段取りの失敗は、痛い目を見ないと身につかない
まず正直に言うと、若い頃の僕はこの方と同じような失敗をしょっちゅうやってきました。
デザインの戻りを待つ間にエンジニアを遊ばせてしまうとか、素材の支給依頼を出し忘れて最後に全員へ無理をお願いするとか。もう、あるあるなんです。
だから経験を重ねれば身につくか、と聞かれれば「身につくと思います」とは答えます。
ただ、その「自然に」というのがくせ者で、自分で失敗して、やっちまったなと思ったからこそ経験になる、んですよね。
もし先輩がきれいにフォローしてくれて、失敗にすら気づかないままだとしたら、なかなか身につかないんじゃないかと思います。
ライオンが我が子を千尋の谷に突き落とす、なんて話がありますけど、人間って痛い目を見ないと覚えないんですよ、結局は。
「気づいたら全部揃っている」の正体はWBS
この方が書いていた「先輩の案件はいつも気がついたら全部が揃っている」という一文、ここに大事なヒントがあると思っています。
先輩はきっと、どこかで「これ用意しといてください」と先回りしているわけですよね。それを段取り力と呼べば、その通りです。
でも僕は、これを勘や段取り力だけの話にしたくないんです。
防ぐ手段として一番わかりやすいのは、やっぱり『WBS』の話だと思います。業務分解がちゃんとできているかどうか、に帰結するんですよね。
このタイミングでデザイナーに確認を取る、このタイミングでクライアントに素材の連絡をする。それがWBSの中に書かれていれば、もう「やらなきゃいけないタスク」なんです。
気づいたから先読みして一言言った、じゃなくて、最初からタスクになっている。つまり、勘に依存しているから若手はできなくて、キャリアがある人はできる、という状態は、僕は会社の進め方としてあんまり良くないと思っているんです。
言ってしまえば属人ですからね。
生成AIに、先輩の知見を食わせる
昔は、このWBSをどう業務分解するか自体が経験でした。タスクの細かさや数の加減が、まさに経験によるものだったんです。
でも最近は、そこを生成AIがやってくれるんですよね。
「これぐらいの金額で、こういう内容のプロジェクトです。WBSのたたきを作ってください」と言えば、大体はちゃんと作ってくれます。
さらに一歩進めるなら、過去に先輩が作ったWBSや、『Jira』や『Redmine』みたいなツールに溜まっている情報を生成AIに食わせるんです。
そうすると、その会社の中の知見が乗った、先輩たちがやってきた業務分解に近いものが出てくると思うんですよ。
もちろん、お客さんの巻き込み力みたいなところは、どうしても属人になります。話しやすさとか、このタイミングでスッと一言入れるとか、そういうのは残る部分ですね。
でも抜け漏れをなくすとか、先輩の知見を使うところは、もうガンガンAIを使った方がいいと思っています。
僕自身、自分のWBSを生成AIに読み込ませて、うちの若手が失敗しないものが作れるなら、もうそれでいいと思っている方なので。ナレッジはどんどん人に提供するべきだと思うんですよね。
もう一人、生成AI前提で入社した新卒の不安
同じ週に、もう一人若手の方からお便りをいただきました。新卒でエンジニアになったのに、初日から生成AIをゴリゴリ使うのが前提で、プログラミングのスキルが上がっている実感を持てない、というお話です。
この悩み、すごくよくわかります。悩ましい問題だなと思いました。
僕は『Windows95』が出た頃にパソコンを触った世代なんですけど、当時も「営業の計算は電卓でやるもんだ、Excelで数字を打ち込むなんて営業してる気がしない」と言う人がいたわけですよ。
いまの状況って、それに近い気がしているんです。
コードを手で書くことに憧れて勉強してきたのに、書かなくていい時代になってしまった。気持ちはよくわかります。僕もそういうエンジニアになってみたかったので。
でも今は残念ながらそうじゃなくなったので、頭をシフトチェンジできないと、変化できないエンジニアになっちゃう、と思うんです。
空白地帯の世代にならないために
一方で、AIを使いこなすエンジニアが生き残る、という話もよく聞きますよね。それって結局、要件定義や設計といった上流工程ができるかどうか、に至るわけです。
ソースコードをゴリゴリ書く仕事は、今後どんどん減っていくと僕も思っています。
ただ、上流工程ができる人って、プログラムがどう動くのか、DBとは何か、といった仕組みがわかっている人なんですよね。
僕が怖いと思っているのは、そこが空洞化することなんです。
手で書いてきた世代は、実感があるから生成AIに正しく聞ける。でも、いきなり生成AIしか使わせてもらえない世代は、上流工程を肌感を持って身につける機会がないまま、空白地帯に立たされてしまうんじゃないか。
だから新卒の方には、手でプログラムを書くことは正直もう諦めてもいいと思う、と伝えました。
その代わり、プログラムは何を命令すれば動くのか、その仕組みをもっと突き詰めて勉強してほしいんです。
世の中がドラスティックに変わった前提で仕事に向き合う。そのタイミングで新卒になったことを、運がいいと呼ぶか悪いと呼ぶかはご本人次第ですけど、僕は正直、羨ましいなと思うところもあります。
まとめ
先読み力は経験で身につくのか。僕のいまの答えは、経験でも身につくけれど、それを勘に任せず、WBSと生成AIで再現できる形にした方がいい、というものです。若手の失敗も、AIの前提も、結局は「仕組みと原理をどこまで自分のものにできるか」に行き着く気がしています。
- 段取りの失敗は、自分で痛い目を見てはじめて経験になる
- 「気づいたら揃っている」は勘ではなく、WBSに落とし込める
- 過去のWBSや先輩の知見を生成AIに食わせれば、属人化は減らせる
- コードを手で書く時代は終わっても、仕組みを理解する重要性はむしろ増す



