同期4人が甲子園カレーで思い出せなかったもの
冒頭は、MCの宮沢賢一さんが、社会部の渡辺洋介さん、ブランド企画部の阿部朋美さん、文化部の森本未紀さんという同期4人での収録を紹介する場面から始まります。
おつまみとして登場したのは、阿部さんが甲子園から持ち帰った「甲子園カレー」でした。阿部さんはブランド企画部の一員として、夏の甲子園を朝日新聞社も主催していることを広く伝える仕事に携わっています。
世の中の人たちってまだそこまで知られてないというか、特に若い皆さんを中心に、朝日新聞が主催してるっていうのがまだなかなか届いてない
阿部さんは今年、大会名しか書かれていなかった球場の装飾に「主催 日本高校野球連盟と朝日新聞社」の表記を加えたり、社長のポロシャツの袖に社名を入れたりと、世界観を壊さない範囲で主催者の存在を示す工夫を行ったと説明します。
4人は久しぶりに甲子園カレーを口にしますが、当時の記憶は思ったほど蘇りませんでした。前回訪れたのは宮沢さんが7年前、渡辺さんと森本さんは18年前だといいます。
思った以上に想起されなかったね、当時を。やっぱカレーを普段食べ過ぎてて
出社したら、自分の会社が「倒産」したことになっていた話
最初の記事は、渡辺さんが紹介する不思議な事例です。ある会社が、実際には倒産していないのに、AIによって倒産したことになっていたという話です。
平日の朝に会社に行ってみたら、自分の会社が倒産していたことになっていたっていう、不思議な話をまず紹介したい
舞台は、岩手県矢巾町にある岩手繊維という繊維会社です。月曜の朝に出社すると、取引先から「お宅の会社、倒産したの?」という電話が相次いでいました。
原因はサイバー攻撃でもデマでもなく、Googleの検索で起きた「ハルシネーション」でした。渡辺さんによれば、GoogleのAI検索が「事業停止」「特別清算開始決定」という誤表示を出していたといいます。
誤表示の背景として疑われたのが、岩手日報が直前に報じた別会社の特別清算の記事です。岩手繊維の専務は「AIが混同したのでは」とみており、専門家も、見出しの情報だけを読み取ったAIが岩手繊維と誤認した可能性があると指摘しています。
AIが違う会社の特別清算開始決定を、主語をすり替えて間違えて表示しちゃったってことかな
なお岩手繊維は倒産しておらず、収録時点でも通常どおり稼働していると宮沢さんは補足します。
なぜAIは倒産していない会社を「倒産」と表示したのか
なぜこうした誤りが起きるのか。渡辺さんは、いくつかの理由を挙げます。
まず、岩手日報の記事が、見出しには特別清算となった会社名を書かず、有料域の本文で初めて具体名を明かす書き方だった点です。専門家は、今回、見出しの情報だけを読み取ったAIが岩手繊維のことだと誤認した可能性があるとみています。
また専門家によると、GoogleのAI検索は、利用者が入力したキーワードでウェブ上を検索し、上位数件の結果を生成AIに読み込ませて要約する仕組みだといいます。
今回のように、会社名などの重要な情報が有料域にある場合、AIが正しい情報に到達できず、誤認につながる可能性があると渡辺さんは説明します。
一方で、宮沢さんは報道機関側の事情にも触れます。取材にはコストがかかり、すべてを無料で読ませるわけにはいかない。しかし記事を有料域に置くほど、AIは見出しだけを頼りに誤認しやすくなるという難しさがあります。
阿部さんは、正しい記事という報道機関の重大なコンテンツが、AIによって勝手に要約されることへの懸念を語ります。
検索窓に(検索用語を)入れて、AIによる要約を見れば、わざわざニュースサイトとか出典元とかに行かずに、そこで終わってしまうっていうことがすごく増える
デジタル版のコメントプラスでは、東京大学大学院の鳥海教授が、間違えたAIに非があることは疑いようがない一方で、正しい情報を新聞社が囲い込む状況も情報空間に大きな影響を及ぼしうると指摘していると宮沢さんは紹介します。
AIに「タダ乗り」される報道と、その先の付き合い方
話題は、AIによる情報収集を報道機関がどう受け止めるかへと移ります。宮沢さんは、AI以前にも人間による「まとめサイト」が根拠不明な情報を並べていたと指摘し、情報のタダ乗りという構図は以前からあったと振り返ります。
芸能取材を担当する森本さんは、俳優などの事前情報をネット中心に調べると話します。
阿部さんは、取材には人件費も取材費もかかり、記者を育てるにも膨大な時間とコストがかかると強調します。Googleの要約はそのコストを加味せず、ネット上の情報を広く拾うだけだといいます。
この記者を育て上げるにも大量の時間とコストがかかっていて、Googleの要約っていう前提は、まあそこのコストは加味しないわけですよね
阿部さんは、朝日新聞社もAI企業を相手取った裁判を抱えており、AIに学習させないブロック技術もあると説明します。さらに、従来のSEO対策に加え、AIに紹介されやすくするための対策への関心も高まっていると語ります。
検索結果の上位に表示されるよう文章や裏側のコードを最適化する
AIに学習・紹介されやすいように情報を整えることが重視される
渡辺さんは、コストをかけて裏付けを取った情報が簡単に要約されると、自社サイトに読者が来なくなり、新聞社のビジネスモデルが揺らいでしまうと語ります。これは世界中の報道機関が直面する問題だといいます。
情報が正しいっていうことに価値があるっていうことを、もう私たちは伝えていくしかないよね
宮沢さんは、正しい情報を正しい形で届けることが試されていくと受け止めます。阿部さんは、朝日新聞デジタルに書くだけでは届かず、届け方そのものを考える必要があると語りました。

熊本地震で乱造された災害デマとインプレ稼ぎ
2つ目の記事も、AIが関わる話題です。渡辺さんは、7月28日に震度7を記録した熊本の地震を取り上げます。10年前の熊本地震と比べ、災害デマがAIによって進化した形で現れたといいます。
10年前は「動物園からライオンが逃げた」というデマが象徴的でした。今回は象徴的な1つがあるわけではなく、数百万回の閲覧を稼ぐ投稿が乱造されているのが特徴だと渡辺さんは説明します。
今回確認されたのは、地震を予知したという主張や、人工地震だという科学的根拠のない投稿、過去の地震被害を今回の地震と結びつけた投稿などです。また、『イオンモール熊本の爆発の瞬間』などと動画が見られるとにおわせ、TikTokへの登録を促す投稿も散見されました。生成AIの発達によって、真偽を見分けにくい画像や動画が大量に作られるようになっていることも課題になっています。
かなり生成AIの精度が上がっていて、すぐにこれが本当に偽画像なのか、あるいは本当の事実なのかっていうのがなかなか見分けがしづらくなってくる
渡辺さんは、地震を予知したと主張するアカウントについて紹介します。地震の数時間前に『九州で大きな地震が起きる』と広い範囲を示す予測を出し、地震発生後には『予測が当たった』と主張していたといいます。
さらに、注目を集めた投稿に便乗する短文を次々と載せ、インプレッションを稼ごうとする投稿も多く見られたと説明します。
インプレッションの数に応じて、それがお金になっていく、収入になっていく。デマだとかによって注目を集めればそれがお金になる
宮沢さんは、15年前の東日本大震災の頃には収益化の仕組みがなく、こうした投稿は自己顕示欲や承認欲求に基づくものだったのではないかと振り返ります。当時は電波が通じない場所も多かったといいます。
また、2025年9月に総務省の有識者会議が、災害時のSNS収益化停止の検討を中間報告に盛り込んだことを過去記事から紹介します。ただ、どのような情報を対象とするかが定まらないなどとして、法制化に向けた動きは進んでいません。
真偽を確かめる難しさと、災害時の情報との向き合い方
記事は地震発生から24時間以内に用意されていました。渡辺さんによれば、災害があればデマが出ることは経験則からわかっており、現地取材チームとは別に、SNS上の偽情報を早めにキャッチして打ち消すSNS班が立ち上がる体制になっているといいます。
火消しは、広く拡散してからでは難しくなります。そこで防災心理学を専門とする兵庫県立大の木村教授に、どう対処すべきかを取材したと渡辺さんは説明します。
宮沢さんは、真偽を確かめること自体の難しさを問いかけます。ライオンが逃げたかどうかは動物園に確認できても、電話が寸断されればそれもできない。家が崩れて中に人がいるという情報も、現場に行かなければわからないと語ります。
これが嘘なのか本当なのかもわからないけど、嘘かもしれないし、本当かもしれない。今自分でも何言ってるかよくわかんない
渡辺さんは、デマの判定がグラデーションになっていると説明します。科学的根拠がないものか、根拠が薄弱なものか、完全に生成された嘘か。真っ黒からグレーまで濃淡があり、認定の難易度が上がっているといいます。
木村教授は、衝撃的な投稿を見た時はいったん落ち着き、自治体や省庁、報道機関の発表を確認して、投稿の裏付けを取る必要があると注意を呼びかけています。
渡辺さんは木村教授への取材を踏まえ、私たち自身も『災害後には偽・誤情報がSNS上に飛び交う』とあらかじめ認識しておくことが大切だと紹介します。そうした心構えが、パニックのままシェアや『いいね』をして、自らデマを広げる側になることを少しでも防ぐといいます。
宮沢さんは、真っ黒なデマは見分けやすい一方、事実を一部だけ混ぜた投稿は見極めが難しいと指摘します。例として、倒壊した家の写真は本物でも、『中に飼い犬がいる』という部分だけが嘘だった場合などを挙げました。
何割か事実を混ぜる、それによって真実であるかのようにこう見せていく。その意味でも見極めの難易度が上がっている
阿部さんは、虚偽の救助要請をめぐって過去に検挙された事例にも触れ、偽・誤情報が氾濫するなか、パニックに陥りやすい災害時にSNSとどう向き合うかが課題だと語ります。
渡辺さんは、確かな情報に触れようとすればタイムラグが出るが、SNSは早くても真偽がわからないと整理します。誤情報に巻き込まれないためには、遅くても公的機関や報道機関の情報にアクセスすることが優先だと語りました。
危機の時こそ来てくださいと。確かな情報をしっかりお伝えしますっていうふうな届け方もさらにしていかないといけない
この話題は文化芸術の世界にもつながります。森本さんは、小説や映像の公募で、AIを使ったかどうかすら分からない問題が起きていると指摘します。応募要項でAI作品を禁じても、受け手側がどう規制するかは難しいといいます。
AIの利用にも濃淡があります。プロットまで生成させた場合と、資料集めだけに使った場合をどう扱うか。真偽の判定と同じく、線引きの難しさが文化芸術にも及んでいると森本さんは語りました。

タコパといえば?たこ焼きに迫るメキシコの国民食
最後は、渡辺さんが紹介する「タコパ」の話題です。4人の世代ではたこ焼きパーティーを指しますが、20代30代では「タコスパーティー」を意味する人が出てきているといいます。
タコパといえばタコスパーティー、たこ焼きじゃなくてタコスだというような人が出てきている
きっかけは、メキシコ留学経験のある30代の後輩が、タコパといえばタコスがトレンドだと話し始めたことでした。今年はワールドカップがアメリカ・カナダ・メキシコの共催で、メキシコが身近に感じられる時期でもあります。
渡辺さんは、SNS映えする見た目や手軽さから人気が広がっていると聞き、メディア班の総力を挙げてタコスを取材したと語ります。その成果が、7月10日夕刊1面の記事になりました。
渡辺さん自身はタコスパーティーの経験がなく人気を疑っていましたが、阿部さんと森本さんはレストランが増えていることを実感していました。ランチの選択肢の一つになりつつあるといいます。
渡辺さんは、東京・小平でメキシカンタコスの店を営む「タコスナビゲーター」を名乗る吉川さんを取材します。吉川さんはタコスを一言で「手巻き寿司」と表現しました。
データも人気を裏づけます。食べログに掲載されたタコス店の数は5年で3.6倍。クックパッドでは、今年5月にタコスの1カ月あたりの検索数が、初めてたこ焼きを上回りました。
記事では、人気の理由の一つに、2025年ごろから国内メーカーによるトルティーヤの製造・販売が増え、多くのスーパーで買えるようになったことを挙げています。収録では、『タコスの素』などの関連商品も身近になったという話が出ました。阿部さんは『カルディでは一棚全部メキシカンになってる』とも話します。
日本ならではの進化も見られます。しめサバやあん肝を入れ、唐辛子ではなくゆずこしょうを使った和風タコスも登場しているといいます。
独自のさ、日本のタコス文化に進化しつつあるんだね。ラーメンとかもそうじゃない。中国から入ってきて、もう日本独自の横浜家系になったりとか
さらに渡辺さんは、タコス用のトウモロコシを国内で作る動きも紹介します。日本ではほとんど作られていないタコス用のトウモロコシを、町おこしのため長野県の村で栽培する取り組みがあるといいます。
阿部さんは、おしゃれな内装や手頃な価格、薄いビールとの相性の良さも人気の理由だと語ります。宮沢さんもタコスへの関心を深め、4人でタコスパーティーをやろうと盛り上がりました。
阿部さんは、娘がサマースクールでタコスを折り紙で作ってきたことを紹介します。おにぎりではなくタコスが子どもの制作物になるほど、生活に入り込んでいるといいます。

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まとめ
この回は、GoogleのAI検索による企業情報の誤表示や、災害時に相次ぐ偽・誤情報を通じて、「正しい情報」をどう届け、見極めるかを考える内容でした。締めのタコスの話題では、身近な食文化の変化が語られ、明るく着地しました。
- GoogleのAI検索が、倒産していない岩手繊維について『事業停止』『特別清算』と誤表示した。専門家は、会社名が有料本文にあり、見出しだけを読み取ったAIが別会社の情報と混同した可能性があるとみている
- 今回のように重要な情報が有料部分にある場合、AIが正しい情報に到達できない可能性があり、報道機関にはAIへの情報提供やコンテンツの対価をどう考えるかという課題がある
- 熊本地震では、地震予測の的中をうたう投稿や人工地震説など真偽不明の情報が相次いだ。生成AIの発達により、偽画像や動画の見極めも難しくなっている
- 災害時は偽・誤情報が広がることを意識し、自治体や省庁、報道機関の発表を確認して、裏付けの取れない投稿をむやみに拡散しないことが重要
- 食べログでタコスを提供する店は5年で約3.6倍に増え、クックパッドでは今年5月にタコスの月間検索件数が『タコ焼き』を初めて上回るなど、人気の広がりがデータにも表れている







