研究か教育か、新任の看護大学教員はどちらを選ぶ?
最初の相談は、看護大学に着任したばかりの教員からです。研究で市場価値を高めたい本人と、教育を最優先する職場とのあいだで、熱量の差に悩んでいます。
看護大学教員をしてます。大学に着任したばかりですが、職場の空気に悩んでいます。大学教員が自身の市場価値を高めるには、研究に取り組んで論文を出すことが不可欠です。しかし、深刻な看護師不足もあり、教育に全リソースを割くのが正義という文化が強く、個人の研究に取り組む人は少数派です。研究に時間を使いたい私と現場第一の周囲との熱量差に仕事のしにくさを感じてます。組織のカラーに合わせるべきか、個人を優先すべきか、どちらでしょうか?
アオラク さんからの質問
番組のAIの結論は「個人を優先すべき」というものです。そのうえで、研究テーマには周りが最優先している看護師不足の現場そのものを選ぶよう勧めています。
このAIの答えに対して、けんすうさんは「AIっぽい」と感じたようです。理屈はきれいでも、実際の職場ではそこまでうまく運ばないのでは、という受け止めです。
うん、そんなにうまくいかないのでは(という気はしました)。
けんすうさんは、教員としては論文を出したほうがいいのに、周りからは「もっと育てろ」と言われ、育てていたら論文は出せない、という板挟みを整理します。そして、これは会社員にもよくある構図だと話します。
まあだから現場の大変さと、個人のやりたいこととは、まあほぼ一致しませんからね。
箕輪さんによれば、現場の求めることを一定以上こなして初めて、個人のやりたいことが許される職場が多いものの、忙しいとそれもなかなか難しいとのことです。
日本交通・川鍋さんが最初の1か月にやったこととは
研究と教育の板挟みに対して、けんすうさんが持ち出したのが「クイックウィン」という考え方です。日本交通の川鍋さんから教わったものだそうです。
けんすうさんによると、川鍋さんは若くしてタクシー業界の協会的な組織の会長になった人物です。4代目で、マッキンゼー出身らしいという経歴から、効率化ばかり言いそうなお坊ちゃんと見られやすい立場でした。
で、なんか効率化とか言いそうって時に、彼がやったのが、もうとにかく挨拶と掃除を徹底したと。
川鍋さんは、最初の1か月ほどは挨拶と掃除以外のことを言わなかったといいます。すると職場の空気がよくなり、「あの人についていったらよくなるかも」と周りが支持してくれるようになったそうです。
挨拶と掃除を徹底
最初の1か月は、それ以外のことを言わない
職場の空気がよくなる
目に見える小さな変化が生まれる
支持が集まる
「この人についていけばよくなるかも」と思われる
けんすうさんは、看護大学の相談者にもこの順番を当てはめます。まず周りが求める仕事にしっかり応えて信頼を得ることが先で、自分の研究とうまく結びつけて利を取るのはその後、という考え方です。
で、信頼感取ってから自分の、やりたい研究とかでうまく結びつけて、自分の利も取っていくっていうのをやるっていう順番がいい気がしますね。
移籍したサッカー選手と、鳴り物入りの人の落とし穴
箕輪さんは、信頼を得てからやりたいことをやる順番は「冷静に考えたらみんなそう」だと話し、移籍したサッカー選手を例に挙げます。メッシのような別格の選手でもない限り、特に日本人選手は、移籍先で本人の望まないポジションに雑に起用されることがあるといいます。
で、そういうのを、「いや、僕はこのポジションじゃないんで」っていうやつはだいたい干されて終わる。
みんな最初は、郷に入っては郷に従え的なものを一回クリアしてんだよね、みんな。
箕輪さんはさらに、組織に悩む人のための「方程式」を流行らせたほうがいいと提案します。いきなり来てやりたいことをやっている人はいない、というのがその理由です。
けんすうさんは、この方程式の逆をいく危ない例として、鳴り物入りで来た人を挙げます。派手なことをしようとしたり、前職でうまくいった方法をそのまま持ち込んだりして失敗するケースが多い、という指摘です。
箕輪さんは、書籍編集者の世界でもこのパターンがとても多いと応じます。「あの本を作った人」として他の出版社へ移ったものの、それ以来目立つ本を出せなくなる編集者がいるそうです。
(前の職場でできてたのに)例えば幻冬舎行ってできなくなったら、幻冬舎がそういう本を出せない会社なんだって、なんか不満を抱えてまた移籍したりするんだけど、結局大体同じで。
箕輪さんの見立てでは、そうした編集者は、前の職場でも馴染んで周りが協力してくれたからヒットが出たことを忘れています。結果だけを頭に入れて意気揚々と来ても、周りが「誰?」という状態では同じ結果は出ず、最初からやり直す必要があるといいます。
評価されているなら、今の会社は辞めないほうがいい?
けんすうさんは、転職の相談を受けたときにいつも伝えていることがあると話します。それは、今いる会社で評価されているなら辞めないほうがいい、というものです。
今の会社でうまくいってるってことは、多分周りがめっちゃ協力してくれてるよ。環境を作ってくれてたりするけど、認知できないんですよね、多分。
けんすうさんによれば、「あの人が言うから頑張って売ろうか」といった周りの協力がとても効いているのに、本人からは見えにくいのだそうです。他の会社に移れば、その関係はまたゼロから作り直しになります。
箕輪さんは自分の経験を重ねます。双葉社ではまず広告営業を経験し、編集部に移ってから、見城さんと堀江さんの本を立て続けにヒットさせました。
そのとき箕輪さんは「自分が作れば全部ヒットする」と思いがちだったといいます。けれど実際には、4、5年の広告部時代に毎日のようにみんなと飲みに行き、フットサル部のコート取りまでして、「みのくん」というキャラとして受け入れられていたところからのスタートでした。
編集者としての才能で、本がヒットしたと思いがち
広告部時代の飲み会やフットサル部のコート取りで築いた関係が土台にあったと気づく
二人は、新卒で会社に入ったのはよかったと笑い合います。どこへ行っても、まず場に馴染むところからやらないとだめだ、という実感がにじむやり取りです。
反対を押し切るのは、どんなときならいい?
2つ目の相談は、経営者の自伝によく出てくる「反対を押し切った」場面についてです。けんすうさんが、1つ目と近いテーマだとして紹介します。
経営者の自伝を見ていると、周りには反対されたが押し切ってやったという場面をたびたび見かけます。周りの意見を尊重したほうがよいときと、自分の意見を押し切ったほうがよいときは、どんな違いがありますか?
千葉 さんからの質問
番組のAIの回答は「押し切ってよいときは、反対している誰よりもあなたがその件を長く見てきたときだけ」というものです。
けんすうさんはこの回答をいいと評価しつつ、周りからの信頼がどれくらいあるかにもよると付け加えます。初手から押し切ると、周りが足を引っ張るからです。
全く。反対してんのに押し切ったら絶対失敗させてやろうって思うもん。
(一人一人の)抵抗はちっちゃくても、組織としてこれは成功させないって言った時に絶対成功しないもん。
けんすうさんは、反対されていても周りの意見を聞き、全部採用したように見せるやり方を勧めます。箕輪さんも、「確かに」と言いながら実際には違うことをやり、成功したら「◯◯さんのおかげです」と言えば、みんながハッピーになると重ねます。
みんなアドバイスしたりしたこと覚えてないので、全部そうしますって言って、成功した後に何々さんのおかげですって言うと丸く収まったりしますよね。
本人のいない所で褒めると、何が起きる?
ここで箕輪さんが「話が変わるかもしれない」と前置きして、ReHacQ ── ビジネスや政治などを扱うYouTubeチャンネル。元テレビ東京のプロデューサー、高橋弘樹さんが立ち上げましたで政治記者の今野さんが語ったエピソードを紹介します。箕輪さんがいない生配信で、今野さんが箕輪さんについて話していたそうです。
今野さんの話によると、箕輪さんと今野さんの旅ロケの途中で、高橋さんが急に「帰ります」と言い出しました。実は網膜剥離になりかけていて緊急で帰ったのですが、二人のテンションを下げないよう理由は伏せていたそうです。
さんざん無茶ぶりをされた末の離脱に、今野さんは怒ろうとしました。そのとき箕輪さんが「高橋さんが仕事に穴を開けるなんて何か大変なことがあるはず、任せてください」と場を収めた、というのが今野さんの語ったエピソードです。
ただ、箕輪さん本人によれば、そんなことは言っていないそうです。それでも嘘だとは言いたくないので、この番組の冒頭のような目立たないところで少しだけ打ち明けた、と笑います。
この伝説が一人歩きしてくれたらいいから、そのショート動画とか俺いいねして回ってんだけど。
箕輪さんは、身に覚えがなくても「ありがとう」と思ってしまい、今野さんのことが好きになったと話します。今野さんに意図はなく、今野さんから見た景色ではそう見えたのだろう、と受け止めています。
このエピソードから箕輪さんが引き出したのは、人間は本能的に人を下げたり陰口を言ったりしがちだからこそ、その逆をやれば味方が増えるのではないか、という発想です。
とはいえ箕輪さんは、ゼロから嘘を作るのは怖いと線を引きます。1を100くらいにいい風に言うのはありだ、という感覚です。二人は、本人のいない所で褒める「陰口の逆」をどんどんやろうと盛り上がります。
「昔お世話になった」と言う人が生き延びる理由
話は2つ目の相談に戻ります。箕輪さんは、武勇伝のように「反対を押し切った」と話すことは自分にもあるものの、裏では「◯◯さんのおかげです」と言いまくっていると明かします。
けんすうさんも、当たりが強く見える人ほど、実は「◯◯さんのことは尊敬してるんですよ」と直接伝えていることが多いと話します。言われた側は悪い気がしないので、いざというときにかばってくれるそうです。
箕輪さんは、溝口勇児 ── フィットネスアプリ運営会社FiNC Technologiesの創業者で、格闘技イベント「BreakingDown」の運営にも関わる起業家ですさんもホリエモン ── 実業家・堀江貴文さんの愛称。ライブドア元社長で、現在も多くの事業や発信を手がけていますも、こうしたふるまいを、ずるさではなく染みついた人間力としてやっていると話します。
溝口さんとか、(けんすうさんには)昔お世話になったんでみたいに言ってくれるんですけど、絶対してないのよ。
けんすうさんによれば、溝口さんの言葉は嘘でもないそうです。けんすうさんが以前いいねやリポストをしたことを、溝口さんはちゃんと覚えているといいます。
けんすうさんは、久しぶりに会ったホリエモンからも「いつもご支援ありがとうございます」と頭を下げられて驚いたと話します。クラファンなどでの支援を、本当にありがたく思っているのだろうと二人は受け止めています。
やっぱなんかネットで見ると、なんでこいつ未だに生きてるんだとか、支持されてんだとか言ってる人いますけど、やっぱちゃんとしてますね。
ほかにも、イベント後に丁寧なDMをくれる鹿野ツノさんや、手伝っている麻婆豆腐屋さんに行っただけでお礼のDMをくれたライターのよっぴーさんの例が挙がります。けんすうさんは、そういう人はどんなに嫌われても生き延びていると話します。
箕輪さんは、編集者でよかったと思う点として職業倫理を挙げます。挨拶をする、お礼を言う、そして著者に対しては最後に感想を伝えて終わる、という習慣です。
50代の先輩2人の議論が1時間続くときは?
最後の相談は、同じ50代ぐらいの先輩社員2人がいるチームからです。
同じ50代ぐらいの先輩社員が2人いるチームに所属しています。先輩2人の価値観の違いで議論が始まり、1時間ぐらい経過することがざらにあります。私が止めようとしてもリスクが高いので止められません。この無駄な時間をなくすためにはどうしたらいいでしょうか。
Kライフ さんからの質問
番組のAIの回答は「議論を止めるのではなく、一度自分が両方の案を整理して持ってきますと伝え、聞き取って決める役を先輩2人から奪いなさい」というものです。
箕輪さんの第一声は「しんどい職場だな」。一方けんすうさんは、新卒1年目の会社で、部長とエースがとても仲の悪いチームにいた経験を振り返ります。喧嘩になりやすい場でしたが、ファシリテーター役は楽だったといいます。
お互い面と向かって話すと喧嘩になるんで、ホワイトボードとかに書くと。みんなホワイトボードを見るんで。
けんすうさんのやり方は、自分の意見は一切言わず、それぞれの主張と論点を書き出して整理するだけというものです。「ここは一致していますね」「ここは反対なんですね」と整理されると、みんなが意見を言いやすくなるそうです。
箕輪さんは、NewsPicksの番組で立場の違う人たちの論点を整理する加藤浩次さんを思い出します。けんすうさんは、加藤さんは賛成や反対の雰囲気を出しながら、実は自分の意見をほとんど出していないのが上手いと分析します。
(加藤さんの番組は)議論盛り上がってる、このテンションはみんな上がってんのに、実は整理されてるっていう。
両方を整理していれば、2人のどちらにも嫌われずに済むという点でも、二人の意見は一致します。けんすうさんは最後に、価値観の違いではなく意見の違いにすることがポイントだとまとめました。
まとめ
3つの相談に共通していたのは、新しい場所でやりたいことを通すには、先に周りの信頼を得て、人を立てる順番が大事だということです。押し切るのも、自分の研究を進めるのも、その土台ができてからなのかもしれません。
- 川鍋さんのクイックウィンのように、最初は挨拶や掃除など周りが求めることに徹すると信頼が集まりやすい
- 今の会社で評価されているなら、見えにくい周りの協力を失う転職は慎重に考えたほうがいい
- 初手で反対を押し切ると組織に足を引っ張られやすく、意見を採り入れたふりをして「◯◯さんのおかげ」と言うほうが丸く収まる
- 本人のいない所で褒める「陰口の逆」やお礼のDMが、長い目で味方を増やす
- 対立する議論は、自分の意見を言わずにホワイトボードで論点を整理すると進みやすい




