値引きした案件は、そもそも受けるかどうかの判断が命
まず前提として、めっちゃ値引きをされたという状況で、私だったらよっぽどその状況を受け入れられるかどうかの見極めがないと、たぶん受けないんです。
なんでかというと、そもそも収益的にダメになるからなんですね。
制作会社の利益の作り方はいろいろありますけど、当たり前ですが給料そのままの金額で受注するわけにはいかないんです。パソコン代も電気代も家賃代もあって、いわゆる販管費 ── 人件費以外の経費や管理費のことと呼ばれるところも稼がなきゃいけない。
だから俗に言う、給料の3倍ぐらいの粗利がないとダメだよ、みたいな話になるわけです。
その中でめっちゃ値引きをして、もし赤黒トントンみたいな状態だったら、何かあった時点でもうアウトなんですよね。
だから今回のこうたろうさんの件も、一人の社員としての判断だとは思うんですが、その時点で社長に判断を投げるしかないと私は思っています。
「こんだけ言われてますけど、追加で無茶を言われたら揉める可能性があります。受けますか、受けませんか。僕には判断できないです、この値引きは」と。
値引きした側とされた側で、思いが真逆になる
何がいちばん怖いかというと、値引きをした案件って、依頼した側と受けた側で思いがきれいに真逆になるんです。
受けた方はこう思うんですよ。こっちは値引きしてるんだと。あなたたちの要望に合わせて我慢してこの金額で受けてるんだから、無茶なことは言わないよね、と。
ところが依頼した方はこうなるんです。値引きは頼んだかもしれないけど、こっちにしたらまあまあの金額を払ってるんだよ、出せる限界ギリギリを出してるんだよ、と。
だからいいものを作ってもらわなかったら困るんだ、みたいな話になる。
これ、何が起きるかというと、向こうの期待とこっちの思いの差がいちばん開いちゃうんですよね。
向こうは「なけなしのお金を出してやってるんだ」、こっちは「散々値引きして稼働ギリギリで頑張ってるんだから我慢しろよ」。両方がそれを思ってる時点で、先がうまくいくはずがないんです。
揉めた瞬間アウト。もう絶対に、です。
そのうえで依頼側は、なけなしのお金を出してるからこそ、ちょっとでもいいものを、ここはこだわりたいとなる。気づいたら費用的に厳しいですと言った瞬間、金のことばっかり言うなや、ものづくりってそうちゃうやろ、と精神論になっちゃうんですね。
いや、精神論で言われても、こっちだってちゃんと給料もらわなきゃいけないので。完全に平行線か、下手したらねじれの関係になっちゃうわけです。
断るなら、丁寧に「ごめんなさい」を言ってもらう
私自身、いちばんでかい時で39%とか42%ぐらいの値引きを言われたことがあるんですよ。御社との競合がこれぐらいの金額なので、と。
それはわかるんですけど、40%の値引きってもう値引きじゃないよね、ほとんどまともに作れないよね、というレベルなんです。
こういう時は、断られる前提で「これが限界です」ということをものすごく丁寧に伝えるようにしています。
競合になっているところには、その金額でできる何かしらの理由があるわけですよね。私にはわからないけど。
だからうちがそれをできない理由はこうです、うちがこの金額をいただいているのはこういうナレッジやこういう実績があるからです、ということをちゃんと伝える。
そのうえで「これぐらいの金額しかできないので、そもそもテーブルに乗らないですよね。だったらしょうがないと思ってます」ということを、直球で言わずにすごく丁寧に伝えて、向こうに「ごめんなさい」をしてもらうようにするんです。
仮に私の判断で受けてしまったら、現場のディレクターやクリエイターが辛くて死ぬはずなんですよ。
要望をどんどん受けて来いとなれば当然稼働は増える。利益率を真面目に考えたら絶対赤字じゃん、この仕事、とみんな思う。やってる意味あるんだっけ、となるんですよね。
もちろん、その会社さんのネームバリューがどうしても欲しい、みたいなケースはあります。私が昔ちょっと関わった案件で、ある会社が3億で受けた仕事を、コンペで別の会社が0円で出していた、なんて話も聞いたことがありますから。
でも、そういう特別な事情がないなら、やっぱり最後は社長に判断してもらって、この金額ならここまでしかできません、と握ったうえで受けるかどうか、なんじゃないかと思います。
だから、こうたろうさんは我慢したほうだと思う
請負って、究極的には百万だろうが五百万だろうが一千万だろうが、小さな見積もりの積み上げなんですよ。
百万より一千万のほうが利益率がいいということは絶対なくて、工夫で残る金額の絶対値が多くなる可能性があるだけなんです。
百万で工夫して1割残れば10万、一千万で工夫して1割残れば100万。絶対額は違うけど、基本は積み上げでしかない。だから値引きをしたら、乱暴に言えばできないんです。
そう考えると、今回のこうたろうさんの件は、社長判断でやるべきだった話だったんじゃないかなという気がします。
そのうえで、おハガキに書かれていた通りのやり取りだったとしたら、私はちゃんと我慢するところまで我慢されたんじゃないですか、と思うんですよ。
だって向こうが「金のことばっかり言うなや、上司連れてこい」と言ったわけでしょう。それは向こうも言っちゃダメだと私は思います。
こうたろうさんが先に手を出したとか、大粗相をしたとかならわかるけど、これはもう仕事だ、できないよ、という話なんです。
どんなに私たちがいいものを作ることに命をかけていても、本当に命をかけることになっちゃいますからね。大変だったと思います。お疲れ様でした。
まとめ
値引きした案件が揉めるのは、私の経験上、起きるべくして起きます。だからこそ、揉める前に社長へ判断を投げておく。いまの時点で私はそう考えていますが、みなさんの現場ではどうでしょうか。
- めっちゃ値引きした案件は、そもそも受けるかどうかの見極めが命
- 値引きした側とされた側で思いが真逆になり、期待と現実の差がいちばん開く
- 断るなら丁寧に理由を伝え、向こうから「ごめんなさい」をしてもらう
- 一社員で抱えず、リスクを説明したうえで社長に受注の判断を委ねる






