議員選びだけではなかった中間選挙
野上さんによると、米中間選挙では民主党が上下両院を奪還しました。トランプ大統領側の共和党内では、敗因をめぐる議論が相次いでいるといいます。
野上さんは、バンス副大統領がイラン戦争を挙げて「我々が敗れた理由は戦争だ」と述べたと紹介しました。デサンティス・フロリダ州知事は、共和党が直面したのは絶滅級に限りなく近い事態だと表現したそうです。
一方で野上さんは、有権者が選んだのは連邦議会の議員や州知事だけではないと指摘します。全米各地で40件を超えるデータセンター関連の提案が住民投票にかけられたといいます。
番組では前週、AIデータセンターに巨額のお金がかかる話を取り上げていました。野上さんは、今週浮かび上がったのは「そもそも地元が作らせてくれるのかという新しい問題」だと話します。
電気・水・騒音への懸念と、知事選の結果
野上さんの説明では、ChatGPTなどのAIを動かす巨大なデータセンターは大量の電気を使い、冷却には水も必要です。建設予定地では、電気料金や水資源、騒音などへの懸念が強まっているといいます。
野上さんが挙げたのは、クイニピアック大学が9月に実施した世論調査です。地元へのデータセンター建設に反対する有権者は72%で、3月の65%から増えたと紹介しました。
今年4月から6月だけでも、少なくとも45件、総額およそ10兆7000億円相当の計画が地元の反対で影響を受けているそうです。
象徴的な例として野上さんが紹介したのが、ノースダコタ州の人口800人の町ハウドです。30億ドル(およそ4737億円)規模のデータセンター計画が住民に公表されてから、1か月もたたないうちに工事が始まったといいます。
野上さんによると、住民の1人は「人口800人の地域で30億ドル規模の決定を3週間で下すべきではない」と語ったそうです。
野上さんは、こうした反発が今回の選挙で実際の政治を動かしたと見ています。AIデータセンターの大拠点であるテキサス州では、開発の凍結を訴えていた民主党のジーナ・ヒノホサ候補が州知事選に勝利したといいます。
テキサス州については、2028年に稼働予定の米国のデータセンター容量のおよそ3割を占めるとの分析もあると野上さんは説明します。オハイオ州やジョージア州でも、規制強化を掲げた民主党候補が勝利したそうです。
その結果、米国で計画されているAIデータセンターの追加容量のおよそ半分が、より厳しい審査や地域の反発にさらされる可能性が出ていると野上さんは話しました。
アジア市場で売られたAI・半導体株
野上さんによると、影響はアジアにもすぐ波及しました。開票が進み大勢が判明した4日の韓国市場では、KOSPIが一時4%下落し、サムスン電子やSKハイニックスが売られたといいます。
日本でも5日、TOPIX全体は上昇した一方で、AI・半導体関連には売りが続き、アドバンテストは一時12%安になったそうです。
背景について野上さんは、米国でデータセンター建設の動きが鈍れば、半導体やメモリーへの需要も後退するかもしれないという警戒心だと説明しました。
ただし野上さんは、建設に歯止めがかかればビッグテック同士の際限のない設備投資競争が和らぐとの見方もあると紹介しています。そのうえで「AI株すべてに悪材料という単純な話でもなさそうです」と述べました。
まとめ
野上さんは、水、電気料金、地域住民、選挙という要素を挙げ、世界最先端のAIが「誰が利益を得て誰が負担するのか」という身近な問題にぶつかっていると話しました。AI投資には、半導体やお金、電力に加え、住民の同意という制約が加わりつつあるというのが野上さんの見立てです。
- 野上さんによると、米中間選挙では全米で40件を超えるデータセンター関連の提案が住民投票にかけられた
- 野上さんの紹介では、テキサス州で開発凍結を訴えた民主党候補が知事選に勝利し、米国の追加容量のおよそ半分が厳しい審査や反発にさらされる可能性がある
- 野上さんは、アジアのAI・半導体株が売られた一方、設備投資競争が和らぐとの見方もあり、AI株すべてに悪材料とは限らないと説明



