外国の人はなぜ香水をたっぷり使うのか?
阪本さんがこの回を収録したのは5月30日です。すでにかなり暑く、8月には45度くらいになるのではないかと冗談まじりに話しています。
阪本さんが気にしているのは、日本の暑さそのものより湿気の多さです。海に囲まれているせいかはわからないとしながらも、とにかく湿気がすごいと感じているそうです。
そこから阪本さんは、リスナーに1つの問いを投げかけます。街で外国の人とすれ違ったとき、香水の香りが強く漂ってくるのはなぜか、という問いです。
外国の方がめちゃくちゃ香水をたくさん使うなって思ったことないですか?割と香水の香りプンプンさせてる人多いですよね。
阪本さんは、文化的な理由もあるだろうと認めています。民族によっては「香りはパワー」と捉える文化圏もあるそうです。ただし、香水の使い方の違いは文化だけでは説明しきれない、というのが阪本さんの考えです。
阪本さんによると、香水文化が栄えたヨーロッパは乾燥した土地です。阪本さんがかつて住んでいたパリでは、ほとんどの一般住宅にエアコンがないといいます。
パリの夏は32度や33度まで上がることもあるそうです。それでも湿度が低くカラッとしているため、日陰にいればそれほど暑く感じないと阪本さんは話します。湿度の高い日本では、同じ気温でもエアコンが欠かせません。
乾燥した土地では香りが届きにくい
阪本さんはまず、香りを感じる仕組みを説明します。鼻の粘膜にあるセンサーに匂いの分子がくっつくと、人は初めて香りを感じます。
阪本さんによると、このセンサーは乾燥していると感度が落ちるそうです。逆に湿度が高いとセンサーが働きやすくなり、匂いの分子をキャッチしやすくなるといいます。
香水で有名な街として、阪本さんはドイツのケルン ── ドイツ西部の都市。18世紀にこの地で売り出された香水が「オーデコロン(ケルンの水)」の名の由来になりましたやフランスのグラースを挙げています。どちらも湿度がとても低い土地だそうです。
(乾燥した土地では)多分日本にいる時よりももうワンプッシュツープッシュ使った方がちょうどいい。なぜならね、香り感じにくいんで。
阪本さんは、乾燥がもたらす影響をもう1つ挙げています。空気がカラッとしていると、香りの分子が拡散しやすいという点です。
湿度が高いと、その空間にずっと漂うんですけども、カラッとしてるとね、シュッと風で飛んでいってしまうんですよね。
阪本さんの説明をまとめると、湿度は「香りを感じる力」と「香りが空間に残る時間」の両方に関わっています。乾燥した土地と湿度の高い日本の違いを並べると、次のようになります。
鼻のセンサーの感度が落ちるうえ、香りの分子が風で飛びやすい。香水はプッシュ数を増やしたほうがちょうどいい
匂いの分子をキャッチしやすく、香りが空間に漂い続ける。少ないプッシュでも微細な香りを感じ取れる
日本で香水のプッシュ数が少なくなりがちなのも、この仕組みから説明できるといいます。湿度の高い日本では、少ない量でも香りを感じやすいからです。
阪本さんは、日本人がきつめの香水よりもサラッとした軽い香りを好むのは、気候風土に影響されているのではと考えています。湿度の高い日本では、あっさりした香りでもしっかり漂い、十分に感じられるからです。
香道はなぜ日本で生まれたのか?
阪本さんは最後に香道 ── 香木を焚いて香りを鑑賞する日本の芸道。室町時代に作法が体系化され、香りを「嗅ぐ」ではなく「聞く」と表現しますの話に移ります。阪本さんによると、香道は世界で唯一、日本だけが持つ文化です。
他の国でもお香を焚く習慣はありました。一方で日本の香道には、香木を当てるゲームをしたり、詩を詠んでそれに合わせて楽しんだりする遊びがあります。
その香を、あの香りを聞くことによって、自分の生きている意味であるとか、そのこの時間っていうものを味わうっていう文化ね。
阪本さんは、こうした繊細な香道の文化が生まれ育ったのは、湿度の高い日本だったからだろうと話しています。微細な香りを感じ取りやすい環境が、香りを深く味わう文化を支えたという見方です。
阪本さんは、湿度とは別の理由も「勝手な予想」として挙げています。香木やスパイスは東南アジアでは比較的豊富にありますが、日本にとっては海外から運ばれてくる舶来品でした。
阪本さんの予想では、貴重な香木を少ない量でゆっくり味わううちに、日本では独自のお香文化が育ちました。それは空間に香りをつける日用品としてのお香ではなく、香りそのものを味わって楽しむ文化です。
知らんけどね。
阪本さんは、この分野を研究している人といつか話してみたいと語っています。リスナーに香りの専門家がいれば、連絡してほしいと呼びかけて、この回を締めくくりました。
まとめ
今回のエピソードで阪本さんは、外国の人が香水を多く使う理由を、文化だけでなく湿度から説明しています。さらに、湿度の高さと香木の希少さが、日本で香道のような繊細な香りの文化を育てたのではないかという見立ても示しました。
- 鼻のセンサーは乾燥すると感度が落ち、湿度が高いと匂いの分子をとらえやすくなる
- 乾燥した空気では香りの分子が風で飛びやすく、湿度が高いと香りが空間に漂い続ける
- ケルンやグラースなど香水で有名な土地は湿度が低く、香水を多めに使うのが合っているという
- 日本人が軽い香りを好むのは、気候風土の影響ではないかと阪本さんは考えている
- 香道が日本で育った背景として、阪本さんは湿度の高さと舶来品である香木の希少さを挙げている


