事業会社に「小綺麗な企画書」はほぼない
僕は今、受託の会社をやっています。
だからセミナーでも、発注会社さんに向けて「こういう企画書を出しましょう」というセオリーを話すんですね。
表紙があって、前提があって、体裁を整えて、みたいな話です。
でも事業会社にいる『toksato』さんに聞いてみたら、ちゃんとした企画書は全体の1割もないと言うんです。
じゃあ残りの9割は何かというと、「なんかいい感じなんでやりたいです」くらいの3ページや5ページのもの、もはや口頭で終わるものもある、と話されていました。
理由はシンプルで、毎日一緒に働いていて、対象のサービスもお互いにわかっているから。
「こういうツールがあって、こうなるんで入れますかね」「いいけどいくらなの?」「月額50万ぐらいですかね」「いいんじゃない?」。
そんなやり取りで進むこともある、というんですね。
ただし、月間数千万セッションの通販サイトに機能を追加するような、影響の大きい話は別だそうです。
その時は「こういうインパクトがあって、リスクも考えてこうやりたい」という企画書を出す、と話されていました。
何十ページの企画書は、社内では読まれない
これは受託の僕らからすると、ちょっと衝撃でした。
『toksato』さんいわく、何十ページもある企画書なんて、社内ではまず読んでくれないんだそうです。
上層部は「いいからなんか言えよ」という感じで、つまらない顔をされてしまう、と。
そこで思い出したんですが、僕も役員プレゼンをすると、喋り始めた瞬間に偉い人は最後のページを見てるんですよね。
金額とスケジュールのところです。
こっちは結構頑張って喋ってるんだけど、この年になったらその気持ちもわかるなと思いながらやってます。
『toksato』さんは、事業会社の企画は「儲かるんかい」という視点がすべてだと話されていました。
そろばんを完璧に叩かなくてもいいけれど、儲かる匂いをさせないと全然通らない、と。
正しいことが通るわけじゃない、というのは、受託にいた僕にも刺さる言葉でした。
散々考えた企画を、パッと捨てられるか
プレゼンで前提や問題点を説明する場面って、ありますよね。
僕もセオリーとして一応入れます。「なんでその企画になったんだ」と言われたら困るので。
でも実際に喋ると、だいたい聞いてないんですよ。
だから僕は、相手がうーんという顔になったら「ここは皆さんわかってますよね、次行きましょう」と言えるかどうかを大事にしてます。
これ、受託の人ほど怖がる人が多い気がするんですよね。
散々考えて書いた企画書を、パッと捨てられる覚悟を持っておかないと、聞いてる側もつらいんです。
うちのメンバーがやってる時も、横で心臓が握りつぶされる思いになることがあります。そこは飛ばしていいよ、って。
『toksato』さんは、事業会社ではもっと露骨だと話していました。
相手が身内だから表情を隠さない。だから役員に「これはやばいな」と思ったら、勇気を持って捨てる。
「すいません、これ足りないですね。仕切り直してもいいですか」というくらい潔くないと生き残れない、と。
何のためにプレゼンしているのか。合意形成のためであって、ペーパーを読むためじゃないんですよね。
企画書は最後の総仕上げで、企画は日々始まっている
資料が短くていい、というのは裏を返すと日々の観察が大事だ、という話も印象的でした。
『toksato』さんは、社内で上司が今何をやっているのかを見ていると話されていました。
「よくわからないプロジェクトが動き出したな」と気づいたら、カウンターで改善策を用意しておく。
エレベーターで一緒になった時に「そういえばあの件なんですけど」とジャブのように打っておく。
企画書は最後の総仕上げであって、企画を進めるのは日々から始まっている、という言い方をされていました。
これ、制作会社との大きな違いだなと思うんです。
受託は、こっちから営業するか、向こうから指名されるか。とにかく問い合わせという儀式があって、よーいドンで始まる。
でも事業会社にいると、近しい部署や上司の動きを見ておかないと、「お前なんか考えろ」と言われた時点ではもう遅い。
いや、そもそも言われないんだ、と『toksato』さんは言っていました。
ある程度のお題と、こいつなら考えられるという信頼があって渡される。そしてそれが一番面倒なパターンだ、と。
似ているのに真逆、僕がやっと腑に落ちた向き不向き
受託でウェブディレクションを一通りやった人が、事業会社に行きたいと言うことはよくありますよね。
でも、そこにはすごく大きなギャップがあるんです。
『toksato』さんは6、7年前に事業会社へ移って、それでも1、2ヶ月は混乱したと話されていました。
高度なディレクションをしてきた人ほど「ディレクションとはこうである」が強すぎて、丁寧に議事録を作ったりして、フィットせずに辞めていく、と。
「事業会社の仕事のスタイルは事業会社なんだけど、感情は受託なんです」という彼の言葉が、すごく残りました。
自分のやりたいことは特にない。でも目的を与えられたら、いくらでも考える。だから両方で生きていける、と。
ここで僕が思うのは、ウェブの人って作ることが好きで始まってる人が多いということです。
僕もそうで、作るのが楽しくてやってたら仕事になった口です。
だから経営の視点なんて、持ちたくもないという人も多いんじゃないかと思うんですよね。
でも『toksato』さんは、事業会社で伸びるには当事者意識がない人は絶対に伸びない、プチ経営者じゃないと、と言い切っていました。
会社は「ニンジンを切る道具がほしい」だけなのに、こっちは日本刀を作ってしまう。そのギャップだ、という例えが妙にしっくりきました。
僕は自分では制作寄りだと思っています。事業会社側に行ったら、たぶんストレスになりそうだなと。
でも今回話していて、事業脳と受託脳という向き不向きが、やっと自分の中ではっきりした気がしたんです。
まとめ
受託と事業会社は、似ているようで真逆。どちらが上でも下でもなくて、自分がどっちの脳みそなのかを知っておくと、無用に不幸にならずに済むのかなと、今は思っています。皆さんはどっち寄りでしょうか。
- 事業会社ではちゃんとした企画書は1割もなく、多くは口頭や数ページで進む
- 何十ページの企画書は社内で読まれず、「儲かる匂い」がないと通らない
- 企画書は最後の総仕上げで、日々の観察とジャブが本当の企画の始まり
- 事業会社は仕事のスタイル、受託は感情。自分の向き不向きを知っておく






