どこよりも早い、上半期版マイベスト3という試み
この回は、番組ではおなじみの年末ベストテン企画を、上半期の時点で先取りしてやってしまおうという特別編です。
対象は2025年12月放送の「健康診断 体の声に耳を澄ませば」から、二人が最新で見た名古屋のオールナイト喫茶(7月31日放送分)まで。この範囲で、それぞれが事前にベスト3を選んできました。
多分本当にどこよりも早いと思ってますね。
やまぐちさんによると、年末スペシャルの視聴者投票は例年10月末ごろから応募が始まります。世間が今年のベストを考え始めるより前に、二人は先に発表してしまうというわけです。
もうね、今年は違うと。もう発表します。ベストを、僕らが。
ただし、これはあくまで上半期時点のマイベストです。下半期の回を見た結果、順位が入れ替わることも大いにあり得ると二人は断っています。
今回はそのね、あくまで別に視聴者投票とかもしてないんで、僕ら。シンプルに僕らが良かった回を1位から3位まで上げるっていうような回になってます。
予想が当たるかどうかという話ではなく、自分に刺さったものを表明していくことが大事だ、というのが二人の姿勢です。
二人が1位・2位に選んだ気仙沼の酒屋の物語
チャットでお互いのランキングを見せ合ったところ、両者とも上位に入れていたのが「春は巡って 気仙沼 酒屋の物語」でした。ほんださんは1位、やまぐちさんは2位に置いています。
この回は、東日本大震災から15年が経った気仙沼の酒屋を舞台にしています。ほんださんは、当初タイトルから想像した弔いのお酒のイメージとは違い、感謝の気持ちが強く描かれていた点が意外だったと語ります。
今こう、いろんな人にお世話になってっていうところの、感謝の気持ちみたいなものがこうすごく入っていて。
ほんださんが1位にした理由は、遠洋漁業の町・気仙沼で、震災から15年という節目に、船出を祝うお酒に密着していることにありました。
船出を祝うお酒みたいなものに密着してるっていうのが、やっぱいいなというのがもう一番の理由ですね。
やまぐちさんは、この回が「その町では感謝を込めて日本酒を贈るという」というナレーションから始まる点に注目しました。お酒そのものの存在意義を考えさせられたと言います。
若者のお酒離れやスマドリ、ノンアルといったトレンドが語られる時代だからこそ、お酒がそもそも何を意味していたのかという本質に立ち返らせてくれる回だった、というのがやまぐちさんの評価です。
お酒っていうものと地域っていうものと、その近い人とのつながりとか、その気持ちを込めるみたいなことっていうのが、なんかやっぱつながってくるものなんだなっていうのが改めて感じさせられた。
見返したほんださんは、達筆な女将さんの魅力にも触れています。店先には手書きで「ヨーグルト酒」と書かれ、赤ちゃん連れの客にはイルカのぬいぐるみであやしながら接客する場面もあったと言います。
なんかそんな、そんなホスピタリティあるんだみたいな。含めて、なんかほんわかとした、やっぱ回だ。
震災から15年、遠洋漁業の町での船出を祝うお酒への密着に価値を見た
お酒離れの時代に、お酒と地域・人のつながりの本質を考えさせられた
やまぐちさんが1位に選んだ小岩の駐輪場「チャリンコ劇場」
やまぐちさんが1位に選んだのは、東京・小岩の駐輪場を描いた「下町チャリンコ劇場」でした。ほんださんも上位で迷った、団子状態の中の一本だったと言います。
やまぐちさんは、良かった回のメモに「いい回」とだけ書く習慣があり、上半期でその言葉が付いていたのがこの回だったと明かします。
何がいいとか悪いとかじゃなくて、シンプルに「いい回」って書いてあるメモがたまにあって。
舞台は、係のおじさんが神業のようなテクニックで自転車を奥から順に詰めていく、人力管理の駐輪場です。今どき珍しいこのシステムが、この回の核になっています。
その、よくこのご時世成り立つなっていうシステムの駐輪場なんですよね。
この駐輪場のおじさんは、利用者みんなの名前を覚えています。回の途中では、引っ越してきて最初に名前を呼んでくれたのがこのおじさんだった、と語る人まで登場します。
駐輪場なのに、そんななんか、まあそれこそ下町人情とかって言いますけど、人情っていうレベルを超えている。
スタッフに飲み物を差し入れる利用者がいることも、やまぐちさんが印象に残った点です。駐輪場の係にそこまでする人がいるほど、その場所は日常に溶け込み、愛されていたのだと語ります。
後半で明かされるのは、この駐輪場が再開発でなくなってしまうという事実でした。しかしこの回は、そこから次にどうするかを描くのではなく、なくなる日まで淡々と続いていく様子を映します。
そして、最後は何気ない天気の会話で締めくくられます。やまぐちさんは、そこに寂しさだけでなく、ずっと続けてきたことへの覚悟のようなものを見たと語ります。
ほんださんは、駐輪場というだけでこれほど語りたくなること自体が、ドキュメント72時間のすごさだと応じます。過去に葛西の大きな駐輪場が取り上げられた回とも違う、人力ならではの物語性がある一本でした。
都市部で、より効率化されているのが当たり前の場所に、あえて人が介在するこの駐輪場を、ほんださんは唯一無二の回だと評しました。
さすがにこれは唯一無二すぎるなって思いましたね。
ほんださんが2位に選んだ地方競馬「さすらいの競馬場」
ほんださんが2位に挙げたのは、岐阜県笠松の地方競馬場を描いた「走れ!さすらいの地方競馬」です。競馬に詳しくないからこそ刺さった、と語ります。
この回では、「さすらい」の意味が徐々に明かされていきます。中央競馬で勝てなかった馬が地方競馬へと流れてくる、その様子が背景にあります。
同時に、笠松はあの名馬オグリキャップを輩出した競馬場でもあります。ほんださんは、地方から這い上がったアンダードッグ物語として、この回が組み立てられていた点を評価します。
回には、オグリキャップを見るためだけに大きなスーツケースを手に訪れたアメリカ人も登場します。この笠松訪問と富士山でのプロポーズを、人生の二大イベントとして掲げていたと言います。
さらに、中央競馬から下ってきたスティルアイライズという馬の笠松デビューを、幼い頃から応援してきた人たちが見に来る場面で回は締めくくられます。物語と、場末の競馬場ならではの空気が同居している点をほんださんは推しました。
ほんださんが挙げた具体的な魅力の一つが、電話ボックスほどの小屋にいる予想屋です。1レース100円で予想を売るという、独特の商売が営まれていました。
そのかぐわしさとなんか物語が同居してるのが、なんかこれいいじゃんっていうので、僕の中で2位を持ってきました。
夜には調教のシーンもあり、レースのない日にもおじいちゃんたちが集まって、他会場のレースを買いに来る様子も描かれます。二人は、ただの賭博場ではない「寄り合い所」としての競馬場の姿に魅力を感じたと語ります。
寄り合い所としての競馬場みたいな感じありますよね。
ほんださんが3位に選べなかった2本、みぞか号と池袋チャイナタウン
3位の発表で、ほんださんはルールを破って2本を同率で挙げました。1本に絞りきれなかったためです。
これ絞れてないじゃないですか。絞らなきゃいけない。ベストスリーって言ってるんだから。
1本目は「小さな飛行機 みぞか号に乗り続けて」です。ほんださんは、最後に機体を洗い上げるシーンで締めくくる美しさを挙げます。
みぞか号は天草を中心に熊本や福岡を行き来するプロペラ機で、飛んでいるのは1機のみ。乗る人も働く人もこの機体に愛着を持ち、それぞれの生活が浮かび上がる、モビリティ回の王道だとほんださんは評します。
客室乗務員が慌ただしく弁当をかき込んだり、管制室の人が着陸のたびに胸を撫で下ろしたりと、お仕事ものとしての一面も描かれていた点に触れています。
総合的にモビリティ回として、今年の1年間のモビリティ回として堂々たるものだなというのが、まあ。
2本目は「池袋チャイナタウンのフードコート」です。池袋の怪しさと中華料理の飯テロ感が合わさった魅力があると言います。
ほんださんが特に挙げたのは、母は中国出身だが日本で育った子どもが、こうした場所で故郷の味を継承していく様子でした。外交や戦争が語られる今だからこそ残しておくべきものだ、という思いも重ねています。
ここはちょっとなんかその、個人的な、なんかその、正義感っていうのかな、なんかその価値として残さなきゃみたいなことも結構深く入ってるのが、まあ池袋チャイナタウンのフードコート。
一方でやまぐちさんは、この池袋のフードコートがすでに変わってしまったと明かします。時代の流れとともに麻辣湯推しにリニューアルされ、回で描かれていたガチ中華の雰囲気ではなくなったと言います。
ここで描かれていたようなガチ中華の感じではなくなっちゃったんですよね。
二人は、あそこに通っていた留学生たちは今どこへ行ったのだろうか、と思いを馳せます。日本人の舌に妥協せず故郷の味を求めていた客の姿が印象に残っていたためです。
みぞか号については、やまぐちさんが企画の独特さを指摘します。ディレクターがひたすら往復に乗り、機内では席を動けないため隣に座った人に話しかける、という制約の中で撮る挑戦的な回だったと語ります。
待合室のとこから勝負始まってますからね。ちょっと誰の隣に座るかとかね。
やまぐちさんが3位に選んだ下北沢の精肉店
やまぐちさんの3位は、下北沢の精肉店「宮田屋」を描いた回でした。お肉を買いに来るという、それ以上でも以下でもない回だが、バランスがいいと評します。
やまぐちさんが注目したのは、若者やバンドマンの街という一般的な下北沢イメージとは異なる姿が見えてくる点です。家族連れが使う、生活の場としての下北沢が描かれていました。
「本当の下北はこういう感じなんだよ」みたいなのがちょっと垣間見れる感じっていうのがすごいいいなっていうのと思って。
みんなが知る「下北沢」という固有名詞と、精肉店という日常の場を組み合わせることで、視聴者が意外性を感じ取れる。そこが3位にした理由だとやまぐちさんは説明します。
肉が食べたくなる。シンプルに。
ほんださんは、以前放送された平塚の多国籍な精肉店回と対比します。わかりやすい特色のある店ではなく、普通のお肉屋だからこそ見えてくるものがあった、と評価します。
お肉屋ってまだ広がりあるなって思わされましたよね。
店では、薄切りの「花けずり」を目当てに客が集まります。ちょっといいことがあった日や、誰かと食べるために買いに来る。そこに生活がにじむ点を、やまぐちさんは好んだと語ります。
マイベストは人が出る、タイトルで損する回を伝えたい
二人は、一位と三位が互いに違っていたことを面白がります。ほんださんは、今回のように上半期でやってみると、なぜその順位なのか説明しきれない感情的な選び方になったと振り返ります。
なぜ1位なのか、なぜ2位なのかとかっていうのも、なんかやっぱもう感情?も全然今日で、だからすごい説明できるものではやっぱり全然なかった。
だからこそ、一位から三位までを表すことが多分一番人間が出ると、やまぐちさんは言います。順位そのものが、その人の考え方や人生のフェーズを映すというわけです。
今回二人が挙げたのは、気仙沼の酒屋を除いて6本。まだ見ていない人にぜひ見てほしいと勧めつつ、上半期で6本も勧めることがキュレーションになっているのか、と二人は自嘲します。
話は、タイトルで損をしている回の多さにも及びます。「東京 小岩 下町チャリンコ劇場」も、一見しただけでは何の回か伝わらないとほんださんは指摘します。
一見聞いただけで、チャリンコ劇場も実際そうじゃないですか。意味わかんないですよ。
ほんださんは、YouTubeのサムネイル的な引きの強さとは逆行するタイトルこそ、この番組にふさわしいと語ります。派手な引きはなくても、見れば味が出る回を伝えていくことを、二人は勝手に使命だと感じています。
最後に二人は、今回挙げなかった回にもいい回は多々あると添え、下半期も継続してウォッチしていくと締めくくります。
結局全部見るんですけどね、僕らはね。
まとめ
二人が上半期のマイベストとして選んだのは、順位づけの妙よりも、そこに映る「人となり」と、平熱の名回たちへの愛でした。予想ではなく、自分に刺さったものを言葉にすることそのものに意味を置いた特別編です。
- 気仙沼「酒屋の物語」は、震災から15年の町で船出を祝うお酒に密着し、二人がそろって上位に選んだ回
- やまぐちの1位は小岩の人力駐輪場「チャリンコ劇場」、なくなる日まで淡々と続く日常と天気で終わる締めが印象的
- ほんだの2位は笠松の地方競馬回、オグリキャップを軸としたアンダードッグ物語と場末の空気が同居
- ほんだは3位を絞れず、モビリティ回の王道「みぞか号」と、すでに変わってしまった「池袋チャイナタウン」を同率で選出
- 一位から三位を挙げることには人が出る、タイトルで損をする回こそ見てほしいという二人の姿勢が通底している






