なぜお客様は無邪気に値引きしてくるのか
まず前提として大事だと思っているのが、お客様はどれぐらいの作業がどれぐらいの金額になっているのかがわからない、ということなんですよね。
だから無邪気に言うし、値引きもしてくるんです。
これが例えば車だったら、鉄がいるとかエンジンがいるとか、モノがあるじゃないですか。だから新車を5円で売ってくれとは、さすがに誰も言わないわけですよ。
でも私たちの仕事って、リアルに触れるものじゃないんですよね。
「画像一個作るだけでしょ、あなたたちプロなんだから」なんて言われることもある。デザイナーの友達に素人の友達が「友達価格で作ってよ」と頼んで、お金を取ろうとしたら「え、私からお金取るの?」となる、みたいな話もよく聞くじゃないですか。
実際にやったら4時間とか8時間かかるものでも、金額だけ見ると軽く見られてしまう。ここが根っこにある難しさなんじゃないかと思います。
私の見積書は、100行を超えることもある
じゃあどうするか。私は基本的に、ほとんどの場合値引きしないという前提で動いています。
そのために何をしているかというと、見積もりに全項目、できるだけ細かく書くんですよ。
本当に、四桁万円とか三桁万円の後半になると、見積もりが100行とか150行ぐらいになることもあります。
なんでそんなことをするかというと、まとめて出すと「この部分、なんでこんなにかかるんですか」と言われるからなんですよね。
だから定例のミーティングが何時間、社内のミーティングがこれだけ、ドキュメントを書く時間がこれだけ、というところまで細かく出します。
すると「プロなのに社内ミーティングこんなにやるんですか」と言う方もいるんですが、別にミーティングが多いことを是としているわけじゃないんです。ただ、何に何時間かかっているかをわかってもらうために書いているんですよね。
そのうえでまとめて値引きを求められたら、まず正論を言います。「値引きする分、何かの作業を削らなきゃいけなくなりますけど、どうしますか」と。「その分を御社でやっていただけるならどうぞ」という話にしていくわけです。
見積書は、私にとって「提案書」なんです
これはよく言っているんですけど、私は見積書は提案書だと思っているんですね。
提案書って何かというと、私にとってはドキュメントなので、そのドキュメントだけが相手に伝わっても「ああ、そういうことか」と理解できるもの、という意味です。
自分の口頭説明がないとわからないものは、ドキュメントじゃないと思っているんですよ。
見積書を提示するとき、もちろん説明はします。でもその後、見積書は私の手を離れて、お客さんの担当者さんが上司に説明する場面が必ずあるんですよね。
そのときに「なんでこの金額なの」と聞かれて、担当者さんがうまく答えられないと、社内で「何をやってるか説明できないものを、なんで受けてるんだ」となってしまう。
だから私の手元を離れても、書いてある通りで通じるように、見積書は提案書として成立するように書く。これがまず前提なんです。
追加要望には、全員の前で強く言う
相談者のブクブク茶釜さんは、値引きを受けた後に「言うの忘れてたけど、まるまるも必要なんだよね」と追加要望をしれっと出されて困った、と書いてくださっていました。
これはね、私は相当強く言いますね。
クライアント側に関わる担当が複数いるなら、できるだけ全員の前で言います。「今ここでお話に上がっていない内容はお聞きできていないので、追加になった場合は絶対に見積書が追加になります」と。
ただ、ここで言い方が大事なんですよ。「値引きはもうできませんよ」と突き放すんじゃないんです。
「今言っておいてもらわなかったら、本当に追加の見積書を書いて費用をいただかないとできなくなりますよ。言い漏れていること、ありませんか。大丈夫ですか」という言い方をします。
皆さんのために、これ以上お金のことで揉めたくないですよね、という気持ちで伝えるんです。裏を返せば「そうじゃなかったら追加は絶対出しますからね」という意味を、言葉の間に全部含めながら、ですけどね。
なぜ私が値引きにこだわるのか
なぜここまで値引きを避けるのか。会社の収益や利益率が下がるのはもちろんあります。
でも私の中でいちばん悔しいのは、クリエイティブのメンバーに、結果的に値引きした金額の案件をやらせることになるからなんですよね。
本当なら10万円もらえる案件を、5万円しかもらえない案件として、同じだけの労力を割いてもらうことになる。
もしメンバーが選べるなら、「僕は自分のデザインが正しい単価で売れるので、それを売ってくれるディレクターと仕事をします」と言われても、おかしくないと思うんですよ。
そう言われて困るのはディレクターです。ディレクターは自分では何一つものが作れない人ですからね。
だからクリエイティブのメンバーを守るという意味でも、どうやって値引きをしないでいられるかを、私は先に考えているんです。
見積もりのときのペルソナは、「どうにかして値引きしようとしてくるマン」なんですよ。「お前そこまで言うか」という人を想像して、事前にいろんな対策を考えている方だと思います。
まとめ
結局のところ、値引き交渉に強い一発の返し文句があるわけじゃないんですよね。丁寧に書いた見積書で、何にどれだけの工数がかかっているかを、納得まではいかなくても理解できるところまで伝える。その積み重ねなんじゃないかと、いまの私は思っています。
- お客様は作業と金額の対応が見えないから、無邪気に値引きしてくる。それを前提に置く
- 見積書は全項目を細かく書き、口頭説明なしでも伝わる「提案書」として作る
- 追加要望は関係者全員の前で、揉めたくないという姿勢で強めに釘を刺す
- 値引きを避けるのは、結局クリエイティブのメンバーを守ることにもつながる



