そもそも6senseは何を解決する会社なのか
今回のGrowth Radioが取り上げるのは、アメリカのインテントデータ企業6senseです。清沢さんが調べる中で見つけ、浜田さんにシェアして解説することになったといいます。
浜田さんはまず、6senseが解決する課題をダークファネル ── お客様がウェブサイトでコンバージョンする前の、誰がどこで検索・比較検討しているかが見えない領域のこと。従来は営業やマーケが把握できませんでしたという言葉で説明します。
お客様が一回ウェブサイトでコンバージョンしてくれるやつ、誰がウェブサイトにいるかもよくわかんないし、もっと言うとウェブサイトに来る前にいろんなところで検索したり、比較サイト見てるかもしれないよねみたいな。
6senseは、比較サイトでどんな検索をしたか、ウェブサイトでどんな行動をしたかといった外部データを可能な限り集めてくる会社だと浜田さんは整理します。個人単位でわかるものもあれば、企業単位のものもあります。
浜田さんによれば、これは日本でいうインテントデータにかなり近いもので、それより前から手がけている会社だといいます。
コンサル出身の女性創業者が2013年に立ち上げた
6senseの出自について、浜田さんは業界に強いプレーヤーが海外では6senseとdemandbaseの2社あると前置きします。demandbaseはMarketoの創業者が関わっているのに対し、6senseは元コンサルの人が立ち上げた会社だといいます。
創業は資金調達の開始で見ると2013年からで、事業としてはかなり早い時期のスタートです。
創業者はシスコなどを顧客とするデータ分析のコンサル会社を経営していた女性です。データ分析の仕事を、コンサルではなくプロダクトでやりたいという思いが起業につながったと浜田さんは見ています。
そのきっかけになったのが、シスコ社内での特設のデータ分析プロジェクトでした。過去の振り返りではなく、買い手の行動パターンから次にどんな企業が何を買うかを予測できないか、という仮説から予測モデルを構築したことが6sense創業につながったといいます。
清沢さんは、コンサルをしていたからこそ業務プロセスや課題がリアルにわかった点も見逃せないと指摘します。
CTOなしで挫折、そこからエンタープライズファーストへ
2013年に資金調達を始めた6senseですが、ほとんどのVCから出資を断られたといいます。清沢さんはこれを起業あるあるかと問いかけます。
浜田さんは、当時断られた理由をテクニカルな共同創業者の不在にあると説明します。
当時の理由は、そのCTOがいないと、非エンジニア企業だった時にそんなのできるんですか?みたいな感じですよね。
浜田さんは、今ならAIを使って非エンジニアでもものが作れるためそこまで見られないだろうが、当時はテクニカルバックグラウンドのある共同創業者がいないと大型調達が難しい時代背景だったと補足します。
そこで6senseは、CTOやビッグデータエンジニアリングの専門家を共同創業者に引き入れ、シリーズAの調達にこぎつけました。
PMFの道筋として特徴的なのは、創業初期から大企業を最初の狙いに置いたエンタープライズファーストの姿勢です。浜田さんはこれを、大企業コンサル出身で大企業から攻める点でPalantir ── 政府や大企業向けにデータ分析を提供するアメリカのソフトウェア企業。大企業・政府案件を起点に成長したことで知られますに近いと表現します。
当時その2013年くらいだと本当にまだSaaSが日本だと出てきた、アメリカでもやっと定着してきたみたいなところで、SMBから上がっていくっていうのが結構常識だったんですけども。
SMBから上がっていくのが常識だった時代に、創業当初からエンタープライズファーストを貫いたのは極めてレアだと浜田さんは評価します。創業者がエンタープライズからのお金の取り方をわかっていたことが大きいといいます。
清沢さんは、シスコやデルといった過去に取引のあった顧客とリレーションを作りながらプロダクトを磨き込んだ点も重要だったと付け加えます。
後発の6senseはなぜ先発demandbaseに勝てたのか
ABMプラットフォーム市場には、先駆者としてdemandbaseがいました。後発の6senseがどこで差をつけたのかが、この回の核心になります。
浜田さんによれば、demandbaseはマーケティング起点で、狙いはマーケティングのROI向上にありました。サードパーティのインテントデータをもとに、クッキーやルックアライクを使い、検討していそうな企業の人が見ている時にだけ広告を出す、というターゲティングに強みを置いたといいます。
ただしその成果は、わかりやすい一方で経営陣が動くほどの大きな成果にはなりにくかった、と浜田さんは指摘します。
これに対して6senseは、同じデータを使って売上を予測したり、今後どのセグメントが取れていくかを見通すパイプラインアナリシス ── 商談やパイプラインのデータをもとに、将来の売上や受注見込みを分析・予測すること。営業やマーケの計画づくりに使われますの方向に振り切りました。
6senseはそれらのデータを使って、その売上が予測できたりとか、今後どこのセグメントが取れていくよみたいなところが予測できるみたいな、そのパイプラインアナリシスの方に思いっきり押せていった。
結果として6senseの方が大企業アカウントを取れ、売上も大きい可能性があると浜田さんは見ています。
使っている技術が違うのかという清沢さんの問いに、浜田さんは元データはほぼ同じだと答えます。この事業は最後はデータプロバイダーとの握りだからです。
たとえば比較サイトのG2 ── 世界的なBtoBソフトウェアのレビュー・比較サイト。ユーザー登録時にLinkedInなどの情報を取得しており、どの企業がどのカテゴリを調べているかというインテントデータの供給源になっていますは、登録時にLinkedInを含む情報を取得しているため、どの企業が今CRMを調べているかを把握しています。個人情報まで出すと信頼に関わりますが、企業単位のシグナルは売りたいデータになります。
浜田さんは、プロバイダーが提供するデータに多少の差はあれ似たようなものになる以上、勝負は使い方と売り方の差分になると結論づけます。清沢さんはこれを、アウトカムの出し方の違いだと言い換えます。
マーケティング起点。インテントデータで広告のターゲティングを最適化し、マーケティングのROI向上を狙った
同じデータを売上予測やセグメント分析に活用。パイプラインアナリシスに振り切り、大企業アカウントを獲得した
6QAという概念と、10年分のデータモートは本物か
6senseのマーケ戦略として語られるのが、6QA(シックスセンスクオリファイドアカウント)という独自概念の発明です。清沢さんはこれを特徴として挙げますが、浜田さんの評価は慎重です。
スコアリングをしっかりやりますよっていうことだと思うんですけどね。マーケティング上は、まあでもそれを言葉にするっていうことで、すごく強かったのかもしれないですけども。
浜田さんは、この界隈でRevOpsを見ていても6QAという言葉自体は聞いたことがないと率直に述べ、言葉として打ち出したこと自体がマーケティングの強みだった可能性を示唆します。
次に議論になるのが、6senseのモート(競争優位の堀)は何かという点です。清沢さんは、10年以上蓄積されたBtoBの購買データを学習データとして持つことを挙げます。
浜田さんはこれを、購買予測に対して実際にパイプにつながったかという正解データを持っている点に注目します。ただし、その正解フィードバックを顧客企業やSalesforceから受け取る仕組みができているかは、自分にはわからない部分だと正直に語ります。
いろんな情報をもとに購買予測立てて、当たった当たらなかったっていうところが溜まってくるので、これがしっかり6senseの中に溜まってるとしたら、やっぱり強いモートになるんだろうなと思います。
実際のアクションは人間が行うのかという清沢さんの確認に、浜田さんはその通りだと答えます。6senseが担うのは、どの企業を攻めるかを見極める部分です。
浜田さんは、創業のきっかけとして語られるエピソードを引きます。シスコが大きな協会から受注する際、営業が会話を始める前から、創業者アマンダには数週間以内に発注があるとわかっていたというものです。この予測できる力がほぼ全てだといいます。
買収による垂直統合と、AIへの舵切り
後半は6senseのマルチプロダクト戦略に話が移ります。2021年ごろから、戦略的買収を含めてプロダクトの垂直統合を進めているのが近年の動きです。
清沢さんは、レベニュープロセスの各フェーズを補完する企業を買収していると整理します。一例が、パイプライン予測と収益モデリングを手がけるインテント領域の会社です。
浜田さんは、テクノグラフィックスやAI搭載の会話・メール自動化など、いろいろな企業を買収した時期がSaaSバブル期にあたると指摘します。そして今はむしろ、AI系の機能を自社でどんどん開発していく段階だといいます。
現状では、AIライターやインテリジェントワークフローのように、広告のクリックやメール開封をトリガーに次のアクションを自動で行う方向にも攻めていると清沢さんは補足します。
日本市場への示唆と、6senseが残した学び
最後のテーマは日本市場への示唆です。清沢さんは、そもそも6senseが日本に来るのかという前提から問いを立てます。
浜田さんは、日本で一番近い存在をセールスマーカーだと挙げます。インテントセールスという概念で圧倒的に伸び、日本で市場を作った会社だといいます。データプロバイダーとの握りが重要な事業構造を踏まえると、すでにセールスマーカーがいる日本に6senseが入るのは難しいだろうという見立てです。
清沢さんは、ユーザーベースのフォーカスや、Sansanのデータハブといった国内ソリューションとの差分を尋ねます。浜田さんは、鍵はサードパーティデータ、なかでもシグナルを捉えているかどうかだと答えます。
浜田さんの整理では、セールスマーカーはインテントデータを中心にした企業データであるのに対し、フォーカスやSansanは企業データにインテントデータが加わっている形です。フォーカスはITreviewと連携し、どの企業がどのカテゴリを調べているかを取れるようにしているといいます。
さらに浜田さんは、Sansanが持つ最も強いインテントデータとして、名刺アプリEightによる転職情報を挙げます。プロフィールを公開しているユーザーが転職して名刺を差し替えると、Sansan上に通知が来る仕組みです。
その転職シグナルっていうのはアメリカの中でも一番その営業に使えるシグナルだっていう風に言われているので、それを持っているというところになる。
浜田さんは、こうして日本の各ベンダーがそれぞれ独自のインテントデータの取り込みをすでに進めていると見ています。清沢さんも、日本独自のインテントを各社が集約してきていると受け止めます。
最後に浜田さんは、6senseから引き出せる学びを2つの角度でまとめます。1つは、ダークファネルに対してどんな種類のインテントデータがあり、先行する6senseがそれをどう価値に変えてきたかという視点です。
もう1つが、6senseがアナリティクスで勝ち切ったという点です。インテントデータは、そのままだとどれだけ売上が上がるかという話になりがちで、精度は100%にはならず、アクションを取る人がいなければ成果になりません。
そこで6senseは、予測ができる、経営からするとプランニングがしやすくなる、という観点を打ち出しました。浜田さんは、これがセールステックやマーテックの観点からも示唆があると締めくくります。清沢さんは、アウトカムをどこまで定義するかというポジショニングの問題だと応じます。
まとめ
6senseは、コンサル出身の創業者が2013年にエンタープライズファーストで立ち上げ、同じインテントデータを売上予測に転用することで先発demandbaseを追い抜いたユニコーンです。日本ではセールスマーカーやフォーカス、Sansanが各社独自のインテントデータを集約しており、6senseの最大の学びは、データそのものよりアナリティクスで勝ち切った点にあると整理されました。
- 6senseはダークファネルの外部データを集め、企業単位の検討行動を可視化するインテントデータ企業
- 創業者はシスコ向けのデータ分析コンサル出身で、買い手の行動から購買を予測する仮説が起業の起点になった
- 後発ながら、demandbaseの広告最適化に対し売上予測・パイプライン分析へ振り切って大企業を獲得した
- データプロバイダーの提供内容は似るため、勝負は使い方と売り方、そしてアウトカムの定義で決まる
- 日本ではセールスマーカー・フォーカス・Sansan(Eightの転職シグナル)が独自インテントを持ち、6senseの参入余地は限られる






