甲子園のテープとボルボのカバー、隠すほど気になる?
話の発端は、中島静香さんがこの夏に見ていた甲子園の高校野球です。球児のグローブにテープが貼られているのに気づいてから、中島さんはテープの下に何があるのかばかり気になってしまったといいます。
テープ気になり出したら、このテープの下何があるん?ってそこばっかり見てしまう。
試合は見てあげてよそれ。
メーカーのロゴが見えている選手もいたため、中島さんは隠されているのは名前なのか刺繍なのかと考えましたが、答えはわからないままだそうです。
片山光祐さんも、韓国ドラマで似た体験をしています。車のロゴらしき部分にカバーがかかっていても、丸の形から右上と左下に線が出ている形で、すぐにボルボだとわかってしまうというのです。
これボルボちゃうん?っていうのがもう一発でわかるのに、なんか隠してる。
保呂田直行さんは、見せつけられるロゴよりも、少し隠れている部分に人の気が向くのではないかと受け止めます。目立つほうが気を引けるはずなのに、逆のことが起きている。この回はその疑問から始まります。
中島さんは今回の問いを「人の注意を引くのは目立つことだけなのか」と設定しました。ロゴの話から、自分たちの仕事にも使える考え方があるのかを3人で探っていきます。
布をかけても丸わかり、リーバイスのスタジアム騒動
企画を持ち込んだ当初、中島さんはこの現象を「逆ブランディング」と名付けていました。ロゴは見せたいから出すものなのに、見えないことで逆に注目が集まる、という意味合いです。
保呂田さんは、隠されたものが気になるという現象そのものがブランディングになる可能性を指摘し、前回のワールドカップの事例を思い出します。スタジアムに書かれたリーバイスの名前が隠され、それがXで大きな話題になったという出来事です。
中島さんによると、大会期間中はスタジアム名のリーバイスを隠す必要があり、白い大きな布でロゴ部分だけが覆われました。ところが布はロゴの形そのままにかけられていたため、片山さんが「バットマンマークみたい」と表現するリーバイスのロゴの形がくっきり残ってしまったのです。
あの形そのまま取っちゃったらね。逆にそこをさ、白抜きとかさ、映像でぼかすとかだったらあれだけどさ。
片山さんがさらに面白いと感じたのは、リーバイス自身がこの覆われた形を自社の発信に使ったことです。白で隠された自社ロゴをあえて見せたことを、片山さんは高く評価しています。
(リーバイスは)自社のロゴを白で隠された状態にして。あれうまかった。
中島さんは、リーバイスの場合は隠されたくなかったのに、それを面白がって話題にしたのであって、隠す側にブランディングの意図があったわけではないと整理します。そのうえで、隠すことで何が生まれるのかが本題になっていきます。
カリスマ講師は大事なことほど声を小さくする
片山さんは、打ち合わせで保呂田さんが話していた「あえて違和感を出す」という考え方がロゴ以外にもありそうだと振ります。そこで保呂田さんが紹介したのが、教育業界の仕事で出会ったカリスマ塾講師の話です。
有名講師の人が大事なことを言う時って、声をちょっとだけボリュームを落とすんですよ。ベロシティを下げるんですよって言われたんですよ。
そうすると子供たちはちょっと聞こえなくなるから耳が大きくなる。
保呂田さんは講師から、こうすると大切なことが生徒に伝わりやすくなると教わり、ベロシティ ── もともとは「速度」の意味。音楽制作では鍵盤を弾く強さ、つまり音の強弱を表す値として使われますを下げる発想は他の場面にも応用できると感じたそうです。
片山さんは、大事な場面ほど声を張りそうなものだと驚きます。中島さんは大事なことを2回言ってしまうと話しますが、保呂田さんは2回言うのはダメだと返します。何回も言われると分散されて記憶に残りにくい、という理由です。
声を張る、大事なことを2回言う
声のボリュームを少し落とし、生徒の耳を引き寄せる
保呂田さんは、エビデンスのある話ではなく聞いた話として捉えてほしいと前置きしたうえで、隠されたロゴに違和感を覚えて気になる心理と共通するところがあるのではないかと話します。
片山さんが番組も小声でやってみるかと冗談を言うと、保呂田さんは「プロのエンジニアさんにボリュームを上げられて終わり」と返し、全部小声では意味がなく、大事なところだけに使うものだという結論に落ち着きました。
老舗にポップ、税理士にキャバクラ、逆の要素を足すと?
では、違和感をブランディングにつなげるにはどうすればいいのか。保呂田さんは、お客さんが「普通はこうだ」と完全に思っていそうなことを1つ探し、そこに逆の要素を1つだけ組み合わせる方法を提案します。
中島さんが「伝統的」を挙げると、保呂田さんは伝統に革新性を合わせる例として、老舗のお菓子屋さんがクールジャパン ── 日本のアニメやファッション、食などの文化を海外に発信する取り組みやその総称。政府の政策名としても使われています風のカラフルで派手なポップを店頭に置く姿を挙げました。
老舗なのに。はいはいはいはい。あ、気になるね。確かに確かに気になるな。
片山さんは士業の事務所を例に出します。専門的で硬い印象の業種でも、説明の言葉をものすごく日常的にすると違和感が生まれるというのです。SNSで話題の税理士が、キャバクラなど夜の仕事の脱税や節税をテーマにしているのもその一例だといいます。
| 対象 | 普通のイメージ | 組み合わせる逆の要素 |
|---|---|---|
| 老舗のお菓子屋さん | 伝統的 | カラフルで派手なポップ |
| 士業の事務所 | 専門的で硬い | 日常的な説明の言葉 |
| SNSで話題の税理士 | 超真面目 | キャバクラの脱税・節税の話題 |
だからいつもの見せ方とか役割を少しこうちょっとずらして価値を伝えるみたいな、そんな発想かな。
話は番組自身にも及びます。片山さんは、ブランディングの番組なら体系的な話をしそうなところを、ポジラボは「ポジティブ」「実験室」と名乗っているからこそ、エビデンスなしの話もラフにできると話します。
中島さんは、ブランディングはかしこまったものだと思っていた人が、聞いてみて「思ってたのと違う」と感じる違和感こそが、番組を楽しんでもらえる要素になると受け止めました。リスナーの半分が45歳以下で、最も多いのが35〜45歳の層だと紹介され、そうした層に響いているのかもしれないと話しています。
一方で中島さんは、有名なロゴだから隠しても伝わるのであって、中小企業のロゴが隠されても気づかれないのではないかと疑問を投げかけます。そこで、もっとわかりやすい一歩を考えることになりました。
1分ラボ、自分に「真反対の属性」を組み合わせると?
番組の「1分ラボ」のお題は、自分や自社を表す言葉に真反対の属性を1つ組み合わせるというものです。考える時間は1分という設定です。
片山さんはやり方を具体的に説明します。まず自分を表す言葉を短く書き、反対の言葉をくっつけ、その矛盾を商品や企画の一部にしたら誰が気になりそうかまで考える、という流れです。
片山さんの答えは、メディア会社である自社の「よく喋る」に対する「無口」です。無口なメディア会社は嫌だとしながらも、反対側からできることを探します。
例えば最初の打ち合わせはこっちの提案を一回置いておいて、お客さんの話を聞くところから始める。
さらに片山さんは「完璧な例」として「挨拶ができるヤンキー」を挙げます。無口でとがっているはずのヤンキーが、斜に構えながらも朝きちんと挨拶してきたら気になる、という例です。
ちょっと斜に構えながらも挨拶をちゃんとしてくるヤンキーがいたら気になりますよね。
中島さんにとって難しかったのは、最初の「自分を表す言葉」を出す段階でした。片山さんが冗談で「ゴスロリ」を提案すると、保呂田さんは意外と合うかもしれないと乗っかり、スタジオは盛り上がります。
ただ片山さんは、自分が何かを最初にきちんと立てられないと、ゴスロリが本当に正反対かもわからないと話を戻します。中島さんも、ゴスロリの衣装で行っても「ゴスロリのMCが来た」で終わるかもしれず、真反対を見つけるのは結構難しいと振り返りました。片山さんはこのワークを「大喜利」だと表現しています。
足し算より引き算?袋とじと福袋に見る隠す力
締めくくりの「中島ノート」で、中島さんは甲子園のグローブもリーバイスも、隠した側にブランディングの意図はなかったと整理します。一方で、講師が大事なときに小声になるのは戦略的な引き算だといいます。
中島さんは、足せばいいと思っていたところを引き算したり、いつもと違うことをしてみたりすることが、新しい自分を発見する入り口になるかもしれないと話します。目立たせるだけが目を引く方法じゃないというのが、中島さんのまとめです。
なんかだって会議してたら足していくことばっかり多分やってそうですよ。
片山さんは、さっきのゴスロリは完全に足し算だったと笑います。そこで保呂田さんが「隠して引き算して一番成功した事例」として挙げたのが、週刊誌の袋とじ ── 雑誌のページの端を閉じて、切り開かないと中を読めないようにした企画ページ。週刊誌のグラビアなどでよく使われてきましたです。
やっぱり自分で開けないとちょっとエッチな画像が見れないっていう、この隠れたものを見たいという心理を突いたのは、あれはちょっと特別ですよね。
中島さんは福袋にも話を広げます。保呂田さんによると、かつての福袋は中身が絶対に見えないことが良さでしたが、在庫処分品だろうというビジネスの裏側が知られ、今は中身を見せる形に変わってきたといいます。
中身が絶対に見えないことが楽しみだった
中身を見せる福袋が増えた
片山さんは、中身が見える福袋も「何が福なの?」という違和感になっていると指摘します。隠すことも見せることも、いつもの期待からずれると注意を引くという話になりました。
ロゴを隠したボルボは、かえって価値が上がる?
終わりかけたところで、片山さんがもう一度ボルボの話を持ち出します。ドラマの制作側がボルボとわからないようにロゴを隠していても、あえてその車種を選んでいるなら、車自体がよほどいいのではないかと見る人は思うのではないか、という視点です。
あえてこの車種を選んでるってことは、この車自体実はめっちゃいいんじゃないかって思わへん?
中島さんは、主人公が高級車に乗る設定ならボルボを使いたいが、制作の事情でロゴは隠す必要があり、それでも高級車のイメージはついている、とドラマのストーリーに沿って解釈します。
片山さんは、高級車を象徴するなら普通はメルセデスを使いそうなところを、あえてボルボにしている点に注目します。保呂田さんは、Kiaがスポンサーだからボルボを隠したのかもしれないと推測しますが、片山さんも「わかんないけどね」と断定はしていません。
最後に中島さんは、真反対の言葉を思いついた体験や、街で二度見した広告をXのハッシュタグ「#ポジラボ」で送ってほしいと呼びかけ、回を締めくくりました。
まとめ
この回は、隠されたロゴがかえって気になる現象から、いつもの期待を少しずらす違和感と、伝え方を控えめにする引き算が人の注意を引くことを、具体例を交えて掘り下げました。
- リーバイスやボルボのロゴは隠されても形でわかり、かえって注目を集めた
- カリスマ塾講師は大事なことほど声を小さくし、生徒の耳を引き寄せる
- 「普通はこう」というイメージに逆の要素を1つ組み合わせると違和感が生まれる
- 1分ラボでは、自分を表す言葉に真反対の属性を組み合わせ、誰が気になるかまで考える
- 足し算ばかりでなく、袋とじのように隠して引き算する発想も注意を引く方法になる




