国内も海外もシードから。DG Daiwa Venturesとはどんなファンドか
DG Daiwa Ventures(DGDV)は、デジタルガレージ ── インターネット黎明期から決済、メディア、インキュベーションなどを手がけてきた日本のIT企業。スタートアップ投資にも長く関わっていますと大和証券グループの合弁として生まれたベンチャーキャピタルです。マネージングディレクターの渡辺大和さんによると、運用総額は約300億円になります。
DGDVは昨年3号ファンドを立ち上げており、規模は100億円です。渡辺さんは、3号ファンドでも国内と海外の両方に投資していくと説明しています。
海外だけやってるんでしょっていうふうによく聞かれることあるんですけども、国内もめちゃくちゃ積極的に投資してます。
よくミドル(レイター)だけですかみたいなことも言われるんですけれども、そんなことはなくて、シードからお支えをするということでやらせていただいております。
DGDVの性格について、渡辺さんは「純粋なリターンを目的とするファンド」だと強調します。事業会社が出資するCVCとの対比で、DGDVはあくまでVCとしてリターンを目指す立場です。
渡辺さん自身は、以前に電通のCVC ── コーポレートベンチャーキャピタルの略。事業会社が自社の資金でスタートアップに投資する仕組みで、本業との相乗効果を狙うことが多いのが特徴ですである電通ベンチャーズの立ち上げ、組織設計、投資に関わっていました。両方で働いた経験から、CVCはシナジーとリターンの両方を追う会社が多く、ファンドのリターンを目的にする点がDGDVの違いだと話しています。
シナジーと投資のリターンの両方を追い求めに行く会社が多い
ファンドのリターンを目的とし、純粋にVCとしてリターンを目指す
出資者の構成について、おいなりさんは「デジタルガレージと大和証券のジョイントベンチャーとして始まりつつ、LPはその2社に限らないのか」と確認しました。渡辺さんはその理解で正しいと答えています。
渡辺さんによると、DGDVは10年前の立ち上げの時点から、2社以外にも日本の金融機関や事業会社、一部は海外からの資金を預かってファンドを組成してきました。投資先だけでなく、LPの層でもグローバル化を図っているファンドだといいます。
件数は海外、金額は日本。Y Combinatorに「選ばれる」投資家とは
3号ファンドの国内と海外の比率について、渡辺さんは「件数ではやや海外が多い」と答えます。理由は、Y Combinator ── 2005年に始まった米国のアクセラレーター。シード期のスタートアップに少額出資し、短期集中のプログラムで育成します。AirbnbやDropboxを輩出していますの採択企業への投資にあります。
渡辺さんの説明では、Y Combinator企業のラウンドはすぐに決めないと入れないものが多く、DGDVはあらかじめ予算を決めて件数を張る戦略をとっています。そのため、シリーズA・Bに投資する件数よりシードの件数が多くなり、海外の印象が強くなるといいます。
ただし金額ベースで見ると、渡辺さんは「実は日本のほうが大きいかもしれない」と話しています。
Y Combinator企業に投資できている日本のVCはほとんどいないのではないか、とおいなりさんは尋ねました。渡辺さんは、Y Combinatorでは入れる投資家自体が選別されていると答えます。
我々もその選別をされる中で淘汰されないようにですね、YCombinatorに対しても、ある意味ナイスに振る舞っていくということが大事で。
渡辺さんは、現在の代表のギャリー・タン氏と最近大阪で会ったと話します。代表本人が日本に来るほど、Y Combinatorは投資家をグローバルに開くことに関心を持っており、日本からの投資家にとっては追い風だと見ています。
DGDVがこれまでに投資したY Combinator発のスタートアップは、渡辺さんによると約40社です。Y Combinatorのバッチは年2回から年4回に増えましたが、ChatGPTなどの生成AIの流れで応募数が大きく増え、入る難易度はむしろ上がっているといいます。
創業者2人だけの段階で決めたTurion Spaceへの投資
Y Combinatorでの投資はシード段階のため、渡辺さんは「その人物についてあらゆる角度から見る」と話します。代表例として挙げたのが、Y Combinator出身のTurion Spaceへの投資です。
渡辺さんの説明では、Turion Spaceは宇宙関連の3Dのマップを作り、アメリカの宇宙軍など防衛分野にも提供している会社です。現在はシリーズBで100億円以上を集めるまで伸びています。
DGDVが投資した当初、Turion Spaceはシード期で、起業家2人だけの状態でした。創業者はSpaceXで初期から働いていた人物ですが、渡辺さんによると「本当に人だけの段階」での投資だったといいます。
まずミーティングの設定が、日曜日の朝、彼らにとっての土曜日の夕方。別に土日働くことを推奨してるわけじゃないんですけど、いつでもレス返ってくるみたいな人で。
渡辺さんがTurion Spaceの創業者に感じたのは、仕事に対する熱意でした。加えて、宇宙が大好きな渡辺さんが宇宙やロケットについて質問すると、答えの解像度が非常に高かったといいます。
さすがやっぱりSpaceXで働いていて、そこでも中核だったんだろうなっていうふうに思えるような内容が返ってきてたりしたんで、この人はすごいなっていうふうに思っていて。
Turion Spaceのラウンドは競争が激しく、進みも速かったそうです。創業者たちが投資家を整理する中で、DGDVはたまたま枠を空けてもらう対象に残り、それが成功案件につながったと渡辺さんは振り返ります。
日本人のVCだからこそ海外の投資先に届けられる価値
DGDVが海外の有力企業に受け入れてもらえる理由について、渡辺さんは、アメリカの投資家との違いは明確だと話します。日本で生まれ、日本語が母語であるからこそ、日本や日本に関わる産業クラスターとのパイプ役になれるという点です。
渡辺さんは、アメリカのテック業界が日本に見向きもしない時期もあると認めています。AIバブルが始まった当初は、西海岸だけで受注がいっぱいなので日本進出に興味はない、と辛辣に言われることもあったそうです。
本当にそこでシクリカルにサイクルするもので、そのサイクルの中で日本にも結構目が向くようなタイミングっていうのは絶対あるわけですよね、その各産業において。
渡辺さんが今その例として挙げるのがフィジカルAI ── ロボットや機械など、現実世界で動くものにAIを組み込む領域。工場や現場のデータの活用が鍵になるとされ、2024年ごろから注目が高まっていますです。工場の現場データの共有や、日本企業の工場での実地経験に、アメリカの企業は強い興味を持っているといいます。
一方で、日本のどこに話を持っていけばよいのか、つまり「ライトパーソン」が誰なのかを、アメリカのテック企業のほとんどはわかっていないと渡辺さんは指摘します。前職で日本の国内企業にサービスを提供してきた知見を共有すると、相手にとってアハ体験になることが多いそうです。
日本への関心が高まる
フィジカルAIなど、産業ごとに日本に目が向くタイミングが来る
知見を共有する
日本の国内企業と仕事をしてきた経験から、誰がライトパーソンかを伝える
同じ船に乗る提案
投資家としてアジア展開の情報を提供する立場を示す
投資枠を調整してもらう
その価値を認めてもらい、ラウンドに入る
渡辺さんは、この流れで投資した例としてSkild AIを挙げました。一方、Setlogへの投資は、韓国人キャピタリストのメンバーによるものだといいます。ニューヨークの会社ですが最初に韓国で流行し、今も最大の市場は韓国だそうで、その感度は日本人よりずっと早かったと話しています。
DGDVでは日本人であることだけでなく、メンバーそれぞれの得意分野やバックグラウンドを生かして投資している、というのが渡辺さんの説明です。
国内での関わり方の例として、渡辺さんは名古屋のプライバシー・セキュリティの会社Acompanyを挙げます。Y Combinatorへの応募の際に壁打ちを重ね、DGDVが投資家として漏れ聞いていた選考の傾向をもとに対策を立てました。
結果として、Acompanyは応募者の上位10%以内に残ったといいます。高橋社長からは、整理の過程で次のプロダクトのアイデアや顧客像が浮かび、サービスラインの強化につながったと言われ、渡辺さんは「やってよかった」と話しています。
学生起業から電通へ。渡辺さんがキャリアを選んだ理由
渡辺さんは電通でプロダクト開発やクライアントのデジタルサービス開発に携わっていましたが、その前、「スタートアップ」という言葉がまだない頃に学生起業をしていました。ウェブサイト開発の受託に加えて、自社プロダクトも作っていたそうです。
自社プロダクトの中には「遅すぎるTikTok」のようなものもありましたが、3G回線の時代だったため失敗したといいます。ハッカソン的な場で4人ほどのエンジニアと出した音楽関連のプロダクトでは、エイベックスに呼ばれたそうです。
結構その著作権系とか、かなりグレーな感じのプロダクト作っちゃったんで、「やべえ」みたいな感じで緊張して行ったら、結構歓待いただいて、今でも交流はあるんですけども。
起業経験がありながら電通に入った理由をたどると、渡辺さんの話は高校2〜3年生のころにさかのぼります。フィリピンの孤児院でボランティアをしていた渡辺さんは、1人で対応できる子どもは5人ほどが限界だと気づきました。
ボランティアの人数が多少増えてもフィリピンの子ども全員は救えない、と当時の渡辺さんは考え込んだそうです。その後、大学1年で起業し、小規模ながら売れたプロダクトの収益でニューヨークへ渡りました。
NYUの授業に来たMicrosoftの人から、ビル・ゲイツの考えとして「圧倒的なイノベーションを起こし、そこからトリクルダウンする富で世の中が生きていく」という趣旨の話を聞き、渡辺さんは「これだ」と感じたといいます。
力の象徴って僕の頭の中だと電通だったんですけど、(電通)に入って、そのパワーをレバレッジしてできることってあるのかなみたいなことを思ってですね、入ったっていうのが実際のところで。
入社した当時の電通はデジタルやグローバルへのシフトが必要な時期でした。渡辺さんはその中でCVCの立ち上げを手伝い、それが今のキャリアにつながったと話しています。
マラソンを極めるためのDGDV。起業家と対等に向き合う姿勢
電通からDGDVへ移ったことについて、渡辺さんはファイナンシャルリターンへの挑戦だったと話します。シナジーとリターンの両方を求めるのは難易度が高く、渡辺さんはそれをスポーツにたとえました。
シナジーとファイナンシャルリターンの両方を置いて、両方を求める
1つのことに集中して職人になる。渡辺さんがDGDVで選んだ道
渡辺さんはDGDVにシニアマネージャーとして入り、途中で宇宙飛行士の試験も受けたそうです。マネージングディレクターになったのは2022年からです。
マネージングディレクターとして大事にしていることを聞かれ、渡辺さんは「全ての関わりはギブアンドテイク」だと答えました。情報をもらって終わりにせず、返せなかったら謝るという姿勢です。
この姿勢には、渡辺さん自身の起業家時代の経験があります。学生起業家として資金調達の機会があったとき、携帯を見ながら面談をするVCもいて、嫌だと感じたそうです。だからこそ、自分は会う機会には丁寧に接するよう心がけているといいます。
サイバーエージェントのAI部署で、新規事業を3度立ち上げる
2人目のゲストは、DGDVのキャピタリスト・進藤光太さんです。進藤さんは学生起業を経て、プロダクトアウトの事業開発がしたいという思いでサイバーエージェントに新卒入社しました。
新卒200人ぐらいですかね、同期いる中で5人しか行かない、マイナー部署ですけど。
進藤さんが配属されたのは、広告でもゲームでもABEMAでもない、AIの部署でした。インターン期間中に「絶対AIです」と伝え続け、そのまま配属されたといいます。
サイバーエージェントのAI部署の仕事は、基本的に新規事業開発です。進藤さんはインターンを含めて約5年在籍し、その間に3つの領域を経験しました。
GXの新規事業は、立ち上げることだけが決まった社内公募に手を挙げたものでした。「何をやるかは任せる」という状態から、毎週のように担当役員にピッチしてはピボットを繰り返したそうです。
最終的に作ったのは、簡単に言えばオフィスの電気代を削減するエネルギーマネジメントシステムです。グループ全体で数億円の販管費削減というインパクトを出したといいます。
GXは時間のかかるビジネスでもあり、生成AIが出たタイミングで役員から「生成AIをやってほしい」と声がかかりました。進藤さんはAIでリードを獲得し、受注率を上げるセールスフォースオートメーションの領域に取り組みました。
当時思ったのは、(ChatGPTは)「市民権を得られるAIだな」と思ったんですよね。
進藤さんによると、AI自体は2000年代からありましたが、ChatGPTで初めて生活者の生活を変えるところまでテクノロジーが降りてきた感覚があったそうです。それが今まさに起こっている、と進藤さんは見ています。
「渋沢栄一になりたい」。国内と海外を分けないDGDVを選んだ理由
進藤さんがサイバーエージェントからDGDVへ移ったのは、次の「修行期間」を挟みたいと考えたからです。アプリ、システム、SaaSと一通りのプロダクト開発は経験したものの、自分で使命感を持って取り組めるドメインがまだ見つからなかったといいます。
元々学生の時から、「渋沢栄一になりたい」っていうのが僕のミッションというかビジョンでありまして。
「渋沢栄一のような仕事は現代では何か」と考えたとき、進藤さんはVCが近いかもしれないと思い至りました。渋沢栄一 ── 明治から大正にかけて、約500の企業の設立や育成に関わった実業家。「日本資本主義の父」と呼ばれ、2024年発行の新1万円札の肖像にも選ばれていますを目指す思いから、VCの話を聞いて回る中でDGDVと出会ったといいます。
DGDVを選んだ決め手として、進藤さんは海外投資を組織も担当も分けずに行っている点を挙げます。CVCを含め、国内と海外で組織を分けるVCは多い中、DGDVではファンドも分けていません。
一般的には組織と担当を分けて、国内と海外の投資を別々に行う
DGDVは組織もファンドも分けず、国内と海外のどちらにも関われ、比率も自分で調整できる
キャピタリストとしての独自の取り組みについて、進藤さんは「AIを使ったVCの業務とは何か」を自分なりに考えていると話します。ソーシング、DD ── デューデリジェンスの略。投資を決める前に、事業、財務、法務などの面から投資先を詳しく調べる作業です、投資先とのコミュニケーション、バリューアップのすべてでレバレッジがかけられるといいます。
進藤さんの方針は、まず自分で試し、うまくいったものを組織に還元することです。例えば、1人が年間に会えるスタートアップが100〜200社だったところを、AIで効率よくリーチして倍に増やす取り組みは、組織全体で進めているそうです。LPへの対応の効率化にも着手しています。
注目はディープテック。日本の研究とファウンダーをつなぐ
進藤さんが国内で注目しているのはディープテックの領域です。AIを使うのはもう当たり前なので、あえて「AIの会社」とは言わず、テクノロジーに強みのあるディープテック企業を見ているといいます。
日本のアカデミア含めて技術のシーズって本当に素晴らしいものが多いですし、唯一無二のものがたくさんあると思うんですね。ただ、ファウンダーがいないっていうのも一方で大きな課題としてあると思っていて。
進藤さんは、素晴らしい研究と、それを市場に届けられるファウンダーとのマッチングや、カンパニークリエーション ── VCなどが研究成果や事業アイデアを起点に、経営者探しから会社づくりまでを主導する取り組みですに、事業開発の経験を生かして携わりたいと考えています。
具体的には、出身校である早稲田大学の起業家育成講座の企画運営や、大学のGAPファンドのメンターなど、ゼロイチの段階から関わる活動を意識して続けているそうです。
ディープテックに限らず、起業を考えている人へのメッセージとして、進藤さんは準備ができていなくてもかまわないと話しました。
積水ハウスの営業からVCへ。槙原さんを動かした起業家との出会い
3人目のゲストは、DGDVのキャピタリスト・槙原ありささんです。槙原さんは新卒で積水ハウスに入社し、営業を担当していました。
槙原さんが住宅営業を選んだのは、「信頼を仕事にしたい」という就職活動の軸からでした。注文住宅は土地探しから家が建つまで1年かかることもあり、家族の一員のように信頼される職業はなかなかないと感じたといいます。
それでも「やりたいことを見つけたい」という気持ちが残っていた槙原さんは、休日にイベントへ通いました。そこで出会ったのが、ピッチで「月に家を建てます」と語る宇宙ベンチャーの起業家です。
こんなにやりたいことを目をキラキラさせて話してる人になんかあんまり出会ったことがなかったので、なんか「こういう人たちに本当に成功してほしい」みたいに純粋に思って。
槙原さんは起業家に困りごとを聞き、「エンジニアが見つからない」と言われればエンジニアのミートアップを開きました。VCとしてではなくボランティアとして、知り合いのおばあさんのイベントスペースを無料で借りて開いていたそうです。そのイベントには、まだ資金調達前の学生だったTimelyの小川さんも来ていたといいます。
VCという仕事を知ったのは、応援していた起業家のイベントで2人のVCに出会ったのがきっかけでした。「何者でもない人と一緒にチャレンジしたい」という思いから、未経験でVCの世界に飛び込んだと槙原さんは話します。
ANOBAKAで約7年働いた槙原さんがDGDVへ移ったのは、グローバルに挑戦する起業家を支援したいという思いがずっとあったからです。コロナ後には自らシリコンバレーツアーを企画し、起業家と一緒に現地の起業家に会いに行っていたといいます。
DGDVに入って半年ほどの槙原さんは、海外投資チームと日本チームの情報共有に壁がなく、海外の案件にも一緒に関われる点がいいと話しています。
入社1か月でY Combinatorのデモデイへ
槙原さんは2月16日にDGDVに入社し、その約1か月後の3月には、Y Combinatorのデモデイに現地で参加しました。同じ出張で、NVIDIAの大規模カンファレンスであるGTCにも行ったそうです。
もう目の前に300人ぐらい現地のVCが聞いてる中、200人のYCombinator起業家が1分ピッチですよ。
槙原さんによると、デモデイは朝から夕方まで3部に分かれてピッチが続き、オンラインでも2000人ほどが視聴していたといいます。ピッチを終えたばかりの起業家に、その場で「投資したいです」と伝えに行くこともあったそうです。
そこのスピード感にやっぱついていくっていうところが、やっぱりすごい大変。
このスピードにどうついていくのかと聞かれた槙原さんは、すべてについていけているわけではないと前置きします。そのうえで、領域の情報はChatGPTなどで俯瞰的に調べ、現地では動画では伝わらない勢いやチームの温度感、コミュニケーション力を直接確かめて補っていると答えています。
「辞めます」と伝えた直談判と、Go Globalの原点
コミュニティマネージャーから投資担当になる人はほとんどいない、とおいなりさんは尋ねました。槙原さんは、起業家に向き合う仕事として何でも引き受けるうちに、もっと貢献できる範囲を増やしたいと思うようになったと話します。
当時の代表の長野さんには、「投資をやってみたいです」と。(中略なく)「やらせてくれないなら辞めます」って当時言って。
長野さんからは「チャレンジしたいという思いがあるならやってみてほしい」と返されたそうです。入社時にも「女性キャピタリストも増えたほうがいい」と言われていたことが、相談する後押しになったといいます。
槙原さんのXのアカウント名にある「Go Global」は、4〜5年前から付けているものです。きっかけは、コロナ後に海外を回る中で出会った韓国の起業家たちのエネルギーでした。
韓国はその韓国だけだと市場的にすごく狭いので、もう最初から起業するタイミングでGoGlobalになっているのがスタンダードだということを聞いて。
韓国ではVCも海外市場を取りに行く前提で投資すると聞き、槙原さんは「日本もその観点を持たないと追いつけなくなる」と感じたそうです。言い続けるうちに、今では多くの人が「Go Global」と口にするようになり、嬉しいといいます。
一方で槙原さんは、全員が海外に出るべきだとは考えていません。市場やタイミングによって判断はフラットであるべきで、事業によっては初日から現地にいないとスピードについていけない場合もある、と話しています。
ANOBAKA時代の海外訪問は、出張ではなく完全に自費でした。ゴールデンウィークや年末年始、夏季休暇に行き先を決め、現地の起業家に自分でDMを送ってアポを取っていたそうです。
なんか仕事というよりかは、自分がそこになんか行きたいみたいな。
DGDVの強みについて、槙原さんは「海外の当たり前」をインストールしつつ、事業会社から見た安心感もある点を挙げます。海外の常識と日本市場のリアルを組み合わせて資本政策を一緒に考えられることを、起業家に知ってほしいと話しています。
6人の食事会で、5人が応援したくなる人に会いたい
槙原さんが今関心を持っている領域はフィジカルAIです。もともとはフィンテック、医療、そして積水ハウス出身であることから建築や不動産にも関心があり、DXが進んでいない産業やブルーカラーの領域にAIで新しい仕組みを作ることに興味があるといいます。
会いたい起業家の人物像として、槙原さんは周りの人が自然と仲間になっていくタイプを挙げました。
槙原さんによると、そうした起業家には、起業前の会社やさらに前の職場の仲間が応援に回り、ジョインしていることが多いそうです。人間関係を1つずつ丁寧に積み重ねてきた人と一緒に仕事がしたい、と槙原さんは話します。
さらに槙原さんは、起業家の原動力がどこから来るのかにも強い関心を持っています。熱が絶えない源泉がわかると、それを一緒に大きくしたいという気持ちになるといいます。
SF Tech Week現地レポート。1000名が集まったDGDVのイベント
後半は、10月のSF Tech Week期間中にDGDVがサンフランシスコで主催したイベントの現地レポートです。おいなりさんによると、申し込みは1000名に達し、参加者の多くは海外の人で、会話もほとんど英語だったといいます。
会場で話を聞かれた進藤さんは、1週間でいくつものイベントに参加したものの、どこもウェイティングリストが出るほどの盛り上がりだったと振り返ります。日本のディープテックがGo Globalを目指すうえで、アメリカ側のドアは大きく開いていると改めて感じたそうです。
進藤さんは、課題は日本勢がどれだけ恥ずかしがらずにドアをノックできるかだと話しました。移民が多く、参加者の半分以上がアジア系とも感じられる環境で、英語が完璧でなくても相手が合わせてくれるので、肩肘張らずにまず話してみるのがよいという見方です。
ピッチを終えたばかりのMUSEの笠置泰孝さんは、小売店舗向けに、1台で時間帯ごとに様々な業務をこなすロボットを開発していると説明しました。ニューヨークに導入事例が1社あり、アメリカの大手小売複数社ともPoCに向けて話をしているそうです。アメリカの投資家がフィジカルAIに何を求めるかを直接聞けたのがよかったと話しています。
現地で起業したばかりのSota Kobayashiさんは、アメリカの大学を出てシリコンバレーでソフトウェアエンジニアを経験した人物です。AIエージェント同士を通信させるA2Aプロトコル ── AIエージェント同士が情報をやり取りし、協調して作業するための通信の取り決め。2025年にGoogleが提唱し、注目を集めていますの基盤レイヤーを作っています。
Kobayashiさんは、現地では中国や韓国のコミュニティの強さを感じると話します。成功例が多く、紹介し合う仕組みもあるため、日本人として先陣を切る側として、後に続く人のためのよい事例を作りたいといいます。
サンフランシスコでスタートアップを経験したTaishiさんは、2年ほど前からソロで自分のアプリやSaaSを作り、パートタイムのインフルエンサーとしても活動しています。Taishiさんは、日本では「AIを産業に導入して稼ごう」という話が多い一方、ピーター・ティールの界隈から投資を受ける人たちは3年後、5年後を見て「頭の中がポストAGI」だと話していました。
イベントを終えた槙原さんによると、会場は立ち見が出るほどで、日本に関心のあるアメリカのファウンダーが多く訪れたといいます。日本とのつながりを求めていたという声があり、地元の参加者が中心の他のイベントにはないユニークさが喜ばれたそうです。
まとめ
DG Daiwa Venturesの3人の話からは、国内と海外を分けずにシードから起業家に向き合うファンドの姿が見えてきます。渡辺さんは日本とのパイプ役という価値でY Combinator企業に入り込み、進藤さんは研究とファウンダーをつなぐことを、槙原さんはGo Globalの後押しを、それぞれの原体験から目指しています。
- DGDVは運用総額約300億円で、3号ファンドは100億円。国内と海外の両方にシードから投資しています
- Y Combinatorでは投資家も選別されるため、DGDVは日本とのパイプ役という独自の価値で投資枠を得ています
- 渡辺さんは投資家と起業家を対等な関係と考え、ギブアンドテイクを大切にしています
- 進藤さんは日本の研究シーズとファウンダーをつなぐディープテック支援に、槙原さんはGo Globalの支援に力を入れています
- SF Tech WeekのDGDVイベントには1000名の申し込みがあり、日本とのつながりを求めるアメリカのファウンダーが集まりました







