「逃げ切れた人」という言葉が刺さったという声から
35歳のただまささんという方から、こんな相談をいただきました。
「仕事でもキャリアが上がればプレッシャーが上がるし、仕事のスキルも身につけて、さらにそのための勉強もして、もう何から手をつけていいのか」と。
後ろからボルト並みの速度で生成AIが追いかけてくる感じがして、漠然とした未来に不安を感じている、という話でした。
正直、だいぶ重たい話を振ってしまったなと思います。
でも、実際に重たい問題になってきているんじゃないかと思うんですよね。
漠然とした不安は、私もすごくわかる
わかりやすいところで言うと、Web業界そのものの単価は下がってきているでしょう、という話があります。
アメリカではIT系の採用が減ってきていたり、レイオフが進んできているという話も出てきています。
パナソニックさんが1万人ぐらいの早期退職を募るというニュースもありましたよね。ITの話ではないですけど。
働き方そのものは、もう相当変わってしまうだろうなという気がやっぱりします。
ただ、ただまささんが言う漠然とした不安は、私もすごくわかるんです。
ただまささんは今35歳。私からしたら、今からでも新しいジョブチェンジをしても全然できる気がします。
でも私は今年50になりました。あと10年でビジネスパーソンとしては後半戦に入りつつあるわけです。
そして、今持っているスキルで走りきれる気は、正直まったくしていないんですよ。
HTMLを書く仕事は、なくなるんじゃないか
これは私がそう思っているというだけなので、気に障ったらごめんね、なんですけど。
HTMLを書くという仕事は、なくなるんじゃないかと思っているんです。
デザインも、エンターテインメント系のようにビジュアル自体が意味を持つものは絶対に残ります。
でも、たとえば町の商店のサイトに、デザインがどれぐらいいるのか。
「このサイトのデザインが超イケてるからここに発注しよう」という要素になるかというと、あんまりならない気がするんです。
それよりは、住所を早く教えてくれ、Googleマップを出しておいてくれ、社長の名前や資本金を教えてくれ、という方に向かっていく。
情報を受け取る側にとって、そのサイトが赤だろうが黒だろうが白だろうが関係ない、という世界にだんだん行っちゃうんじゃないかと思うんですよね。
そういえば少し前、Googleで「イチロー 年収」と入れたら、もう検索結果にその答えが出ていました。サイトに飛ばすんじゃなくて。
それを見たとき、ウェブサイトってなくなるな、ぐらいに思ったんですよ。
生成AIと親和性が高いのは、いわゆるホワイトカラーの仕事です。私たちのプログラムもそうですし、士業さんもよく言われますよね。
手を動かしてゴリゴリ作っていく仕事は、本当にトップオブザトップの人しか生き残れない世界になっていくんじゃないか、と漠然と思っています。
新しい仕事は生まれる。馬具メーカーがカバンメーカーになったように
ただ、大事だなと思っているのは、おそらく新しい仕事が生まれるということです。
それが何かはわかりません。私も全然わかりません。
昔、馬が主体だった時代に車ができて、馬具を作っていた会社がカバンメーカーになった、という話があります。
彼らの本当の能力は、馬の道具を作ることではなく、革を加工して革製品を作ることだった。だから事業をピボットできたわけです。
同じように、HTMLを「文書構造を定義するもの」と位置づけるなら、その能力自体には意味があると思うんです。
難しいのは、仕事として存在しても、単価が取れる仕事なのかはわからない、ということですね。
だから私がすごく大事にしているのは、これまで何十年かかけてやってきた技術に誇りは持つけれど、それにしがみつかないよう自制する、ということかもしれません。
それはディレクターというスキルも同じです。ガントチャートが引けるとか、WBSを作れるとか、そこら辺はむしろ生成AIになりそうな気がするんですよね。
生成AIが台頭するとディレクションスキルが重要になるはずだ、というブログもあって、ある程度は同意できます。
でも、賞味期限はどこかにありますよ。5年なのか10年なのか。私はそれぐらいに思っておく方がいいと考えています。
持っているものをメタに分解して、価値を作り直す
今持っているスキルには誇りを持つけれど、固執はしない。
そのうえで、持ってきたものをできるだけメタ要素的に分解して、「自分が今やっていることは結局何をしていることなのか」を自分で言語化し直す。
そして、お客さんがお金を払ってくれるものを、今後は自分たちで作っていかなきゃいけないんじゃないかと思います。
私がウェブを始めた94年、95年ごろは、ウェブ制作なんて仕事はなかったわけです。
それが30年経って産業になった。でも紙や印刷の業界を見ていれば、私たちの業界がいずれ同じ道をたどるのは火を見るより明らかでした。
だから昔からそういうつもりで、ずっと準備をしてきた感じですね。
たとえば、少し宣伝っぽくなっちゃいますけど、今うちの会社である不動産会社さんのポッドキャストをやっているんです。5ヶ月で10万再生も行ったので、ちょっと誰か褒めてほしいんですけど。
商業用のポッドキャストなんてやったことがなかった。でも台本を作って、企画を考えて、チャネルを考えて、パーソナリティさんやスタジオをアサインして演出する。
それはきっと、大きな意味で言えばディレクションスキルの応用なんですよね、私にとっては。
まとめ
速度が上がって密度が上がっている、という感覚は私もすごくわかります。でも、それは別の仕事に移ったとしても、これから遅くなることはあまりないと思うんです。だったら、せっかくここまでやってきたスキルを分解して、次の新しい仕事を作る側に回ってみてはいかがかな、といまは考えています。
- 働き方そのものが相当変わるという前提で、Web業界の今後を見ている
- 手を動かして作る仕事は、トップオブザトップしか残りにくくなるかもしれない
- 今のスキルには誇りを持ちつつ、しがみつかないよう自制している
- 持っているものをメタに分解し、お客さんがお金を払ってくれる価値を作り直していく






