ブランドを人に例えると、なぜしっくりくるのか
今回のテーマは「ブランドパーソナリティ」です。片山さんは、ブランドを人に例える考え方を、実務でも使える強力なフレームワークだと話します。
きっかけは、抽象的な言葉の扱いにくさです。「信頼できるブランド」と言われても、信頼の定義は人によって違います。
結局、このブランドが信頼できるって言われても、人によってこの信頼の定義が違ったりするじゃないですか。
(信頼できるブランドを)誠実で頼れる兄貴分って言われたら、もうちょっと具体的にイメージしやすい。
保呂田さんも「地元の頼れる兄貴分」という具体像でイメージが湧くと応じます。擬人化して言語化すると、クリエイティブを作るときに見ているものが共通化しやすいと片山さんは説明します。
片山さんは実際に、クライアントとウェブサイトを作る場面でこの問いを使うと話します。
じゃあ御社は擬人化するとどういう人に見られていきたいですか?(と問うと)結構スムーズに言語化されていく。
ブランドを評価する感覚は、人間関係にほぼ近いのではないか、というのが片山さんの見立てです。
Appleを人に例えると誰を思い浮かべるか
片山さんは身近な例として、Appleを人に例えるとどんな人かと保呂田さんに尋ねます。
スティーブジョブズのイメージが強いからかもしれないけれども、ミニマリズムで洗練されていて、ちょっと厳しめの人みたいな感じかな。
片山さんが「でも実は優しいところもないか」と補うと、2人のイメージは近いものになります。同じようなイメージを多くの人が持つ、それがブランドパーソナリティだと片山さんは整理します。
ここで片山さんは、以前から好きだというアーカー教授の定義を紹介します。
アーカー教授はブランドパーソナリティを「あるブランドから連想される人間的特性の集合」と定義しています。保呂田さんが「難しい」と返すと、片山さんは噛み砕いて言い直します。
ブランドに人格を与えると親近感が持てるよねっていう、シンプルにそれだけなんですよ。
保呂田さんは「名刀村正を擬人化したキャラクター」という例で理解します。社内でこうしたイメージが共有されると、ロゴを見た瞬間に「このブランドはこういう人だ」と連想されるようになると片山さんは話します。
「どう見せたいか」と「どう見られているか」、どちらが先か
保呂田さんは、企業が打ち出したいイメージと、受け手が持つイメージが一致すればブランディングの成功事例になりやすいと応じます。片山さんは、最初から「こういう人として見られたい」という設計を少しずつでもした方がよいと考えています。
ここで2人のアプローチの違いが明らかになります。保呂田さんは、逆の順序で考えていたと打ち明けます。
(見せたいかも大事だけど)今現状どうやって見られてますか?という部分を寄り添いながら一緒に見ていく。
保呂田さんは、クライアントやステークホルダーに今どう見られているかを把握し、将来どうつなげるかを深掘りすることで、解像度が上がると説明します。
片山さんは、結論は同じでもアプローチが逆だった点を面白がります。保呂田さんは、自己認識のずれを自分の体で例えます。
すっげえマッチョに見られるけど、俺、実は細身になりたい。でも無理じゃん。
自分視点で描く理想像。ここだけで設計するとズレが生じやすい
受け手からの現状の印象。マーケットインの起点になる
ヤンマーの高級化はなぜ刺さったのか
保呂田さんは、打ち出しと実像が「バチクソ合う」ときもあると前置きしつつ、ヤンマーの事例を挙げます。フェラーリなどを手がけたデザイナーを入れ、高級なイメージを打ち出したときの話です。
ヤンマーという会社自体がこういうイメージになりたいじゃなくて、ヤンマーを使うユーザーがそういうイメージになりたかったから(だと思う)。
保呂田さんは、単なる耕運機を運転する農家のおじさんではなく「かっこいい耕運機だろ」とやりたいからこそ、ヤンマーはブランディングを導入したのではないかと分析します。
片山さんは、それはマーケットインしながらブランディングしていることだと受けます。相手側を見ることが、マーケットインにつながるブランディングになるという整理です。
一方でアーカー教授の考え方はどうか、と保呂田さんが問います。片山さんは、まずマーケティングのフェーズがあり、それをどうブランディングに落とすかだと自身の理解を述べます。
見られたいっていうのだけを先行してやっていくと、失敗するよねっていうこともある。
ある程度マーケットがある市場に対して見せ方を作らないと失敗する、という点で2人の考えは一致します。違うのはスタート地点だけだと保呂田さんはまとめます。
誠実・刺激・洗練・堅実・強さ——5つの次元
ここで片山さんは、アーカー教授が提唱するブランドパーソナリティの5つの次元を整理します。
正直で信頼でき、家族的で温かい
大胆で活気があり、創造力が豊か
上品で魅力的、スタイリッシュ
信頼できて安全、知的
タフでアウトドア的な強さがある
この5つの軸の組み合わせで、そのブランドがどんな人かが見えてくる、というのがアーカー教授の主張です。
トヨタとテスラはなぜ同じ車なのに別人に見えるのか
片山さんは自動車メーカーを例に、5つの次元を当てはめます。トヨタは誠実さと堅実さが強く、信頼できて安全で家族的なイメージだと説明します。
テスラは刺激と洗練が強い感じで、革新的でスタイリッシュで未来志向で、同じ自動車メーカーでも全然違う人格してるよね。
さらに片山さんは、語弊があると断りつつ、トヨタとホンダのように性能がほぼ同じだと仮定した場合を考えます。
(性能が同じなら)情緒的な雰囲気を作っていかないと、差別化しにくい。
保呂田さんは前回の恋愛の例えを持ち出し、「誠実で安心できる人」か「刺激的でワクワクする人」かで人を好きになるのと似ていると応じます。片山さんも、ブランディングって結構恋愛なんだよねとうなずきます。
Tinderで学ぶ、最初のきっかけと関係の続き方
保呂田さんは、自社でよくTinderに例えて話題になると明かします。一瞬でライク・ディスライクがスワイプされる仕組みが、マーケティングやブランディングと共通するという見立てです。
ティン活の中でいかにピックしてもらえるか、ライクをもらえるかっていうところが、(マーケティングやブランディングと)すごく共通項がある。
保呂田さんは、プロフィール文一つでコンバージョンが変わると話しつつ、本題はその後だと続けます。ブランディングは、Tinderで出会った後に恋人や結婚相手になれるかの話かもしれない、という整理です。
片山さんは、人によって好きなタイプが違うように、ブランドも誰に好かれたいかで設計が変わると話します。
保呂田さんは、Tinderでは自撮りがモテないという例から、一人称の見せ方より第二人称の「どう見られているか」を意識した方が有効ではないかと投げかけます。
自然に何かに取り組んで、自然にしてる姿で魅力的ってスワイプしてもらえるんだよね。
ギャル男になってもギャルに刺さらなかった失敗談
保呂田さんの問いに、片山さんは自分自身の大学時代を失敗事例として語り始めます。海外生活が長かった反動で、日本人女性、特にギャルにモテたいという憧れがあったと言います。
逆に日本のギャルにモテたかったんですよ。だからこれは僕なりの、当時やってたブランディング。
片山さんの戦略はシンプルでした。ギャルにモテるにはギャル男になるしかないと考え、見た目から寄せていきます。
まずロン毛のストレートで、金髪にしてホワイトメッシュ入れてたんですよ。
服もサーファーチックにしつつ、勉強はしっかりするというギャップを狙っていたと片山さんは明かします。見た目はチャラいが実は真面目、というキャラ設定でブランディングしていたわけです。
しかし結果は狙いどおりにはなりませんでした。
結果としてはギャルには全くモテず。でも友達にはめっちゃなれた。
保呂田さんは、当時「片山さんが大好き」と言うギャルっぽい子や、懐いていた子がいたと証言します。実際にアプローチを受けたのは、真面目だけど殻を破りたいと思っている日本人の女の子や、日本に憧れのあるアジア人だったと片山さんは振り返ります。
ターゲティングは本当に間違っていたのか
片山さんは、この経験を「完全にターゲティングが間違っていた」失敗事例だと結論づけます。しかし保呂田さんは、第二・第三者の視点からすると違う見え方があると反論します。
周りから見た印象っていうのは、どちらかというと真面目な印象の方が強く出ていて。
保呂田さんによれば、チャラさやギャル男っぽさは一つのエッセンスにすぎず、本質の真面目さや堅実さの方が強く出ていたと言います。ターゲティングも間違っておらず、アジア人の子たちは尊敬の念から入っていたと分析します。
あの時のこうちゃんの戦略とマッチング、めちゃくちゃ良かったと思う、正直。
保呂田さんは、当時「こうすけヘッド」と呼ばれ、コミュニティでリーダーシップを発揮していた点にこそフォーカスが当たっていたのではないかと補足します。自分が思い描いた形ではなかったが、結果的には機能していた、というのが2人のたどり着いた見方です。
それでも片山さんは、ある種の失敗事例だという立ち位置を崩しません。伝えたいのは、しっかりリサーチしないといけないという点です。
自分を5次元で分析すると見えてくるギャップ
保呂田さんは、片山さんを5つの要素で勝手に分析してみせます。関西人気質と真面目さの融合、そこから生まれるリーダーシップ、少し適当だけど楽しい、といった要素です。
(片山さんは)堅実寄りです。堅実寄り。
そこにギャップが生まれるという話になり、保呂田さんは、恋愛レベルを分析するときにこの5次元理論を使うと面白いと乗り気になります。近しいチームメンバーほど見え方が違うため、良い参考になりそうだと話します。
片山さんは、パーソナルブランディングと企業ブランディングは違うと言う人もいるが、自分は一旦同じように考えた方がよい派だと述べます。保呂田さんは、掃除されていない会社を例えに出します。
玄関汚い、トイレが汚い、なんかそういうのってすごい(そういう人に見られそう)。
企業ブランディングをしたい人は、一旦擬人化し、どういう人にモテたいかを考え、さらに今どう見られているかを第三者に聞いてみる、この3つを試すとよいと片山さんはまとめます。
片山さんは最後に、リスナーへの問いを投げかけます。あなたの会社や商品を人に例えると、どんな人物か。自分ブランディングの成功や失敗の経験も、ぜひ振り返ってみてほしいと呼びかけます。
次回はブランドの言語化がテーマです。パーソナリティをどう言葉に落とし込み、メッセージとして発信するかを扱う予定だと2人は予告します。マッチョな人が少女的なトーンで話すとちぐはぐになる、という例えで、言葉のトーンとパーソナリティを連動させる大切さが語られました。
まとめ
ブランドパーソナリティは、ブランドを人に例えることで伝わり方をそろえる考え方です。この回では、5つの次元による整理と、片山さんの失敗談を通して、「どう見せたいか」より「どう見られているか」を先に問う重要性が語られました。
- ブランドを擬人化すると、社内でイメージが共有され、クリエイティブの方向性がそろいやすくなる
- アーカー教授は誠実さ・刺激・洗練・堅実さ・強さの5つの次元でブランドパーソナリティを整理する
- トヨタは誠実さと堅実さ、テスラは刺激と洗練が強く、同じ車でも別人格に見える
- 見た目だけ相手に寄せても、求められているものをリサーチしなければ的外れになりやすい
- 擬人化する・モテたい相手を考える・現状を第三者に聞く、の3つが企業ブランディングの出発点になる






