遠距離恋愛のコツは?と聞かれても
最初の質問は、YouTubeのコミュニティに届いた恋愛相談でした。北海道で修行していた頃、恋人とうまくやれたか、遠距離恋愛のコツを教えてほしいという内容です。
まず川上さんは、修行先の記憶を整理します。北海道での研修は農業大学校の畜産科に在籍していたときのもので、豊頃町に1ヶ月半ほど住み込みで通ったそうです。豊頃町北海道十勝地方にある町。酪農や畑作がさかんな地域として知られています。
ただ、その研修中に恋人はいなかったとのこと。遠距離恋愛の経験は農業大学校1年生のときで、当番が多く月に一度しか休みがなかったといいます。
月に一回、土日だけしか休みがなくて。お付き合いしていた方が岡山の方だったんで、高速道路に乗ると高速代がかかってしまうので、学生さんでお金がないので、4時間半ぐらい、5時間ぐらいかけて行ってましたね。
ただ、その恋愛は結局別れてしまったそうで、コツを聞かれても答えに困る、というのが正直なところでした。
遠距離恋愛のコツって聞かれましても、遠距離恋愛したけど別れてしまったので、コツとかないじゃないですか。私に聞かないでほしいって思いますけども。
それでも、近い方が、よく会う方がうまくいくというのが実感だと話します。特に学生時代はそうかもしれないと、笑いまじりに答えていました。
堆肥の風評被害、実際どうなの?
続いてはstand.fmに届いた質問です。堆肥をまくと寄生虫や抗生物質がどうこう、という風評被害を聞いた気がする、という内容でした。
川上さんはまず、除草剤の残留が問題になった過去の事例を挙げます。海外で使われる除草剤が牧草を通じて堆肥に残り、その堆肥を使ったトマトが全滅してしまったケースがあったそうです。クロピラリド牧草などに使われる除草剤の一種。堆肥に残留すると一部の作物に生育障害を起こすことが知られています。
ただし、この問題が起きてからはトマト農家も牛糞堆肥の残留を確認するようになり、今はほとんど問題ないといいます。
抗生物質についても、治療した牛の糞尿をそのまま畑に入れる人はほとんどいないため、現状では問題にならないと説明します。
そもそも家畜の糞は各都道府県への届け出が必要で、了承がなければ堆肥として販売できません。そうした仕組みがあることも知ってほしい、と話していました。
「お茶するのも仕事」が生む価値とは
次は、JAの仕事をAIで代替したらどうなるか、という配信に寄せられたコメントです。以前「お茶をするのも仕事」と話していたことに触れ、保険外交員のように話し相手になることの大切さを指摘する内容でした。
川上さんは、山奥の牧場に酪農ヘルパーで行った際、なかなか人と会わないその家のお母さんとお茶をして話すことも仕事だ、と語ったエピソードを振り返ります。酪農ヘルパー酪農家が休みを取れるよう、牛の世話などを代わりに行う仕事。休暇の取りにくい酪農家を支える役割を担います。
実際、そうした会話が今の自分の知識につながっているといいます。
昔は牛の値段がこんな感じで、牛1頭2頭いるだけで生活できたんだよみたいなのを、お茶しながら聞かせてもらったりとかね。
JAの職員にも「外勤日」があり、変わりはないか、災害はないかと農家を回る日があるそうです。かつては通帳を預かって預金や入出金を代行していた歴史の名残でもあると説明します。
現場に出て農家と直接会う機会は減っているものの、そこに仕事につながる話が落ちていることもある、と川上さんは話していました。
なぜ「安いお米」が求められるのか
続いては、森永乳業のサイト「ミルシ」が立ち上がった話に寄せられたコメントから、農産物の付加価値へと話が広がります。
祖父の代は小規模な鶏卵でも儲けが出ていた、今の畜産はニッチなものが儲かるのかも、というコメントに、川上さんは付加価値が成り立つ前提を説明します。
例に挙げたのはお米です。価格が高騰したとき、特別に高いお米はかえって売れ残り、みんなが求めるのは安いお米だといいます。
多くの人の頭の中には、お米は一袋3000円くらい、今なら4000〜5000円くらいという相場観があり、それを超えると嗜好品になってしまうという見方です。
そして嗜好品が売れるのは、普段の消費財が安定して手に入るからこそ。世界情勢や国内の食料生産が不安定になれば、嗜好品を売る人は厳しい戦いになるというのが川上さんの読みでした。
安定供給
普段の食料が安定して手に入る状態がある
付加価値
その上で特別な農産物や嗜好品が売れる
不安定化
世界情勢や食料生産が揺らぐと嗜好品は厳しくなる
牛との「距離感」に正解はない
最後は、6年前の「牛との距離感診断」の配信に届いたコメントです。人間と牛、人間と人間、人間と犬、距離感はいろいろで、それを受け入れることが大事だと感じた、という感想でした。
川上さんは本当にいろんなことを考えて酪農をしておられるんですね。すごいと思いました。
川上さんは、こうした反応をありがたく受け止めつつ、酪農家の中でこういう話をすると変な人だと思われがちだと打ち明けます。理解してくれる人が一人でもいるのは励みになるようです。
ここで言う距離感とは、物理的な距離ではなく精神的な距離のこと。牛を経済動物として飼うのか、愛玩動物として飼うのか、家族として接するのかで牧場ごとに違うといいます。
牛にどれだけ近づくかという物理的な近さ
経済動物・愛玩動物・家族のどれとして接するかという心の距離
この違いを言語化し、働く人どうしで理解し合うことで働きやすくする。それが距離感診断を作った目的だと説明します。
なお、令和7年の研修生と同じ診断をやった配信もあるそうで、6年前との違いを聞き比べても楽しいと案内していました。
まとめ
日曜の質問箱回では、恋愛相談から堆肥の風評、農産物の付加価値、牛との距離感まで、リスナーの質問に川上さんがまっすぐ答えていきました。答えに困る質問も、業界の実情も、飾らず語る回でした。
- 遠距離恋愛は「近い方が、よく会う方がうまくいく」というのが川上さんの実感
- 堆肥の除草剤や抗生物質の問題は対策が進み、今はほぼ風評被害だと説明
- 農家とお茶をして話すことも仕事の一部で、そこに知識や仕事の種がある
- 付加価値や嗜好品が売れるのは、普段の食料が安定供給されているから
- 牛との距離感は物理ではなく精神的なもので、牧場ごとに考え方が違う

