「態度が悪いから辞めさせたい」相談は珍しくない
態度が悪い従業員がいます。どうしても解雇したいのですが、注意すべきポイントはありますか?
吉田さんによると、社会保険労務士をしていると、経営者から「辞めさせたい従業員がいる」という相談は珍しくないといいます。
この社会保険労務士という仕事をしていると、経営者さんから「辞めさせたい従業員がいるんです」という相談は珍しくないんですね。
ただ、よく話を聞いてみると、その多くは深刻なトラブルではないと吉田さんは指摘します。
この手の相談を受けた時に、よくよく話を聞いてみると、ただそのスタッフと折り合いが合わない、自分と合わないだけ、だから辞めさせたいみたいな人が多いんですね。
気持ちはわかるとしながらも、会社経営では経営者の好き嫌いで従業員を辞めさせることはできない、と吉田さんは話します。
「態度が悪い」を客観的な事実に書き出す
そこで吉田さんが勧めるのが、「態度が悪い」というのが具体的に何なのかを客観的な事実として書き出すことです。
「態度が悪い」という感覚は、社長ひとりの主観かもしれないからです。もっと敬ってほしい、若者で生意気だといった理由だけでは、辞めさせることは難しいと吉田さんは言います。
一方で、その「態度の悪さ」が他の従業員へのパワハラのような場合は、話が変わります。
他の従業員さんにパワハラしてるとかであれば、最初は注意指導とか教育指導はしなきゃいけないですけれども、度が過ぎている場合は、場合によっては辞めさせることもできると。
つまり、まずは事実を切り分け、注意や指導を積み重ねていくことが前提になります。
解雇が「普通の退職」と決定的に違う点
そのうえで吉田さんが強調したのが、この回でいちばん覚えてほしいという一点です。
他の社労士の多くも同じ見解だといいます。理由は、解雇が普通の退職とはまったく違う性質を持つからです。
自己都合退職は、従業員が退職届を出し、会社が了承する「合意」の形をとります。ところが解雇は、会社側が一方的に「明日から来ないでください」と通告するものです。
解雇の場合、一方的に通告してますから、有効か無効かっていう議論が出てくるんですね。
通告された従業員は、その解雇通知書を持って裁判所に「これは無効だ」と訴えることができます。まだ会社に籍があると主張できてしまうのです。
従業員が退職届を出し、会社が了承する。両者が合意しているため、後から争いになりにくい。
会社が一方的に通告する。合意がないため、有効か無効かをめぐって争いになりうる。
勝っても負けても得をしない解雇の現実
仮に裁判で会社が負けた場合、その損害は大きいと吉田さんは説明します。
裁判費用や弁護士との打ち合わせの手間に加え、解雇が無効とされた期間、つまり争っていた期間の給与も支払わなければなりません。
さらに、無効という結果が出れば、従業員を復職させる必要があります。しかし裁判で争った相手と、また一緒に働けるかは難しいところです。
解雇通知を出す前より、状況は悪くなってるってことですよね。
悪くなってるどころか、多分ほとんどの人は顔も見たくないんじゃないかなと。
結局、事実上働き続けるのが難しくなり、今度は金銭を払って退職合意を結ぶ流れになり、大きな費用がかかると吉田さんは言います。
では、解雇が有効と認められて会社が「勝った」場合はどうか。それでも得をするわけではないと吉田さんは指摘します。
争っている間、中小企業の社長は対応や打ち合わせに時間を取られ続けます。勝ったからといって、お金が入るわけでも売り上げが増えるわけでもありません。
ただし、刑事事件に発展するようなあまりにひどいケースは別です。その場合は弁護士に相談し、会社として厳正な態度で臨むべきだと吉田さんは話します。
辞めさせたい気持ちは、いったん胸にしまう
性格の不一致のような場合に吉田さんが勧めるのは、解雇ではなく話し合いです。
自分が合わないなと思ってたら、大体、向こうも合わないわけですよ。
社労士に相談が来るときは、すでに辞めさせると心に決めている経営者が多いといいます。それでも吉田さんは、その決断を一度忘れてほしいと言います。
辞めさせたいと思ったら、その気持ちをグッと飲み込み、まずはフラットな形でスタッフと面談することを勧めています。
「うちの会社で働いてどうですか」とフラットに聞いて、悩みを聞いてあげるような感じで話すと、「実は合わなくて」とスタッフさんの方から言ってくれることもあるんですよ。
軽く面談しただけで、スタッフの側から退職の意向が出て、円満退職になるケースも珍しくないといいます。会社としては、まず活躍できる方法を模索することが望ましいとしつつ、中小企業では配置転換先に限りがある現実にも触れています。
なるべく火に油を注がずに、穏便に対応しましょうということですね。
まとめ
解雇は会社の一方的な通告であり、有効か無効かをめぐって争いになりやすく、勝っても負けても会社の得にはならないというのが、この回の中心でした。だからこそ吉田さんは、辞めさせたい気持ちをいったん胸にしまい、まずは話し合うことを勧めています。
- 「態度が悪い」は主観になりがち。まず客観的な事実として書き出す
- 解雇は合意のない一方的な通告で、有効・無効の争いになりうる
- 負ければ争った期間の給与や復職、退職合意の費用がかかる
- 勝っても社長の時間を奪われるだけで、金銭的な得はない
- 刑事事件級のケースは弁護士に相談し、それ以外はまずフラットな面談から始める



