「もういい加減にしてくれよ」って話なんですよね。
社長の思いつきが必ずしも優れたアイデアとは限らなくて、むしろ大半はろくでもないものだったりします。
ところが、社長には権限があります。普通なら企画書を作って、会議にかけて、上司の承認を得て、ようやく実行できるようなことが、社長の一声で始まっちゃうんです。
その結果、社長の思いつきは、他の社員よりも圧倒的に多く実行されることになる。そして、その大量の思いつきの中から、時々とんでもないヒットが生まれるんです。
意思決定者の偏愛による、まぐれ当たりですね。
試行回数が多ければ、思いがけないヒットに出会う可能性は当然高まります。
加えて、社長が現場にいれば、お客さんの反応を直接見ることができます。中でも大事なのは、数字に表れる前の小さな盛り上がりです。
ほかにも、予想外の喜び方や、スタッフが見落としていた意外な需要に気づけるかもしれない。
それから、本人が好きで好きで仕方がないものを、合理性を度外視して形にしてしまうこともあります。
市場調査をして、競合を分析して、成功確率を計算して、というプロセスを経ていたら生まれなかった企画です。
再現性と、そこから逸脱する余地を両立させる
とはいえ、社長が全部の仕事に口を出して、すべての企画を自分で決めていたら、組織は育ちません。
社長がいなければ何も決められない会社になってしまうし、社長自身も日々の業務に追われて、新しい事業を考える時間がなくなってしまいます。
一方で、完全に現場から離れて過去の成功を再現することだけに集中すれば、組織は効率的になっても、新しい可能性を見つける力まで弱ってしまうかもしれない。
つまり、再現性を高めることと、再現性から逸脱する余地を残すこと。この2つをどう両立させるかが、経営の難しいところかなと思います。
日々の業務は仕組み化して組織に任せる。その一方で、社長はマーケットとの接点を失わないようにする。
現場に顔を出して、お客さんの反応を見て、時には合理性のない思いつきを口にする。
これは、AI時代の経営にもつながる話かなと思っています。
過去のデータを分析して、効率的な業務フローを設計して、一定の成果を再現する。こういった仕事は、AIの進化でますます効率化されていくと思うんです。
でも、まだ市場に存在していない需要や、合理性だけでは説明できない熱狂を、あらかじめ正確に予測するのは簡単じゃありません。
むしろ過去のデータを重視するほど、過去には存在しなかったものを、気づかないうちに選択肢から外してしまう危険性もあります。
だからこそ、合理的な仕組みを整えながら、そこから逸脱する余地も残しておくことに価値があるんだと思います。
仕組み化の目的は、社長の個性を消すことじゃないんです。社長がいなくても回る組織を作りながら、社長がいるからこそ生まれる価値も残すこと。これが難しいんですけどね。
社長が現場に入るべきか否か、という二択で考えるのではなくて、社長が現場に入らなくても事業が回る仕組みと、社長が現場に入ることで新しい価値が生まれる余白。その両方を持っている会社が、これからの時代には強いのかもしれないな、と最近感じています。
僕が現場で思いつきでやることって、よく外すんです。でも、これは明らかに僕じゃないと生まれていなかったな、という企画がいくつかあったりするので、自分と照らし合わせても「これはあるな」と思っています。
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それでは素敵な一日をお過ごしください。じゃあまたね。
まとめ
社長が現場に入るか入らないかは二択ではなく、仕組みで回る組織と、社長が現場にいることで生まれる余白の両方を持つことが大事だと僕は考えています。
- 現場を長く離れた社長は、マーケットの変化を肌で感じられず、仕組みとマーケットのずれが広がる可能性がある
- 社長の思いつきは権限ゆえに実行回数が多く、その中から時々とんでもないヒットが生まれる
- 再現性を高めることと、再現性から逸脱する余地を残すことの両立が経営の難しさ
- AIが過去データの分析や再現を担うほど、まだ存在しない需要や熱狂に気づける余白の価値が増す





