コミュニケーションで疲れてしまう時代
新シリーズ「AI時代のコミュニケーション構造学」がスタートします。職場や家庭、友人関係など、コミュニケーションは必ず必要になりますが、人と人が理解し合うのは難しいと感じる場面も多いものです。
この10年で、対面やメールだけでなく、チャットやSNS、Zoomなどのオンライン会議といった手段が急速に増えてきました。そして最近はAIも登場しています。
チャットの通知に追われる即レスプレッシャー、短いテキストに冷たさを感じる不安、相手の反応が遅くて怒らせてしまったかという心配。うまく伝えなきゃと焦るのに、やりとりしても通じ合えない感覚。そうした日常のモヤモヤが挙げられます。
自責と他責のあいだで心がすり減る
うまく伝わらないとき、私たちはつい「自分の伝え方が上手じゃないからだ」と思ってしまいがちです。「伝え方が9割」といった書籍も話題になりました。
一方で、「相手が悪い」と考えてしまうこともあります。あの人は冷たい、気遣いが足りない、といった評価です。
ただ、自分でも他人でも、個人の問題に帰着させると、心がどんどんすり減っていくと高橋さんは話します。
熱量が届かない経験から得た気づき
高橋さん自身も、コミュニケーションの難しさを感じることがあると振り返ります。前シリーズ「ノンプロキャンプおすそ分け」で語られた、7月4日のイベント準備の経験です。
コミュニティ「ノンプロ研」のメンバーとSlackを中心にやりとりする中で、準備段階の熱量がなかなか上がらず苦労したといいます。登壇者や運営メンバーを集める際も、熱量を伝えたつもりでも届きにくかったそうです。
この経験を振り返る中で、「誰がどうすべき」という発想に期待しても根本的な解決にはつながらない、という気づきがあったと話します。
このコミュニティ(ノンプロ研)において、強制的にコミットして動けるのは僕、高橋だけなので、他のメンバーはすべて自由意思で参加してくださっているわけですからね。
だからこそ、誰がどういう状態であっても、結果としてメンバーが自発的に動き、熱量が生まれるような構造・仕組み・場の設計を作ることに注力した方がいい、と考えるようになったといいます。
マクルーハンの「メディアはメッセージである」
ここで高橋さんが手がかりとして紹介するのが、1960年代に活躍したカナダのメディア学者マクルーハンの言葉です。
高橋さんによれば、マクルーハンはテレビや活版印刷の登場によって社会や人間の知覚がどう変化するかを分析し、現代のデジタル社会を半世紀以上前に予見していた人物だそうです。
これは、私たちは「何を話すか」を重視しがちですが、それ以上に「どんなメディアを使ってやりとりしているか」自体が、人間の行動や認知、関係性を強力に規定してしまう、という意味だと高橋さんは説明します。
つまり、コンテンツの中身以上に、伝える媒体・道具・その場の構造が大きく影響を及ぼすという話です。
「構造」という眼鏡をかける
この考え方をコミュニケーションに当てはめると、心が疲れてしまう原因は、自分のスキル不足でも相手の性格のせいでもない可能性が見えてきます。
使っている媒体やツール、それを形作る場の構造が、感情に負荷をかけているのかもしれない、というわけです。
もちろん、人間関係のすべてがメディアやツールだけで決まるわけではありません。ただ、「構造」という眼鏡をかけられるようになるだけで、自分も相手も責めなくて済むようになる可能性があると高橋さんは語ります。
自分の伝え方や相手の性格のせいと考え、心がすり減っていきやすい
媒体・ツール・場の構造が負荷をかけていると捉え、自分も相手も責めずに済む
シリーズで解き明かす5つのキーワード
このシリーズでは、約10年前の2017年頃から現代、そしてAI時代への変遷をたどりながら、概念や理論を紹介し、コミュニケーションの構造を解き明かしていきます。
各パートのキーワードとして、次の5つが挙げられました。
日々モヤっとしたコミュニケーションがあったときは、「これはこのツールやメディアの構造のせいかも」と一歩引いて観察してみるのもよいのではないか、と高橋さんは提案します。
まとめ
コミュニケーションで心が疲れたりモヤモヤしたりするのは、自責でも他責でもなく、メディアや場の構造が原因かもしれません。マクルーハンの「メディアはメッセージである」を手がかりに、構造という視座から心をラクにしていくシリーズが始まりました。
- コミュニケーションの疲れを個人の問題に帰着させると心がすり減りやすい
- 高橋さんはイベント準備の経験から、人ではなく熱量が生まれる構造を作る重要性に気づいた
- マクルーハンの「メディアはメッセージである」は、媒体や場の構造が関係性を強く規定するという考え方
- 「構造」という眼鏡をかけると、自分も相手も責めずに済む可能性がある
- シリーズは可視化される自己など5つのキーワードで構造を解き明かしていく




